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2016年2月12日 (金)

しょうてん魂【MousePiece-ree】160211

2016年02月11日 インディペンデントシアター1st (90分)

感想は、詐欺とか反則とかずるいとかかな。
あれだけ笑かしておきながら、最後にあんなに泣かすなんて。そして、また小気味のいいオチまでつけて。
おっさんたち、いつもどおり全力の面白さで素敵だし、女優さん、めちゃくちゃ綺麗だし。
う~ん、やっぱりずるいよ。
こんなに人の喜怒哀楽を好きなだけ揺すぶるなんて・・・

<以下、ネタバレしますので、ご注意願います。この後、大阪、東京と2/21まで公演が続きます。戻すのを忘れるから白字にしていませんので、重々ご注意願います>

すっからかんの部屋に男二人。
この仕事を始めて1年だが、一応先輩の御手洗と、今日が初めての仕事となる新人だけどおじいちゃんのかめじろうさん、ではなくミシェル。
二人はこの部屋に住む男を待っている。
脱サラで手品師を目指していて、最近、奥さんと別れて、借金まみれの福田という男を。
夕陽が出る頃がタイムリミット。それまでに、男と会って話をして、自分たちの仕事をしなくてはいけない。
御手洗は焦る気持ちをポコパンで落ち着け、ミシェルは唯一、部屋にあったみかんを勝手に食べて、ゴミを撒き散らす。
待っている間、特技が無いと入社できないらしく、御手洗は、そのスマホで十分事足りるくだらん能力を披露したり、この仕事、やはり電話対応が大事なのでその練習を新人のミシェルに指導したする。棚の中にあった手品道具、トランプとロープ。ミシェルはロープをふんどしのように縛り、かつて、というか、つい最近まで目指していた相撲への夢を語る。調子に乗って漫才まで。

そんな馬鹿げた悪ふざけを、本当の現実時間で約30分。これがお笑いのライブなら、これで帰らされても、特に文句は無いぐらいまでのクオリティーの高さ。
もちろん、そんなわけもなく、福田が帰って来る。コンビからトリオになったといったところか。
福田は借金は必ず返します、許して下さいと土下座。
男たちは答える。私たちは借金取りではありません。天使なのです。
借金取りじゃなく、そしてこのふざけ過ぎの男たちの返答。福田は逆上して、男たちに襲い掛かる。幸い、ミシェルが相手を意のままに動かす能力があるようで福田を落ち着かせる。
天使。正確には成仏請負人。福田は今日の夕刻に死ぬ。その前に、この世の未練を無くしてもらわないといけないらしい。
自分が死ぬ。ふざけるなと福田は外へ飛び出す。
自動車にでも轢かれたら、予定が狂う。御手洗は焦って、すぐにミシェルに捕まえに行かせる。車の衝突音。
数分後、ミシェルが福田に抱きかかえられて戻って来る。鍛えていた体が幸いしたか、じいいちゃんなのに命に別条は無いようだ。
落ち着いた福田は考える。
未練。手品師になれなかったことだろうか。
福田は手品のネタを披露。素人以下のレベル。これは未練とかいう問題では無さそうだ。
別れた奥さん。男を作って逃げた。でも、それは妻への思いやりが足りず、勝手ばかりしていた男も悪い。その上、こんなに借金を抱えて。別れもするだろうと男たちは諌めるが、福田は怒り心頭。
会って文句を言いたい。それで成仏できると。

3人がゴチャゴチャとまたふざけ始めているところに、今度は女がやって来る。ごく普通の女性。
と思ったら、3人の悪ふざけの輪に普通に入り込んでくる。45分。トリオからカルテットへの移行の時間らしい。
女は奥さんの妹。
浄化水に浸したみかん、浄化水が出来るマグカップ、悪い気を追い出す強烈な浄化マッサージ、高額のセミナーへの申し込み。
一緒に、ハッピーライフを送れるように頑張りましょう。
福田の借金の理由が明確になった。
それでも、福田はそれでいいと言う。
自分にこんなに親しくしてくれる。その気持ちが嬉しい。
完全にヤバい状況ではあるが、今、孤独の寂しさを癒してくれる唯一の存在なのだろう。
女はセミナーの申込用紙を車に取りに部屋を出る。

男たちは、福田の奥さんに電話をする。
もう時間が無い。早く未練を断ち切ってもらわないと。
でも、あれだけ練習した電話対応なのに、ミシェルのグダグダっぷり。電話は切られた。
女が戻って来る。
福田は、もし今日、自分が死んだらどうすると女に問いかけて、抱きしめる。
拒絶。そういう関係ではない。ただ、落ち込んでいたから、助けたかっただけ。自分がかつて救われた浄化水によって。
福田の唯一、寄りかかれる存在が消えた。
福田は奥の部屋に一人こもり、女は出て行った。また、明日と言って。

時間が無い。
ミシェルのもう一つの能力。それは変身できること。
御手洗はミシェルに奥さんの写メを見せて、変身させることに。
福田が奥の部屋から出て来る。
ふんぎりがついた。この部屋で死ぬのは辛いから、外で死ぬと部屋を出ようとする。
そこに現れた美しい女性。奥さんだ。
これまで役に立たなかったミシェルの見事な仕事っぷり。
ではない。その後、空気を読まずにひどい恰好をしたミシェルが部屋に入ってくる。
部屋は修羅場を迎える。御手洗と女装したミシェルは部屋の隅でじっとしている。
奥さんは残っていた荷物を取り、部屋を出ようとする。もう電話は金輪際しないで欲しい。そして、お金の入った封筒を渡す。借金返済の足しにしてと。
福田は封筒を投げ返す。言葉は互いに無い。
奥さんは部屋を出て行く。福田は奥さんを呼び止める。
振り絞ったかすれた声でありがとうと一言。奥さんは寂しげな表情を浮かべ、部屋を去る。

分かっていた。自分の勝手な振る舞いで、奥さんの気持ちがどんどん離れていっていることを。でも、どうしようもなかった。
どうして、あの時、素直に奥さんに言葉をかけられなかったのか。
戻りたい。出会ったあの頃に。
そんな悔いの言葉を吐き出す福田に御手洗は声を掛ける。
甘えるな。それが人生だろう。失敗しても、それでも必死に生きていく。
でも、最後にきちんと言葉で伝えた。それでいいじゃないか。立派な生き方だったじゃないか。
御手洗は福田にかっちかっちの固いカードを渡す。それに悔いを浄化した涙を染み込ませて、成仏の証明とするらしい。
普通、ハンカチとか柔らかい布だろうと文句を言う福田に、無視を決め込む御手洗。
福田は部屋を出て行く。やっぱり、外がいいらしい。
みかんはミシェルに全部あげる。
トランプ。最後に手品を。
もういいと断る男たちをよそに、福田はカードマジック。
失敗。御手洗が選んだカードを福田は当てられず。そのカードはトランプの束のどこかに埋もれてしまった。
部屋を去る福田。

何はともあれ、これで仕事終了。
結局、何もしなかったミシェルを責める御手洗。
ミシェルは自分の正体を明かそうとする。
私は、社長・・・
ミシェルがそう言おうとした時、御手洗は驚きの声をあげる。
そんなくだらない冗談など、どうでもいい。
さっきの涙を染み込ませたカードが無くなっている。その代わりに、あの自分が選んだトランプのカードが。
外では車の衝突音。
翌日、本当に何も無くなった部屋に、二人の喪服姿の女性が訪れ、この部屋で福田と過ごした時間を偲んで、涙を浮かべている・・・

甘えるだけで、ずっと言えなかったありがとう。
言えたその時は、もう最期の時。
だから、伝えただけ。
ありがとうを、もう一度出会って、噛みしめ合うことは出来なかった。
そんな二人の姿は悲しくもありますが、確かに人生なんてそんなものでしょう。
でも、どうであろうと想いは伝えたい。
出会って一緒に過ごした時間は本物だからね。
もう戻らない時でも、それがあるから今の自分がいる。それを否定せずに、大切な尊いものだと思えて、この人生にピリオドを打った福田と、これからを生きる奥さん。
生きていると悔いやらいっぱいあるけど、出会って一緒に過ごした時間にありがとうって言える気持ちってとても素敵だと思う。
御手洗とミシェル。全てを流して、あの世へと迎え入れる。そんなイメージなのでしょうかね。

カードマジックを巧く活かした小気味いいオチ。
何かぐちゃぐちゃだけど、最後に決めるところはビシっときまっている。
この作品もそんな手品みたいに、ワクワク、スマートさの無いコテコテの展開、こんなにふざけまくって大丈夫なんかいなと思いながらも、最後に、その技術に驚愕し、その魅力に唖然とさせられるようなところは同調しているかな。

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