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2015年12月12日 (土)

月と太陽ともぐら【プロデュースユニットSHIPPO】151212

2015年12月12日 LIVE & CAFE BAR PLACEBO (55分)

貧民街生まれのもぐらが、地中深くに潜り続ける中で出会う月と太陽。
その光が彼に闇の中にいる今、そしてこれからの自分に気付かせるような物語。
セリフは無く、和田雄太郎さんの動きと表情、mollenさんの生演奏だけで想像する世界。
ただただ、暗い。
闇ということもあって絶望的な苦しみ、切なさが浮かび上がるが、そんな闇だからこそ、見えるほのかな光に安堵を得る。
月や太陽が見えない地中の闇の世界でも、そこに光はある。かつて地上で暮らしていた時の光は自分といつも共にあり、それを体に心に刻んで、自分は生きている。
だから、下へ下へ、潜り込んでいる時間でも、希望を信じて、今の時を過ごして欲しいという祈りが感じられるような作品でした。

貧民街生まれのもぐらと呼ばれる男。
いまは、シェルターのような収容所で、強制労働を強いられている。
それまでは、作り笑いを浮かべて物乞いをして、そのなけなしのお金を親だろうか手渡す。稼ぎが少ないと殴り飛ばされる。
今の時間はその頃よりはマシなのだろうか。
感情が無くなった体だけが、時間によって今へと運ばれたかのよう。心はどこへ置き忘れてしまったのか。
光は体が受け付けず、吐き戻してしまう。だから、下へ下へと進む。それでも、闇の中、光を求める。
同じ貧民街生まれの友人。酒と薬に溺れる日々を過ごしていた。彼には光が当たっていたが、それは彼が薬で作り出した妄想の中の人工的な温度の無い冷たい光だったのだろう。
ぽっかりと空いた穴にぼんやりと輝く光。その中に彼は埋まっているよう。彼は月のようだった。
どこかにかすかに小さな温かみを持つ光。そこには誰からも照らされず、ただ冷たく美しさを醸す水晶。何も話さず、感情を失った女の子。シェルターが自分の居場所かのように遊びにやって来る。
愛おしくその水晶を包み込む。でも、水晶は静かにたたずむだけ。
暗闇の土の中、見えない太陽の光。太陽のような女の子の光はもう自分には感じられないのだろうか。
上を見る。でも、自分は下へ下へと掘り下げて進むしかない。
もう、出会えない月と太陽を思い、もぐらはただ涙する。
でも、自分はこの闇の中で、もう一度、光と出会えるだろう。
今は闇の中。きっとこの先に、光は自分にさしのべられ、それを掴める日がくる。
月のようだった友人、太陽のようだった女の子と共に、もぐらは光を抱いて、先を進む・・・

セリフが無いので、当日チラシに書かれた設定、登場人物紹介、観て感じたままの気持ちを組み合わせて創ってみた話の筋。
友人である月は、今をただ楽しむという破滅的で未来は見えないが確かに今がある自分、女の子である太陽は、闇の中で求める人恋しさから生まれる温かみ、自分に明るい未来があることを信じたい自分という象徴のようにも見える。
闇の中で、今、そして未来を掴もうともがいているもぐらの姿か。
貧民街生まれという自分ではどうしようもない過去。運命という言葉では片付けられないだろうが、例えば障害や大切な人との突然の別れ。そんな運命に翻弄され、心をどこかに置き去りにして、体だけ日々の時間を過ごす。これが闇のシェルターの中で、ただ労働するもぐらの姿と同調する。
そんな時間もあるのかもしれない。
もうどうしようもないと、ただただ深く潜ってしまう。
でも、それでも、そんな中に必ず光は現れる。そして、人はその光に突破口を見出せる。
かつて、どんな時でも自分を照らしてくれていた月と太陽。
今はその光が何の感情も無い冷たいものに感じるのかもしれないが、きっとそれは自分に明るさと温かみを与えてくれるものであることに気付くのかもしれない。
だから、自分がどんどん闇の中に潜り込んでしまっていると思っても、その時間を生きてみたらいいのでは。
闇の中だからこそ見えた光は、きっとあなたを幸せに包み込んでくれる。
そうあるはずだという祈りがこめられた物語のように感じる。

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