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2016年1月17日 (日)

クラウドエンド【激団リジョロ】160116

2016年01月16日 インディペンデントシアター2nd (140分)

臨場感あふれる舞台の空気に、心情を真摯に吐露する人物の表現。
狭いバスの中を一つの社会の縮図として捉えながら、そこにある人間の命を見詰めようとしている作品。
人が単純に持つことが出来る悪意や憎しみによる負の連鎖が数々の人の命を奪う。でも、それを止めることが出来るものも人は持っている。優しさや善意や思いやり。そんな感情は、どんな人にでも、そこに命があるという尊さを分かっていれば、自然に生み出せるはずだという人を信じる祈りが込められているような話だと感じます。

<以下、ネタバレしますのでご注意願います。今月末に東京で公演もあり、公演期間が長いので白字にはしていません>

新宿発大阪行きの夜行バスの臨時便。
若手運転手の宮崎は、自分勝手な言動ばかりの乗客たちにイライラしている。同乗する先輩運転手、榊原は今日が最後。宮崎をなだめながら、そんな乗客に対応する。榊原は臨機応変に仕事をしない。その割に、客受けはいいような振る舞いをして、飄々としている。それがまた、宮崎の苛立ちに拍車をかけているようだ。
何やら怪しげな占い師のような風貌の女性、緒方。タロットカードを取り出し、このバスに不吉な運命を感じるような、げんの悪いことを言っている。
おっちょこちょいっぽい都井という男も、人は悪くないのだろうが、何か苛立ちを感じさせるような行動が多い。
ゲイバーにでも勤めているのか、佐川は、オネエ言葉で高飛車に乗客名簿に自分の名前が無いことにクレームをつけて、大阪までのタクシー代を出せと言っている。宮崎は徹底抗戦の構えだったが、榊原の計らいで席を二つ占有することで折り合いをつける。
スーツ姿の三島は、客意識が強いのか、偉そうな態度を崩さない。
女子大生二人組、松永と宅間は、周囲に気を配ることなく、おしゃべりしてはしゃぎ、わがままを言いたい放題。
顔色が悪いようだが、一人おとなしくまともそうな大山。地下鉄に乗って、このバス乗り場まで来ている。
その地下鉄に一緒に乗っていた松葉杖に、右目に眼帯をした女性。ギリギリ発車に間に合う。宮崎の傲慢な客対応で、足が悪いのに、急いで席につくように促され、転倒。大山がすかさず抱き起こす。
こんな車内の空気が悪い中で、バスは出発。消灯。
大山は乗客全員に襲われる悪夢を見てうなされる。バスは休憩に入る。
大山の姿を見て、緒方は大山が8年前に傍聴した裁判の加害者であること気付く。出所してきたらしい。
よく、バスなんかに乗れるものだ。どうりで、このバスはおかしな空気なわけだ。怒りが蓄積している。何やら良くない運命を感じる。
緒方はバスを降りると言い出す。宮崎はその勝手を許さない。揉み合いになり、それを止めようとした乗客も巻き込んで、より険悪なムードとなる。
緒方はさらに、皆にもバスを降りろと言い出す。宮崎は完全にブチ切れて、乗客たちに暴力をふるい、運転も放棄しようとする。なだめようとする榊原。
その時、宮崎のうめき声。刺されたみたい。続いて、榊原は拳銃を手にして、車内で発砲。
負傷している宮崎に無理やり運転させて、バスは再出発。

榊原はバスに細工をして、携帯は使用不可能、時速80km以上でしか走行できない状態にする。
榊原は一冊のノートを三島に手渡し、読み上げさせる。
ある夫婦が轢かれて亡くなった、飲酒、スピード超過で起きた交通事故。現場の急ブレーキ痕、加害者の救命行動が認められるものの、飲酒の罪は重いと懲役7年。
加害者は大山。
榊原は、緒方と同じくその裁判の傍聴人だった。
榊原の妻と子供は飲酒運転の車に轢かれて亡くなっている。自分の時もそうだった。懲役数年で社会に戻り平然と生きる加害者。
これから裁判を始めると。このバスの中には様々な人が集まった。いわば、社会の縮図。乗客を陪審員として、大山の罪をもう一度裁くつもりらしい。
佐川は死刑を宣告。都井もそれに賛同。女子大生たちは、どうして自分たちがと答えを出せない。
緒方は妥当だと判断。ただし、大山が偽証をしていないなら。例えば、事故後に飲酒をわざとして、意識が朦朧としていたことにしたなら無期懲役だと。
榊原は、判決が決まった時に、微笑んだ大山の姿を見逃さなかった。それは緒方もそうだったらしい。だから、こんな疑いが出てきているみたい。
そんなことどうでもいい。人を殺したんだ。死刑だ。
悪意がバスの中の皆を支配している。まともな判断ができない状況になっている。
都井は、自分が裁くとナイフを手にして大山を刺そうとする。それを白石はかばう。
榊原は言う。被害者の娘であるあなたがどうしてかばうのか。
榊原は大山に酒を飲ませる。悪意が漂うバスの中。酒に酔って、冷静な判断も出来なくなっている意識朦朧とした状況。これは、事故の時の大山の心の中の世界と同じ。
榊原が運転をする。
大山は事故の真相を語る。それは、榊原や緒方が言っているとおりだった。
三島は、一人だけ冷静。家族のことしか頭に無い。大山がどうであろうとそれは関係無い。今は、早くここから解放されたいだけ。
そんな中、宮崎が力を振り絞って榊原に襲いかかる。バスは轟音をあげて衝突する。

大山が目を覚ます。
ここはどこなのか。白石は空が近い果ての地だと言う。こうなることを全て知っていたかのように。
復讐だったのか。
それを白石は否定する。
大山は、事故のことを語る。
細々と経営していた町工場。贅沢はできないものの幸せな家族。ある日、工場は倒産。消沈した父は、その後、車に轢かれて亡くなった。母も後を追うかのように病気で亡くなった。倒産の原因は多額の借金。自分が跡を継いだ時に少しでも楽なようにと、事業拡大の投資をしたらしい。でも、それは騙しだった。そして、騙したのが白石という男だった。
白石は謝罪の言葉を口にする。悪い人だったのかもしれない。でも、私には優しかった。体の悪い私を大切にしてくれた。孝行してあげることもできずに、急にいなくなって悲しんで悲しんで、泣き続け、目を悪くした。運転手も本当は優しい人。私たちはここに来たかった。空が近いここに。
でも、あなたは生きて欲しいと。
これは復讐ではなかった。大山が犯した罪によって、轢き殺した二人だけでなく、一人の女性の生を奪った結果だった。

榊原が現れる。白石を迎えに。
突っかかる宮崎を三島は制して、自分たちがどうなるのかを聞く。
ここに残ることも出来るし、バスに戻ることも出来る。衝突前に。でも、衝突は避けられない。どうなるかは分からない。
宮崎は皆にバスに乗るように言う。これまでのことを詫び、自分が運転手として必ず皆を目的地まで送り届けるからと。
白石は、榊原とここに残るつもりだったが、榊原に謝り、バスに戻ることにする。まだ、両親には会えない。どんなに厳しい世界でも、悪意にまみれた嫌な世界でも、自分はその世界で生きてみようと決心する。結局、元々、自殺願望は強かった緒方だけが榊原と共に残る。まだ、生を捨てない者たちの繋がりが生み出す奇跡を信じて送り出す。

バスが走っている。戻ってきた。
榊原と緒方は死んでいる。魂が向こうに残ったからだろう。
衝突は避けられないのか。宮崎は必死に運転するが、その手は暴走を続けるバスのハンドルから離すことができずに、やがて轟音。
三島が目を覚ます。特に大きな怪我はしていないようだ。皆の名を叫ぶが、誰も気付かない。
大山がかすかな声をあげる。三島はすぐに助けを求めにどこかに走り去る。
大山は、白石を探す。息絶え絶えの白石が見つかる。
白石は大山を見て、安堵の表情を浮かべながら、友達になって欲しいと言う。
バスに戻ったのはこうして話をしたかったから。ほんの少しの間でもいいから、憎しみの無い、二人の時間を分かち合いながら過ごしたかったから。
もっと早くに白石が大山に声をかけていたら。加害者と被害者の壁がそうさせなかったのか。悪意に囚われて、憎しみを生み出さなかったかもしれない。
白石は大山に楽にして欲しいと願う。大山はピストルを手にする。
生きたかった。そう叫ぶ白石。でも、彼女が選択するのは死。多分、生の尊さを誰よりも知っているから、自分ではなく、大山の生を願ったのかもしれない。
大山に撃てるはずがない。三島が戻ってくる。助けが来るから冷静になれと諭されるが、苦しみ続ける白石の姿に大山は苦悩する。人が生きることを白石を通じて知った今の大山に、あの頃のように簡単に人を殺めることなどできない。
救急のサイレンが鳴り響き、近づいてくる。
大石は車内に発砲する。白石は、最期の声をあげて、大山の腕の中で命を終える・・・

命の重みを扱った作品と言えば、私の中では、もう4年前に拝見したフローズンですね。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/120122-d20d.html
殺人犯とその被害者の家族という設定は、よく似ていると思います。
フローズンはその間に精神科医を挟み、二人だけの狭い世界でのやり取りを通じて、その心情を描写しています。ただ、その会話から、犯人の生い立ちが浮き上がるような構成。
この作品も似た感じの構成ですが、狭いバスの車内を一つの社会のように捉え、私たちが生きている同じ社会で、こうしたことが起こっていることをより突き付けているように感じます。

大山は、両親が不幸な目にあった、そして、そういう風にした奴がいたという、一本線で単純に事象を繋げて、そこに殺意を芽生えさせたようです。憎しみを生み出す構図なんてものは、こんな風に簡単なものなのかもしれません。考えてみれば、どんなことも悪意に結びつけてしまうことなど本当に簡単な話で、そんな風に悪意に囚われてしまえば、それを憎しみまで増幅するのは時間もかからないことでしょう。
それに比べて、人の優しさ、善意を本当に感じ取ることは何とも難しいことなのでしょう。
極端に言えば、憎しみなど、出会ったその瞬間から生み出すことができますが、愛は時間をかけて、話し、寄り添い合わないとそこまで至らない。
これが人の性だというなら、何とも悲しい話ですが、そういうものなのだから、そう易々と憎しみの感情を剥き出してはダメなんだということを知っておくべきなのかとも思います。

白石の両親を殺した大山、大山に両親を殺された白石ともに、二人の時間はあの事件から止まったままのようです。榊原も妻と子供を失った時からそうだったのでしょう。
榊原はその止まった時間に終わりを与えようとした。もう、辛かったのでしょう。人間、そんなに憎しみだけ抱えて生きていけるほど強くないのでしょうから。
白石も同じだったのでしょうが、彼女の憎しみは自分自身に向けられていたかのように見えます。これもまた、辛いでしょう。もう終わりにしたい。その気持ちを否定することはとても出来ません。ただ、彼女はそれと同時に大山の時間を再び動かしてあげようとしたように感じます。
これが許したということなのだと思います。
大山は白石と出会うことで、自分の罪を本当に知ると同時に、時間を取り戻したようです。この作品が何とも辛く苦しいと感じさせる理由の一つに、この時、白石の時間も動き始めたように感じるのです。
彼女が大石に自分の気持ちを伝え、そこに許しを与えたことで、彼女自身も囚われていた自分への憎しみから解放されたように見えます。
でも、一度、捨てようとした命を取り戻すことは出来ませんでした。本当なら、二人で止まっていた時間を分かち合い、これからの時間を互いに、そんな憎しみの念から解放されて生きていければよかったのでしょうが、そういかないのが現実でもあるようです。
結局、遡れば、大山が命を奪ったという事件に行きつきます。それだけ、人の命を奪うということはどれだけ重いということなのかだと思います。
一つの命を奪うことで負の連鎖が起きて、これだけの人の命が消えた。でも、そこには残された命の重さもあります。
憎しみある限り、その連鎖は止まらない。白石の優しさと善意によって、止まった連鎖。車内で残された命はその重みをもって、これからも大切に育まれないといけないのだと感じます。

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コメント

SAISEI様

この公演が私の未就学児嫌いの原点ですね(苦笑)

公演はまあ良かったと思うのですがそれが跳ぶくらいムカつきました。

公演途中で複数の子供がぐずりだしそれをあやすためか計4箇所で携帯の光が点くという。

最近は親が常識ないから。

もう最悪でしたわ(笑)

投稿: KAISEI | 2016年5月11日 (水) 01時57分

>KAISEIさん

本当に観劇環境が残念だった時の悔しさはねえ・・・(`Д´)
現実的には、年に数回は覚悟しないとしょうがないですね。
私は個人的には、子供のぐずりは仕方ないと。でも、それにしっかり対応できない親にイライラ。
あと、単純になぜか、舞台描写をしょうもないそのままの言葉で解説してくださるおバカな方がねえ・・・
観劇中のお喋りは本当に嫌いで、つまみ出せばいいのにぐらいに思っています。

投稿: SAISEI | 2016年5月15日 (日) 19時49分

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