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2016年2月13日 (土)

お家族【大名】160213

2016年02月13日 G/PIT (90分)

家族という組織体の中ではびこる閉鎖的な歪みをコミカルに描いているのかなと思いながら観ていたが、どうもしっくりこない。
社会の中で、自分の役割を見出せず彷徨う人たちが、家族を通じて、自分自身を見出すような話かとも思ったが、そうでもない。
結局、何なのかはよく分からないが、最後に、この奇妙な家族像の中にある、正しいのか間違っているのか、おかしいのかおかしくないのか分からないような様々は、全て、演劇という虚構の舞台世界の中ではきちんと成立してしまうということを面白く描き出そうとしている作品なのかなという結論に落ち着いた。
正論がはびこり、押し付けられたかのようなルールに縛られて生きないといけない今の社会と、創り上げられる演劇作品の世界の同調性を自虐、皮肉を効かして、描いているように思う。
同調していても、演劇の世界は楽しいし、面白い。でも、社会は厳しく辛い。この違いを見出すことで、今を楽しく生きるヒントが隠されているようなことを感じさせられる。

<許容範囲な気もするが、一応、何となくあらすじがネタバレっぽいので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

家族の食卓。
月水金のデザートはプリン。中学生の娘は既にポテチをほうばり、母親から叱られる。これもデザートだしと口答え。犬のポチは、餌抜きにされているらしく、ポテチやプリンを欲しがるが、娘から意地悪をされている。
父親は風呂。風呂上がりの缶ビールを母親は用意する。ひばりちゃん、枝豆を忘れたらダメだよと娘。そうそう、忘れたらえらいことになる。母はひばりちゃんと呼ばれているみたいだ。
どうやら、家族の間でのルールが色々とあって、父はそれに厳しいようだが、フレンドリーな家族の間柄みたい。
家族の団欒の時間。テレビでは恐ろしい事件が報道されている。ここから遠いところ。じゃあ関係無いね。いや、同じ日本、世界の出来事だから他人事では無いぞ。親の言うことはいつも、正しそうだけど的を得たようには思えない。
塾に行きたいと言う娘。他の子もみんな行っているから。それなら、行かないとと父親。まあ、しっかりした娘で良かった。それに比べてお兄ちゃんと言えば。就活もきちんとしないで、ギターばかり弾いて何を考えているのやら。何かポチが申し訳なさそうな顔をしている。
そんな中、チャイムが鳴る。20時半。もう21時なのに。
ポチに行かせようとするが、嫌がる。仕方ないので娘が応対。玄関先で歌って踊り出した。変な人がやって来たと親を呼ぶ。
聞けば、訪ねてきた男は、クリーンカンパニーという大会社の社員。立派な名刺を皆に丁寧に渡してご挨拶。新入社員で研修も兼ねて営業周りをしているらしい。歌や踊りも会社のテーマソングだ。
トイレを掃除させてください。無料でいいです。
父親は是非にと、綺麗だと逆に失礼だからとわざわざ大をしに行く。母親は無料ならと。
娘とポチは嫌悪感を示す。この時間にいきなりトイレを掃除って、絶対に頭おかしい。
でも、男はそんな否定的な言葉に対しても謙虚に受け止め、笑顔でただ掃除を頑張るつもりみたい。
トイレ掃除が始まった。本当に丁寧に懸命に、そして喜んでやっている。
あれっ、お兄ちゃん、バイトは。娘のその言葉にポチは立ち上がり、ヤバい、急がないとと焦る。
男は呆然としている。気にしないでという父の言葉を遮り、いや気になりますと。

男はおじいさんと話をしている。いや、ただ話を聞かされている。
もう何回目だろう。自分がこの家を建てて、今は息子が家主。これから孫へと伝わっていく。その起点が自分なのだと誇らしげにでかい声で語られるこの話。どうやら、お茶を飲むとリセットされるようなことには気付くがどうしようも無い。
ひばりちゃんがやって来て、助けてもらう。おじいさんはひばりちゃんの身体ををいやらしい目で見ている。自分は違う。あれから、毎日トイレだけでなく、この家の掃除をしているが、ひばりちゃん目当てでは決して無い。今、22歳。ひばりちゃんは母親の歳だから。
おじいさんはボケているのだろうか。ご飯はと聞いてくるが食べさせない。昨日、食べたでしょ。どうやら隔日でしかご飯を食べさせてもらっていない様子。代わりに薬を飲んでいる。でも、あれはヨーグレットだ。
お兄ちゃんがトイレに駆け込む。二日酔いでゲロ。ライブでだいぶ飲んだのだろう。おじいちゃんは情けない孫に嘆いている。
男は今日もトイレを掃除する。

娘は先生を連れて来る。家庭訪問。担任であると同時に、娘が所属する演劇部の顧問でもある。爽やかで印象のいい先生だ。
すぐに帰りますと言う先生に、学校での様子も聞きたいからと引き止める母。成績のことも心配だ。塾に行かせるつもりであることを先生に伝える。先生は少し表情を歪める。
そんな中、父が激昂してやって来る。母を先生のいる前でビンタ。決められたメールをしなかった。たったそれだけの理由だが、この家では厳罰に値するらしく、母は父に首根っこを掴まれて連れて行かれた。
残された娘と先生。拗ねている先生。塾に行くんだ。そんな先生に甘える娘。二人はそういう関係だ。男と女。演出家と女優。
トイレ掃除をしていて、大きな物音がしたので、様子を一部始終見ていた男は、先生を非難する。あの子は中学生だ。特に悪びれる様子もなく、先生は正しいか間違いかと言われたら、間違いだと。でも、その正しさは何基準なのかというようなことを言っている。少なくともこの家族では、間違いでは無い。彼女は私に初めて肌を見せたわけでは無いようだから。
それよりも、人の家のトイレを喜んで掃除する方が頭がおかしくないか。それに対して、男はおかしいかおかしくないかだとおかしいだろう。でも、ずっと人の嫌がるようなことを進んでする生き方をしたかった。それには、この掃除をするという仕事がピッタリだったのだとか。
その言葉に先生は感動する。自分もそんな熱い眼差し、気持ちを持ってこれから生徒と接したいと。
先生が言うと思いっきりいかがわしいのだが。彼が生徒と突き合せるのは膝ではなく、腰だから。
しばらくして、母、いや、ひばりちゃんはポチとなって戻って来た。

おじいさんの体調が優れない。
白衣を着た先生が往診に。原因は食べ過ぎ。2日連続食べたのが原因らしい。
お兄ちゃんが女性を連れて来る。
結婚をするつもり、妊娠3ヶ月でもある。
白衣を着た先生は、帰るタイミングをつかめず、話に巻き込まれている。
家族以外とする時は、あれをつけるというルールを破ったのか。いや、あれを付けていても、98%の避妊にしかならないと先生。それなら、100%だと言う父。相変わらず、オンオフ、全肯定と全否定の考えが強い。
責任もあるし、結婚をする。でも、大丈夫かと不安も。そんなことを口にするお兄ちゃんに、父は責任は50対50で関係ないと。一般的では無い言葉に驚いた表情を女性は見せるが、正論ではある。父は息子に自分がどうしたいという結論を迫る。結婚したい、でも不安もと曖昧に答えるお兄ちゃんを追い詰める。
女性はもういいと出て行こうとする。そこまで追い詰められて、お兄ちゃんはようやく口にする。結婚する、いや、したい、して下さいと。
舞台では結婚式が始まる。
男は神父の服を無理やり着せられる。

お兄ちゃんは就職しないといけない。ライブでは食べていけないから。ライブハウスの40人程度のファンよりも、一人の女性を選んだ、家族にすると決めたのだから仕方が無い。
でも、どうしても、その気になれない。
そのことを父に言うと、きつく責められる。全て、正論。正しい。分かっている。でも、それができないのだ。正しいことが出来ないのだ。努力が足りない。それも分かっている。でも、正しいことを言う人の努力ってどんなものだ。本当にしているのか。しないでも出来ただけじゃないのか。
お兄ちゃんの心の叫びは、父の暴力で封じ込められる。そして、その怒りは母にも向けられる。子供を育てる、教育する。これが母に与えられたこの家族での役割だから。
そんな中、女性が部屋に叫び声をあげて飛び込んでくる。おじいさんに犯されそうになったと。
何が悪いのか。だって家族なのだから。お兄ちゃんもそういうルールは言ったはずだと女性に対して困った顔をしている。私も手伝いましょう。父は女性をおじいさんと一緒に連れて行く。
この家族は狂っている。男は叫ぶ。
それに、あなたは誰なんだ。白衣を着た先生に問いかける。あなたは家庭訪問に来た先生だ。先生は白衣を脱ぐ。白衣を着たから医者として見る。おかしいけど、それがこの舞台で課せられた役割となる。お芝居ってそんなもの。よく見れば、男も神父の服を着ている。無理やり着せられたのだが、これを着ているから、さっきこの舞台は結婚式場となりお兄ちゃんと女性は結ばれた。
娘は四つん這いになってニャーと鳴く。父に殴られ呆然としているひばりちゃんを起こして椅子に座らせ、その足元でじゃれつく。猫に見える。それが正しい見方だ。こんな風に、娘はこの舞台で家族の中の娘を演じている。
娘は風呂を沸かす。さすがに女性が入りたいだろうからと。

ここはおかしい。
男はひばりちゃんを連れ出す。ひばりちゃんも抗うことなく、付いてきた。
でも、ひばりちゃんはまた家に戻ってしまった。再び、家族という鎖につながれる。
少しだけ奇跡を信じた。ひばりちゃんは、ひばりちゃんとして、男が愛してくれるのではと。でも、それは違った。私はこの家族の中で与えられた母としての役として生きていくしかないことが分かったから。そうしないと、誰からも愛されることが無いのだと。
男はこの件を家族たちに会社に密告された。
もう、ここでトイレ掃除をする日々は送れない。自分は何がしたかったのか。この家族の中に役を求めていたのかもしれない。
男の名前は小西。ここではなぜか西と呼ばれいたが否定はしなかった。でも、もう男はこの家族という舞台で、西という役を下りることとなる・・・

最初は、外の普通の世では通用しないおかしなルールに縛られた、閉鎖的な歪んだ家族の姿をコミカルに描くのかなと思いきや、すぐにこれは家族じゃないことが分かってしまう。
家族ごっこ。社会の中で、自分の役割を見出せないような人たちが、家族という分かりやすい組織体で、その役割を与えられ、こうあるべき、こうするべきという決められたルールに従うことで、その不安や孤独を解消していく、一種の心理療法のようなものかと。
ひばりちゃんの娘、おじいさんの孫みたいに、自分が社会と関わり、周囲と相関性を持つ人間なんだと認識できるような形を与えられている。
ただ、この考えも、近親相姦や暴力支配といった異常描写が多々、露出するようになり、この家族の破壊の方向へと間違いなく話は展開しており、おかしいなと思う。
どうやって、この作品を観たらいいのか悩みながら、展開を見守る。
ずっと、心に残っていたのが、チラシに書かれていた、この作品は喜劇だという言葉。まさか嘘はつくまい。でも、喜劇なのに、こんなに露骨に嫌なもの見せたら、ケラケラなんてよう笑えないし、ブラックさに苦笑いして楽しむ域だって、もう超えているくらいにドロドロし始める。
何をもって喜劇だなんて謳ったのか。
結局、最後までよくは分からなかったのだが、この家族を演劇舞台上に存在する登場人物なのだとして見せるようなメタ的な演出が入り込んできており、演劇って、けっこう普通に考えたら正しくないこと、おかしいことを、当たり前にするような世界ですよと言った、自虐、皮肉を効かしたブラックな不条理喜劇なのかなとも。

決められた筋、キャラ設定もはっきりとしている脚本の中で存在する登場人物かのような家族たち。演出家の決めた、そう演じることが全ては正しい。世の普通は関係ない。この家族は、父の正論、ルールで縛られた家族じゃない。舞台自体をそんな演劇の法則で縛って創り上げられている虚構の舞台世界なのだ。現に舞台の四方には鎖がぶら下がっている。
医者じゃなくても白衣を着ていればそれは医者。人間であっても、四つん這いになってニャーと鳴いて猫っぽい仕草を見せれば、それは猫だ。正しいか間違いかで言えば、それは間違いだし、おかしいかおかしくないかでも、それは本来ならばおかしいことだ。
でも、実際に冒頭のシーンで普通の男がワンワンと犬らしく振舞うことで、犬としてその男を認識して観ていたし、同じ役者が演じる先生と医者も、白衣一つできちんと違う登場人物として区別した。見透かされたように、そんなことを思い起こさせる。
そして、どうなるかどうか分からないみたいな曖昧では話が進まないから、どうしても結論を決めて、進む展開の方向性をはっきりさせてしまう。父が全肯定か全否定かみたいな言動をしたり、息子に結婚に対してYesかNoかで突き付けるのも、現実世界のように曖昧に悩んでグダグダしていたら、舞台上での時間は本当に止まってしまうからではないか。彼は正論を言っているのではなく、演劇での正論に忠実に言動しているだけのように見えて来る。

そんな不可思議な世界に入り込んだのがトイレ掃除の男だろうか。
役の中に入り込んだ現実の人。
言うならば、客のメタファーなのではないか。
この人のするトイレ掃除は、恐らくはこの家族のためではない。この家のためでもない。自分自身のため。つまりは自己満足なだけだと思う。
観たいから観に行く客の考えに近いように感じる。
それでも、この家族を見て、おかしい、狂っているとその中に入り込もうとする。
別に家族にトイレ掃除をしてくれとなんて頼みもされていない。と言って、家族の一員になるつもりもない。
でも、トイレ掃除をすれば、その間は、この家族と共に過ごせる。そこに、自分自身がこの世界で存在する意味合い、役みたいなものが与えられる。
最後、芝居が終われば、この世界はいったん消滅。トイレ掃除の男は、この世界から解放される。まだいたいと思っても、それは許されない。
舞台が永遠に続き、その入り込んだ世界での登場人物たちといつまでも共に過ごすことなど、それこそ奇跡でも起こらないと無理な話だ。
でも、この家族の人たちは、また舞台に戻る。縛られているのかもしれない。そんな演劇、舞台という鎖に。
何となくそんな風に考えると、演劇世界の成り立ちの奇妙さに笑えるかなと思うが。

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