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2016年1月15日 (金)

恋人がビッグフット【無名劇団】160114

2016年01月14日 ウィングフィールド (75分)

クリスマスイブの4つの話。
各々の話は1~3個ぐらいのシーンに分割され、各話を交錯させながら、全体を展開する。
間には、登場人物の心情を表現したコンテンポラリー風のダンスを交えて、同時にシーン転換するという流れがスマートで心地よさがある。
非常に創りが美しいという印象が残る。
金魚鉢の中の金魚。深い海の底で暮らす深海魚。
その狭い世界、暗闇の世界で生きる魚たちの気持ちを、現況から一歩踏み出せない自分たちの生き方に繋げて、自分らしく生きることってどういうことなのかを見出そうとする作品か。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

クリスマスイブに、金魚の入った金魚鉢を抱えて、町を歩く少年。
少し外に置いて、コンビニに寄って戻ったら、サンタ姿の女性が写メを撮っている。
それ、自分のなんですともはっきり言えず、モジモジしていたら、女性の方からテンション高く話しかけてくる。これ、あんたの。自分オモロいなあ。イブに金魚って。一緒に写メ撮ろう。instaにアップしてええやろ。
淀川にでも捨てるつもりだった。
久しぶりに学校に行ったら、餌をもらっていないのか、口をパクパクと苦しそうに。ここにいたら、息が詰まって死んでしまう。と言って、家に連れて帰ることもできない。親に叱られるに決まっている。
でも、女性はそんなことしたら金魚が死んでしまうと言う。金魚は金魚鉢の中の世界でしか生きられないのだから。
代わりに飼ってくれることになった。
そうするしかない。親には逆らえないから。
サッカーをしたかった。サッカー名門中学校なので、日本一になることを夢見て入学。でも、親にはサッカーは大学に入ってからだと。朝から晩まで勉強、勉強。たまにサッカーボールでリフティング。今度の模試の成績が悪かったら、そのサッカーボールさえ取り上げられることになった。模試に自信がなく、その日、休んだ。それからしばらく学校には行けていない。
時々、自分の存在が分からなくなる。どうやら、いるらしく目撃情報はあるけど、存在は確かではないUMAみたい。だから、金魚にビッグフットなんて名前をつけた。
大変なんやねえ。頑張りや。そんな上っ面の優しい言葉を女性は少年にはかけない。
自分がどうしたいかやね。一度きりの人生なんやから。自分で決めることと素っ気ない。
女性はミスコン優勝を目指している。てっぺんを取る。そう決めているから、やりたいことを諦めない。ウォーキングも勉強してるし、牛乳飲んで背も伸ばそうとしている。自分にぴったりの綺麗なドレスで勝負したいから、今もこうしてバイトをしている。
女性の休憩時間が終わり、お別れ。
少年は、女性に金魚鉢をやっぱり持って帰ると言う。
親を説得してみる。自分が、今、したいことを。
明日も女性はここにいる。自分のやりたいことを実現するために。少年もやりたいことを今、やってみる。
金魚鉢の中にいる少年。まるでそこは深海の世界。自分の周りは見えず、聞こえない。敵がいる。必死にその狭い世界の中で逃げ惑う。ここでしか生きられないから。いや、きっと外に出ても自分は生きていける。少年は自分の殻を打ち破る。
漁港に水揚げされた魚。立派な魚たちは高級な箱の中へ。女性はその他たくさんの魚と一緒に地べたに。これから、狭い箱に詰められて運ばれる。いけすに着くまで何とか生き延びれば。そこにはきっと新しい世界が待っているはずだとその狭い世界の中で必死に生きる。

クリスマスイブに、明日、催される会社のクリスマス兼忘年会の出し物を練習する女4人。Perfumeを踊るつもり。毎年、上司のセクハラとも言える強制だが、うけるようにおっぱいも盛って女性の魅力で勝負する予定。
リーダー格の女性は、当たって砕けろ感覚で何事にも前向き。男も好きなら、まず告白。たくさんの中から自分にぴったりはまる男を見つけてやるぐらいの感じで勝負する。なかなか、そんな男を掴むことは出来ていないようだが。
入社1年目。バツイチ中年上司だが、その人と結婚して寿退社する予定の女性。結婚願望は元々、強かった。仕事で活躍よりも、家庭を守る方が自分にあっているし、したいことだったから。周囲は何であんな男なんて言う人もいるみたいだが、それを実現させてくれるのが、その男だったみたい。
こんなくだらない出し物をするために入社したんじゃないからと、参加を拒絶している女性。クールで知的に理論的な言葉を並べる。でも、実際にしている仕事は単純なデータ入力作業だけ。今はそう。でも、いつかはという気持ちで自分を奮い立たせているみたい。
そんな中、おとなしく従順そうな女性の下に男性からメールが届く。
男性陣はとにかく明るい安村ネタをみんなでするらしい。これも副社長の強制だ。
メールの内容は、その小道具で欲しいものがあるから今日会えないか。食事でもごちそうするからと。
女性はそれを文面のとおりに受け取る。
どう考えても、今日はイブ。告白するための誘いだろうに。
皆からそう言われて、喜ぶかと思いきや、不安な表情に。
男のことが嫌なわけではない。どちらかというと、研修の頃から、目立たないけど、いつも真面目に頑張っている姿に好感を持っている。
女性は躊躇している。
もし、告白されたら。この歳からのお付き合い。当然、結婚がちらつく。本当にこの人が自分と赤い糸が結ばれた人なのだろうか。
結婚ってどうやって決断するの。運命の人だってどう判断するの。その人が本当に自分を幸せにしてくれる人なの。
これまで女子高、女子大育ちでお付き合いの経験が無い女性には、男と付き合う世界が自分には具体的に見えないみたいだ。
結婚が決まっている女性や、男なんてまず付き合ってみないと分からないというリーダー格の女性や、客観的に訪れたこのチャンスをどうするべきかを冷静に解析する女性。
受け身じゃダメ。自分がどうしたいのかに忠実に。なるようにしかならないから。
女性はメールをもう一度、読み返し、それに返事をする。
練習は解散。明日は最後の練習。そこには、違う世界に踏み込んだ新しい女性がやって来るかもしれない。
金魚鉢の中の魚。養殖マグロ。外では生きていけない。適度な餌を与えられ、飼いならされる。外にある大きな河、海があることを知らないから、その狭い世界の中が自分の生きる世界だと思っている。
でも、外に出てみれば。そこは、今までみたいに安泰な生活ではないかもしれないが、きっと自分がもっと成長できる楽しい世界が待っている。

クリスマスイブに両親がデート。
残された長女、次女、三男。
長女はイブでも基本的に一人。男がなかなか出来ないから。
次女は彼氏がバイト。つまりはフラれたに等しい。
三男は幼いからイブなどケーキを食べられる日ぐらいの感覚。
おなかがすいた。料理を作る気はしない。外食に行く気にもならない。
ピザでもとろうか。そんな話をしているとチャイムが鳴る。
玄関を開けるとサンタ姿のピザ屋。
うちは頼んでいませんからと追い返してしまう。ピザ屋は引き取ってもらえないかと言い張っていたが。
嫌がらせだったのだろうか。いや、もしかしたら母が頼んでくれていたのでは。
でも、冷静に考えれば、あのピザは引き取れば良かったのではないのか。どうせ、向こうも捨てるしかないわけだし。
結局、また、みんなおなかがすいたという元の状態に。
いつも、こうだ。訪れたチャンスを、チャンスだと思えずに普通に逃してしまう。
未熟で何もできないいくら。これから生まれるという可能性はあるけど、それだけではダメ。退化した目や耳。でも、暗闇の中でも、特殊な感覚であらゆることを感じ取り、立派に泳ぐ深海魚になれたらいいのに。

クリスマスイブに観覧車に乗るカップル。
男は演劇をしている。本番間近なので、今日も稽古だった。でも、今日は特別の日。だから、二人の時間を過ごすためにこうして会いに来た。
女性は少し不安な表情を浮かべるが、すぐにカバンからプレゼントを取り出し、男に手渡す。手袋。男は大喜び。
男もプレゼントを渡す。指輪ケース。
女性の表情は一挙に晴れやかになる。でも、開けると中にはピアス。
すぐに表情を曇らせる。
男はそれに感づき、せっかくの付き合って6年目の記念日なんだからと、変な空気を戻そうとする。
そう、6年。二人とももうすぐ30歳。
結婚。その一言がどうして出てこないのか。
まだ、食べさせてあげられないから。演劇をしていると時間の都合をつけやすくするためにも就職しにくい。だから、まだバイト。これでは、まだ不安。
そんなの男のくだらないプライドだ。
そんな男の言葉に、自分の勤めている会社への就職を薦める女性。
それは出来ないと言う男に、女性は別れを切り出す。
一時の怒りの感情に任せての言葉ではない。今日は、そう決めていた。プロポーズされなかったら別れようと。
5年待って欲しい。
5年後にどうなるというのだ。今とどう変わった男の姿がそこにあるのか。
絶対に変わらない。だって、中途半端だから。
演劇が本当に好きなら、今日だって稽古を優先してここには来ていないはず。
私に対しても、演劇に対しても本当の意味で真剣じゃない。
そんなきつい言葉に、男は二つとも、女性も演劇も本当に好きだから、一緒にいて楽しいからと、どうして今のままではダメなのかと苦しむ。
男は女性に寄り添おうと近づくが、女性は傾くからやめてと止める。
観覧車は下まで下りてきた。
降りようとする女性に、男はもう一回一緒に周ろうと言う。
濁った水の中。何も見えない、そこは深海のよう。周りが見えないまま、がむしゃらに泳ぐが、どこにもいけない。自分はここにいるしかないのだろう。でも、そんな暗闇の中に、自分に触れるものがある。この人と一緒なら、ここから出られるのだろうか。その世界では自分はどのように泳ぐことが出来るのだろうか。

親やら学校やらに縛られて、自分のやりたいこと、自分自身を抑え込んで見えなくなってもがく少年。
この人と共に歩んでいいのかとマイナスのリスクばかりを見詰め過ぎて、一緒にいると楽しいというプラスの自分の素直な本当の気持ちをないがしろにして躊躇してしまっている女性。
目の前に訪れたチャンスを、いつも理性的に冷静に捉えてしまい、自分の感情に素直に従って、思いのままに受け止められず寂しい生き方をしている女性。
本当に好きなこと、やりたいことは分かっているけど、いつも逃げ場を探して、それに正面からぶつかる勇気を持てない男。
こんな人たちが自分の世界から抜け出せない金魚鉢の中の金魚として描かれている。
周りが見えなくなってしまっている暗闇の世界は深海魚の世界か。
でも、深海魚は、その感性を研ぎ澄ませ、その中でも立派に生きている。テレビぐらいでしか見る機会は無いから存在証明は本当の意味では出来ないが、そこに確かにいるというある意味、UMAみたいなものか。
そんなUMAみたいな、曖昧な存在に自分がなってしまっているような感覚。生きている実感が明確に持てないなんて時はきっと誰にでもあるだろう。
自分がここに当たり前に存在するということは、誰かに見られることなのか。自分が今、生きているとはっきり感じて時間を過ごすことなのか。

自分を探す。
一番、興味を持たないといけない自分なのに、自分のことって分かっているようで、実はあまり分からないものなのかもしれない。
何をしたいのか、これからどうしたいのか。
まだ、見えない、分からない自分を探し求めて、人は生きているのでしょう。
この作品では、そんな自分が分からなくなっている人に一つの道標を与えて、その人に新しい人生の道筋を付けさせているようです。
どこまでも前向きなお姉さん。色々な視点で意見を言ってくれる同僚。何でもぶつけ合える家族。本当に愛してくれている恋人。
人の世界は、金魚鉢の中の孤独な金魚や、広大な深い海底でひっそりと生きる深海魚とは違い、すぐ隣に人がいるということなのかなと感じます。
その人が分からない自分のことをけっこう分かってくれていて、自分を教えてくれる。
そして、その人自身も実は自身のことなど、あまり分かっていないみたいで、自分がその教えとなることだってある。
みんな、存在が曖昧で不安に感じながら生きている。
自分らしく生きることは、決して自分がやりたいことを好きなようにしたら実現するものだとは思えません。
だから、互いに触れ合って、その中で自分というものをお互いに見詰め、見つけ出していけばいいのかなと感じます。

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