正義のミカタ【劇団ゴサンケ】160205・160206
2016年02月05、06日 シアトリカル應典院 (正義の都合:105分、悪の理想:105分)
ヒーローとは、正義とは、その答えを見つけ出すことに悩む二人の若者。
一人は、純粋に正義の魂を熱く燃やしながら、どうであろうと純粋に悪へと立ち向かう。
もう一人は、悪が悪になった由縁に目を向けることで、悪を倒すだけの正義の在り方に疑問を持ち始める。
そんな二つの視点で話は描かれている。
そこから見える正義と悪。
その定義とは何ぞや。
そんな正義と悪の定義を考える中で、人が人の弱さをたくさん抱える中で、どうやって強く生きて、より良き生き方が出来るのかを考えさせられるような作品でした。
<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は本日、日曜日まで。でも、満席だったと言っていたような・・・>
先の大戦。正義vs悪。
正義のヒーロー、ムサシブレードとナイトブレードにより、悪の総統、キングカオスは倒された。
キングカオスは、必ずカオスの血を引き継ぐ者が世には現れるという言葉を残し、ムサシとナイトは姿を消し、伝説となる。
世界に平和が訪れ、人々は幸せに暮らすことができるようになった。
となるはずだった。
でも、現実は違った。長き戦いに残された傷跡。変わらぬ世の中への人々の不満や怒りは正義のヒーローへと向かうようになる。
ヒーローの立場を守るために、国家がヒーロー協会を設立し、遺伝的な適性を鑑みながら、適切な教育の下、ヒーローを育てあげるというシステムが確立する。人に迷惑をかける者など、世にはびこる悪をヒーローは倒す。国家に管理、監視される公務員として、厳格な指令系統に基づいて。
そんなヒーロー協会において、先の大戦を知り、キレる優秀さを醸すストーンローズ先生の厳しくも熱心な教育を受け、無事にヒーローと任命されたピーターとリディア。
リディアは、ヒーローとして殉職した父の意志を引き継ぐ優等生。世のヒーローの立場が変遷した歴史をしっかりと学びながら、自分なりの正義を見つけ出し、世に貢献しようと高い志を見せる。家族を守るため、大切な者を守るためにも、この世界を守らないといけない。真の平和のために、ヒーローとして責任と覚悟を持たなくてはいけないと常々言っていた父。結局、母の死に目にも会えず、自身も悪を倒すために死んでしまった。そんな父が正義に、ヒーローに何を見ていたのかを、自分自身の目で確かめるつもりだ。
と言っても、座学では優秀だが実践はまだまだ。町のチンピラ相手に、暴力は嫌だと鉄槌を喰らわせずに悔い改めるように説得しようとする甘さを見せる。そんな甘いリディアを強く責めはしないが、ヒーローとして戦う覚悟が必要なことは戦争の現場を経験した先輩たちから厳しく言われている。
ピーターは、とにかく熱き正義魂を燃やして、世の平和のために戦うと意気込んでいるが、実際は実力追いつかず、町のチンピラごときにボコられたりしている。
そこに悪がいれば、自分たちヒーローは命を顧みず叩き潰す。それは、もう昔のことで、今の世には通用しない。上司からの冷静な分析に従い、最善の戦略の下、あくまで国家業務の一環として悪を抑える。そして、その行動は一般市民たちの支持を受けるべきものでなくてはいけない。極端に言えば、自身の保全を前提に、そつなく決められた仕事をこなし、市民に媚びを売るぐらいの感覚を持ったヒーローでなくてはいけない。
ローズからしつこく教え込まれたにもかかわらず、未だにこの考えが身に付かず、かつてのヒーロー像を追い求める割には、実力も乏しいピーターに、教育係のスワロウテイルも苦労している。スワロウは五感を高める力を持ち、ヒーローとなった実力派。スラム出身で金を稼ぐために始めたヒーロー業。一人で生きていくという気持ちが強いのか、個人主義的なところがある。正義などという大義は持たず、生まれの悪い自分でも、自分の力を発揮して働ける仕事としてヒーローを選択しただけのよう。
ヒーロー協会の仲間たち。
傭兵あがりのホットフィストとサイドキック。戦争が終わり、居場所が無くなってのヒーロー業。アドレナリンを極度に分泌し、相手の動きを確実に捉える力を持つフィスト。驚異的な筋力を持つキック。自分を厳しく律するクソ真面目なフィストと単純でお調子者のキックと真逆の様相を見せる二人だが、共に厳しい戦場を経験しているからなのか、固い絆で結ばれた名コンビ。
抑えられない暴力への衝動。これを満たすために、ヒーローとなったイリーガル。命令違反、独断の行動でたびたび謹慎処分を喰らうが、その実力は誰もが認めるところであり、すぐに前線に復帰する。
といった感じで、およそヒーローとは思えない考えの者たちが集まる。
ピーターはそれに異を唱え、かつてのヒーロー像に執着し奮起している。リディアは、父が職務を全うしたこのヒーロー、正義とは何なのかの答えが全く見えず不安を覚えているみたいだ。
そんな中、混沌の解放軍を名乗る悪の組織が動き出す。
謎の男、カオスを総統とし、正義には無い、強い組織力で世の中を襲撃する。
カオスのためにと忠実で、常に冷静沈着な判断で、癖のある仲間たちを統率するタスク。
とにかくド派手に戦い、ありあまる自分の野獣の力を解放するビースト。
可愛らしいその姿、本名マーガレットという少女性に相反して、人を傷つけることに喜びを抱く危険なバッドヴォイス。
そのヴォイスの暴走を制御しながら、武骨な戦いでヴォイスを守り続けるギグ。
カオスの隣には研究者ドクトルがいる。
どうやら、こんな人間兵器ともいえるような凶悪な者たちの創始者らしい。
タスクたちは、ヒーローたちに襲い掛かり、戦いを優勢に進める。そして、カオスが登場。
絶大な力を持つカオスの一撃でヒーローたちが全滅しそうになった時、あの男が現れた。ムサシブレード。彼の剣は、襲い掛かるカオスの剣を受け止める。力は互角。カオスは一度、軍を引くことに。ただ、リディアはこの時、人質として捕らえられてしまった。
リディアは悪の組織へと連れて行かれる。
彼らはリディアを傷つけたりしない。むしろ優しく接してくれる。
そんな姿を見て、こんな人たちがなぜ、世を騒がせるのかに疑問を抱く。自分が悪だと思っている行動は、彼らにとっては信念ある行動でもあるようだ。父から言われた責任と覚悟。彼らの行動には、それが伴っている。
カオス。座学の知識もあり、リディアは彼がナイトブレードであることに気付く。
かつては自分の父のように正義のヒーローとして戦っていたはず。そして、あの伝説の戦いでムサシと共に悪を断ち切ったことも勉強している。
これまで身に付けてきた知識は全て一視点からのみ見たものだったのだろう。正義から見た悪は当然のように否定して描かれ、正義は肯定される。リディアは、今、悪の組織の中で、悪の視点から自分が学んできた正義を見詰め始める。
リディアはドクトルやビーストと話をする中、悪と呼ばれる者たちにも色々な事情があり、真の平和を求めるカオスのために真摯に自分の力を貸そうとしていることを知る。
ヒーロー協会の前身である研究所において、スティーブの命令に従い、ドクトルによって遺伝子組み換え技術によって生み出された人工ヒーロー。しかし、スティーブの目的はその遺伝子収集にあった。その生身の存在などどうでもいい。必要なのは遺伝子。彼らはその遺伝子の媒体としてしか考えられない。捨てられた者たち。ドクトルは自分が作った我が子を守るために、そんな人工ヒーローたちを連れ出して、今、カオスの下にいる。彼もまた、過去の自分のしたことへのけじめをつけるつもりだ。
カオスは、生み出された人工ヒーローたちに、この世に命を持って生まれてきた存在意義を与える。それが世界にとって悪であろうと、そのことで世界に真の平和が訪れるなら、悪は必要であるという考え。
先の大戦で確かに正義は勝った。でも、その結果、残されたものは世の平和では無く、悲しみ、憎しみだった。ナイトの家族はその戦いで皆、死んでしまった。リディアの父だってそうだ。単身でキングカオスの下へと乗り込んだムサシを助けに行けと、彼を置き去りにして、自分は救援に向かった。
正義が悪を倒せばいいのではない。倒さなければいけないのは、正義も悪も関係なく、人のエゴから生み出されてしまう、恐ろしい力だ。
その力を抑えるために、正義をも超越した絶大な巨悪を世に置けばいい。カオスは先の大戦で、大切な者を失い、そう考えるようになった。
戻って来たヒーローたち。
ピーターはすぐにリディアの救出に向かおうと息巻く。
しかし、スワロウは、まずは状況を再把握して、きちんと体制を整えなおしてからだと。また、いつもの今のヒーローの置かれた立場の理屈を言い出し、動こうとしない。
ピーターは、自分の思うヒーローを力説する。単純明快。仲間がさらわれた。それを目の前にして、何もしないなんてあり得ない。自らの身の危険、勝てるかどうか分からないなんて関係ない。そこに悪があるなら、それに立ち向かうのがヒーローだと。
実力の伴わない若造の生意気な言葉。でも、その真剣な想いは、皆の心を動かし始める。フィストは自分の中で抑え込んでいた正義への想いが溢れてきたようだ。そんなフィストを見て、キックはちゃかしながらも、その表情は真剣だ。スワロウは、いつもピーターに悩まされながらも、教育係をしながら、何かを逆に教えられているようなことを感じる理由が分かったかのよう。
でも、上司からの指令なしで動くわけにはいかない。
イリーガルが皆を煽る。上司の命令無しに動くのが怖いのか。そんなもの、俺はいつも考えずにやりたいことをやっている。くだらない奴らだ。
気付けば、ヒーローたちは動き出していた。俺たちは戦う。まずは、それを伝えに上司の下へ。
ムサシだけは、行動を共にしない。
この戦いは、自分がけじめをつけないといけないことだと、カオスと戦って分かったから。
先の大戦。勝利をおさめたものの、たくさんの傷跡を残した。悪を倒したら、世界が平和になるということは間違っていた。人々がその憎しみ、怒り、妬みをぶつける相手、悪が大きな力として世に存在しないといけない。そう言い残して去っていったナイト。いや、カオスと自分は戦わないといけない。
ヒーローたちの劣勢を、ヒーロー協会の会長であるスティーブに報告するローズ。スティーブは冷静を保つものの、内から滲み出る怒りは狂気となって表情に表れてしまっている。
ふがいないヒーローたちへの怒りもある。だが、それ以上に、恐れていたことが、明確になってしまったことを察したから。カオスは、ヒーローが先の大戦でキングカオスを倒すことで、自らが生み出した存在であることを。
血は繋がっていないが、子供としてスティーブに忠誠を誓うヴァンプとバンシーは、自分たちも戦いに乗り出すことを願い出る。スティーブに認められたい。ヴァンプとバンシーの戦いの大義はその一点のよう。
ヒーローたちが駆け付ける。
スティーブは戦いを認める。
ヒーローたち、スティーブの子供たちによる共闘軍が結成。カオスに再戦を挑む。
スワロウの五感を高める力でリディアの場所を突き止めて、潜入。
バンシーは思い出したくない過去を蘇らせる力がある。ヴォイスの脳内をその力で混乱させる。しかし、その力はギグに通用しないヴォイスを守る。その信念で生きるギグの力は、正義が人を守るという力と比べて決して劣らないから。
仲間たちの協力を得ながら、フィストはリディアの下へとたどり着く。そこに待ち構えていたビースト。
肉体派同士の戦いが始まる。
しばらくして、フィストはよろめく体で戻って来て、そこで力尽きる。
大切な仲間を失ってしまったヒーローたち。
ムサシは、数々の失態の責任を取り、協会を去ろうとするローズに、ヒーローたちと一緒にもう一度、カオスと戦う作戦を願い出る。
先の大戦を知るローズにだからこそ伝えられる話。
敵はカオスでは無い。私たちが滅ぼさないといけないのは、自分たち自身。
協会に疑いを抱いていたローズはムサシの言葉を信じ、ヒーローたちを再集結させる。
ムサシを含めて、再結成された共闘軍。
最後の戦いが始まる。
イリーガルは、ギグ、ヴォイスと対決。ヴォイスをかばってギグはイリーガルの銃弾に倒れる。自分のそばにいつもギグがいたことに気付くヴォイス。悲しむヴォイスに一人で強く生きろと言葉を残し、ギグは力尽きる。
一人でなんか生きられない。ずっとギグがいてくれたから。でも、ギグの言葉を裏切ることも出来ない。ヴォイスは力無き拳でスワロウを何度も殴りつける。スワロウは一切抵抗しない。
イリーガルは、ヴォイスに銃口を向けて狙撃。
これが戦うということ。スワロウは何が正義なのか悩む。守りたいものがあるのは、誰も同じじゃないか。誰かを想う気持ちだって、自分たちと何一つ変わらない。
戦いの中、ヴァンプの狂気的な正体が明らかになる。
彼は、バンシーを亡き者とし、その生き血を吸って、彼女の力を手に入れる。スティーブに認められる者は自分だけでいい。
キックは、フィストの敵であるビーストと対決。キックはその戦いに勝利をおさめる。そこにやって来たヴァンプ。
ヴァンプはキックに襲い掛かる。キックの動きが全て読まれる。その力はフィストのものだ。ヴァンプはキックに噛み付く。ヴァンプの体内に、凄まじい筋力がみなぎり始める。
ムサシとピーターは、リディアの下にたどり着く。
そこにはカオス、いやナイトがいた。
ムサシとナイトは剣を交わす。
リディアは、自分たちが悪と呼んでいた者から様々なことを知った。だから、二人の戦いを見て、正義が何なのかを見極めたいと言う。
ピーターは何も知らないので、その気持ちが理解できない。
悪は倒す。正義だから。それだけではないのか。ムサシに加勢することを止めようとするリディアにピーターは拳を向ける。
どちらが正義で悪なのか。何を守るために戦うのか。
ムサシとナイト。ピーターとリディア。
そこに、ヴァンプが現れる。
ヴァンプは、その得た絶大な力でムサシ、ナイトを倒し、生き血を吸う。
これで、スティーブに褒め称えられる。
スティーブがやって来て、ヴァンプに近づく。彼はヴァンプの首に注射器を刺し、血を採取。不要になったヴァンプを殺す。
その採取した血を自らに射ち込むスティーブ。
神の域に達したかのようなスティーブ。狂気的な言動を繰り返し、世を支配することを宣言。
しかし、ドクトルがスティーブに中和剤を注射。全ての力は無力化される。これで、過去に自分がしたことへのけじめをつけれた。
そこを狙い図ったようにムサシとナイトは、スティーブを取り押さえ、ピーターとリディアに自分たちともども、ととめをさすように指示。
正義とは何なのか。最期にそれを語るムサシとナイトの言葉を受け止め、二人はとどめをさす。
ピーターはムサシの意志を引き継いだかのように、力を付けて、正義の魂を熱く燃やして、町の悪どもを倒す。
リディアは、ナイトの意志を引き継いだかのように、悪が育つことすら許さない絶大な力で覚悟を持って、町の悪どもを倒す。
これからの時代を担う二人のヒーロー。
二人の力は、世界を真の平和へと導けるのだろうか・・・
正義編を拝見して、ざっくりとあらすじの覚書をしておいた段階で、悪編を拝見。
話としての筋は同じで、正義と悪の視点、どちらで描くかによって分けられていたようで、まとめて書いてみました。
何が正義で、何が悪か。
桃太郎は悪い鬼をやっつけて、村に戻り、お爺さん、お婆さんと幸せに暮らしましたとさ。
お父さんを、桃太郎って奴に殺された憎しみ、恨みを抱えて、何も無くなった鬼が島で生きていく鬼。
正義と悪は、視点を変えれば、何が正しいのか分からなくなってしまうのは、昔からの童話の世界でも同じで、今の現実の社会事情にだって通じるものがあるでしょう。
その答えはよく分かりません。
この作品においても答えを出したラストにはなっていないようです。
ただ、正義か悪かは分かりませんが、どちらも存在しなければいけないこと、そして、その正義と悪は実は敵同士では無く、本当に倒すべき敵は違うところにあるようなことを感じさせられます。
ムサシやピーターのように、正義のために、悪いものに鉄槌を喰らわし、世を良くしていかないといけないという建設的な正論。ナイトやリディアのような、悪は抑える力が無ければ、いくらでも生まれてくるので、絶対的な力で封印するという破壊的な理想論。
そのバランスなのかなとも思います。
そして、倒すべきは人が心の底にどうしても持ってしまう歪みみたいなものでしょうか。正義も悪も関係なく、ただただ自分の欲望を満たすためのエゴが生み出す狂気。叩くべきものはそこにあるように思います。
作品は大きく分けると3つのグループ。
ローズ先生の指導を受けて育てられたヒーローたち。
ヒーロー協会のスティーブに従う子供たち。
ナイトの下に集結した人工ヒーローたち。
ヒーローたちは、様々な生まれ育ちをしており、その環境は決して幸せとは言えませんが、こうしてヒーローとしての世への役割を与えられています。要は自らの存在意義を見出せる環境にいるということ。
子供たちと人工ヒーローは結局、同じなのかもしれませんが、自らが不要な存在なのではないかという不安の中に常にいるような気がします。子供たちは、それをスティーブに褒め称えられるということにだけ存在意義を求めた。人工ヒーローはナイトに対して、その力を役立てることに存在意義を求めた。
結局は孤独や寂しさという人の弱さが、悪い形で、悪い方向で進んでしまった結果のように思います。
皆が、誰に依存することも無く、自分の孤独や寂しさを、きちんと世に自分という存在が必要としてあるのだと認知する中で消し去ることが出来れば。
ヒーローはそれが出来ていたのでしょう。でも、子供たちと人工ヒーローは。
彼らは、人に依存してしまっていますから。その人に捨てられたら、認められなくなったらという恐怖にいつも苛まれ、自分自身の存在に自信を持てていないようです。
そんな人の想いに触れて生きることが出来ていない人は現実にもたくさんいるでしょう。彼らの中に蓄積する憎しみ、妬み、悲しみ。これこそがこの世から消さなければいけないものなように感じます。正義が、悪がではなく、みんなで。
そうしないと、人のエゴに支配された者により、そんな人たちは、もっと辛く悲しい生き方へと追い込まれてしまうように思います。
どっちが正しいとか、どっちでなければいけないとかいうものではなく、バランスなんだろうなあと。
全否定せずに、互いに部分否定し合って、その否定されたところを、相手の考えでより良く補えるものなのかを考えたりするだけで、ある程度はうまくいくような気もするのですが、そこには人の様々なものが絡んでくるわけで。
正義と悪。ムサシとナイト。はたから見れば、真逆の存在。でも、目指すところは真の平和。手段が違うだけ。敵も世を狂わすスティーブと共通している。
遺伝子とかが出てきたからでしょうか。
帰りの電車の中で、これは人の体でもそうなんだよなあと。
恒常性。人の体は、ミクロ視点で見れば、常に作り出され、破壊されていく。幹細胞だなんて言って、人の体を何でも作り上げる凄い奴だともてはやされ、あたかも正義のよう。でも、実際に体を維持するためには、せっかく作った組織を壊してしまう細胞もいる。そうしないと再構成出来ないから。そんな細胞は注目されることもなく、壊す、死ぬなんて機能性から悪のようでもある。
でも、そんな正義と悪は、どちらも、私たちの体がより良く生きることが出来るように、日々、頑張ってくれている。互いに戦い合ったりなんかされたら、すぐ病気になってしまう。
そして、そんな正義と悪の細胞の敵は、きっとがん細胞とかなんだろう。私たちの体のことなど何一つ考えていない。ただ、自分がたくさん増えればいいと言う考えの狂気の細胞。この作品で言えば、スティーブみたいなものか。
でも、このがん細胞。誰が生み出したかって、それは自分なんですよね。元々ある遺伝体質、不摂生な生活などなど。
人である以上、歪みの核は必ず持っている。だからこそ、その歪みが大きく育ち、世に大きな憎しみや恨みなどになって蔓延らないように、互いに想い合って、生きていかないといけないのではないでしょうか。
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コメント
SAISEI様
各劇団の看板役者やフリーでされてる人気役者を使った公演でどう調整をつけるんだろう?というのが事前の心配であり楽しみでもありました。
結果としてそれぞれの役者の見せ場を作り両編とも1時間45分と観やすい時間に纏めたのが流石と思いました。面白かったことは面白かった。正義→悪と観たのですが前半はほぼ同じだったんですよね。悪の方が時間の経つのが早く感じたかな。。実は早朝(5時起き。職業柄朝が弱いw )から奈良に行ってまして昼から欠伸が出て欠伸が出て。退屈ではないんですが(笑)ただ違う場面になるとシャキッとなりました。後半同じような場面になるとまた欠伸が出ました(笑)人体って不思議(笑)
面白かったのが前提で敢えて気になった場所を挙げるならば
①ホットフィストの死んだ前後のところ正義と悪で矛盾というかおかしくなかったですか? ビーストは目の前で見てるのにサイドキックに「なんのことだ?」みたいなこと言ってるし(?_?) 観方が悪い?
②ヴァンプが「くたばる前に遺伝子が手に入って良かったよ」みたいな台詞がありましたが死んでも遺伝子は抽出できるでしょう? 門外漢なのでわからないですが。。 鮮度は落ちるのかな?(笑)
③バッドヴォイスとギグの関係がもう少し知りたかったかな? 上演時間を揃えること、もしくは観易い上演時間にすることを優先しはったんでしょうが。
④衣装などの点で他公演の使い回しがあったりキャラクターが似かよっていたのはマイナスかな。驚きがない。
ということで私は浜崎さんと門石さんが一番良かったかな(笑)
よしひろさん感じいい方ですよね! 好きやわ~♪
最近お忙しいみたいですね(笑)iakuは来られると思ってました。私は今日は、いや昨日は劇団SOLA(Bキャスト)を観劇。河瀬直美監督の映画でデビューされた兵頭さんが流石の演技。思ってたより良かったです。1ドリンク付き2,000円、90分です。
投稿: KAISEI | 2016年2月 8日 (月) 00時50分
SAISEI様
誤解がないようにしないと(笑)
いろんな意味で観やすい公演というのが率直な感想。
エンターテイメントとして楽しめました。
各役者さんも皆さん良かったし。
その中で最近あまり観れないキャラを上手くされていた役者さんやあまり拝見してない役者さんに眼が行くんですよね(笑)
今西さんは追撃ニトロ以来かな。。こういう役は上手いですよね。
下浦さんも前から気になっていて。今回はアンサンブルから直前になってからの昇格でしたがそれなりに持って来られてましたし。
朴さんがアンサンブルやからね~ 贅沢(笑)
『ガウデンテ』の時もアンサンブルやった気が。目つきが鋭いからかヤンキー役や不良役が多い感じ。
投稿: KAISEI | 2016年2月 8日 (月) 12時36分
>KAISEIさん
私は、けっこう、正義と悪で、同じ話なのに、視点を変えて進行する展開の仕方が、終始、明確で巧く創られたなあと感じました。
同じでも、微妙に違っていた印象が残っています。
体感時間は、どっちを先に観たかによるのかな。私も後から観た悪の方は、あっという間だったような気が。
①これは正義を観た時に、おかしいなと思って、悪を観て、なるほどと思った覚えがあります。はっきり覚えていませんが、ビーストはどこかへ行って、あの瞬間は見ていなかったのでは・・・
②(*^-^) まあ、それを言ったら、あんな血を注射するだけで、遺伝子改変が起こったら、実験、苦労せんわと。遺伝子抽出は出来ますが、生体内だと依然機能し続ける酵素や保護タンパク質の脱離による遺伝子の断片化は否めず、形質発現には支障が出るのかもしれませんね。
③少しは描かれていましたが、ぼんやりでしたね。あと、イリーガルがなぜにあそこまで狂気になっているのかの過去も知りたいところです。ムサシとナイト、ピーターとリディアの対照性と同じく、ヴォイスとスワロウ、ビーストとフィスト、キックといった間柄にも互いの認め合いのようなものを感じます。登場人物のこれあまでの背景の情報があれば、そんなところの理由も明確になるのかもしれません。
④前、観た衣装とかあったんですね。私には分かりませんでしたが。
よしひろさんは、とってもいい方ですよ。創り手と観る側の繋がりを意識した活動を色々とされているように思います。
傭兵あがりのお二人は、共にいい味を出されて良かったと思います。チャラいキックに、朴訥なフィスト。そんな二人を結びつけているものが、ある意味、この作品の正義とは悪とはの答えの道標になっているような気さえします。
朴さんはやっぱり動きが違うのか、目立ちますね。
投稿: SAISEI | 2016年2月 8日 (月) 14時32分
SAISEI様
内容とは関係がないのですがSAISEIさんと一緒になった回、戴帽率高かったんですよね。
邪魔やなあ、と。注意してほしいなあ、と思います。
一番後座ってくれたらいいんですけどね。
投稿: KAISEI | 2016年2月11日 (木) 22時27分