« 水底平家【劇団コケオドシ】160218 | トップページ | OPEX【匿名劇壇】160220 »

2016年2月20日 (土)

星空発電所【彗星マジック】160219

2016年02月19日 インディペンデントシアター1st (80分)

びっくりするくらいに素敵な物語。
感動しました。
輝く星たちの本質を見詰め、今、生きることが、過去から繋がり、未来へと繋がっていく途方もない時間の中でどういう意味合いがあるのかを感じるような話。
美しい、綺麗とかだけじゃない。そこにある何に心を惹かれるのか。その本質を見出そうとした時、そこには人の想いがたくさん溢れている。
姿や生き様みたいな外観だけでは分からない、純粋な想いがそこには隠されている。
それをはるか光年先、前から届く星の光から感じてみなさいと語っている。
また、役者さん方が星のように輝いて、素晴らしく素敵な空気を創り上げられます。
何から何まで美しく素敵だ。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

夜空の星を望遠鏡で覗く女性。
その弟である少年は、履歴書を手にして、銀河鉄道に乗って、星空発電所に向かう。
夏休みの間、そこでバイトをするために。
いつか、宇宙戦艦に乗って、この宇宙を冒険するつもり。そのためにお金を貯めている。
たどり着いた星空発電所。自分の住む星とは違って、ここはとっても寒くて冷たい。暑いのも熱苦しいのも苦手だからちょうどいいかも。
ところが、面接に来たと言っているのに、うるさく騒ぎ、グイグイくる人たちでいっぱい。
この星の冷たさに負けないサブいネタを平然と披露する元気いっぱいの女性。
マイク片手にド派手なドレスに身を包み豪快な貫禄を魅せる女性に、その女性を薔薇だと誉めたたえるちょっと痛い感じの不思議な女性。
どう考えてもまっとうな生き方をしていないと思われるいかがわしい空気を漂わせる男。
艶やかな着物を纏い、妖しげな色気を振りまく女性。
みんなからワーワー言われてすっかり萎縮しているところに、怖そうなお姉さんがやって来て、皆を一喝。ここの工場長らしい。
バカなところが気に入ったと言われたのは少し気にかかるが、無事に面接は合格。
仕事は工場長とどうやら芸人らしい、さっき、ネタを披露していた女性と、3人でするらしい。
他の人たちは、思い出なんだとか。よく分からないが、工場長は、仕事の説明を続ける。
宇宙は膨張している。だから、星を供給しないと、その密度は小さくなり、暗闇に包まれてしまう。
もし、星が無かったら。流れ星を見て自殺を思い止まったり、方角を知って彷徨って死ななくてすんだり。とにかく、星に人は救われることがあるということだ。
だから、ここで星を作る。原材料は手紙。その手紙に込められた熱を計測して、分類し、作る星の等級を決める。その手紙を燃やして出来るのは水晶の中で燃える輝きを持つ純粋結晶と呼ばれるもの。それが空に放たれ、星になる。
少年は帰宅して、明日から星空発電所で働くことを姉に報告。
姉が毎日、見ている夜空の星を自分が作る。良かったわねと抱き締めてくれる姉。何か、心に熱いものがこみあげてくる。

毎日、たくさんの手紙が届けられる。
今日はどこどこ銀河に、何等星を何万個、放ちます。指示書の内容を工場長に報告して、承認をもらう。
それは先輩の芸人の仕事。工場長に報告する時、芸人はいつも工場長にネタを披露する。
初めて自分のネタを笑ってくれて、いつかこの星空発電所から、本当のスターを出すと言ってくれる工場長。芸人は工場長が喜んで、笑顔を見せてくれるために頑張る。大好きな工場長。その情熱はキラキラと輝き熱く燃え上がっているかのよう。
ネタを見てもクールにいいですねとしか言わない工場長。それでも、芸人はその一言で狂喜乱舞して張り切っている。本当に面白いですか、本当にスターになると思っているのですか。芸人には内緒で工場長に聞いてみたら、工場長は真顔でそんなわけないでしょと言っていた。
少年の任された仕事は、思い出たちの管理。空が闇に包まれ、その光は遠く向こうから、ゆっくりとここに届く。
ド派手なドレスの女性は歌手。痛そうな女性は付人らしい。二人は双子のように仲がいい。毎日、たくさんのファンレターから厳選された一通を付人は歌手に届ける。歌手はそのファンレターを見なくとも分かると言って、勝手に燃やして星にしてしまう。届かなかった想いは流れ星となる。勝手に星を作るなといつも芸人に叱られるが知らんぷり。付人は歌手に今日のハードスケジュールを告げる。そして、レコードをみんなに売りつけようとしてくる。
いかがわしい男は旅人。冒険家だ。本当か嘘か、旅人は自分のこれまでの数々の冒険談を熱く語る。降りかかる数々の苦難を乗り越え、子熊の親探しに付き合ったりもしたのだとか。その姿は、一人芝居そのもの。旅人は少年を鍛えると言って、一緒にその冬山登山の冒険談に付き合わされたりするが、そんなに嫌じゃない。夢を追うって素敵だし、かっこいいもの。
着物姿の女性は、会いたい人がいるから、天の川を無くせと騒ぎ立てる。織姫だ。でも、そう呼ばれるのは嫌みたい。一人の男に恋するただの女性。織姫は、これ以上、星を放つなと、工場を壊そうとライフルを撃ちまくって脅してくる。工場長は手刀で織姫を気絶させ、牢屋に閉じ込めてしまう。少年は面倒を見る役を任される。少年は胃が痛くなる。いや、もっと上の方。心が締め付けられる。

歌手はファンレターを自分で書いている。たった1年だけの歌手活動。小さく載った記事には小さいけど本物のダイヤモンドを手にした自分がいる。そして、唯一リリースしたレコードが1枚。鏡を手にして歌手は自分を見詰める。薔薇のように美しいと言う付人。でも、それは嘘だと歌手は怒り出す。ファンレターだって、スケジュールだって。本当のスターにはなれなかった歌手の叶わぬ想いが、今、歌手から放たれる光となっている。
嘘ではない。付人は初めて歌手のステージを見て、その姿、歌に魅惑され。ずっと憧れ続けてきた。歌手が、またあの時のように舞台で輝く日を夢見ている。でも、その想いは歌手には届いていない。だって、歌手が大事に想っているのは、自分ではないから。彼女もまた、いつまでも消えない歌手への熱い想いで光を放つ。
旅人が語る冒険談は全て、共に旅をした者たちのもの。自分よりももっと活躍して、スターのような一流冒険家の。いわば、自分は脇役人生。自分だけの、自分が主役の人生をいつも探しに出かけていた。掴み取れなかった、自分自身の人生。それでも、旅人は永遠にそれを求めて旅を続ける。その執念の想いは旅人を輝かせる。
織姫は閉じ込められてから、少年が来るのを待つようになる。食事をもらって、少しの間だけ外に出してもらって一緒に遊ぶのを楽しみにしているから。少年はそんな織姫に想いを募らせる。いつも、言われる。星を作らないで。天の川を無くしてと。出来ない。仕事だから。いや、きっとそうではない。出来ないと言ってしまうその答えを少年は知っている。ある日、その答えを織姫がつぶやく。彦星に会いたいと。織姫もまた、そんな届かぬ想いを募らせて、その身を輝かせている。
くじら流星群の日。数々の届かぬ想いが流れ星となって消えていく。流れ星に皆は、叶わぬ自分の想いを祈る。
少年は帰宅する。姉が待ってくれている。揺れ動いて、苦しい少年の心を姉はいつだって温かく包み込んでくれる。気がつくと、何やら変な匂いがする。想いが焼ける匂いらしい。

一等星の発注が入った。
少年がバイトをして初めてのこと。工場長はいい仕事が出来ると笑みを浮かべている。
一等星になるくらいの熱を持つ手紙ってどんなのだろう。少年の疑問に工場長は答える。
手紙じゃない。人を焼くんだと。溢れんばかりの熱き情熱で満たされた人。
そこには、芸人がいた。
工場長は笑っている。その笑顔のために芸人はスターになるのだと頑張り続けてきた。
芸人は燃えて、ひときわ輝く純粋結晶となった。
狂っている。あの思い出たちもきっと。ここに牢屋がある理由も分かった気がする。
少年は手紙を燃やす。燃やし尽くして、夜空の星を全部無くしてしまう。この工場をぶっ壊す。
闇に包まれる夜空。でも、何も変わらない。
帰宅する。
夏休みはもうお終いだし、ちょうどクビになったからと姉に伝える。
星を全部、夜空から落としてしまった。工場を壊してしまったと。
姉は微笑んで、いい思い出が出来たねと喜び、いつか私に会いに来てと伝える。
届いたはるか何千年も先の姉の光。
少年は、一つ一つに想いだけを残した星たちの下へと歩み出す・・・

旅人は自由の中で彷徨い、自分で自身を認めたいと悩み苦しむ人の弱さ。
織姫は束縛の中で、自分の存在を愛する人に知らしめたいという叶わぬ願いへの人の執着。
歌手は過去にしがみつき、今を欺く人の逃げ、付人は認められたい承認欲求に支配されてしまっている哀しき人の性。
芸人も自分の夢と承認欲求が交錯して、目的が不明確なまま、努力が報われなくともひたすら頑張り続けるループにはまってしまった痛々しい人。
その姿は人の弱さや汚さ、どうしようもない運命が見え隠れする。同時に愛されたい、褒められたい、認められたいといった、孤独を恐れる人の本質があるようにも見える。
みんな届かぬ想いを抱いている。姿やその生き方がどうであれ、その想いは純粋だ。永遠の水晶の中に閉じ込めておけば、消えることなく輝き続ける。星の正体は、そんな悲しい輝きなのか。
工場長は、悲しいからこそ、神秘的なまでに美しいのか、そんな輝きの美しさにとりつかれて狂気に支配されてしまったかのようだ。情熱を失った人が、その情熱を他人の中に求めるような歪んだ姿にも感じる。
そして、少年の姉は、その輝きを遠くからただ見守ることしか出来ない。

楽しいだけじゃない、厳しい現実。
美しい光の中にある、悲しみ。
物質としての薔薇の美しさやダイヤモンドの輝きを語ることは簡単だ。
その美しさ、輝きの中に何が込められているのか。どうして、私たちはそれに心惹かれるのか。
その答えが星の輝きを見ることで知ることができると語られているように感じる。
遠い過去に確かにあった人の想い、今、自分が生きる現在に感じる人の想い、これからの未来に放たれなければいけない人の想いが光となって届けられる。
人に触れたい、寄り添いたい、笑顔でありたい、笑顔を見たいなんて気持ちが湧き上がる。
星を求めることは、人を求めることに繋がっているように感じる。
今、この星にいる自分。過去の生の証に想いを馳せ、今、生きていることの大切さを知り、未来へ繋がれる人の生に希望を抱く。
はるか光年先にある過去にも未来にも、今、生きて積み重ねる自分の想いを届ける。
少年は、この夏、そんな人が生きるということの本当を知って、大人へと成長した。
そんな物語だったように思う。

|

« 水底平家【劇団コケオドシ】160218 | トップページ | OPEX【匿名劇壇】160220 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/549536/63235865

この記事へのトラックバック一覧です: 星空発電所【彗星マジック】160219:

« 水底平家【劇団コケオドシ】160218 | トップページ | OPEX【匿名劇壇】160220 »