« SQUARE AREA【劇団壱劇屋】160210 | トップページ | 錆色の瞳、黄金の海【劇団ショウダウン】160211 »

2016年2月11日 (木)

これっぽっちの。【南船北馬】160210

2016年02月10日 ウィングフィールド (75分)

二組のカップル。
どこかくすぶった、この男女の会話から、夢を諦め、捨てて生きてきた今を描き出しているような作品。
結婚・出産のようなイベント、男女・生まれ・天性・老いといった変えることの出来ないこと、学歴・努力・選択のような生き方に関すること。そして、今の時代や社会。
夢を叶えるなんかなかなか出来ず、夢を諦め捨てて、失いながら生きる人たち。その中で残ったちっぽけなものを必死に大事にして幸せへと導こうとする姿が描かれているようでした。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

マンションの一室。
夫婦が住む。40歳の妻と、3つ下の夫。まだ、一人には出来ないくらいの幼い娘がいる。
夫の帰りは遅い。よくて、終電の一つ前。
真っ暗な部屋。起こさないように入る風呂にも慣れた。
この日はたまたま妻も起きていた。
部屋の外を見ながら、お正月の歌を歌っている。
電車に乗り遅れそうで大変だった。終電には乗れたの。違う、終電だったらこの時間に帰れないだろうが。
娘はどうしているのか。今、ここにいるから分かるはずないでしょ。
近所迷惑になるから歌は辞めた方がいいのではないか。窓からじっと見られたら向こうのマンションの人も気味悪い。そんなことを気にする人はいない。ましてやこんな夜中に。
朝と同じ服。今日も出かけてないんじゃないのか。買い物は。冷蔵庫にまだあるから。娘も外に出してないのか。風邪気味だったから。
互いに、自分のことが何も分かっていないと責め合うような会話が続く。
夫が言う。明日、お前の自転車を貸して欲しいと。帰り道、自転車同士の事故で壊れてしまったらしい。
私の自転車は、とっくに捨てたでしょ。
そうだったかと夫は諦めて風呂に入る。バスタオル、シャンプー、着替えが無いから用意しろと次々に妻に言う夫。
そんなものは何も無い。私が全て整理してしまった。

マンションの一室。
冴えない38歳の男。
女が帰ってくる。大学の友達と飲んだ帰り。酔っているのかテンションが高く、言葉に毒が入る。
もらった名刺を男に見せて、大企業で立派にやっている人たちのことを男に語る。
そんな人を好きになれば、今とは違う自分がいたのかな。でも、私はダメ男が好きだから。ほとんど引きこもり状態のフリーターの男。
28歳の女。同世代の女性はそろそろ結婚の話が持ち上がる。あんな子まで。それに同じゼミの大したことなかった童貞男までが結婚、もうすぐ子供まで出来るのだとか。
どこか間接的に相手を責めると同時に自虐に繋がるような会話が続く。
やがて、男は今日、自転車事故を起こしたことを女に語る。
明日、示談交渉。不当な賠償金を要求されたら困るから一緒に付いてきてくれと。
情けなく女を頼ってくる男にうんざりしながら、仕方なく了承。男はほっとして風呂へと向かう。
女は思う。本当は一緒に出掛けて、一緒に会話をもっとしたいのに。

示談交渉は夫婦の部屋で行われた。
特に揉めることなく、決着がついて、男と女は帰っていったようだ。
ティーカップについた女の紅い口紅。
夫は化粧もせず、引きこもる妻をまた厭味ったらしい口調で責める。
少しはあの女のように外に派手に出かけて楽しむなんてことをしたらいい。どうせ、そんな友達もいないのだろうが。
そして、いつも娘のことを出しにする。
母親に自分がなれていないことを夫は責めている。違うと言っても潜在的にそうなのだろう。私が母に捨てられた子供だから。
妻は急に出かけると言い出す。娘の面倒を夫に任せて。
夫は躊躇する。娘のことも家のことも何も知らないから。
でも、妻は出かけて行った。
男は一人部屋で今の自分を見詰める。
宇宙飛行士になりたかった。勉強もしていい大学に入った。でも、諦めた。宇宙飛行士のための勉強など、一般の世間では役にも立たず。今は営業の仕事を黙々とこなす。

妻は女の部屋を訪ねる。
住所が向かいのマンションだったから。いつも、窓の外から見ているマンションだ。
世間話。相手を褒めながらも、どこか自分が優位に立とうとしているような、冷たい戦いのような会話。
事故が起こった時刻を妻は女に問う。女は現場にいたわけじゃないので、知らない。
たぶん、21時頃。そんなに遅い時間じゃなかったと男から聞いている。このマンションの近くで。
詳しいことを知りたいなら、男はどうせブラブラしているから呼び出すと言う女を妻はさえぎる。
もう一つ聞きたい事。
あなたが母と似ている。自分を捨てた母と。
母の名前、出身地、兄弟のことなど、ついつい身辺調査のように。
聞きたいことが聞け、言いたいことが言えた妻は部屋を後にする。

男がバイトをまた無断欠勤。
女はそのことを厳しく責め出す。
いい歳して、引きこもって、仕事もせずで、どうするつもりなのかと。
自分だってバイトじゃないか。男は諦めの表情で口答え。
これを機に就職するか。
そんな根拠もないことを口にする男だが、女はその言葉に反応。あなたなら大丈夫、出来ると今度は持ち上げ始める。
分かっている。いつまでもこうじゃない。きっと変われるから。
男は幼き頃、プロ野球選手になって、そこそこで引退。コーチを務め、生涯、ユニフォームを着て、仕事を全うする自分の人生設計を思い出しながら、うつろな目をして思う。

夫婦。
ある日、妻は夫を問い詰める。
見てしまった。あなたが一人で居酒屋で飲んでいるところを。
家に帰りたくなかった。だから、仕事を言い訳に、夜遅くまで時間を潰していた。あの自転車事故の日も。
19時以降、外出しない妻。夫が帰ってこない。娘を一人にも出来ない。引きこもっているのではない。閉じ込められていたのだと思っている。
男と女。
女は友人の二次会へと外出するところ。
本当は行くつもりは無かった。そんなことより、男と一緒に出掛けたい。
女は封筒を手にしている。
二次会の案内状。差出人は元カレ。その中には自分にだけ指輪が入っていた。かなり立派な。
それを返すつもり。返さないでいいのと女は男に問う。

妻と女。
妻のおかしな発言から、知る必要も無いことを知ってしまった。
母の名前は同じ。歳は違った。でも、歳を誤魔化していたら。もしかしたら、姉妹になるのかもしれない。
妻は、老いた母の姿を見たかったらしい。自分、そして、娘へと繋がる遺伝子。
夫と男。
夢を持っていた。でも、それを諦めて、違う道を歩んだ。
何を失い、何を手に入れたのか。

相手の心に寄り添うことをしなかった。分かろうとしなかった。
過去の夢を諦めて、今の道を進んできたけど、その夢を抱いていた頃の自分に逃げていた。
甘えていたのか。
夫は妻に、男は女に一緒に出掛けようと言う。
でも、それは本当に出掛けたいの。
妻と女の冷静な言葉が響く・・・

途中、妄想のように、スーパーマンとなった男とエプロン姿の妻が、ラブラブにいちゃつくシーンや、タンクトップのタキシード姿の夫と真っ赤なドレスに身を包んだ甘えた感じの女がいいムードになるシーンなども入り込みます。
恐らく、これが皆の理想の姿なのかな。
冴えない男は、もっと活躍して皆から注目される男となるはずだったのでしょう。妻もこんな冷めた夫婦生活ではなく、自分を熱烈に愛する夫に尽くす可愛らしい奥様になる予定だった。
仕事でストレスを抱える夫は、もっとエリートできめた上流階級の男として生きられると思っていた。年上ダメ男の保護者のような女は、そんな出来る男にただ甘えて生きるレディーのような日々を過ごしてみたかった。
幼き頃に抱く夢を、大人になる、老いる過程で、どんどん手放していかないといけない。
大人になったら、手に入れることは出来ないのか。失うだけなのか。
そんな中で残ったものが今。
それを寂しいと思って哀愁漂わせて生きるのか、だからこそ、それを愛おしく大切にして生きていかないといけないのか。
ラストは、後者を感じさせますが、でも、それが正しい選択なのかを厳しく問うようなところも感じます。極端に言うと、それは残しておかないといけないものなのか。これまでのように、諦めて捨ててしまってもいいものかもしれない。そして、捨ててはいけなかったものが、これまでにあったかもしれませんよといった、少し毒を感じます。

この4人の相関性はどう捉えたらいいのかな。
夫婦、同棲する男と女という普通に二組のカップル。
かつて夢を持っていて、今、くすぶる夫と男。姉妹の可能性もある、母の血に囚われる妻と女。
相手よりも年上だけど、それがためかよりしっかりすることを求められて責められる側のような妻と男、年下の立場に若干の優位を得て相手と接するような夫と女。
要は二つの男女カップルの話、男と女を描いた話、若さや老いを描いた話。
4人の考えられる組み合わせ全てにおいて何か共通するものが成立するようなところが、この話を複雑にすると同時に様々な捉え方が出来るようになっていると考えます。

夢を諦める原因。
一人ではなく、愛する誰かと暮らす。まあ、結婚とかによる人生の出来事で、捨てなくてはいけないこともあるでしょう。
男と女という性的な問題も、平等とかいう言葉とは関係なく、存在するでしょう。生まれや血というか天性みたいなものだってあり、努力で必ずしも解決できるものではありません。
若さや老いはもちろん。作品の中でも出てきますが、老いて自衛隊にはなれないし、もう戻ってやり直すことが出来ないことは多々出てきます。
こんなことが全部、劇中の4人に詰められているのかなと思います。

あと、どうしてもぬぐえないのが、終始、感じる嫌な空気。
何か、この4人、うまくいくようにずっと思えないのです。これはラストではっきりとしました。
男がひどく頼りなく、女を分かろうとしていない、もっとしっかりしなよといった苛立ち。女がとても冷たくきつく、もう少し男の甘えも分かってあげなよ、かわいそうじゃんといった漠然とした女への非難。
男と女、もしくは女と男が、互いに国家と国民のメタファーになっているようにも映ります。
これはきっと将来は不安しか感じられず、夢なんか持てないといった今の閉塞した社会が浮き上がっているからなのではないでしょうか。
労働で追い詰められ、人を想う余裕すら失われる。派遣やバイトで日々を暮らすしかない人たち。かたや、立派な高いマンションに住むような人たちとの格差社会。
親子や夫婦でも疎遠になってしまうような寂しい人間関係。
生まれや学歴、年齢でチャンスが限定されてしまう自由の無い社会。
こんな社会や時代。
かつて持った夢なんか、諦めて捨てて生きていくしかないじゃないか。そして、手に入れるものだってそうは無い。
だから、ほんのちっぽけなことに寄りかかって、そこに幸せを必死に見出そうとしているんだ。いつか花開く日を夢見て、強く。
作品名と机の上にずっとあるサボテン、きっとサボテンの花の歌詞から、そんなことを思わせる話でした。

|

« SQUARE AREA【劇団壱劇屋】160210 | トップページ | 錆色の瞳、黄金の海【劇団ショウダウン】160211 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

SAISEI 様

お疲れ?

2月10日ですよ~♪

投稿: KAISEI | 2016年2月11日 (木) 08時23分

>KAISEIさん

テンキーの無いキーボードにしてから、どうもミス目立ちますね。
仕事でもやらかしてないかな(゚ー゚;
ありがとうございます。

投稿: SAISEI | 2016年2月11日 (木) 10時18分

SAISEI様

南船北馬も観劇を始めた頃から気になっている劇団で今回行こうと思ったんですが会場でやめました。。

今日はアカルスタジオ→壱劇屋→笑の内閣全て約90分前後の公演だったので観やすかったです。

『愛のメソッド』は劇中劇の「奇跡の人」のヘレンを演じた高安さんが素晴らしい演技。

『Square area』は確かに壱劇屋の中では最高作品なのかもしれませんね。

『朝まで生ゴヅラ』は相変わらず高間さんの配役がピタッとハマってました。

投稿: KAISEI | 2016年2月11日 (木) 22時38分

SAISEI様

激団しろっとそん行かれた段階で残り15本ですね。2月末~3月初めにかけて大物劇団の公演がない感じですかね?

私は

(火)火曜日のゲキジョウ
(木)劇団コケオドシ
(土)六風館→自由劇場→演劇集団Q#
(日)彗星マジック→青年団→青年団

の予定。

#は確定ではない。

投稿: KAISEI | 2016年2月15日 (月) 22時05分

SAISEI様

自由劇場ちゃいますね。はちの巣座でした。

六風館は完売とのこと。さてどうしたものか?

投稿: KAISEI | 2016年2月16日 (火) 07時34分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/549536/63192223

この記事へのトラックバック一覧です: これっぽっちの。【南船北馬】160210:

« SQUARE AREA【劇団壱劇屋】160210 | トップページ | 錆色の瞳、黄金の海【劇団ショウダウン】160211 »