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2016年1月10日 (日)

杉沢村のアポカリプティックサウンド【イエティ 】160110

2016年01月10日 インディペンデントシアター1st (80分)

恥ずかしくも、何回もビクってなってビビりながら、冷静を装っても悲しくもこういったオカルトに翻弄される人間模様を見て笑って楽しむ。
音響・照明によるこの世ではないような不気味な舞台の空気と、やたら日常生活におけるドロドロした人間臭さが醸される登場人物とのギャップも終始、面白いと感じさせているのかもしれない。
ホラーとコメディーの融合。そして、人間の潜在的に潜む解明できない謎や終末への執着を俯瞰的に切り込んだような作品。

<以下、ネタバレしますので、ご注意願います。昨年から続いている公演なので、大丈夫と判断して白字にはしていません。公演は明日、月曜日まで>

山奥で開催されるレイブに参加するためにやって来たが、道に迷ってしまった男女4人組。
冷静に場を分析して、最善の行動を考えようとするリーダーシップを取る男、サムラ。
サムラと不倫関係にあるためか、彼をサポートしようと懸命に振る舞うイツキ。
元々、レイブに行くことの言い出しっぺだが、こんなことになってしまいふてくされ気味にわがままを言うサトミ。
そして、とにかくわがままを言いたい放題で、偉そうに皆を非難するトダ。
トダの腰が痛い、もう歩きたくないというわがままのおかげで、辺りはすっかり暗くなり、廃屋で一晩を過ごすしか無い状態に。
サムラはビビる皆を廃屋に避難させ、自分はルート確保のために周囲を探索する。
リーダー不在となった皆は、持ってきたおかきの味が気に入らないやら、サムラに媚びを売っているやら、自分ばかりを目の敵にするやらで、互いに言い合って険悪なムードに。
サトミは苛立ち紛れに、地蔵さんを殴りつけるという罰当たりなことをする始末。
イツキは怪しい影を見たと言い出し、皆を怖がらせる。
そんな中、サムラが戻って来て、突き止めたある事実を語り出す。
ここはあの杉沢村かもしれない。
狂人によって村人が殺され、地図から消された村。その狂人は今でも生きていて、この村にやって来た者たちを殺し続けているのだとか。
もちろん、都市伝説。
でも、そんな話を聞いたら不安になる。サムラの胸の中だけにしまっておいてくれたら良かったのに。
サムラは一晩、廃屋の外で見張りをすることに。
翌日、目を覚ますとサムラがいない。
もしかしたら、杉沢村の狂人に。皆はサムラを探しに行く。

三流科学雑誌のライター、アキラとタケシ。
アポカリプティックサウンド。
この音が鳴る時、それは天変地異の予兆だと言われている。ヨハネの黙示録によれば、7回鳴った時に、大きな災いが起こるらしい。
その音が、ここで、しかも6回鳴ったという情報を取材しに来たらしい。
アキラは廃屋に散乱するおかきの欠片から、ここに最近まで人がいたことを推理する。でも、それだけ。音とどう関わりがあるのかなどは分からない。いつだってそう。予想するだけで、実際は一つもいい記事が書けていない。
それにネタもウケが悪い。こだわりを捨てて、金になる仕事をして食べていかないといけないのに。
廃屋の外に怪しげな男が突っ立ている。話しかけても反応が無い。
アキラは石をぶつけようとするが、いつの間にかいなくなっていた。
霊だったのでは。それに石を投げつけるという罰当たりなことをしたアキラ。
タケシはそんな先輩、アキラと決別して、山を降りようとするが、その時、大きな音がする。
その音を目の当たりにしたタケシはすっかり興奮。富士山噴火の予兆なのでは。
だったら、自分たちは山を降りて皆にそのことを伝えないと。
いや、そうするといい記事が書けない。でも、放っておいたら、日本が滅亡しかねない。
何をしても、自分たちにとっては、あまりいいことが無いことに気付く。詰んだって奴か。
そんな中、サトミが廃屋に飛び込んでくる。

ここはやはり杉沢村だったのか、その霊に襲われているらしい。
皆も一度、逃げて廃屋に。
サムラは、自分が狂人を引きつけるから、皆は山を降りて逃げろという。
命を落とすかもしれない。でも、そうしないといけない覚悟だ。
だって、サムラは聞いてしまった。アボカリプティックサウンドが7回鳴ったことを。
大きな災いが起こる。このことを必ず、伝えて欲しいと言い残し、サムラは廃屋を飛び出す。
サムラは、アキラたちの雑誌の数少ない読者の一人だったようだ。
サトミはその後を追う決意をするが、ナイフを手にした狂人にビビッて皆と一緒に逃げることに。しかし、狂人に捕まり、殺されてしまう。
廃屋にはなぜか二人の狂人の姿が。迷彩ズボンに赤帽子、手にはナイフの青年。
それに、仮面をかぶった男。これがサトミを殺した狂人。幽霊となったサトミが既に取り憑いている。
青年の方は、トダがここに来る途中車で轢いた男の霊らしい。
こうしてみると、色々と恨みを買ったりすることや隠していることっていっぱいあるみたい。
サトミはサムラにちょっかいをかけていて、それを知ればイツキに恨まれるだろう。サムラだって、子供がいて離婚などする気は無いし、サトミとも関係を持ちながら、イツキとの関係を続けている。ここに狂人が二人いるということは、もしかしたら、自分だけ逃げたんじゃないのか。
タケシは狼男の血が流れているという。
廃屋にはいつの間にか人面犬もいる。
全てを吐き出しても、アポカリティックサウンドは鳴り止まない。
もう数十回以上鳴っている。
山奥ではレイブで盛り上がっていることだろう・・・

幾つかの章に分かれており、映像でその章の題名が流され、杉沢村とかアポカリプティックサウンドなどのキーワードの説明が流れて、舞台が始まる。
この作品自体が、ドキュメント番組のような感じで、メタ的な感覚を持たせるみたいな演劇的手法もあるのかな。
単純にちょっとホラーの怖さにビビリながらも、自分と何一つ変わらない、普通の人たちの翻弄される姿を安心して楽しむといったテレビ感覚も残る。
怖かった割には、結局、呆れ返るような人間の姿がラストは描かれており、色々なことがある現実の厳しい世界からちょっと目をそらして、こんなオカルトや終末に喰いついてしまう人間に共感した同情を見せながらも、皮肉めいた警鐘も込められているように感じる。

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