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2016年2月26日 (金)

くるり、くゆりら【あえか】160225

2016年02月25日 近畿大学D館3階実習室 (40分)

別役実作品を彷彿させるような、不可思議なサラリーマンとホームレスの会話から、やがて、サラリーマンの回想が始まり、叙情的な、何とも淡く切ない風景が拡がっていく。
火は時間を遡って、過去に戻れるらしい。そんな火に導かれ、あの頃を思い起こす。
いいことだけではない。辛い、もどかしい思い出たちもいっぱい。
そんなことを全て経験しながら、時の流れに乗って、今の自分がいる。その今の自分の姿がどうであろうと、それが自分だ。そして、これからもその流れに乗って、未来へと進む。
そのためのちょっとした一歩に願いを込めた話のように感じる。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は本日、金曜日まで>

夕暮れ時。
工事現場の柵に、ベンチ。
柵の網には、おみくじがくくりつけられている。
サラリーマン風の男は、ベンチに座り、カバンからおにぎりを取り出し、それをジッと見詰めている。その表情は暗い。
いつの間にか、汚い風情の男が近づいてきていた。赤いランドセルを背負ったホームレス。
汚いと思ったんじゃないか。人間は鏡。あなただって、汚いことになりますよと、よく分からないことを言ってくる。そして、おにぎりを食べないのかと聞いてくる。
食べないんじゃない、食べられないんだ。あげる気も無い。怪しいホームレスを男は拒絶する。
そんな中、空から急におみくじのような紙が降ってきた。その紙には斉藤と書かれている。
縁切り神社。男は急に慌てて、ホームレスにその神社の場所を聞く。
男は、昔、この町に住んでいて、よく行っていた神社。久しぶりに来たので、すっかり変わってどこか分からないみたいだ。
ホームレスはおにぎりを要求。あざとい奴だ。まあ、いいだろう。もう縁切りしたのだから。
ホームレスは答える。それは、ここ。ふざけているのかと思いきや、火事でもう無くなったらしい。
ホームレスは、おにぎりをほうばる。それは、男の過去だ。
火事。昔、不思議な少女に出会ったことがある。火は過去に戻れるのだとか。
妻と一緒に行った金閣寺も火事で燃えてしまった。そう、火と一緒に過去も消し去れてしまえたら。
男はホームレスに、これまでのことを語り出す。

中学生の時。
斉藤さんのことが大好きだった。この想いを伝えるべく、初めてラブレターを書いた。
そんな時、縁切り神社で斉藤さんらしき少女に出会った。
少女は、マッチに火をつけては、それを見詰め、フッと息を吹きかけて消す作業を繰り返している。斉藤さんと声をかけても無視するので、男は息を吹きかけ、火を消した。少女は、大事な神聖な作業なのに何をするのかとずいぶんとご立腹。しかも、斉藤さんじゃないらしい。よく見ると赤いランドセルをしているので、自分より年下か。それにしても似ている。
少女は、火は時間を戻れるのだと言う。重力があるから時間の流れがある。火は燃え上がるから、重力に逆らって、それに縛られない。だから、火だけは時間を遡って、過去に戻れるのだとか。
少女にラブレターが見つかる。PTAの案内状を参考にしたためか、冒頭からずいぶんとかしこまって書かれている。これでは絶対に無理だとダメ出しされるが、男は必ず斉藤さんの気を惹かせると反論。

少女の言う通りだった。いや、それ以下だったというのが正確か。
斉藤さんを目の前にして、しどろもどろになり、好きな人はいるのかなど、回りくどい言い方をして、完全に引かれる。ようやく、勇気を出して好きだと言ったが、考えとくとだけ言われて斉藤さんは去って行った。ラブレターは、未だ、自分のポケットに入ったまま。
少女に再び、神社で出会い、相談。
返事がこないことにも苛立つが、相談した友達に告白したことを皆に言われたことにも腹が立つ。
今では、返事を求めて、斉藤さんを色々と誘ったり、家に行ったりしたから、ストーカー呼ばわりされている。
少女は、その友達のことは責めるが、男の行動にも再びダメ出し。脈なしだと思わないと。
でも、それなら返事をくれてもという男に、そういうものだと。嬉しくなかった訳がない。どうしていいのか分からなかったんじゃないかと。
男は、ラブレターをくくりつけ、縁切りをする。他の人はどうしているのだろうか。くくりつけられた紙を見ようとすると、少女に止められる。汚くなるよ。自分も相手も。人間は鏡だから。
気付くと少女はいなかった。それ以来、少女とは会っていない。

少女はどうして、いなくなってしまったのだろう。
その問いにホームレスは、恥ずかしくなったんじゃないのかと答える。
それにしても、その告白の仕方はまずかった。女は共感を印象付けることが大事なのだから。
以前にも言われたことがあったのだろうか。
男は、妻とのことを思い出す。
テレビを見ていた。女性への共感の仕方を何やら特集している。大事なことだと男はしっかり観ていたら、妻、その時はまだ彼女だが、バカにされた。そんなことを信じているのかと。
その時、プロポーズした。一緒の苗字になろうって。幼い頃から大事なことを告白するタイミングや言い方が下手なのは変わらない。
彼女はびっくりやらあきれるやらの表情を浮かべながらも、笑顔でOKの返事をくれた。

金閣寺にも行ったし、他にも色々なところに行って、たくさんの思い出を作った。
それがどうしてこんなことになったのやら。
今日の朝が、妻との最後の食卓だった。
最後に一緒に食事をしたいと妻が言ったから。
男は5000万円の借金の保証人になってしまった。上司の願いで断りづらかったから。そのことを、なぜ信じて、印鑑を押したのかを責め続ける妻。そんな理由では納得できないらしい。
でも、妻だって、男と浮気をした。さみしかったから。その理由だって納得できるものではない。
もういい。ケンカなんかしたくない。
でも、それは相手を責めないから、自分も責めるなといっただけのことかもしれない。
外では雪が舞い落ちる。
金閣寺に一緒に行った時もそんな美しい雪の金閣寺の風景を見た。
これからどうするのという妻の問いに男は、金閣寺に行ってみると答える。
食事は喉を通らなかった。妻はそれをおにぎりにしてくれた。
そして、机の上にある書類はよろしくと。

その金閣寺に行って、今、ここにいる。
男は気付く。
ホームレスが赤いランドセルを背負っていることを。
ずいぶんと汚くなった。男の言葉に、誰のせいなのかと答えるホームレス。
過去を消してしまえるなら。
ホームレスはマッチを男に渡す。その代わりに、男が手にしていた書類をもらう。
直に暗くなる。もう帰った方がいいと言いながら、ホームレスは消える。
すぐに、急に暗くなった。えっ、もう。男はマッチに火をつけて、それを見詰め、フッと息を吹きかけて・・・

姿がすっかり変わってしまった少女。
語弊があるが、汚いとか醜いとか。
でも、それは、そういう目で見るようになった自分がいるのかな。自分のこともそんな風に見るようになってしまっているのかも。
そんな人間が鏡だということを知る少女は、自分が醜い姿で見られるようになることに、恥ずかしさを感じて、あの日、去って行ったのだろうか。
斉藤さんも同じ感じか。
純粋だったからこそ、うまくまとまらない互いの恋心みたいな甘酸っぱさを感じさせる。

でも、思い出はそんなに甘酸っぱいとか微笑ましい綺麗なものばかりではない。
恥ずかしいこと、嫌だったこと、誤ったことの悔いや悲しみの中に、かけがえのない大切な人と触れ合った思い出が散りばめられているような感じ。
不思議と、そんな辛く厳しい過去のことの方が、自分と一緒に時間を流れてきて、今の自分の傍にいているかのよう。だから、何かあると、その隙間に露わになってくる。
よかった思い出は、そのまま過去に置き去りになってしまうみたいで、しっかり思い出さないと蘇ってこない。
火は、そんな辛い想いを燃やして、その裏に潜んでいるかつての大切な思い出をゆらりと浮き上がらせていくような感覚を得る。

過去を振り返った時に、そこにぼんやりと火や煙がゆらゆらと。
その時間を遡らせてくれる火に導かれて、儚き過去のわずかな時間に想いを馳せる。
寂しく辛くどうしようもない時、そんな振り返りが、また、明日からの一歩に繋がればいいなといった願いを感じる作品でした。

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