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2016年1月23日 (土)

楽園【劇団ずぼら】160123

2016年01月23日 大阪大学豊中キャンパス学生会館2階大集会室 (70分)

小学校時代のある日の出来事を、大人になった現在の姿で描くというちょっと不思議な設定。
でも、観ると、確かにその意味合いが分かり、その設定がより大人になって成長するということを深く考えさせてくれるようだ。
楽園という子供の残酷な世界。
そこであった人への傷つけや悔い。
そこから自分たちは何を学び、大人になっていけばいいのか。
寄り添えなかった、相手の気持ちを考えてあげられなかった、自分が優位になることだけ考えていた・・・
その結果、この作品にように、償なうことなど出来ないような、取り返しのつかないことも起こったりするだろう。
あの頃、出来なかったからこそ、今、出来るようになりたい。
そんな蓄積が人を成長させるではないかと思わせるような話でした。

小学6年生。ある日の放課後の出来事。
東京と言っても埼玉から転校してきた瀬戸は、山上に秘密基地であるホテルの廃墟に連れて来られる。悪い奴ではないが、調子がいいというか、おふざけが過ぎるというか、ずっと一緒にいるとうっとおしいタイプの男。すぐに奢ってと言ってくる。家がかなり貧乏らしい。
姫島と日下部が来るまで、くだらない遊びや、エロ本を読んだり、サッカーをしたりして待つ。まあ、瀬戸はエロ本を頑なに拒絶していたが、山上が遅いから迎えに行くと一人になった途端に見たりする。
姫島と日下部がやって来る。瀬戸は急いでエロ本を隠す。
日下部はクラスではほとんど喋らないおとなしい男。チビでバカだから女の子にもいじめられたりしている。
姫島は、昔は背も低くいじめられっ子だったらしいが、背が伸び始めた途端に偉そうにし始めている。家も裕福らしく、鼻持ちならない奴だ。日下部はチビでバカなことを、山上は貧乏なことを攻撃され、ほぼ手下といった状態。
瀬戸はここには姫島に呼び出されている。姫島はラジコンやらテストの点やら、やたら張り合ってくる。瀬戸が持っているラジコンを言うともっと良い物を持っている、お前のはダサいと馬鹿にしてくる。テストが92点だったことを自慢する姫島に、自分は95点だったと言うとイライラし始める。
タバコを吸え。エアガンで脅してくる。抵抗しているとターゲットが変わる。日下部が無理やり吸わされる。咳込む姿を見て姫島は大笑い。山上は何も言わず、流れにじっと身をまかせている様子。瀬戸の番。吸うと結構イケる。軽くふかす姿を見せると姫島はまたイラだっているみたいだ。姫島は吸わない。いや、多分吸えない。咳込むから。
姫島はこのことを先生にチクると言い出す。馬鹿らしくなって、もう帰ろうとする瀬戸に、姫島は一緒に吸った日下部を煽って止めさせる。
こんなことになったのには理由がある。それは篠井とい女の子。可愛らしく、陸上部でも今度の市大会に出場するくらいに活躍。ファンクラブもあるらしい。姫島はその篠井と幼馴染。本人曰く、付き合っているらしい。その篠井が瀬戸にラブレターを出した。広まる噂に姫島は妬みの心を膨らませ、瀬戸に嫌がらせをして、さらには手下にして、篠井にいいところを見せようと目論んでいる。

基地の外で女の子の声がする。姫島を呼んでいる。篠井だ。
姫島が迎えに行く。
山上は姫島がいなくなったとたんに悪口を言い出す。テストの点だって嘘に決まっている。姫島のランドセルを探り、テスト用紙を見ると案の定、悪い点数だ。
篠井がやって来る。外は雨が降り始めている。陸上部の練習は中止になったみたいだ。
篠井は日下部が普通に話をしている姿を見て、嘲笑。
篠井は瀬戸に話し掛ける。50m走のタイム、7秒。その瀬戸の返答に篠井は市大会に出場できるレベルだと褒め称える。日下部や山上も凄いと驚いている。
そんな瀬戸がもてはやされるような場を作るために、秘密基地に皆を呼び出した訳ではない。姫島は、瀬戸がタバコを吸ったことや、エロ本を読んでいたことを篠井に告げ口。
瀬戸は違うと必死に弁明。タバコはそうだが、話の流れなのか、エロ本を読んだ事実まで違うと必死に否定している。
姫島は逆らおうとする者には容赦なく、エアガンを突きつけて脅す。
そのうち、瀬戸は我慢できなくなり、もう帰ると暴れだす。
姫島はまたしても日下部を煽り、止めさせる。二人は殴り合いになるが、瀬戸は日下部を押さえ込む。チビでバカで弱いから。でも、日下部は、急にキレて、瀬戸にパンチを一発。
瀬戸は倒れ込む。
日下部は、やり過ぎだと皆から責められ、篠井にも瀬戸に謝れと厳しく言われる。
重たい空気の中、日下部は瀬戸に謝る。
姫島は第二基地に何かを取りに出て行く。

皆は篠井にこんなことになった理由を説明する。
姫島は篠井と付き合っていると言っていた。
篠井はそれを冗談じゃないと否定。あんな嘘つきで弱い奴と。
だいたい、何であんな奴に従っているのか。家では妹にすらケンカで負けて泣いている奴なのに。
そんな篠井の言葉に、山上はみんなで姫島をやっつけようと言い出す。
日下部も、瀬戸もそれに賛成。
特に日下部はやる気満々。本人曰く、さっきの瀬戸とのケンカで、自分の本当の力が解放されたと、姫島を痛めつける気だ。
姫島が戻って来る。今度はエアマシンガンを持って。
一瞬ひるみ、山上はまた姫島に媚びる態度を示すが、日下部の暴走は止まることはなかった。彼の掛け声と共に、3人で姫島に襲い掛かる。
瀬戸はエアマシンガンを奪い取り、姫島に向けて乱射。
裸にして、服を取り上げる。そして、皆で服を隠しに行くと、出て行く。

パンツ一丁でうずくまり、涙を見せながらも、篠井の前で悲しいまでに虚勢を張る姫島。
弱いくせに偉そうにするから。嘘ばっかりついて。
その篠井の言葉に姫島は反論。自分だって嘘をついている。
付き合っていると言ったくせに。
確かに言った。でも、付き合うということを分かっていないから。
篠井は秘密基地にあるベッドに横たわり、少しだけならいいと言い出す。
姫島は何のことかさっぱり分かっていない。必死に考えて、頭に思い浮かんだのはキスをすることだったようだ。
そうじゃない。そんな子供じみたことじゃない。
呆れ返る篠井。姫島はまだ状況を理解できていない。
理解していたのは、その一部始終を戻って来て見ていた日下部だった。

山上が姫島の服を持って戻って来る。
山上は姫島に服を渡し、早く着ろと叫ぶ。瀬戸が服を燃やそうとしているから。
瀬戸はエアマシンガンを構えて戻って来る。
服を渡せ。
どうして裏切る。みんなで姫島をやっつけようと言っただろう。
そんな狂ったかのように、姫島を徹底的に追い込もうとする瀬戸に、篠井はやり過ぎだと諭す。
うるさい、さして可愛くもないくせに調子に乗りやがって。そもそも、あんなくだらないラブレターを渡すからこんなことになった。
その言葉にプライドを傷つけられた篠井はキレ出す。
ラブレターを返せ。瀬戸のランドセルの中身をぶちまける。
中から出てきたテスト用紙。姫島以上に悪い点数。
ラブレターは山上に渡す。別に誰だって構わない。大人になるための付き合いができるなら。姫島はそんな篠井にショックを受けている。
嘘ばかりじゃないか。エロ本だって読んでたくせに。
篠井は私はファンクラブだっているんだから、絶対に許さないと怒りを露わにしている。
ファンクラブ。
あの、ファンだと言うと調子に乗って喜ぶ篠井の姿を見て楽しむ集まりのことか。
瀬戸はその真実を告げる。
山上や日下部もそのメンバー。みんな、そのことを知っている。だから、本当に篠井のことが好きなのは姫島だけ。
でも、姫島も本気かどうか、こんな奴、好きじゃないと言い張る。
篠井は、出て行こうとする。
全部、先生にチクる。ここであったこと全部。
皆は篠井を止めようとする。揉め合う中、篠井は高いところから転落。足を痛めたみたいで足を引きずっている。

呆然とする男たち。
やばいんじゃないか。あれでは市大会に出場できない。自分たちのせいになるのではないか。
とにかくここを出ようと片付けを始める。
篠井は足を引きずりながら、男たちの愚かさを罵って泣きながら出て行った。
瀬戸のランドセルの中身から前の学校の寄せ書きが見つかる。
数々の別れを惜しみ、励ましの言葉。
瀬戸はうずくまり、帰りたいと泣き出す・・・

小学校時代。
まだ子供で、それでも自分たちには自分たちだけの社会があり、ルールがあり、ちょっとしたことでその力関係のバランスは容易に変わってしまう。
背が高い、走るのが速い、可愛い、いいおもちゃを持っている、金がある、都会出身みたいな単純なことがその人の地位を高める。だから、虚勢も張りやすい。ちょっと嘘をつくだけで優位に立てるから。
エアガンなどの武器は分かりやすく、人を屈服させるためには、持っているだけで役に立つ。
タバコを吸う、セックス経験があるも、それだけで大人となり、子供たちにとっては逆らえない存在になることが出来る。
嘘をついて見栄をはったり、相手の弱いところをえぐって優位に立ったり、自分の力がまだ分からず、過小評価して自分を狭めていたり、過大評価して調子に乗っていたり。
その行動は人を傷つけることをあまり厭わず、やるとなったら徹底的に立ち上がることが出来なくなるまで相手を痛めつける。取り返しがつかないことになるまで、やり尽くさないと何かを終えることが出来ない。その犠牲になってしまったのが篠井だったのだろうか。
残酷な言動。幼い頃を振り返ると、そこには楽しかった思い出が蘇り、あの頃に戻れればなんて思うこともあるが、そこは本当にそんな楽園だったのか。
そして、それは、今の大人の社会だってそんなに変わっていないのかもしれない。人に寄り添わず、相手の痛みを分かることが出来なければ、そんなあの頃と変わらぬ楽園の住人であるような気もする。

小学生たちは、皆、大人の姿をした人が演じている。
要は、今、現在の姿で、あの頃を思い起こしているような感じ。姿格好はもちろんおかしな感じだが、違和感があまり無いのは、あの頃の自分があって、今の自分があるのだから当然なのかもしれない。
今の自分を作り上げた核が、あの頃にもどこか潜んでいたのだろうから。
この作品はそれを見出して、今の自分を見つめ直すようなところもあるように感じる。

瀬戸はバンドを目指すが早々にリタイアして、今はコンビニ店員。舞台ではその制服を着ている。
山上はITベンチャーを立ち上げ、時代の流れにうまく乗って、近々自社ビルを持つらしい。決まった背広姿だ。
日下部は中学生になって大きくなり、プロレスラーになる。いまひとつ活躍は出来ていないようだが。悪役レスラーのようないでたち。
姫島は警官に。あれだけガンが好きだったから。もっとも、地方交番勤務でそのピストルを撃つ機会はまだ無いようだ。警官の制服姿。
篠井はすぐに引っ越したので消息不明。ただ、足の怪我は酷く、後遺症も残ったらしい。ずっと足を引きずっている。
思うのだが、これは今の本当の姿なのだろうか。
あれだけ嘘が飛び交っていた話。
何か、瀬戸があの頃の記憶を基に勝手に創り上げて過去を回想しているような気もする。
調子のいい男だった山上は、タイコ持ちの力を発揮して、今の世を上手く渡っているだろう。
自分の力に気づいた日下部はその力をリングでぶつける。でも、根っからの気弱さは直らず、悪に徹しきれない悪役レスラーでくすぶっているでは。
姫島は見せかけの権力の塊。警官という地位を入れ、銃を手にして、それを自分の強さだと思い込み、今でも弱く逆らえない人たちの上で君臨する悪徳警官になっているのでは。
取り返せないことをしてしまった篠井は今でも、足を引きずり、果たせなかった夢を悔いながら、自分を陥れた男たちを恨んでいるのではないか。
瀬戸は、前の学校に帰りたいとか、ずっと後ろを見ている。今も、コンビニ店員の自分に満足せず、バンドを目指していた頃や、こんな小学校時代を思い出して、もし、まだバンドをしていたら、もし転校しなかったらなんて、変えられない過去にしがみついているようなことを思わせる。
きっとみんなは、いいことも悪いことも含めて、あの残酷なことをしていた自分も受け止めて、自分の新しい道を切り開いている。子供の頃の楽園にしがみついて、囚われて生きてなんかいないのでは。
あの秘密基地での時間のまま、止まって大人になったような瀬戸の姿が浮かび上がる。
子供時代の自分の姿は、確かに今の自分自身に繋がっている。でも、子供がそのまま大きくなって大人になるわけではない。そこにあった悔いが残る残酷な言動も含めて、それを基に変わった自分へと成長して大人になるはず。
子供時代の様々なことを、糧にして成長しないと意味が無い。
それが出来ずにいる瀬戸。そんな生き方への警鐘を促しているように感じた。

大人なのに小学生を演じる5人の役者さん。
姿格好の影響もあり、個性あふれる濃いキャラ作り。
話への惹きこみ、舞台の世界に一緒に入り込ませる臨場感はかなり良かったように感じる。
中でも、吐き気がするくらいに苛立つ姿から、切ない哀れな姿へと変調する姫島の中村侑平さん、他人も自分も俯瞰的に見る冷静な姿から、巻き込まれて自分自身と無理やり対峙させられ狂気となる篠井の竹内雪乃さんが目を惹く。

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