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2016年1月22日 (金)

ハイアガール【夕暮れ社 弱男ユニット】160122

2016年01月22日 京都芸術センター 講堂 (110分)

生きていると降りかかる様々な嫌なこと。突然、やって来る大切な人との別れ。
悲しく、辛く、苦しく。
どうして、こんな目に合うのだと怒り、何かを憎み、でも、何に怒ればいいのか、何を憎めばいいのか分からず、絶望の中、孤独に彷徨う。
そんな時に、ふと周囲を見渡してみると、自分と同じように苦しみ、悲しみの世界にいる人が救われたいと必死に頑張っている。
その人に寄り添い、手を携えてみたら。
きっと、二人で笑顔になって、これからのことを語れる時間が生み出される。
悲しみや苦しみは自分だけにあるものではない。皆と一緒になって、それを消し去っていきましょう、そんな社会が出来上がればいいなということを、ある町、その町の人たちを社会とそこで生きる私たちに見立てて、伝えているような話でした。
悲しみの中に、希望を確かに感じさせる温かい作品だと思います。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

ある町に引っ越してきた高校生の実可子。
親の離婚で、銭湯を経営する親戚に預けられることになった。
この町のことを知りたい。学校の誰も来ないような高いところから一人、町を眺める。
声をかけてくる女の子、りん。町の景色を説明してくれる。聞けば、銭湯の近くのマンションに住んでいるみたい。
二人は何か惹かれ合って仲良しとなる。
この日も、いつものようにじゃれ合いながら会話をする。実可子は嫌なことばかりで落ち込んでいたので、グルグル回って忘れようとしていた。これは、りんから教えてもらった方法。ほんの一瞬だけだが、全部、忘れてスッキリする。実可子は一緒に回ろうとりんにも無理やりにさせる。それから、りんは煙突に登ると言って去っていった。この前も危ないから登ったらダメだとおじさんに叱られたから、重々気をつけるようにと実可子は声をかける。りんは実可子に手紙をくれる。実可子がりんを超えられない10のことが書かれているらしい。いつものようにお節介な子だ。また明日。二人は別れる。

ヤンキーカップルが彼女の運転でドライブ中。彼氏の好きなラーメン屋に向かうみたい。
でも、車内の空気は悪い。
女は事故るぞ、止めるぞ、降りろと男に喧嘩をふっかける。挙げ句の果てには、路上に車を放置して泣き出す。どうやら、男の浮気が原因なようだが。
女をなだめていると、男は煙突の上に女の子がいることに気付く。
滑舌が悪い、本人曰く、口のメカニズムが悪い女が自らの不幸を嘆いている。とにかく人に言葉がきちんと伝わらないのだから、色々と不便だ。
例えば、今がそうだ。煙突の上に女の子はいる。危険だと通報するが状況を理解してもらえないのだから。
病院から逃げ出す女。いつものことらしく、声の大きな弟が連れ戻しにやって来る。
無理やり抱きかかえて病院に戻ろうとする中、煙突の上に女の子がいることに気付く。
そんな目撃者がいる中、女の子は煙突から落下した。
実可子が嫌な予感がして駆けつけた時は、現場はブルーシートで覆われて、悲惨な状況を物語っていた。

銭湯。
おじさんは散々、煙突の管理が不十分だと警察に絞られたらしい。あんな事故があったからと客も遠のき、気分が落ち込んでいる様子。
その上、おかしな客が今日も来ている。病院から逃げ出して来る女。この女はいつも、煙突から出る灰ののせいで、自分の体、この町がおかしくなっていると中傷してくる。直に映画監督を目指して、自主映画を撮影しているとやらの弟が迎えにくるだろうが、女はヤンキー男の刺青に興味を示し、ヤンキー男を怒らせてしまっている。
女が風呂に入っている間に、弟が来る。ヤンキー男は弟に絡む。連れ出され、一発蹴られたみたいだ。その間に女は逃亡。弟は後を追おうとするが、その名前にヤンキー男は興味を示す。
りんを知ってるよな。二人は連れ立ってどこかへ行ってしまう。

実可子が戻って来る。
高校生なのに酒を煽る。
落ち込みは激しく、どうしたらいいのか分からない自暴自棄な状態らしい。
そんな実可子の姿を見て、自分ならば彼女を理解できると動き出す男。銭湯でバイトしているが、全く使えない男だ。自分の母が入院をしていて、その悲しみを昇華させる方法を知っているらしい。
今は事実を受け止められず逃避している状態。
りんのことを思い出そう。そして、その死を受け止める。それから、その死に怒りを向けよう。
実可子はりんとの時間を回想していく。
出会った時のこと。
りんがヤンキー男と付き合っていたこと。カラオケが上手いらしい。カラオケとビリヤードが上手い男には騙されるという定説を唱えている実可子は大反対したが、それでも自分が決めたからいいようなことを言っていた。結局、その男の彼女と揉めて、別れることになった。
ゾンビになりきる練習に付き合わされたこと。映画監督に見込まれて、自主映画を撮影するのだとか。すでに、よく分からないが監督の自宅でインタビューに答える形式のPVを撮影してもらったらしい。そこの姉からは、弟に手を出そうとしているアバズレ呼ばわりされたみたい。それでも、本編で活躍するためにも頑張らないとと張り切っていた。
いつも気分が落ち込むと二人でグルグル回った。

口のメカニズムが悪い女は、りんの死をヤンキー女に伝える。ヤンキー女は自分のせいなのかと落ち込み、男に当たるようになる。
病院を抜け出す女は、弟に見つからないようにと、タイの口のメカニズムを治すドクターを紹介する代わりに、女に自分の身代わりを頼む。
監督とヤンキー男は密会。あの監督が撮影したPVや部屋に忘れていたハンカチと、ヤンキー男の部屋に残るバスタオルや歯ブラシの取引をしている。

実可子はバイトからプロレスのエルボー指導。
怒りを最大に表現する。同時にその痛みをしっかりと受け止めるために。
怒れ。バイトから煽られる実可子は、りんが死んでいなくなったこの町、それでも、悲しみ苦しむこともなく、何も変わらずバカなことをしている皆に怒りを向ける。
いったい誰が悪いのか。抑うつの状態を彷徨う実可子。
実可子は煙突にたどり着く。あんな煙突があったから。潰してしまって。そう言う実可子の言葉をおじさんは受け入れ、潰して銭湯も更地にしてしまうことを決断する。もう、自分だって嫌だ。すっと我慢をし続けて。おじさんは亡くなった両親の仏壇に手を合わせ、長年守ってきた銭湯を潰してしまう自分を贖罪する。
監督はもう、姉に我慢できなくなる。こんな姉がいたら、ろくにシナリオも書けない。姉を見捨てて、東京へ行く決心を固める。
ヤンキー女は男にナイフを向けて、すべてを終わらせようとする。出会わなければよかった。未遂に終わったが、格闘の末、二人は倒れこむ。
口のメカニズムが悪い女はタイへ向かう。もちろん、ドクターに会うために。

バイトの母が亡くなった。
自分は悲しみを昇華できると思っていた。でも、今、そんな悲しみをどう乗り越えればいいのか分からない自分がいる。
実可子はバイトにたてつく。どうにかしろ。どうにかしてくれると言ったから、ずっと言うことを聞いたのに。
バイトはどうすることも出来ない。ただ、悲しいのは自分だけじゃないことが分かったとしか答えられない。

実可子は煙突に登る。
それを見た病院から抜け出す女はダンボールを手渡し、フタをするように求める。実可子はフタをする。女はすっかり元気になった様子。
弟がやって来る。実可子に危ないから降りろと叫ぶ。
ヤンキーカップルは、別れることを決意する。
遠いタイでは、女は希望を抱いて手術に臨む。
実可子は煙突から降りる。
煙突にはまだ、りんがいるみたいだ。
実可子はりんから渡された手紙を読む。
そこには、自分がりんを超えられないことが書かれていた。そして、自分の好きなところが書かれていた。
明日は治した方がいいことを渡すと書かれている。
お節介なりん。でも、今、自分がしなくてはいけないことが分かったような気がする。
実可子はバイトにエルボーを食らわす。そして、ただ抱きしめて泣き合う。

1年後。
口のメカニズムが良くなった女が帰国。
変わらぬ懐かしい町に戻って来る。でも、そこには煙突が無い。
銭湯を訪ねたら、最新式のボイラーを導入して、煙突を無くしたらしい。色々なアイディアでずいぶんと華やかな銭湯になっている。
銭湯に飾られている絵は、あの病院を抜け出す女が描いたのだとか。そんな才能があったらしい。今は弟と一緒に映画を撮影しているらしい。
ヤンキー女は妊娠。別れた男はラーメン屋を始めた。たまに出会った時は、あの頃とは逆に男の運転で、憎まれ口を叩きあいながら、女を家まで送ったりしているらしい。
実可子は、あれからバイトと交際を始める。でも、所詮、傷の舐め合いから始まった付き合いだからだろうか、もう別れるのだとか。と言ってるらしいが、二人はまだ一緒に住んでいる。
銭湯で撮影が始まる。撮影はもちろん、監督。お得意のソンビ映画だ。
姉と実可子がゾンビ役。実可子は名演技を魅せる。当たり前だ。りんとたくさん練習したのだから。

煙突の上からりんの声が聞こえる。
実可子が治した方がいいところ。
まずは私以外に友達を作りなさい。
そして、以下、たくさんのダメ出し。でも、結局、同じことが書いている。何をしても、すぐに笑って誤魔化してしまう。
でも、その笑顔が私は大好き。
一緒の大学に行って、ずっと友達でいようね・・・

実可子が煙突に登った時と、りんは同じような気持ちだったのでしょうか。
どうにもならない悲しい、辛いことがいっぱい。でも、お節介で優しく、いつも人のことを思いやれるりんは、それを誰かのせいだとか、何かのせいだとか考えずに、みんなも同じように悲しく、辛いけど頑張っているのだからと思ったような気がします。
そんなみんなが頑張っていることを確かめるように、町全部が見渡せる煙突に登ったのかな。忘れて前へ向いて頑張ろう。いつものグルグルの癖が災いしたのか、勝手に頭が回ってしまい、バランスを崩してしまったのか。
実可子をはじめ、降りかかる様々な嫌なことが、全部、何かのせいだと怒り、憎しみ、そこで感情を止めてしまったような人がたくさん登場します。その怒り、憎しみの矛先が見つからず、絶望し、孤立してしまう。
本当に悲しみを昇華する方法をりんは知っていたのでしょう。その絶望、孤立の先に、それをしっかりと受け止め、笑顔で未来を語れるようになる時がくることを。笑顔が素敵な実可子にはきっとそれが出来る。そして、そのために必要なのは、周囲も同じように悲しみ、苦しみの中にいて、自分と同じように救いを求めて手を差し出していることを知ること。その手を掴んであげることが、自分自身も救われることに繋がる。要は思いやりの精神でしょう。
実可子とバイト、ヤンキーカップル、姉弟はそれを知らぬうちに、りんの遺志に導かれるように実現することが出来たのでしょう。
口のメカニズムが悪い女は、りんと同じような生き方が出来る人、銭湯のおじさんは、皆がそんな想い合いで繋がる町で生きていけるような場を守る人として存在しているように感じます。
人の心が救われることを温かく描いた素敵な作品でした。

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