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2016年2月27日 (土)

彷徨坊怪異譚 土蜘蛛の章【熊の宅急便企画】160226

2016年02月26日 スペース・イサン (90分)

本当に譚といった感じの作品で、地域伝承の一つの話を聞いたかのような感覚が残ります。
話し上手な語り部がいれば、その登場人物の面白さや、例えば戦いのシーンなどは、聞く者の頭の中でどんどん想像して膨らんで楽しめるものでしょう。それが、今回は、話の展開を見守りながら、そんな想像が目の前で勝手に熱い姿として映し出される訳ですから、実に気楽に楽しめるというものです。

命を与えられ、生まれ、生き、死ぬ。
その本来、限られた時間に永遠を求めるのか、人は妖怪や神を生み出して、自分たちの儚いが繋がる時間を見守らせる。
訪れない死、永遠に流れ続ける生の時間。
それに苦しむ者たちの姿から、生ということの尊さを見詰めようとしているみたいな感じの話かな。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

絵師、葛飾北斎は、絵の題材を求めて、旅に出る。
人里離れた山奥で日が暮れ、駆けこんだ寺で一泊。気の良さそうな住職に、飯や酒をご馳走に。
でも、その正体が物の怪であることを見破った北斎は、鐘を鳴らせばすぐに参上する鎌鼬3人組の力も借りてその物の怪を倒す。もっとも、絵だけではなく、剣の腕もたつ北斎にとってはこんな下っ端妖怪は大した敵ではなく、いつも3人でトリオ漫才でもしているかのような鎌鼬たちの力は全く不要なのだが。
物の怪を倒せば、寺も消えてしまった。夜もふけてはいるが、下山することに。
しかし、勘の鋭い北斎は、そこに何者かがいることに気付く。
なんかみすぼらしい服装の腰の低い男。怪しいので斬りつけようとしたら、鎌鼬たちに止められる。自分たちの大将なのだとか。
塵塚怪王、山本五郎座衛門。ゴミの集まりの付喪神。一応、魔王なのらしい。でも、何も出来ないし、役に立たない。
山本は北斎に妖怪退治を依頼してくる。上方、大和で天狗が襲われる事件が世を騒がしているらしい。
妖怪退治の経験豊富な三界無宿、彷徨坊と合流して、その事件を収めるべく、北斎は大和に向けて出発。

鎌鼬や山本と違って、北斎は人間。
山道は疲れる。何度も休憩をとって、なかなか進まない。
途中、山本と似たみすぼらしい男が現れる。この男は、文庫妖王、石川悪四郎。同じく魔王だ。山本とは同じ何も出来ないもの同士、仲が悪いらしく、すぐに弱々しい取っ組み合いの喧嘩を始める。
北斎はそれを諌めて、石川の屋敷でゆっくり休憩することに。
一方、彷徨坊は、この地の封じ神である、葛城山坐、一言主の下を今回の件で尋ねていた。
土蜘蛛かもしれない。かつて、災いとして封じ込めたはずの。封じ神は、もし、そうならば、土蜘蛛を倒すようにとしか言わない。
彷徨坊は、葛城鎮守、高天坊の下も訪れる。高天坊は天狗であり、かつて土蜘蛛を封じ込める力になってくれ、その場にもいた者だ。
その2人に3人組が襲いかかる。土蜘蛛たちだ。
そこに北斎が現れて加勢。これで3対3。3人組は逃げて行く。
彷徨坊は厄病神、高天坊は天狗だと名乗る。
彷徨坊は、様々な妖怪を退治してきている。龍なんかも見たことがあるらしい。いつか見せてやると約束。いい絵の題材に出会えそう。北斎は彷徨坊、高天坊と協力して、土蜘蛛退治へと乗り出す。

彷徨坊は封じ神に土蜘蛛に襲われたことを報告。
そして、何も知らない北斎にかつて本当にあった神話を語る。
災いの土蜘蛛を3つに分けて封印。神話では土籠りの民と呼ばれている者たち。
人間はその封印を守るために、天狗という神を作った。天津神と呼ばれている。
こうして、この地では、いつしか封じ神の下で、天狗が土蜘蛛たちが再び世に出ぬようにと、守っているのだとか。
今回の事件の発端は、その封印を壊した者がいるということだ。
そんな話をしている中、再び、土蜘蛛が。しかし、すぐに逃げ去って行った。
なぜ、この石川の屋敷が分かったのか。つけられていたわけでもあるまい。
もしかしたら、封じ神が。
皆は、封じ神を問い正すために、翌朝すぐに出発。

その途中で、再び、土蜘蛛が後ろから襲ってくる。
北斎、彷徨坊、天狗は手分けして、3人組と対決。
鎌鼬は大した役にも立たず、オロオロと。しかし、重要なことに気付く。
なぜ、土蜘蛛が後ろからやって来るのか。ここは封印の地。いわば、土蜘蛛の本拠地。待ち構えていればいいだけのはず。それに、封じ神は、ここに自分たちがやって来ることを知らないはず。それを知っている者は。天狗。鎌鼬たちは急いで北斎の下へ向かう。

遅かった。
天狗は戦いに紛れて、北斎を斬りつけていた。
もう、死神が迎えに来ている。
鎌鼬たちは必死にそれを止める。何も出来ない鎌鼬たちだが、3人の連携プレーというものがある。1人が鎖で縛り付け、1人が鎌で斬りつける。そして最後の1人がとどめを、ではなく治療してしまうというもの。心の傷じゃあなければ、大概治せる。その力を使って、北斎は復活。

天狗は彷徨坊にも襲いかかっていた。
そして、封じ神に土蜘蛛の魂を返せと迫る。天狗は、封印は解いたものの、それは抜け殻で、本当に土蜘蛛を復活させるには封じ神の管理する魂が必要らしい。
天狗は、土蜘蛛と共に、人間たちのこの世を支配しようと考えているみたいだ。
そこに復活した北斎が現れる。
山の麓へと逃げていく天狗と土蜘蛛たち。
人の世を壊させはしない。
皆は後を追い、鎌鼬たちの連係プレー、さらには、ここぞとなればけっこう頑張れる付喪神たちの力も借りて、北斎と彷徨坊は、天狗と土蜘蛛を打ち破る。

戦いを終えた後、彷徨坊は再び、封じ神の下を訪ねる。
天狗ごときで封印を破ることは出来ない。やはり、封じ神が関わっていることを確かめるため。
人に勝手にいつの間にやら神に祀り上げられて、この地の封印を守る役目を。ずっと、永遠に、この地に墓守りとして封じ込められたようなものではないかと。
天狗も同じ気持ちだったのだろう。
人への復讐。いや、そうではなかったのだろう。封じ神は魂を土蜘蛛に返すことは無かった。
彷徨坊は、封じ神を斬りつける。神であることから、解放するかのように。死神が迎えに来た。
外には真っ赤な紅葉の景色が拡がる。
その美しくも悲しい景色を彷徨坊は北斎に絵として残して欲しいと頼む。
今は書けない。でも、この景色を必ず絵にすると約束をする。

その後、北斎は絵師として雇われ、数々の絵を残した。
60年の時が経ち、北斎にも死が近づく。
彷徨坊が訪ねてくる。
最後の絵は、約束したもの。
あの頃を懐かしみながら、今、死を恐れている自分自身を語る。
そんな北斎に、彷徨坊は外の景色を見せる。
遠き山の頂に龍の姿が。あの時の約束か。
二人は、北斎にその死が迎えにくる最期の時まで、何も語らず、ただ肩を組み合ってその景色を眺める・・・
獅子が現れた。出番だ。彷徨坊は今日も、人の世に現る妖怪たちと戦う。

普通に、地域に伝わる伝説話みたいな感じで、面白いですね。
永遠の命を持ってしまう妖怪や神と、儚き時間を生きて全うする人間の姿から、死ぬことは悲し、でも生き続けることもまた悲しといった感情が芽生えます。
彷徨坊は、そんな生き続ける時間の中で、北斎のような人との僅かな時間と触れ合い、時には今回のように、その永遠の生から神や妖怪を解放するようなことを繰り返しているようです。
その生きる証の血が魂として込められたかのような真っ赤な紅葉。彼はその景色をどのような気持ちで眺めているのでしょうか。
そして、共に生きる時間を過ごした北斎にその景色を絵として刻み込ませる。
そこには、自分勝手な考えや欲に縛られる人間や、そんな人間が生み出した妖怪や神たち全てが、生を与えられ、死神がその命を連れていくその時まで、確かにこの世にあった証を守り続けようとする生への尊き思いを大切にしている彷徨坊の姿が浮き上がります。
人や妖怪や神の生死を見詰めながら、永遠の時を彷徨う。
そんな覚悟ある時間を生き続ける彷徨坊の姿は、勇ましくも悲しく映ります。

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コメント

SAISEI様

劇団ZTONによく出演されてる面々が数人。土肥さんは笑の内閣と同時平行だったのかな?

天堂さんは数年前にHPFでも観られてますね(笑)

あと2本でX day。やはり羊とドラコにされるのかな?(笑)

投稿: KAISEI | 2016年2月27日 (土) 22時04分

>KAISEIさん

土肥さんは、死神役で、喋らず飄々と人の魂を運んでいましたよ。

天堂さん、本当にw(゚o゚)w
失礼ながら、気付きませんでしたよ。
そうか、ZTONなんて立派なところに入って、こんなに活躍されてるのかあ。
凄いですなあ。


投稿: SAISEI | 2016年2月29日 (月) 22時24分

SAISEI様

12年7月25日『親の顔が見たい』ですね(笑)

投稿: | 2016年3月 1日 (火) 00時29分

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