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2015年12月30日 (水)

イン ザ グッド【DanieLonely】151229

2015年12月29日 カフェ+ギャラリー can tutku (85分)

とある四兄弟の話。
ズレる会話。でも、繋がっている絆。これが温かい。
やっぱり、繋がっている人って、離れてても切れないんだなという安堵の優しい気持ちが芽生えてくる。
離れている間に大きな悲しみ、辛さ、痛みがあっても、それを分かち合おうと相手に寄り添って共有することができる。そして、それを乗り越え、大きな喜びへと変える人の想い合う、繋がり合うことで生まれる強い力を感じさせられる話。

<以下、ネタバレしますので公演終了まで白字にします。公演は31日まで。観劇納めにぴったりの作品ではないでしょうか>

警察官の長男はパトロール中だが、次男の経営する喫茶店にいる。
長男は離婚したばかり。そのショックからまだ立ち直れていないらしく随分と嘆いている。2年前に離婚済みの次男は、通る道とばかりに、仕方がないと慰める。
それよりも、四男の結婚を祝わないと。あいつにはもったいないくらいの女性と婚約したのだから。
と、そんな話をしながら、二人はある男を待っている。
四男が三男を連れて来ることになっている。
10年前に失踪した三男。
聞いた話では、記憶を失っているのか、まるで別人のようになっているらしい。
三男がやって来る。
名前を呼んでも反応がない。それに、やんちゃだった三男とは思えないくらいにおとなしい。確かに別人だ。医者の話だと原因ははっきりと分からない。物理的な衝撃かもしれないし、精神的に大きなショックを受けたのかもしれない。もしかしたら、失踪したのも、記憶障害が原因だった可能性もあるらしい。
まあ、焦らず、ゆっくりと記憶を取り戻してもらおう。
とりあえずは、次男の喫茶店で寝泊まりしてもらうことに。

皆で思い出させようと頑張るのだが、三男は一向に記憶を取り戻さない。
それどころか、一番、三男を慕っていた四男の必死さを見て、四男がマリッジブルーで心を病んでいると逆に心配する始末。
自分は三男ではない。四男は自分の結婚を三男に伝えたいがために、自分を妄想の三男に仕立て上げてしまったと考えているみたいだ。
大丈夫。四男を傷つけることないように、自分も協力する。
その大丈夫という三男の言葉が、長男、次男を不安にさせる。

長男の調査によれば、三男は失踪後は東京に向かっている。印刷工場で働いて、その後、スナックで数年間。そして、ちょっとヤバい仕事、いわゆるヤクザの世界に足を踏み入れている。ところが、去年から、こちらに戻って来ている。親父がいる町に。

四男は昔のアルバムを持ち出して、三男に見せるが反応なし。一緒に出かけたりもするが、同じく。
早く、本当の三男が帰って来たらいいですね。今、彼は一人ぼっちでいるかもしれないですし。
そんな三男の言葉に長男も次男も頭を抱える。
頭を抱えることはそれだけではない。
四男が婚約を解消したのだとか。三男がこの状態で結婚など出来ないということみたい。
どうにも上手くいかない。
親父の呪い、もしかしたら次男の大殺界が原因なのか。

長男と次男は、四男のためにも、何とか記憶を取り戻させようと必死。
でも、どうにもならないみたい。
仲がいい兄弟。でも、写真には親が写っていないことに気付く三男。
長男は自分たち家族のことを語り出す。
工場を経営していた父。倒産。借金にギャンブル。働きまくった母が過労死。兄弟は父を捨てて、家を出た。
長男は警察学校に、次男は学校を辞めて板前に。四男は幼かったので叔母のところに預ける。そして、長男と次男で貯めたお金で大学に行かせた。母の遺言でもあった。四男は賢い子だからと。今、四男は小学校の先生。自分たちの希望の光だ。
そんな話を聞いた三男は、自分も三男に近づけるように頑張ると宣言。

写真に写っているフォークギター。
弾けば何かを思い出すかと三男にギターを渡すが全然弾けない。
苛立った長男は殴って記憶を取り戻そうとする。いきなり殴るわけにもいかないので、叩いてかぶってジャンケンポン。
次男が勝って、思いっきり殴りつけるが何も変わらない。
やっぱり無理みたい。自分は本当の三男にはなれない。でも、四男には幸せになって欲しいと本気で思っていることを伝える。だから、結婚を辞めるようなことはしないで欲しい。
自信がない。家族を作ることに。だって、あの父親。それに兄さんたちだって離婚して。
そんなことを言う四男に長男は怒り出しケンカに。
三男はそんな兄弟ゲンカを諫める。

電話がかかってくる。
三男の情報。
やはり、三男は親父と一緒に暮らしていたらしい。年老いて、だいぶ体も悪くなった親父を一人で面倒を見ていたらしい。

三男は、四男に手渡された日記を読んでいる。
昔、みんなで順番に書いていた日記。
くだらないことばかり書いているが、三男はみんなのことを知りたいと一生懸命読んでいる。まだ、自分がその中の一員、三男だとは気付いていないようだが。
これからみんなで親父のところへ行く予定。
そこに三男はいるんでしょうね。そんな三男の言葉に皆は苦笑い。
せっかくだから写真を撮ろう。もちろん、三男も一緒に。
自分は他人だからなんて言う三男を無理やり巻き込んでみんなで写真を。
フラッシュがたかれる。
その時、三男に・・・

アルバム。
写真をみんなで揃って、よく撮っていたんだろうな。
思い出すのも当たり前か。

長男や次男が四男の婚約解消を聞いた時、自分たちがその痛みを知っているだけに、弟に同じ痛みを持って欲しくないと思ったのか、本当に辛い表情で、そう思わせてしまった自分たちの力の無さを嘆く。
そんな想いに溢れている姿が大好き。
長男はちょっと直情的で安易なところがあるが、それだけ純粋に人を想える人。少し頼りにならないところは、次男がきっちりと補完する。
だから、長男と次男のコンビで兄弟はきちんとまとまる。
四男は安心して、甘えることができて、愛情たっぷりのいい生き方をしてきたみたいだ。本当に心の芯から相手を想えないと、その人を幸せにはできない。自分が兄たちからそうされてきたように。婚約解消は、そんな潜在的な不安もあったのだろうか。四男はずっと想われて生きてきたことで、今、人を想える優しい人に成長しているようだ。

そんな兄弟の枠から、何があったのか、飛び出してしまった三男。
やんちゃで若かったようなので、こんな悪いこと続きの地元から身を離したいこともあったのかもしれない。当時、長男と次男は四男をしっかりと育てないといけない状況にあった。自分は負担になってはいけない感覚もあったのか。東京で一旗揚げて、みんなを安心させてやるくらいの気持ちだったのかもしれない。
そんな三男は、あまり向こうでうまくいかず、結局は地元に戻って来ていた。それも親父の介護をして。
顔も立たないから容易に兄弟に会いに行くことも出来なかったのだろう。それに、親父のことも、どう伝えればいいのかを悩んでいたのかもしれない。下手に言っても、過去のいきさつから親父のことをみんな拒絶してしまうかもしれないから。
だから記憶障害。
そんな一人ぼっちで苦しむ三男に神様がみんなともう一度会って、じっくりと話が出来るチャンスを与えてくれたのだろう。勝手なことをしてきたが、最期の時を迎えるにあたって、もう一度家族として、みんなとお別れしたい。そんな親父の気持ちも神様に伝わったのかもしれない。
三男は、運命に翻弄されて切れてしまった親子の絆、離れてしまった兄弟の繋がりを取り戻すための希望の光となる。親父の呪いなんかじゃない。親父の最期の願いだったのだと思う。
四男も長男と次男の希望の光だった。長男と次男も、四男にとっては自分の先をいつだって照らしてくれる道標のような光だったはずだ。
そして、どうあろうとも親父にとって、四兄弟は自分の希望の光だ。
カメラのフラッシュ。その光は、三男の記憶を取り戻させるだけでなく、自分たちが、互いに照らし合える光の存在だったことを思い出させたのだと感じる。
そして、その光は、ずっと離れていて照らしてあげることが出来なかった親父の方向へと向こうとしている。
いくら離れていても、その時間をいつだって取り戻せる親子、兄弟の絆を優しく描いた素敵な作品でした。

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コメント

SAISEI様

お久しぶりです。1年早いですね(笑)Danielonly 、私は千秋楽観劇予定。今年は253公演観劇しました。そろそろベスト10発表ですね。楽しみにしています。

投稿: KAISEI | 2015年12月30日 (水) 10時40分

>KAISEIさん

ご無沙汰です。
千秋楽に観劇と聞いていたので、その日に合わせてもいいかと思っていたのですが、夕方ぐらいまで仕事した方が、年明け少し楽になりそうだったので。
観劇納めにはぴったりの作品だと思います。お楽しみに。

ベスト10は選考を開始。
とりあえず、50本ぐらいまで絞ったので、これから飲みながら試行錯誤しようかなと。

投稿: SAISEI | 2015年12月30日 (水) 18時05分

SAISEI様

DanieLonly観劇の帰りです。楽しめました。職種上朝が弱い上昨日まで11連チャンだったので疲れていたのか若干落ちそうな時もありましたが(笑)

8月の『誰だ。カレーにスイカを入れたのは』がDanieLonly初観劇。男性役者3人(所属4人でしたっけ? 誰か増えたのかな? 記憶違い? ) の魅力ある演技に今年度の観劇納めに選択。

ジャンケンの負け続けネタや記憶を取り戻した瞬間終幕など途中で展開が読めたところもあったが4人のみごとな演技とDanieLonlyらしい? ドタバタしたところもあり(笑)

昨年はコトリ会議が観劇納め。昨年125公演、今年253公演、に2倍か(笑)SAISEIさんに数で勝ったということは観劇料を支払って(無料公演は除く)関西の小劇団の公演を一番観た人間になるのかなあ?(笑)

来年は100公演~150公演くらいに抑えようと思っています。サービスの良かった劇団。観劇料の安い劇団。今まで見逃している劇団。以上を意識して行きたいな、と。24日に立命館大学の劇団月光斜『サンタクロースが歌ってくれた』に行きましてに質に満足。学生劇団にも多く足を運びたいな、と思っています。また御教示くださいませ。

来年の観劇初めは早ければパシフィックシアターの缶の階になるかな。。

昨年からコメ返等ありがとうございましたm(__)m 良いお年を!


投稿: KAISEI | 2015年12月31日 (木) 13時32分

>KAISEIさん

あけましておめでとうございます。

DanieLonelyらしかったでしょ。
所属は4人なはずです。カレーは確か、永見さんがお休みで、揃わなかったのは逆に珍しいなと思った覚えがあります。

253ではまだまだ(^-^;
どう考えても300超えてる、観劇中毒の人がまだまだいますよ。
確かにずっと観ていると、何も無くても観に行ってしまうような惰性みたいになってしまうので、ターゲットを絞るのも大事ですね。
旗揚げを観に行くようにしようとか、少し商業演劇と呼ばれる大き目のところにも足を運ぶとか、毎年、色々と考えるのですが、結局、毎年変わらずになっています。

学生劇団は正直、厳しい時も多々ありますが、これはレベル高いなと思わしてくれることもけっこう多いので、足を運ばれるといいと思います。
特に立命館など京都は私も未開拓なところも多く、また情報交換をしましょう。

今年もよろしくお願いいたします。

投稿: SAISEI | 2016年1月 1日 (金) 07時29分

SAISEI様

年始の挨拶がまだでしたね(笑)新年おめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

今年は遭遇率が少なくなりそうですが(笑)

限定してもトップにはなれませんかね?(苦笑)blogを書いておられる方でやんさん以外250を越えられる方はいないようで。例えば観劇好きの方は同一公演複数回観られるでしょう?それを除いて関西の小劇団の公演数1位とかね(笑)まあ、どこに観劇ジャンキーがおられるかわかりませんからね(笑)

今年は大阪に劇団四季の『キャッツ』が来る模様。足を運びたいなと。京都劇場も四季がまた借りるらしく久々に劇団四季に行くのもいいかな、と。

立命館大学劇団月光斜は初観劇。劇団ZTONの母体となった劇団なので前から行きたかったのですが中々予定が会わず。今回は急遽予定が空いたので団員さんに連絡して予約しました。キャラメルBOXの作品でしたが勢いもありスピーディーでテンポも良く演者のビジュアルも良かった(笑)のでまた行きたいと思っています。はるさんの『ボクは好奇心のカタマリ』の「2015年私の観劇ベスト10」にもありますが終演後の役者さんと紹介やスタッフ紹介、客出しにも好感を持ちました。

大学の劇団は1991年くらいに劇団紫をたぶん2回観劇(知り合いが団員だったw )、観劇ジャンキーになってからは神戸大学自由劇場、大阪経済法科大学演劇サークル、そして月光斜しか観てませんが今のところトップかな。。

公演場所の学生会館も私は観やすかったです。最後列でしたが。。

キャラメルの作品は学生劇団や座付脚本家のおられない劇団さんはよくされますよね。DVDなんかで勉強しやすいからかな~?

投稿: KAISEI | 2016年1月 6日 (水) 10時42分

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