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2016年1月11日 (月)

橙色の中古車【FUKAIPRODUCE羽衣】160110

2016年01月10日 元・立誠小学校 音楽室 (65分)

あるアラフォー女性のアルゼンチン一人旅を描く。ロードムービーものといったところでしょうか。
当日チラシには、移民の国、アルゼンチンの歴史を通じて、文明を享受してきた人間が自然を受け入れていくヒントを感覚として探るような作品と書かれています。
正直、あんまりこれは感じ取れなかったなあ。
それよりも、出会いと別れ。
単に別れるのではなく、次の道へ進むためのお別れ。出会って得たものは心にしっかりと刻まれる。そうして、自分の人生は膨らんでいく。
長い旅。行き着く先までどこまでも、自分の体と心だけを信じて。

まあ、それよりも演じる深井順子さんか。
何なんだ、この人はと驚愕するパワーの持ち主でした。
いつの間にやら、彼女の一挙一動に目を奪われ、その魅力に心惹かれてしまいました。
何て素敵な女性なのでしょう。アラフォーだからこその味ならば、歳を経ることで滲み出る人の魅力を証明したような方ですね。
そんなパワフルで熱量たっぷりの作品を拝見して、浸ってないで走らないと、また出会える何かを信じて、笑って感謝してさよならしないといけないのかなと。

40歳にして離婚。
元々、アルゼンチンには興味があった。サッカー好きな夫と一緒にテレビを見ていて、アルゼンチン選手の顔だけでなく漂う空気にちょっとタイプかもと思っていた。
兼ねてからタンゴをカルチャースクールで習っていたが、踊るパートナーが所詮は近所のおっさん。
慰謝料ももらったし、時間もある。これを機にアルゼンチンに行ってしまおうかと思い立った。
直通は無いので、アメリカのダラス空港で乗り換え。
英語は出来ない。もちろん、現地に着いてからのスペイン語も。
キレよく動く体と何事にも動じない熱き心、そしてガイドブックだけが頼りだ。
ハンサムな空港係員に、不要なアラフォーの魅力を醸しながら、色々と聞いてブエノスアイレス行きの飛行機に無事に搭乗。
エコノミーだけど、ワインは飲み放題。しこたまいただく。

気付くと夜中にホテルの床で目を覚ます。さすがに疲れていたのだろう。バタンキューだったみたい。
水を沸かして飲み、朝食のビュッフェまでの時間を待つ。
朝食。モリモリ食べて、部屋で寝る。気付けば次の朝。結局、ホテルから一歩も出ず。これでは時差ボケも治らない。この日はホテル周辺を散策。
買い物して、公園でピザを。ウトウト。いけない。ホテルに戻る。
洗剤も買ったので洗濯。パンティーを部屋干ししたら、ちょっと優雅な感じに。
今日こそは、夜の町を楽しむ。

タンゲリーア。観光地化しているらしいが、地元のタンゴが観れるらしい。
そのダンスはやはり生で見ると興奮もの。
私も踊りたい。町の踊れる店に行くと、一人の男が一緒に踊ろうと。
20代ぐらい。マルティンというらしい。少し躊躇するが、一緒に踊る。最高の時間。男は挨拶をして立ち去ろうとした時、女性は勇気を出してディナーに誘う。
言葉は通じないが、不思議と感性だけで会話は盛り上がる。もっとも、相手の言葉をいいように勝手に解釈しているだけかもしれないが。
マルティンには弟がいて、サッカーが大好きみたい。
アルゼンチンは肉がメイン。ありえないくらいの量の肉をマルティンはペロリとたいらげる。自分はワイン。おかげでベロベロ。ホテルまで送ってもらい、別れ際にディープなキス。あとは流れのままに、何回戦も。
次の日、少しの後悔はあるものの、マルティンのことが頭から離れない。
街中を歩く。
くじ引きをしていたのでやってみる。一等賞。商品は橙色の中古車。
女性はホテルをチェックアウトして、車を走らせる。

小さな子がサッカーをしている。
もしかしたら、マルティンの弟では。
話しかけてみる。
その子には兄がいる。大学なんて行っていない。鉄工所で働いている。そして、自分のサッカースクールの学費を払ってくれている。母は亡くなっているから色々と大変らしい。
別れ際、その子は兄の名前を語る。マルティン。偶然というものも馬鹿にならない。縁があったのだろう。マルティンによろしく伝えてとお願いして、車は南へ。

サン・カルロス。
南へ行くと寒くなるのは、日本では無い感覚だ。
雪が降っている。よし、スキーだ。
幼き頃、自分一人で滑って、こけて、歩けなくなった時。変な声の母に早く立てと叱られ、無理やり靴を脱がされ起こされた。後で、医者に行ったら、捻挫の上で、何かさらに負荷がかかって骨折していると。
そんなことを思い出しながら、スキーを楽しむ。
今度は海が見たくなってきた。
バルデス半島へ。
初めての大西洋の海。広がる星空。宇宙。
真っ暗じゃなくて、真っ黒な光景。
化石の森や洞窟などを経て、エル・カラファテへ。
久しぶりにホテルに宿泊。ここまで来たら、最南端へ。そして氷河を見よう。
最南端のウシュアイアにたどり着く。
ブエノスアイレスから、約3000km。寄り道をしたから5000kmぐらいかな。
ビーグル水道が、橙色に染まっている。
車のハンドブレーキはかけずに降りる。そして、後ろからそっと押す。
橙色の車はゆっくりと動き出し、やがて橙色に染まる水道の中へと飲み込まれていった。
さて、日本に戻るか。それとも、南極まで・・・

出会いと別れ。
自分も離婚して色々あるのだろうが、ここアルゼンチンだって人には色々とある。マルティンだって、厳しい生活の中でも、楽しくタンゴを踊る。
旅の中で様々な人と出会い、別れ、その旅路に自分の人生を振り返る。
やがて、たどり着く最果て。
ずっと一緒で、もはや自分自身と言ってもいい中古車とさよならする。
中古車もたくさんの人と出会い、別れをしてきたのだろう。
その最後の人となる。その橙色の姿は、美しい最果ての橙色の景色と共に女性の心に刻まれる。きっと、中古車だって、最後にその風景を見て、女性と自分の過ごしてきた世界とお別れしたはずだ。
さよならの中にありがとうが見える。
だから、最果てでも、ゴールしてもまた進み始められる。
そんな素敵な人生の歩みが女性を通じて感じられる。

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