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2016年3月27日 (日)

アインザッツは鳴り止まない【箱庭計画】160326

2016年03月26日 ウィングフィールド (100分)

けっこう複雑な話だと思いますが、スマートに100分でよくまとめあげられたなあと。
役者さんの熱演もかなりのもの。
ちょっとクサいぐらいだが、そこにそのキャラを真剣に見詰めた真摯な姿が浮かび上がり、心揺さぶられる。

自分が人の記憶から消えてしまう。それは一つの死。
そんな死をもってしても、守りたいものがある。それが正義なのだろうか。
誰かを想う尊い気持ち。
思い出したくない、思い出さないほうがいい記憶。でも、そんな想いがある限り、その記憶は必ずまた蘇る。
だから、その悪い記憶を否定するのではなく、そこにあった大切な想いの素晴らしさを信じて、そんな記憶を自分たちの人生の未来への糧とするべく、今を頑張って生きていこう。
そんなことを感じるような、近未来のちょっとダークだけど、人の美しさや誇りを感じる話でした。

ある帝国。
この国の王は、王の間に設置された常磐博士によって開発された機械頭脳である。国家の平和を守るため、公安警察総監の柳、その直属の部下、蘇芳により、機械頭脳のオペレーターは厳重に管理されている。
ところが、大停電が起こり、そのオペレーターが消えてしまうという事件が起こる。報道ではテロの可能性が示唆されているが、政府上層部は何やら事件情報を隠している模様。

ジャーナリスト、若菜の事務所。若菜は早速、常磐博士に事件のことを取材。どうやら、王の間で許容を超える電力が発生したらしい。ただ、それ以上のことは分かっていないみたいだ。
この事務所に出入りする者たち。桜と夢之助。
桜は柳の娘。母親は2年前に姿を消してしまい、桜はいつかまた会えると信じている母にいつも手紙を書いている。刹那というお付きの人がいて、いつもこうと決めたら絶対に引かないワガママお嬢様に苦労しているようだ。
夢之助は2年前に突如として現れた記憶喪失の男。蘇芳には実の弟のように可愛がられている。記憶を戻す手掛かりが見つかるかもという理由もあって、桜と探偵団を結成して、町の小さな依頼をこなしている。
そんな2人だが、今日は町で出会った1人の女の子を連れて来ている。名前は茜。それ以外の記憶は全く無い。夢之助に会えという紙を持っており、事務所を探す中、出会ったらしい。これからどうしたらいいのか分からず、しばらく厄介になることに。
今日はそんな探偵団の結成2周年パーティーが開かれる。
みんなで楽しい時間を過ごす。
ただ刹那だけがその姿をどこか懐かしく、しかし厳しい目で見詰めている。なぜ、茜がここにいるのか。

翌日、事務所に手紙が届く。
研究区へ向かえという指示。なぜ、こんな手紙が届くのか怪しいが、夢之助は記憶を戻す手掛かりになるなら行きたいと言う。
研究区はセキュリティーが厳重で一般人が入れるところでは無い。ところが、茜はパソコンに詳しい仕事だったのか、事務所のパソコンを通じて、それを破る手立てを見つけたようだ。
茜が遠隔操作でセキュリティーを破る間に、夢之助と桜が侵入することに。
侵入は成功、そこには刹那がいた。ここから出て行けと厳しく2人に言う刹那。
桜は自分は主人だと主張するが、いつもの刹那とは違い、厳しい表情。やがて、実力行使に出ようと、銃を突きつける。
その時、夢之助は胸を押さえる。胸は光を発している。
刹那は叫ぶ。ドライブが作動している。そして、なぜ、消えたはずの記憶が流れ出しているのか。

2年前の記憶が皆に蘇る。
大きな事故で両親を失い、自らも重傷を負った夢之助、いや当時はフジだった。
研究者の浅葱は、フジに開発したドライブというものを埋め込む。このドライブは身体能力を向上するが、その力を使うことでそれに応じた記憶が消えるという代償を負う。人体に埋め込むのは初めてのこと。
浅葱は柳の妻で、桜という娘がいる。
浅葱の研究所には、刹那、当時はビャクと呼ばれていた、埋め込んではいないがドライブを与えられた男と、常磐博士が開発した帝国の頭脳と呼ばれる人工コンピューターの茜がいた。ビャクもまた、両親を無理心中で失った生き残りだ。
身寄りを失って傷心するフジは、そんな自分と同じ孤独な仲間たちと触れ合うことで、楽しい日々を送り、心を取り戻していく。
帝国の上層部には、このドライブを危険視する者も多い。柳もその一人。
帝国は、茜に危険性を解析させる。忠実に計算するしか出来ない茜は、危険であるということを証明した結果を出した。
浅葱は蘇芳によって捕らえられる。しかし、それに抵抗するフジ。蘇芳は実力行使に出て、銃を突きつける。
フジの埋め込んだドライブが暴走する。全ての記憶が消え始める。ドライブなど存在しなかったかのように。しかし、このままではフジの命も危うい。
浅葱は自分のドライブの力を作動させ、身を呈してフジを守る。ビャクに桜と柳のことを託して。
こうして、ドライブとその開発者の浅葱の存在は、つけていたドライブに記憶消去から守られたビャクと、人工機械頭脳である茜以外の皆の記憶から消えていった。
ビャクはこんな刹那を二度と繰り返さないと、自らをそう名乗る。柳にお願いして、桜の付き人となりながら、夢之助と名乗らせたフジを見守り続けている。
刹那と茜が一緒にいれば、それはやがてドライブの記憶を戻すきっかけになるかもしれない。
茜は機械頭脳として、王の間に自らを封印した。しかし、そのことに我慢できず、自らの記憶を消すことにしたのが、今回の事件の発端だったみたいだ。

思い出されるべきではなかったのかもしれない記憶が蘇ってしまった。
夢之助は自らのことも思い出し、刹那をビャクと呼ぶ。
記憶は封印するべきだとずっと思っていた刹那。でも、その名前を再び、夢之助、フジに呼ばれた喜びに満足する。しかし、刹那のドライブはたびたびの衝撃から身体を守り限界に達していた。本当の自分を思い出してもらえた喜びと感謝を胸に、刹那は最期にビャクとしてその命は尽きる。
ドライブの存在の記憶が蘇り、帝国は夢之助を捕える。
茜は、刹那と自分のドライブを消滅させることで、事件の収拾を図ろうとする。しかし、帝国の考えは、ドライブを埋め込まれた夢之助を始末しなければ、いつかまたドライブが復活するリスクを重んじる。
全ては帝国の平和のためだ。蘇芳は可愛がっていた夢之助に自らが手を下す決意を固める。個人のことを考える仕事ではない。帝国を守る公安警察としてしなければいけないことだと。

桜は母である浅葱のことを思い出す。
そして、その日記を読み返す。
ドライブの過ち。しかし、このドライブを必ず制御して、皆の幸せ、帝国の平和のために使えるように開発を進めることを誓っていた。
桜はその想いを自分が引き継ごうと考える。
しかし、父である柳はそれを否定する。全てのドライブを、それは夢之助自身も含めて消滅させるつもりだ。
どうして、母の想いを理解してあげられないのか。そんな言葉を桜は柳に突きつけるが、柳は浅葱のことを思っての言動だった。
ドライブは必ず戦争の兵器として使われる。強大な力を持ち、その記憶を消してしまう。人殺しの武器としては都合が良過ぎる存在だ。浅葱の誇りにかけて、そんな兵器の開発者として浅葱を人々の記憶に植え付けたくない。2年前のあの時だって同じ気持ちだった。
そして、柳も浅葱のことを思い出させてくれた夢之助には本当は感謝をしている。

それでも、桜はドライブは人々の幸せへと利用される未来を信じたいと考える。それに、夢之助と別れたくない。一緒にいたい。もう、これ以上、大切な人と別れたくない。
夢之助は自分の正義のために蘇芳と対峙する。自分が守るべきもの、正しいと思うもののために。
蘇芳だって、夢之助を殺したりなどしたくはない。でも、帝国のことを思えば、個人の正義は尊重されるべきものではない。しかし、それは逃げなのか。避けたい悪い記憶と戦わなくてはいけないのか。
そんな葛藤が皆の各々の心の中で繰り広げられる中で、機械頭脳が勝手に動き出す。
暴走。ドライブ消滅に向けて勝手に作動を始めた。
その力は膨大。全てを破壊してしまう勢い。
夢之助は、自らのドライブの力でそれを制御しようと考える。そう、あの時、浅葱が自分にしたように。
夢之助の存在の記憶は消える。でも、それで皆をこのまま守れるなら。いつの日か、きっとドライブが浅葱が願った形となって完成するはずだ。
夢之助は、桜に自分のことを忘れないで欲しいと言い残し、腕時計を渡す。
大きな光に包まれる。

桜は亡き母に語っている。
浅葱が願った本当のドライブは、今、茜たちと共に懸命に開発している。
帝国がドライブによって真の平和を得る日も近いだろう。
自分にはどこかぽっかりと空いた穴がある。
その時、その穴は埋まるのだろうか・・・

人には三つの死があると捉えることから、考えられた作品のようだ。
肉体の死、精神の死、そして、永遠の死。いわゆる普通の死から、心を失い死んだも同然の状態、そして、皆の記憶から消えてしまい、存在が忘れられた時の死という考えらしい。
この作品ではその永遠の死について描かれている。
記憶は時間によって風化されるように消えていき、いつしかは本当に消え去ってしまうものだろう。たとえ、人がその記憶を長い時間の中で繋げていったとしても。
記憶を消し去る。これを時間をかけずに単純化したのがドライブだろうか。
でも、このドライブによる記憶の消去は、あまりにも強引なのか、人の心にぽっかりと穴を開けてしまっているかのようである。時間をかけた記憶の消去は、じわじわと無くなっていき、それは新しく出会った人や物との記憶で埋めながら行われるので、穴が開かないようなイメージが残る。
夢之助のドライブが暴走し、消えたはずの記憶が再び流れ出た時に、それはきっとそんな心の穴に入り込んでいる。人から本当に記憶を消し去ってはおらず、いつでも受け入れられる場所が存在していたということになるように感じる。
桜は、最初、手紙で母に自分のことを語っている。その母、浅葱の記憶はドライブで消し去られても、彼女の中にはその記憶が入り込める場所があったわけだ。
最後、夢之助の消滅と引き換えに救われた世の中においても、桜は母に手紙で自分のことを語る。でも、それはもう亡くなった母に向けてであり、彼女がその手紙の中で語る心の穴は母の記憶が入り込む場所ではない。でも、確かにそんな場所が彼女の心に用意されている。そのことが夢之助が消滅したとしても、これは決して永遠の死を迎えたのではなく、いつの日か、その穴を埋める記憶として蘇るのだろうと思う。

こんなドライブを使わなくても、自分で辛い過去や悲しい思い出を封印してしまうことはあるだろう。
例えば、自分を傷つけた人の記憶を、ドライブなんて便利なものは無いから、自分の力で。
でも、そうした記憶の消去は、必ず心に穴を作ってしまい、そこに何かの拍子でまた蘇ってしまうものなのかもしれない。
忘れたままの方が幸せだったとしても。
それならば、その心の穴を新しい記憶で出来る限り、埋め尽くしてしまい、そんな記憶が戻らないようにすることも可能なのかな。
悪い記憶と向き合って戦うのではなく、新しいより幸せな記憶で覆いつくせるように、日々を生きるのも一つの戦いの方法のように感じる。それがその人の正義であり、自分のため、自分が守るべき大切な人のために生きるということなのだと思う。
桜が夢之助との出会い、共に過ごした時間の中で、母を失う寂しさから生まれた穴を埋めようとしていたように。柳とかも、妻を失った悲しみを、帝国を守るという信念に置き換えて埋めようとしていたのかもしれない。
記憶は、どのようなものであっても、生きている間に、消してしまえるものでは無いように思う。自分が肉体の死を迎えても、まだ、長い時間、繋がりながら存在し続けるのだろうから。
だから、そんな記憶を恐れて消すことを考えるのではなく、生きる支えとして捉えた方が幸せなのかと思う。
忘れる努力をするくらいなら、生きる中で自分の中にどんどんと入り込んでくる新しい記憶を得られるように頑張る。それがいつしか、忘れてしまうということに繋がるように感じる。

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