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2016年2月 7日 (日)

無名稿 機械【無名劇団 大大阪舞台博覧会】160207

2016年02月07日 芸術創造館 (30分)

仕事の都合で、この1作品しか観ることが出来ないので、もう辞めておこうかとも思ったのですが、せっかくだしなあと足を運ぶ。
前回拝見した作品がなかなかの面白さだったので。
今年の6月に行われる同名作品の本公演の短縮版なのか、予告編なのか。
とにかく言えることは、その本公演にかなり興味を惹く公演でした。

周囲の人たちのことに囚われて、それに執着することで、自分が自分で無くなってしまったかのような彷徨える人。生きる実感が無くなったかのよう。
それはただ何かに動かされる機械のようにも映る。
私たちは人間。自分の意志を持ち、自分の自由で行動する。
それが孤独や寂しさを恐れる人の性ゆえになかなか出来ない。そして、そんな孤独の中にいる人に寄り添えるような社会じゃなくなっているから、そんなことがより増長されて、最悪、憎しみ、妬み、恨みのような負の感情を人は蓄積し、人を傷つけることへと発展してしまう。
自分の意志はどこにあるのか。
一つ一つを手作業で丁寧に作り上げる工房での人の仕事、機械が入り込み量産に対応できる工場での人の仕事。
自分の意志や想いは、人が機械になってしまわない限り、どこかにきちんと存在している。そんな人としての生き方を見詰め直してみるような作品のように感じます。

革靴工房でスーツ姿の女性が殺された。彼女は少し前から、大手の靴メーカーから、増産の救援として派遣されていた女性。
犯人は共に働いていた二人の職人なのか。
その二人は、共に思い当たるふしはあるものの、記憶が定かではない。しかし、自分たちの中には確実に彼女を殺す動機と意志が存在している・・・

ある女性が、路上の靴磨き屋にやって来る。
靴磨きをする青年は、靴を見れば、その人のことがだいたい想像できるようだ。
彼女の靴は、オーダーメイドで丁寧に作り上げられた品。女性が大切に扱っていることも分かる。
聞けば、彼からのプレゼントらしい。
立派な職人なのだろう。一つ一つの靴にその技術と想いを込めた、機械を使った大量生産では成しえないものだ。
そんな彼の経営する革靴工房に嫁ぐことになっている女性。不安も大きいようだが、こんな素敵な想いのこもった靴を作れる彼、そして、それを大切に受け止める女性はきっといい夫婦になれると青年は言う。
安堵を得て、気分の良くなった女性は、少し多目のお金を渡して、彼の家へ向かうために駅へと歩き出す。
青年は、もらったお金を人とぶつかり落してしまう。
その落したお金を拾い、逃げ出す女。追おうとしたが、駅の方へと駆けて逃げてしまった。

電車の中で女性と女は出会う。
女は無賃乗車。車掌に見つかりそうになるが、女性は機転を利かせて、彼女の乗車賃を支払う。
聞けば、女はまだ18才。家出してきたらしい。
父は船大工。一隻一隻を丁寧に作り上げる父を尊敬し、父の作った船が大好きだった。
でも、やがて造船所による機械化の波が押し寄せる。
生活苦。家計を守るため、父はその造船所で無機質な船を作るようになる。コンピューターで最適な設計がなされ、それに従って機械が作り出す船。
家と会社をただ往復するだけの日々を過ごす父。
父にも、そんな生活にも嫌気がさした女は家を出た。
でも、何かあてがあるわけでもなく。
女性は、女を彼の革靴工房に連れて行く。

革靴工房では、古くから働く女職人がいる。
口や態度は荒々しいが、オーダーメイドで一つ一つの靴を丁寧に作る、この仕事に誇りを持って、一生懸命に働いている。
革靴工房の社長、つまりは女性の彼。二人の結婚には微妙な抵抗もある様子。
女性が連れてきた女に対しても、あまりいい印象を抱いていないようだ。
変わることに、何かしらの不安を感じているのかもしれない。
女は、革靴工房を案内され、その匂いに気付く。
機械の油の匂いならば、父の工場でもさんざん嗅いでいる。ここはそれとは違う。そう、獣の匂いがする。ここの革靴は、原材料となる動物を殺して、その皮を剥ぐことから始まっている。

2年後。
女性は社長と結婚して、娘をもうける。
社長は娘を溺愛し、工房の仕事は職人たちに任せるようになる。
古くからの女職人と連れて来られた女に。
この変わりゆく世の中で、娘が成人する頃には、この工房はどうなっているのだろうか。
今のように、ずっとオーダーメイドの靴に需要はあるのだろうか。
女職人は、今の仕事の価値を信じて疑わない。女もそれは同じく。ある意味、獣を扱う野蛮な仕事。でも、それは機械には出来ない、人を本質的に幸せへと導く仕事とも思っている。

女職人は自分の過去を思い出す。
酒乱の父。DVを受ける母。その母から疎まれる自分。
自分の存在価値を、今の仕事に求めることで、その過去を否定してきたようだ。
そんな仕事への執着もあったのか、実力を着々とつけ、いつの日か社長に様々な技術を伝授されるまでに認められるようになった女に妬みの念を膨らませていく。
ひがみの言葉を女職人は女にぶつけ、女もその信頼を無くした疑いの心の醜さを罵るようになる。
やがて、それは殺意へと発展する。
女職人は女を殺めようとする。でも、女はそれに抵抗しようとはしない。自らの優位な立場への自信なのか。それとも、そのことで何かが変わることは無いことを知っているからなのか。

そんな工房の中に渦巻く負の感情とは別に、工房の業績はあがっていく。
オーダーメイドというおもてなしの心がうけたのか、様々なところから大量受注が入る。
工房にスーツ姿の女性がやって来る。
女職人が社長の許可を得て、大手靴メーカーから派遣してもらった。
業界では知らない者はいないという大会社。
女は、いつしか、自分の立場が脅かされる恐怖を心に抱くようになる。かつて、女職人が、社長に認められる女に感じたように。
スーツ姿の女性の力は社長に認められるようになる。
そして、この工房のノウハウをスーツ姿の女性は手に入れる。
彼女はそれを特許化して、経営の糧にするつもりだ。
ここでしか出来ない技術。それが世に広まってしまったら、この工房の価値は無くなる。女職人は、自分が連れて来たスーツ姿の女性をこのまま会社に帰してはいけないと考えるようになる。
3人の中の、妬みや不信の心は膨れるだけ膨れ、やがて、互いに傷つけあうようになる。

路上の靴磨き屋の青年の下には色々な人がやって来る。
立派な靴を履く美しい女性。でも、その靴には傷がたくさんあり、忙しい日々を過ごしているのか、大股で歩くことからのヒールの破損も見られる。
ストレスを感じる日々なのではないか。女性は答える。行きたくもない集まりに参加して、時間を消費する。それでも、誰かと繋がっておかないといけないと思うから。
尋常な汚れではないローファーを磨いてくれとやって来る女学生。誰かにやられたのは明確。いじめ。女学生は答える。順番がやって来ただけ。また、違う人にターゲットは移るかもしれない。自分が対象になった時と同じように。みんな、誰かを傷つけたいと思っているから。
青年は空に鳥を見る。あの鳥たちは飛んでいるのか、徐々に落ちていっているのか。同じ空を飛ぶ飛行機。
朝起きて、どこかへ向かい、仕事をして帰宅する、繰り返される毎日。
私たちは何なのか。人間。いや、感情を抑え込み、ただ単に生きていかないといけない機械・・・

まあ、これだけでも一つの作品として通用するような、しっかりとした話ですが、やはり登場人物の内に潜む心情はまだまだ見えてこないところが多々あるように思います。
本公演で、そのあたりがもっと感じられたら、この作品の意味合いや伝えたいことがもっと明確に見えてくるような気もします。
女職人や女は、過去の生い立ちからか、誰かに認められることに執着してしまっているような感じです。これはこの二人だけではなく、今の社会がそんな感じになっていることを、自分がしんどい思いをしてでも誰かとの繋がりを求める人たちや、誰かを傷つけることで、その連帯感で繋がりを見出そうとするいじめの原理のようなことからも浮き上がります。
孤独や寂しさを恐れて、自分が存在している意義をどこかに求めてしまうみたいな。

人と機械。その作業効率は格段と差が出るにしても、作業と仕事のような明確な違いはあるように感じます。
靴を作るのに、獣を殺す。そこに、良い靴を作る想いをこめた殺す仕事をする者と、単に機械で流れ作業的に殺すのでは違うでしょう。機械を使っても、そこに人の意志が込められているならばいいのでしょうが、多くの場合、それは忘れられていくのも現実でしょうか。
空を飛ぶ鳥。鳥は誰かのために飛ぶのではなく、恐らくは自分のために飛んでいるはずです。毎日、同じように飛んで、餌をとって、巣に戻る。
飛行機も同じように飛ぶ。決められた定刻に飛び立ち、どこかに着陸して格納庫へとしまわれる。でも、そこに意志はありません。あるのは、それを使う人の意志。
人も毎日、同じような繰り返しの時間を過ごしていても、そこに自らの意志が存在するならば、きっと生きている実感は得られるような気がします。
誰かのために、自分を孤独にしないように誰かに認めてもらうようにでは、自らを何者かのために機械として動かしているように感じてしまうのではないかな。
女職人や女も最初は、靴を作るという、それだけの自分の意志を持っていたのに、それが社長に認められる、相手に打ち勝つみたいな、一人を恐れてしまう人間の性ゆえに、自分が動くのではなく、何かに動かされてしまっているような感覚に陥ってしまったように思います。だから、殺したのかどうかは分かりませんが、その記憶も曖昧になっている。自分が自分として生きるような時間を過ごせなくなってしまったから。
機械ならそんなことはきっとなかった。機械はあくまで人が使うもの。自らを機械のようにしてしまった人たち、そうしないと生きづらくなってしまうくらいに歪みを見せる社会への警鐘なんかも感じます。

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コメント

SAISEI様

あいた(/´△`\)

無名劇団と西田さんがコラボしはったんですね。。

あちゃちゃ。。知らなんだ。。

大大阪は昨年2日フル行ったんですが今年は見送りました。今年は結構押したみたいですね。

私の先週から今週にかけては

(日)『愛のメソッド』Bキャスト
(火)『愛のメソッド』Cキャスト
(木)『愛のメソッド』選抜Aキャスト→壱劇屋→笑の内閣
(土)『愛のメソッド』選抜Bキャスト→Mouse Pieceーree→立命館大学4劇団共演企画
(日)激団しろっとそん→劇団ショウダウン

の予定です(笑)

投稿: KAISEI | 2016年2月10日 (水) 16時47分

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