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2016年1月30日 (土)

明鳥【一ひめ二たろう】160130

2016年01月30日 トリイホール (85分)

かなりいいですねえ。
味のある役者さんの揃ったテンポのいいコメディー。
何かちょっといいこと言ってたりして、うるっとくるところもあるのだけど、キャラが全員、いかがわしいので、それすら笑いの要素となってしまう。
ホストの人間模様を背景に、上っ面じゃなくて真に頑張ることの意味合いを浮き上がらせた、ただただ楽しい作品。
ラストの締め方は、ホストらしく、決め台詞でいかしている。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

品川のホストクラブ、明鳥。
No.1ホスト、ヒロが店を辞める。こんな電車ばかり集まる町ではやってられない。人が集まる新宿の有名店、薔薇男爵にスカウトされたらしい。
店長は、残念だけど仕方ない。去る者、後を追わず。しっかり頑張れと。
でも、これは口だけ。惜しい気持ちがどうしても出てしまう。未練の言葉を散々、投げかけるが、ヒロは去って行った。
これからどうしたらいいのだろうか。
とにかくチャラいアオイ、クソ真面目なノリオ、そして・・・
これで借金が返せると、野球賭博で勝ったという多額のお金を持って大喜びで店に入ってきたナオキ。
東京湾に沈まなくてすみます。今日はみんなでドンペリおろしちゃいましょう。
チャラい動きでテンションだけ高いアオイ、笑顔が全く無いぎごちないノリオ、ただめちゃくちゃに叫んで踊っているだけのナオキたち3人の全く揃わないドンペリコール。
これは、店潰れるわ。店長は愕然としている。

店のソファーで寝ているナオキ。携帯の着信音で目を覚ます。借金取りからだったみたい。
もう夕方。やばい、金を返しに行かないと。期限は明日の朝6時だから。
にしても、きっとびっくりするだろう。キャッシュでいきなり一千万円返すというのだから。
散々、いびられたんだ。ビンタの一発ぐらいしてやろう。まずは返せませんと土下座してからの、ビンタか。
店長が出勤してくる。店長はまだヒロに電話したりしている。続いてアオイ、ノリオも出勤。
ちょっと金返してきますので、よろしく。ナオキはそう言って、金庫を探すが金が無い。
みんなに聞いても知らないという。それどころか、野球賭博で勝ったことも知らないという。昨日のパーティーも祝勝会ではなく、ヒロのいないお別れ会だったのだとか。
ということは、全て夢。
つまりは、明日までに金を用意できなかったら殺されるということだ。
そんなことより、店長は明朝、店終わりに新オーナーが来られるから、パーティーの準備をするように皆に命じる。店長はその新オーナーと一緒に、店の経営の起死回生を狙うつもりだ。
いや、それどころでは無い。ナオキが、借金取りに電話しても、絶対に明日6時までだと念を押される。どうしたらいいのか。

そんな中、昨日、店に来て、飲み代が払えず、逃げた女が捕まって店に連れて来られる。
5万円の飲み代。1200円しかないという。
青森から家出してきた女子高生、明子。
ひたすらすいませんと謝っている。
ビビらせる役をナオキが命じられる。
返す当ても無いのに、無計画に散在して何を考えているんだ。その言葉はそのまま今の自分に帰ってくる。
今の自分に彼女を叱ることは出来ない。体裁もあるので、他の人が来たら、泣いてビビった振りをしておけと命じたら、ことのほか、大胆に泣き芝居をしてくる。
この状態で度胸が据わったものだ。
体で返すと言ってくるが、それにはちょっと厳しい田舎臭い女の子だ。
とりあえず、店の手伝いをさせる。ちょうど、パーティーの飾りつけをしないといけないから。

借金取りがやって来た。ナオキは急いで隠れて、明子に対応させる。
頭の悪い借金取りなので、何とか誤魔化して、帰ってもらったが、明子に自分の現況を知られてしまった。
明子は急変し、借金取りよりも凄んでナオキに絡んでくる。
明子にまで責められ、すっかり委縮してしまったナオキ。
店に新入りホストがやって来た。新宿名門店のNo.1ホスト、レイ。金など女に貢がせて腐るほどあるらしい。店長の言っていた起死回生策の秘密兵器なのだろう。生意気な自己紹介をして、すぐに外に出て行ってしまった。
こちらのNo.1ホスト、アオイはライバル意識を燃やしている。アオイの太客が店に来ているらしい。添い寝するだけで一千万円。
少しはこちらに回して欲しいものだ。ホストなのに、貢いでくれる女はおろか、指名してくれる女もいないナオキ。
ナオキはアオイに添い寝して、そのお金を貸してくれと懇願するが、セイウチ女を相手するのは嫌だと、明子に適当な理由で追い返すように命じる。かなりしつこかったが、最後は死んだと言ったら、泣いて帰っていった。

もうダメだ。明日の朝には俺は死ぬ。ナオキは財布から5万円を取り出し、明子の飲み代を払う。
自分の借金の足しにした方がいいのではないかとノリオに止められるが、一千万円の借金に5万円が何の足しになるものか。
思わぬ行動をとってくるナオキに明子は、自分に惚れたのだと勘違い。
明日、死ぬ男が恋など出来るはずがなかろうに。
でも、明子は何か力になりたいと言ってくる。
だったら、一緒に死んでくれないか。俺もホスト。東京湾に一人沈められて死んだのでは格好がつかない。女と心中した。ホストらしい死に方ではないか。
明子もそれを承諾。
とりあえず、剃刀を探す。

店に五郎さんがやって来た。純、純、言っている。
純は自分の本名だ。親父じゃないか。
昨日、夢うつつの中、ナオキは親父に電話したらしい。いいことがあったから、東京に遊びに来いと。
親父すまない。俺は明日、死ぬ。でも、そんなことを親父には言いたくない。
明子はナオキのいいことの話に合わせるため、ナオキと結婚をする、お腹の中にも子供がなんて言い出す。
親父は大喜びだ。
そんな中、再び、借金取りが店の中に。
ナオキは隠れて、明子は急いで、親父を客室に連れ出す。
アオイは邪魔だから帰れと借金取りを睨み付ける。
ノリオはあるアイディアを思いつく。飲ませて酔わせて、さらに睡眠薬も飲ませて、外に放り出す。
あ~いう輩を対処するのには自信があると、借金取りと接触。相手の頭の悪さも幸いして、客室へとご案内。
何も知らない親父と借金取りは一緒に盛り上がっている。

ナオキと明子は続き。
そう、死のうとしているんだった。
剃刀で切り合う。いや、床が血で汚れる。互いに首を絞め合う。いや、忍耐力があった方が生き残る。
海に飛び込む。これが一番確実。だったら、明日、東京湾に沈めばいいものだが、ホストの最後のプライド。それが女との心中だ。
品川の海へ。ナオキは明子を海に突き落とす。
さて、自分も。
その時、親父が。
早まるな。金なら何とかなる。
全てを知ってしまったらしい。でも、金は大丈夫だと。
アオイの太客に気に入られて、これから添い寝をしてくる。一千万円を持って帰ってくると。親父ありがとう。ナオキは明子の冥福を祈り、店に戻る。

ノリオから、借金取りが眠ったと連絡が入る。どこかへ運んでくれと。
いや、もうそれはよくなった。
目を覚ますのを待とう。お金はもうすぐ用意できる。
安堵の表情を浮かべるナオキ。
奇跡は起こった。神様ありがとう。
でも、期限は6時までなのでは。アオイは言う。
添い寝するだけで帰ってくるから、間に合うと返すナオキをアオイは否定する。
添い寝だけで済むはずが無いだろう。
そう言えば、添い寝だ、ソイヤーとか親父は言っていた。あれはやるつもりだ。気合が入っていた。
親父に連絡したいが、携帯など親父は持っていない。女の居場所も分からない。
こうなったら、親父の自制心を信じるしかない。

レイが戻って来た。
一千万円を抱えて。車の中にたまたま入っていたのだとか。
それを貸してくれ。
だったら、芸をしてください。
不器用なナオキは回ることぐらいしかできない。そんな芸が出来るなら、ホストとしてもっと上手くやっている。
面白くないと金を破り捨てるレイ。
あまりの仕打ちにアオイが突っかかるが、笑いながらレイは去って行った。

ノリオの携帯がなる。
どうやら、ノリオの父かららしい。
話を終えて、携帯を切ると、ノリオは借金取りの担当が自分になったと言ってくる。
どうやら、ノリオの父はサラ金の社長。ナオキはそこから金を借りていたみたいだ。
助かった。だったら、少し期限を延長してくれ。
ところが、ノリオの答えはノー。そう、こいつはクソがつくぐらいの真面目で融通がきかないのだった。
店長がやって来て、もうすぐ新オーナーがやって来ると伝えてくる。
6時になったら、迎えの車がやって来る。少しだけ、新オーナーの歓迎パーティーに参加して、車で東京湾に。これがナオキの最期だ。
カウントダウンが始まる。
6時になる。その時、親父が飛び込んでくる。
金は用意したと。
ナオキはそれをノリオに渡し、親父と抱き合う。
親父の様子がおかしい。
ナオキに言いたいことがあるみたいだ。
服を脱ぎだす。その下は、親父には不似合いのきめた服装。
ホストになる。服も今、買ってきたのだと。
ノリオが口を開く。5万円足りません。
そう、その5万円で親父は服を買ったらしい。
5万円ぐらいなら、確か財布に。無い。そうだ、明子の飲み代を払ったのだった。
ルールはルールですからと、ノリオは融通をきかす気は全く無い。
アオイも金を持っていない。店長も同じく。
もう、終わりだ。
そう、死のう。初めからそういう運命だったのだ。
ホストとして大成せず、親父にも迷惑かけて、明子も死なせてしまって。
自分は死ぬべき人間だ。

そう覚悟した時、新オーナーが入ってくる。
妖艶な黒いドレスを身に纏い、貫禄の美女。でも、あれは明子だ。
化けて出てきたと怯えるナオキ。
全てが明かされる。
これは全部仕組まれたことだった。
ナオキは確かにダメホストだ。でも、頑張ろうとする意志は強い。借金だって、いい車、いいマンションと、ホストである自分を高めるために使ってできたものであることを店長もオーナーも知っている。
だから、これからも頑張って、借金なんかに頼らず、己の実力で女から貢がせてお金を得られるようにもっともっと活躍して欲しい。
野球賭博なんかで安易に借金を返してしまえば、また借金を繰り返す。
もう二度とそんな気が起こらないように、痛い目に合わせようと皆で企んだことだった。
アオイもノリオも仕掛け人。レイは新米ホスト。しっかりとナオキを騙せたら入店を許すと言われており、正直、おしっこちびってビビりながら必死に頑張ったらしい。
まあ、親父がやって来たのは誤算だったが。
借金はもちろん、既に返せている。
これからまた一からスタートだ。
オーナーは、明子を惚れさせたあなたなら、いつか指名は入ると激励。
店長は、精一杯、かっこつけながら、自分の皆への想いを語る。
店が終わって家路につくホストたち。明け方にゴミを漁るカラスたちと同じだ。
でも、お前たちはその夜、多くの客たちを一時の幸せに導いた。
そんな大きな仕事をして帰っていくお前たちの後姿はいつも誇りだと。
よし、皆でまた頑張っていこう。みんな。アオイ、ノリオ、ナオキ、レイ。そして親父もだ。
ホストクラブ、明烏の新たな門出にドンペリで乾杯。
ナオキはグラスを口先で止める。
やめておくか。これがまた夢になったらたまらないから・・・

個性的なキャラを演じる役者さんの味が、このホストクラブという設定にピタリとはまり、実にテンポよくスムーズに話を展開して楽しませるコメディー。
ダメ人間だけど、どこか人の好さ、優しさを滲ませて、頑張るってことの大切さを教えてくれるようなナオキ、掛谷将さん(Project ikki)。
圧巻の絶妙なリズムのツッコミ。可愛い少女から、魅惑的な美女、はたまたガラ悪いおっさんキャラまでを演じ分けて話を盛り上げる明子、西田美咲さん(劇的☆ジャンク堂)。
徹するチャラさ。ちょっとしたセリフ、動きすべてに細かなチャラさをきちんと入れ込んでいる実は一番繊細で奥深さを感じさせるアオイ、出原正誉さん(劇団U-tage)。
シュールなまでにクソ真面目。その姿は冷徹な鬼を思い浮かべさすような恐ろしさを醸すノリオ、リュウジ宮本さん。
五郎。違うけど確かに舞台に五郎を浮かび上がらせた松岡しゅーぞさん(らふ☆トランポリン企画)。
店長、借金取り。店を仕切るリーダー、怖い人。なのに、どこか軽薄さや頭の悪さを醸し、いかがわしい空気を振りまく吉田暉さん(劇団U-tage)。
悪魔のような残酷なナルシスト。思いやりなど捨てて、自分の輝く美しさを追求することに執着するかのようなヒロ、レイ。それに、自分の輝かし方を知らないビビリ君キャラのおまけ付き、森田鮎さん。
皆さんの惹きつける力が、コメディーの笑いをほんわかとさせて、実にいい空気で楽しく観ることが出来る作品となっていました。

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