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2015年12月22日 (火)

せんたくの日和【空晴】151222

2015年12月22日 インディペンデントシアター2nd (90分)

ちょっと無理やりだろうってところも多々あるけど、勘違い、スレ違いを上手く活かしながら、話を進め、色々とある現実の中に人の想いを見つけ出していく。
数々の選択の結果の今。どうしようもないことだってたくさん。でも、選択したことによる何かは絶対にきちんと残っている。
それは自分だけのことではなく、自分の大切な人のことも思って、繰り返してきた選択だから。

生きていると色々な厳しい現実が降りかかってくる。ひたすら耐えて、頑張り続けていると、心にも汚れが溜まってしまうのかな。ちょっと洗濯。いつだってすればいい。
汚れを落として、新しい気持ちで。そうしたら、きっと見えなくなってしまったものも、澄んだ目で見れるようになるのかも。
そこには、きっと人の心温かいものがあるように感じさせられる作品でした。

<以下、ネタバレにご注意願います。大阪は本日まで、年明けに福岡で公演があります。公演期間が長いため、白字にはしていません>

洗濯日和。
洗濯カゴを抱えて、2階のベランダに向かう登志夫。
話があると訪ねてきた妹のさなえの彼氏、豊田は、ぐっすりと寝てしまっている。職場で事故にあったらしく、左手足にギプスをしている。さなえは36歳。歳はけっこうくっているが、付き合いの長いこの男と一緒になってくれたら。
これだけなら普通の光景だ。
ところが、スーツ姿の見知らぬ男がいる。
不審者扱いをして、ひどく牽制する登志夫。聞けば、隣のまきこの婚約者なのだとか。隣で待ってろと言われたらしい。登志夫はまきこの幼馴染。こんなに若い25歳の男を掴まえたとは。先ほどまでの無礼は棚に上げて喜ぶ。月島というようだ。
ということは、今日は挨拶に。まきこの両親と姉は、ハワイから帰って来たばかり。両親には今日のことを旅行前から伝えているらしい。旅行から帰って来て、テンション上がっているタイミングを狙うとはまきこらしい。でも、姉が大反対しているらしく、不安な様子。
まあ、お茶でも入れると登志夫は1階へ。

そんな登志夫と月島の二人のやり取り。
と思いきや、その会話を聞いていたのは二人だけでは無い。
一人は豊田。寝たふりをしている。理由は一緒に連れて来た女の子を隠しているから。豊田はその子からお父さんと呼ばれているようだ。今日、話したいことと関係しているのだろう。
もう一人は、半年前までここに住んでいたヨシと呼ばれる従兄弟。もう30歳になろうとしているのに、東京で寿司の専門学校に通うために長年、居候をしていたこの家を出ている。今日は話があるから久しぶりに戻って来た。サプライズで登場しようとしているみたいだ。
そんな中、もう一人の訪問者。たどたどしい喋りではっきりしないが、クリニックに勤める早乙女。さなえのことで大事な話があるのだとか。自分はさなえの担当。右胸に白い影。消し去るために最善を尽くすつもりだが、状況は芳しくない。でも、諦めてはいないと。
さらに、まきこの姉が不機嫌そうにやって来る。しばらく、家に帰るつもりは無いのだと。大金はたいて連れて行ったハワイ旅行が最悪。ずっと雨だし、親も日本の方がいいとちっとも喜ばないし。
そんな面々が、互いにスレ違いや勘違い、嘘で誤魔化した会話を繰り広げながら話は展開。
果たして、皆はきちんと話したいことを、話したい人に伝えられるのか・・・

ミスリーディングを上手くさせるように登場人物の素性を隠し、勘違いやついた嘘から引き起こされるスレ違いを活かして話を進め、いつの間にか、皆が互いに想い合っていた家族のような存在だったことに気付かせる温かい空気のラストを迎えるパターンはいつものとおりか。

色々とあるのだが、結局、月島はまきことの結婚の挨拶をまきこの姉にきちんと、豊田はさなえとの結婚の挨拶なのかははっきりしないがとにかく登志夫にきちんと話を、そして、さなえの件は深刻だが、暗くしても仕方がないので、よしが早乙女と一緒に登志夫に上手く話すことになる。
その大事な話がしやすいようにと、部屋をハワイ風に飾り付けるという行動を、月島、よし、豊田、早乙女たちが取る。
飾りつけられてすっかりハワイとなった部屋。
入ってきたまきこの姉は激怒。思い出したくもないハワイ。月島の挨拶にも否定的。でも、月島はこの部屋の飾りつけをするために、まきこの両親に会いに行っている。部屋の飾りつけのためのハワイグッズを借りに。その時、両親はめちゃくちゃにハワイ旅行のことを楽しく語っていたのだとか。もう歳だから、最後の海外旅行だろう。連れて行ってくれた娘への感謝、最高の娘だと言っていたらしい。照れくさくて素直には喜べなかったのだろう。きっと通じ合っている親子だから逆に。また行きましょう。今度は月島がみんなを連れて行けばいいのだから。
よしが来たのは単純な理由で、向こうで知り合った友達が大阪で店を手伝うので、ここに居候させて欲しいとお願いに来たらしい。よしが居候していた時に、よく面倒を見ていたまきこの姉は、てっきり東京で上手くいかないから戻ってきたのだと思っていたので、この理由に怒り出す。恩知らず。そんなきつい言葉を投げかけてしまい、よしは少し外に出るとその場を去ってしまう。まきこの姉の愛情の裏返し。東京で上手くいっていないのではないか、いつでも帰ってくればいいとずっと心配していたのだろう。それがけっこう上手くやっていて拍子抜けしたようだ。でも、すぐに登志夫にラインが。彼女から連絡あったので、このまま帰りますと。本当にあいつは恩知らずだ。まきこの姉はカンカン。でも、まあ幸せにやっているのなら。

豊田が連れて来た女の子は、実は登志夫の娘。娘が幼い頃に離婚している。登志夫の自分勝手な別れ方だったらしい。娘が父に会いたいと母に伝え、今日を迎えたみたい。豊田が絡んでいるのは、さなえが娘の母とずっと連絡を取り合っており、付き添いだったみたい。ただ、娘は父を慕って訪ねてきたのではない。母が再婚。これを機会に自分の中でけじめをつけようと考えている。だから、娘は厳しい言葉を登志夫に投げかける。母も、特に登志夫に話すことは無いと電話で言っているようだ。登志夫はそれに反することは無い。かつて、父であることを捨てる選択をした自分に言い訳をすることはできないから。でも、そんな父の姿の中にも、娘はずっと自分を想ってくれていた欠片を見つけ出す。けじめはつける。でも、それを恨みつらみだけのものにする必要は無いことに気付いたはずだ。
豊田は付き添いだけかというとそうでもない。左手足の怪我は、職場で自分が引き起こした事故が原因であり、退職、賠償とこれから職探し、借金返済と大変なことになるみたいだ。だから、さなえとの結婚はもう出来ないことを伝えに来ている。でも、さなえがこの状況。決して、そんな厳しい病気だから捨てる訳ではない。知らなかったのだから。でも、現実的に、治療費だってかかる。これからどうやっていけばいいのか。豊田は自分の中にあるさなえへの本当の気持ちを見詰め直す。その中で、さなえとよく話してみようという結論に落ち着いたようだ。自分で選択することではない。ずっと二人だったのだから、これからのこともやっぱり二人で決める。

そんな中、クリニックの早乙女がさなえのことを説明しようと、何かを持ってくる。ブラウス。右胸部分に消えないシミ。決してあきらめていない。最善を尽くし、必ずシミを消してみせる。クリニックじゃなくて、クリーニングだったらしい。袋叩きにしたいところだが、まあこんなことがあったから、豊田はさなえと本当に向き合おうと思えるようになったのだからよかったのだろう。それに、早乙女は外に出ようとするよしと会ったらしい。よしにこのブラウスの件を話したら、その場で号泣したのだとか。本当に大切なブラウスなんだと思ったとか早乙女は間の抜けたことを言っている。全てを知って、大丈夫だと思ったから帰ったのだろう。そして、皆がよしを可愛がったように、よしも皆を愛しているのだろう。そんな、よしがここに住まわせてとお願いしている友達。家族として迎え入れても問題はないだろう。ふとベランダを見たら見知らぬ男が。よしにラインで合図がきて、登場するようにと言われたのだとか。これもまたサプライズを考えていたらしい。

何はともあれ、これで、まだまだ話し合っていかないといけないことはたくさんあるが、落ち着いた。
どうしようもないのが、登志夫が最初に抱えていた洗濯カゴの中の洗濯物。すっかり匂いがついてしまって、もうダメになって着れないかも。
洗濯日和だったのに。
いや、洗濯日和なんてのは、洗濯をしない者の言い訳で洗濯はいつでも出来る。いつでもすればいいのだ。ダメになっても色々と手段はある。もちろん、本当にダメになってしまうことがほとんどなのが、現実だ。でも、ダメになったことは繰り返さないはず。いや、それでも繰り返してしまったりもするか。
結局、なるようにしかならないのかな。
でも、やっぱり洗濯はしないと。綺麗さっぱり汚れが落ちて、いい匂いがする服は、新しい気持ちを生み出してくれる。そして、その新鮮な気持ちは、自分がいつの間にか見えなくなってしまったたくさんの周囲のことに気付かせてくれるはず。
洗濯日和に、きちんと洗濯は出来なかったが、選択することに向き合った者たちのお話。

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