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2016年1月30日 (土)

私は、捨て犬だった【ikiwonomu】160130

2016年01月30日 東山青少年活動センター 2階創造活動室 (50分)

音響が凄いというのは事前情報で聞いていたが、本当に凄い。
どんな仕組みなんだろう。本当に自分の目の前で雨の音や犬の声が聞こえてくる。
あれはいいですね。元々、頭の中でイメージしやすい作品だと思うのですが、その臨場感が相まって、より想像力を膨らませて作品を楽しめたような。
こういった観劇ができると、観終えた後も、何度も噛み締めて味わえるから凄く楽しいんですよね。

作品は2年前に拝見した公演の中の一作品。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/50-00f1.html

捨て犬だったわたしの生の時間。
自分を大切にしてくれた人の長い人生の中の一部に刻み込んでもらえた。その人の人生のターニングポイントに、いつもわたしがいた。
これからもそうありたかったけど、時間には逆らえない。でも、わたしを引き継ぐものたちの時間を、またあなたの人生の一部にして欲しいな。そんな繋がる想いを胸に迎えに来た死へとわたしは旅立ったように感じます。
わたしの死の時報が鳴ろうと、回り続ける時計。そして、そんな時にも、新たな始まりの時報がどこかで鳴っている。
生まれてくること、そして、生きること。その中で大切な人と出会って想いを通じ合わせること。そんな時間に幸せを感じ取って、そのことを次に伝え繋げること。
繋がる想い。その連鎖が幸せな世界を生み出すことを感じさせる素敵な作品でした。

<上記リンク先も、下記もあらすじがネタバレします。リメイク版なので、白字にはしていませんので、ご注意願います。公演は日曜日まで>

1、わたしはすていぬだった
どしゃ降りの雨の中。
クーン、クーン。捨て犬の自分のことなど誰も目に留めてくれず、目の前を通り過ぎていく。
疲れて眠くなってきた。
これ、死ぬな。せっかく生まれてきた命だが、短い人生ならぬ犬生だった。わたしは眠りにつく。
通りかかった男。持っていた傘をその犬の横に立てかけ、雨をしのげるようにして、立ち去っていく。

2、命の恩人はだれだ
目を覚ます。朝になりすっかり雨もあがったらしい。
鼓動。生きてた。生の喜びを露わにするわたし。
ふと見ると、傘。このおかげだったのか。いったい誰が。
クンクン。気がつけば、匂いをたどって走り出していた。

3、売れない漫画家
見つけた。チャイムを鳴らす。なかなか気付いてもらえなかったが、しつこくチャイムを鳴らして、ようやく。
男は何だ、こいつって表情。わたし、わたし。必死にパントマイムで説明。
やっと分かってくれたみたい。でも、男はそれで何って表情だ。
わたしを飼って。冗談じゃない、出て行け。
そうですか。力なく立ち去るわたし。
お腹がグーって。さようなら、わたし、きっと餓死するんだわ。
その恨めしそうな目に耐えきれず、男はわたしを家に入れる。
ポ、ポ、ポ、ポーン。わたしの犬生の始まりの時報が鳴る。
男は漫画家。仕事で忙しそうだけど遊んでもらう。
いつものように遊んでもらっていたら、疲れていたのか男は倒れてしまった。

4、おとなりさん
大変。すぐに隣の家に行って、チャイムを鳴らす。
女が出てくる。まあ、可愛らしいワンちゃん。そうでしょ、クーン、クーン。って、違う。早く来て。
女を家に引っ張り込む。
女は男に栄養をつけさせるために手料理をふるまう。
美味しい。わたしも、わたしも。男に叩かれる。
男は女を見つめ、何やら言っている。芽生える恋心。でも、女はダメですと出て行ってしまう。
どうしたの、何かあったの。うるさいと男に叱られる。
女がまた戻って来た。気持ちを落ち着けて考えました。よろしくと。
どうしたの、何があったの。今度は男は笑顔だ。ものすごく嬉しそうだからわたしも大笑いした。
ポ、ポ、ポ、ポーン。男と女の、そしてわたしの新しい時間が始まりました。

5、幸せの青い鳥
新しい生活。
男は仕事を頑張り、女は家事をして男を支える。わたしは男に遊んでと邪魔をする。
家に何やら気味悪い青い鳥が侵入。
うわっ何こいつ。ビビってないで追い払って。
家に男が入ってくる。この鳥の飼い主だったらしい。
ご迷惑をおかけしまして。何かありましたら、こちらにと名刺をもらう。いえいえ、どうも。
と、女がその名刺を見ると、男は編集長だ。
ビッグチャンス到来。すぐに戻って来てもらって。

6、おしごと
再び家に入ってきた編集長。男はじっと黙っている。しっかり自分をアピールして。作品を読んでもらって。
編集長は作品を見る。
沈黙。こっ、こっ、これは・・・
では、お暇せさていただきます。
いやいや、まだ作品はありますからと、編集長を帰さない女。
再び作品を読み出す編集長。
わたしは暇なので、青い鳥がけっこういい匂いがするので腕に噛み付いてやった。思ったほどの味はしない。青い鳥は大慌てで逃げていく。
再び沈黙。こっ、こっ、これは・・・
いける。これはいけますよ。
チャンスを掴んだ。これから忙しくなるぞ。
編集長は、また青い鳥を探しに急いで家を飛び出して行った。

7、犬だって恋をする
男はバリバリ仕事中。女もそれをしっかり支える。何とも素敵な夫婦。
何か寂しい。一人遊び、虚しい。
わたしは町中に出る。
チャラそうな犬が近づいてくる。ベタにメガネを落としたフリをして。
でも、そんな寂しい心の隙間を彼は埋めてくれる。芽生える恋心。
ウキウキ気分で帰宅。
男と女は帰りが遅いわたしを心配していたみたいで、良かったと抱きしめられた。
わたし、今、幸せだ。幸せ過ぎて、テンションおかしい。
吐き気がする。病院に連れて行ってもらったらおめでただって。
あの人にも伝えようと思ったけど、とんでもないブス犬連れて歩いていた。
子供が生まれる。
ポ、ポ、ポ、ポーン。わたしはお母さんになりました。
子供たちは、色々な家へと渡されていく。幸せになるんだよ。そして、幸せな家にするんだよ。
ポ、ポ、ポ、ポーン。ポ、ポ、ポ、ポーン。ポ、ポ、ポ、ポーン・・・
たくさんの子供達の新しい犬生が始まりました。

8、犬だって年をとる
年のせいか体が重い。
病院に連れて行ってもらう。
もう、長くはありません。女は涙を流していた。
ポ、ポ、ポ、ポーン。ポ、ポ、ポ、ポーン。ポ、ポ、ポ、ポーン・・・
時は残酷にも進み、わたしの最期を迎える時が近づいていることを知らせる。

9、私は捨て犬だった
わたしは、捨て犬を発見。
この子をまたよろしく。
男と女はその子を笑顔で抱きかかえる。
ポ、ポ、ポ、ポーン。新しい命の始まりの時報が鳴る。
あの日みたいな雨の中。
わたしはあの日のように眠りにつく。あの日は不安と絶望の中でだったけど、今は幸せ、満足、感謝、生み出した命への希望のような温かい気持ちでいっぱい。
だから笑顔で。
ポ、ポ、ポ、ポーン。捨て犬だったわたしの幸せな犬生が終わりました・・・

始まりと終わり。生と死。
それは進む時間の中で、巡り巡って、たくさんの生きるものの幸せを蓄積していくような、どこか輪廻転生を思わせるような優しく安堵を覚える温かい作品だと思います。
未来はきっと素晴らしい。だって、こんなに素敵な想いが時の中に刻み込まれて、時間は進むんだから。
そんなことを感じさせます。

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コメント

SAISEI様

ここもお好きですよね。私も今回候補に入れていたのですが。。大阪5本となりました。次回は必ず行きたい(笑)

ちなみにアカルスタジオでやってる『愛のメソッド』って観劇予定に入れられてますか?

昨年8月の劇団SOLAのメンバーも何人か出演(高安智美さんetc)されています。

14日まで毎日やってます。平日は19時~、土日祝は12時~、16時~です。トリプルキャストですね。もし行かれるのでしたらメインキャストの出演一覧表ありますので(笑)

10日までメインキャストの出演は決まっていて投票の結果選抜メンバーが11日以降のメインキャストをはるようです。

shortのliveがついてるSOLAの日もあります。

前に書きましたっけ? アカルスタジオのオーナーは『ガラスの仮面』の作者美内すずえと言うのは?

僭越ながら御参考まで(笑)

投稿: KAISEI | 2016年2月 3日 (水) 18時29分

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