火曜日のゲキジョウ【月曜劇団×オパンポン創造社】160216
2016年02月16日 インディペンデントシアター1st (30分+30分、休憩10分)
喪失を受け止めての、自己解放みたいな感じが共通かな。
もう取り戻せない、失ってしまう時の人間。
人への恨みや妬み、自分への不信や不安が浮き上がる。
そんな負の感情が渦巻くけど、最後には人を思いやって、その愛に感謝する時間を得られるみたいな形で両作品とも、全く違う形態ですが描かれているような気がします。
・ハッピークレーマー : 月曜劇団
忘れ物を整理するために、元カレの部屋を訪ねる女。
そこには元カレの友達の男がいた。留守番を頼まれたみたいだ。よほど、会いたくないのだろう。
部屋にあったありとあらゆる私物を持ち帰ろうとする女。
男は伝言を聞く。
女は答える。お幸せに。いや、お前だけは幸せになるなという気持ちもある。
どちらも心の中にある。いや、分かった。負の感情の方が大きい。
女はその感情を膨らませ、部屋を燃やすと言い出す。部屋着だったらしい怪獣の着ぐるみに着火マンを近づけている。男に止められると、今度は墨汁、カレーをぶちまけると。
何とか妄想だけに留めてもらい、改めて伝言を。
ひとみって誰なの。
元カレの浮気相手みたい。
男の表情が歪む。自分が想いを寄せる女の子、ひとみ。
えっ、あいつと付き合っているの。
男は元カレに電話して確かめる。確かに会ってはいるらしい。
男は女に二人を引き離すように協力を求めるが、もう女の方は全く興味が無くなっている。
今度は男が負の感情を膨らます。
巨大化した男は、舞台から唾を吐き散らし、大阪のリア充たちのいる建物を破壊していく。
気付くと、怪獣の着ぐるみを着た女が着火マンとベンジンを手にして、男がそれを止めている。
気を落ち着けた女は部屋から出て行く。
もう忘れ物は無くなった。そう言って、男も部屋を去る・・・
恨みやら妬みやらの負の感情の膨らみ方がひどくて。
人は誰しも幸せを求める。その幸せは、人の役に立つことで得られる。
そんなことを提唱している女だが、役に立つのではなく、人の心に留まることを求めているかのよう。
それも、燃やして傷跡としてや、墨汁やカレーで残る色として。
そんな女も巨大化して、負の感情を露わにして暴れる男の姿を見て、それが自分の幸せにとって無意味であることに気付けたみたい。
そして、その女を見て、自分も冷静さを取り戻した男。
いつの間にやら、互いにクレームを言い合い、解決し合って、心が解放されたようだ。
異常な妄想だらけで、ぐちゃぐちゃだったが、妙にすっきりとしたようなラストを迎える。
基準点5点に、かなり飛んでいるが面白い話に+2点、ベテランの貫禄ある姿に、息の合った掛け合いに+2点。ただし、この日、受付さんが開始案内をしっかりしていない。開始しているのかしていないのかあやふやな状況で受付に行くのが私は非常に嫌い。それまでに声掛けすればいいだけの話だと思うのだが。不愉快なので両劇団とも-2点する。7点評価。
・最後の晩餐 : オパンポン創造社
地球最後の日。
スーツ姿の男は、愛する妻と最後の時を過ごそうと会いに行く。
そこには、鞭を片手に女王様の姿をした妻と、ペニスケースだけした全裸の男がいた。
女王様の唸る鞭に、奴隷のブタ野郎は恍惚の表情を浮かべる。
夫は妻からこうなるに至った経緯を聞くが、あまりのことなので、言葉がまともに頭に入ってこない。
要するに、これまでの清楚で従順な自分は偽りだったことに、この最後の日に気付いたということらしい。男は、こんな日に彼女に浮気されて、一緒に過ごす相手がおらず彷徨っているところ、奴隷募集をする妻に応募したというわけだ。
妻と男は痴漢プレイを始める。夫は男を殴り飛ばすが、妻からもっと自分を解放するように迫られる。私はそんなことできない。夫は妻から鞭で首を絞められ、きついお言葉を突き付けられる。そうだ、自分は私なんか言う気取った男じゃなかった。おら、本当の自分を出す。
妻と男と夫を交えた痴漢プレイ。寝取り寝取られの興奮。
あなた愛してる。おらもだ。
偽った自分を捨て去り、今、本当の自分たち同士で向き合う夫婦。
外から讃美歌が聞こえる。戦闘機の音も。近づく隕石を止めるべく、ミサイルを撃ち込もうと最後まで諦めない者もいるみたいだ。
自分たちは・・・
冷めたらダメだ。こんな状況で冷めたら、とんでもないことになる。
夫は必死に本当の自分を維持しようとする。
でも、一度冷えた温度が再び上がることは無く。
3人は妻の作ったカレーを、男の彼女が好きだった歌を聞きながら食べる。
爆音響く中で、ただ食べ続ける・・・
自分の解放ねえ。本当の自分。
最後に、無理してその自分でいようとしたのだから、きっとそれも本当の自分じゃないのだろう。
結局、カレーをおとなしく穏やかに食べている姿、最後の晩餐の時に本当の自分が出てくるのかな。
それは、この人と一緒にいたかったという想いの中にいる自分のよう。相手がどうなってしまっていようと、そこにいなかろうと、そんな本当の想いを抱いているその時の自分が本物なのかもしれない。
それは相手への愛であり、神に感謝を捧げる讃美歌を歌う者たちや何かを守ろうと戦闘機で向かう者たちと何ら変わりは無い。
最後の晩餐。人はきっと愛に包まれてその時を迎えることを示唆しているようだ。
基準点5点に、衝撃的な弾け方をする役者さん方3人に各+1点。異常なスタートから、妙にしんみりさせて温かくラストを迎える話の巧みさに+1点。後は上記したとおり、こちらも-2点の7点評価。
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コメント
SAISEI様
-2点は厳しいな~(笑)
私も気分よく観劇するということにおいてはSAISEIさんより厳しい目で見ていますが制作さんにどこまで責任があるのか?(笑)
今回の受付の方は両劇団とどういう関係だったんでしょうね?(笑)
私は2名とも感じ良かったし若い方は結構別嬪さんだなあ、と思ってました(笑)
まあ、普段は呼びに来てくらはるんですよね。1回たしか来た順で入れたはったこともあって面食らったことがあります。
投稿: KAISEI | 2016年2月17日 (水) 15時43分
>KAISEIさん
いや、甘いくらいですよ(`Д´)
と言うことも無いかな(゚▽゚*)
受付の方、何回か拝見しているし、指摘したこと以外は、非常に丁寧な笑顔対応で、いったい何が悪いのかと思われるくらいでしょう。
制作さんの責任とかではなく、公演に関わる方々全ての問題だと思うのです。
そのマイナスがどこにあろうと、最終的に観客の観る作品にかかってしまうのは仕方がないことだと考えます。
メーカーの造る製品だって、開発・製造・販売などどこかに問題があれば、その会社自体、製品のイメージが悪くなってしまうことは多々ありますから。
投稿: SAISEI | 2016年2月17日 (水) 16時49分
SAISEI様
確かに。。ごもっともです。。(笑)
投稿: KAISEI | 2016年2月17日 (水) 17時28分
SAISEI 様
満月動物園『ツキノオト』で惚れた上原さんの所属劇団月曜劇団初観劇。西川さんは初めて拝見するのかな。。2人の掛け合い良かったですね。脚本も2人の立場が途中から入れ替わったりして面白かった。
アチコチで拝見する野村さんのおぱんぽん(笑)野村さんの表情がおもしろい。池下さん、川添さんも素敵でした。
上原さん、野村さんとは今回も話せず。もうムリかもね(苦笑)
意外と客の入りが悪かったかな。。
3月から火曜日に仕事が入ったので火曜日のゲキジョウは基本的に今年度はこれが最後。これからはSAISEIさんのブログで楽しませていただきます。
来週はゲキバト初観劇。今年はいろいろ目先を変えた観劇を楽しみたいです(笑)
投稿: KAISEI | 2016年2月19日 (金) 23時59分
>KAISEIさん
そう、実力派劇団、揃い踏みの割には、チケット満席になっていなかったし。日が悪かったのかな。
火ゲキはちょうど、もうすぐいったん終わりだから、ちょうど良かったじゃないですか。
ステタイは観て欲しかったけどね。
投稿: SAISEI | 2016年2月21日 (日) 09時41分