きみが大好きだった、とおいいえ【Sputnik.】160228
2016年02月28日 MOVE FACTORY (60分)
家族という枠の中に閉じ込められた人たちの狂気みたいな感じでしょうか。
家族だから、こうじゃないといけない、絆が無ければいけないといったことを強制されるかのように生きる人たちが、それが実現できない時に、勝手に魔王なんてものを仕立てて、平衡を保つみたいな歪んだ感覚が残ります。
たくさんの謎が残されて、結局、何なのかが分からないところが、またモヤモヤし、不気味な気持ち悪さを残します。
かつて、傷害致死で捕まり、更生プログラムを受けて釈放された男。
家族が欲しい。家族だったら殺さないと思うから。失いたくないと思うはずだから。
その言葉に、彼の更生を担当した男は、自らが家族になることを提案する。
ジャンケンで役割を決める。
釈放される男は負けて母親に。担当官は父親に。
父親の連れ子である長女、あかね。養子に、まだ幼い妹のゆなを迎える。
家族の食卓は、いつもこの家族と、隣に住んでいて親の仕事の関係でご飯を食べに来ていたねぎくんがちゃぶ台を丸く囲む。
ゆなは、そのちゃぶ台を囲んで皆でマイムマイムを踊るのが大好きだった。
ねぎくんは、よく怪我をしていた。魔王にやられたのだとか。
ゆなはいつかねぎくんと一緒に、ロボットに乗って、その魔王をやっつける約束をしていた。
ある日、ねぎくんの両親が殺される。その現場にはロボットのプラモデルがあったらしい。
犯人は分からず、ねぎくんはどこかに引き取られていった。
その後、まことという男の子がやって来た。
あかねとゆなの間。
皆でマイムマイムを踊る家族。
17年経った今でも警察は、あの時の犯人を追っている。容疑者として、前科のある母親も疑われている。
ねぎくんは、そのことを母に伝えに久しぶりにやって来る。
母は、あの時の犯人は自分だと自白。でも、逃げ通すから大丈夫だと。
母は、ねぎくんに久しぶりに晩御飯を食べていきなさいと買い物に出かける。
あかねとゆなは、まだ、この家にいる。
まことは今は、別に部屋を借りて、暮らしている。今日は、久しぶりに家に帰って来る予定だ。
父が帰って来る。会社を辞めて、その退職金でクルーザーを買い、明後日に皆で世界一周旅行に出かけるとか言い出す。
母はさほど驚かず。
ゆなはその前にあって欲しい人がいると彼氏を連れて来る。
彼氏は、いきなり父にゆなと結婚したいと挨拶。父は激怒し、出て行けと。母はそんな父をなだめている。
あかねは家を飛び出す。だって、その彼氏は自分の元カレだから、居場所が無い。
向かった先は、まことの部屋。
まことは彼女と別れるところ。
彼女はまことが自分と新しい家族を作るために、まことをあの家族から決別させようとしていた。そのために、母の前科歴などを探偵を雇って調べた。それにまことは怒り、別れることになったようだ。もう、あの家に戻ってはいけない。彼女の言うことを聞かないまことに対して、彼女は家族を壊すしかないと考える。警察に、17年前の事件の犯人は母だとたれこんだようだ。
まことは、その彼女の反対を押し切り、あかねを連れて家に戻る。あかねはこの部屋に一緒に住みたいと言うが、まことにその気は無い。昔ならそんな気もあった。血は繋がっていないのだから。でも、その時、魔王が現れた。ひどい目にあったことは、今でもトラウマだ。
残された彼女にねぎくんは会う。あの家族の下に向かうという彼女を諌めて、自分が代わりに行くことにする。
まことがあかねを連れて戻る。あかねは心配していた母にすぐに奥に連れて行かれる。
まことは父に彼女が警察に母のことをたれこんだことを伝える。
最近、近所で多発している殺人事件の犯人にされてしまうかもしれない。早く違うと警察に連絡しろと言うが、父は全く動じない。もしかしたら、あれは母が犯人かもしれないみたいなことまで言ってくる。
あかねが腕に包帯を巻いて戻って来る。
魔王にやられたと。悪いことをしたら、魔王に罰を受けるのは当然だと。
ゆなの彼氏が、やって来る。警察に勤めている彼氏は、母のことも知っている。この家族は狂っているとゆなを連れ出す。母は止めない。あかねは自分は不要なのかとまた、逃げ出そうとする。
母がそんなゆなに声をかける。すぐにそうして逃げ出し、自分を傷つけるのはいいかげんに止めなさいと。
ねぎくんが警察が動き出したことを伝えに来る。
車も準備している。すぐに出発をするべきだと。
父、母、あかねは荷物をまとめる。残ってもいいと言われるまことは、家に戻って荷物をまとめてくるつもりらしい。
明朝、皆は船出する。
ねぎくんはゆなの彼氏の下を訪れ、17年前の殺人事件の犯人は自分達であることを告げる。魔王を2人で倒した。2人は家族。ゆなは自分が守るつもりだと。
しばらくして、母はゆなに電話する。幸せにやっているらしい。自分たちも海外の海を駆け巡っていることを伝えている・・・
ゴチャゴチャになってしまったので、不明確ですがだいたい上記のような筋が出来上がる話だと思います。
相変わらず、ミスリーディングが多用され、それに面白いくらいにはまってしまって観ているので、最後の最後まで観てようやく少し分かったといった感じ。
それでも、よく分かりませんね。
魔王一つにしても、それは己自身にあるものなのか、母の狂気なのかは、結局、ぼかされてしまっている感じです。
この家族の蚊帳の外にある、ゆなの彼氏や、まことの彼女のその後は、何も描かれていないですし。
モヤモヤの中に、不気味さだけが残るような話です。
劇中の食器とかは、レゴみたいなブロックを組み立てたもので表現されています。ねぎくんの両親を倒したのも、その組み立てられたプラモデルです。
そのイメージなのか、家族はその一つ一つのブロックを組み立てて、出来上がるものだというような考えが浮かびます。
その組み立て方次第でどのようにでもなる。例えば、ピースの一つである誰かが出て行ったりしたら、そこにぽっかりと空白があるものが出来上がる。
でも、自分たちで組み立てているので、またその穴を補充するべく、組み立て直せる。
この家族は、最初から完成しているものからスタートしているような感じです。
プラモデルならば、完成品を渡されて、それで楽しみなさいといったような。
そんなもの楽しくないですよね。試行錯誤して、時には失敗しながら、創り上げることが楽しいのですから。
でも、その努力を避けて、鼻から出来上がったもので何とかしないといけない。
そうすると、その完成品は、ロボットなら何かをやっつけるか、壊すしか遊びようがないのではないかと感じます。
そんな感じで、創り上げることから目を背け、家族という虚像だけを求めた者たちの悲劇を描いているような気がします。
それも、誰の意見も聞かずに。マイムマイムは皆で輪になって楽しい踊りなのかもしれませんが、この作品を観ると、その輪は誰も入らせないための防御壁のようにも見えてきます。
家族の絆を作るのは、ブロックをはめて繋ぎ合わせるほど簡単ではない。そこに嫌な想いや、極端に言えば憎しみや妬みなどの負の感情が入り込むこともあるのかもしれない。でも、例え、そんなものがあっても、大切な者を守りたいという想いが、それを覆って、繋がりを生み出す。
最初に繋がりありきで、それに囚われていては、そこに潜む負の感情に人は支配されてしまい、狂気へと導かれるのではないかといった感覚が残る、気持ち悪い話でした。
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