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2015年12月13日 (日)

トイレはこちら【芝居屋さんプロデュース】151212

2015年12月12日 音太小屋 (55分)

責める女にかわす男。
枝葉ばかり見て、遊び幅が小さく、何かと口うるさい姉ちゃん。
幹しか見てなくて、安易に考え過ぎ、飄々とした調子のいいおっさん。
日枝美香Lさん(超人予備校)と田口哲さんの雰囲気が実にぴったり。
こんな二人が繰り広げる、ズレた不条理会話劇。
そこに毒のあるユーモアをふんだんに混ぜ込みながら、80年代の社会情勢に警鐘を鳴らしているような作品か。

ある公園。
ベンチと、ちょっと高いところにくくりつけられた輪っかになったロープ。その下にみかん箱。
女は赤子を抱え、線香立て、葬送曲の入ったテープがセットされたラジカセを持参して、これから死ぬところ。
そこに年配の男がやって来る。
どうみてもこれから自殺というところなのに、男は平然として、ベンチに座っていいかと女に聞いてくる。
これは息子さん。いえ、娘です。よしよし、お名前は。赤子に尋ねる男。答えが返ってくる訳もなく。赤子だからではない。人形なのだから。
女は自分がほどほどにおかしいことをPRし出す。
この首吊りロープも、自分で設計して、同じマンションの住人の煙突職人とやらに頼んで作ってもらったのだとか。首がかかるところに包帯が巻き付けられていて痛くない優しい設計。そんな大したことのないことを凄いと自慢気。確かに少し気はおかしいのだろう。
でも、男だって負けてやしない。ここで、トイレのガイドをするというのだから。
トイレに行きたい人が、自分のところにやって来て、トイレはどこかと聞いてくる。あちらですと言って、100円をいただく。値段だって、適切な設定にしている。
頭がおかしいのではないか。
自分のことを棚に上げて女は男を責める。
ほっといてくれ。それより、あなたは続きをしなさいよ。
そういう男に女は止めないのかと尋ねる。男はどうでもいいこと、止めないと。
止めると言うなら、どうして止めてはいけないのかを説明できたのに。説明がしたい女は、無理やりの論理で男は本当は止めたいということにしたがる。
常識的に止めないなんておかしい。ここでも、自分の非常識はどこかへ置いておく。
埒があかない。女は男からタバコをもらって一服。
男はタバコを止めている。肺がんが怖いから。でも、他の人ががんになるのは知ったことではないから、タバコを持っているのだとか。
何て無責任な考え方だ。女はこの男はおかしいと呆れかえる。
聞けば、男は妻と子供、妻の母親と暮らしている。家族を養わなければいけない男が、こんな仕事をすることに反対はしなかったらしい。貯金もそれほど無いだろうに。
以前も同じような仕事で、銭湯の案内を。これは上手くいかなかった。煙突がそびえているから、聞かなくてもみんな分かってしまったから。でも、今回はトイレ。これは上手くいくはず。
家族もおかしいみたいだ。失敗の原因を掴めていない。女はいらだちを隠せない。
女は説得を始める。
この仕事が上手くいかない理由。
まず、聞いて教えてもらっても、誰も100円を払わない。だったら、前払いにすればいいと逆にいいアドバイスをもらったと喜んでいる。
女はもうバカらしくなって死ぬことに。
男は商売のヒントをもう少し欲しいとねだってくるが、もう知ったことでは無い。
男にラジカセのスイッチを押させて、勢いをつけて首を吊る。死ぬ時は勢いが大事。こんな不要なアドバイスしかできないが。
ところが、音楽が流れない。壊れた。男は壊したと女から叱られる。そして、代わりに歌えと。
男は唯一知っている君が代を、なるべく寂しく歌う。
なんか、男がモジモジしている。これは尿意をもよおした人に特徴的な行動。
トイレに行ってこいという女。でも、男はモジモジしたまま。
だって、ここにはトイレが無いから。
そんな衝撃的な発言を平然とする男。今までの話は何だったんだ。
でも、男曰く、もしトイレがあったら、自分に聞くことなく普通にトイレに行くから商売は成り立たないと。よく考えれば確かにそうだが、どれだけ後先を考えていないのか。
女は、男に家に一旦帰るように言う。男もそれに従うが、その間に客が来たら、代わりによろしくと。
バカらしい。客なんか来るはずがない。それよりも、死ぬ気が無くなった。これから、あの男の家に行って、男が如何に無謀なことをしようとしているか、家族もそれを放置しているのはおかしいと正してあげないと。なんか、生きがいが出来てしまったみたい。
そんなことを考えていると、一人の男が近づいてくる。
トイレはどこですか。とっさにあちらですと返事。男は財布から100円を取り出し、女にありがとうと差し出し、去っていく。
世の中って、必ずしも正しく回っているわけではないのか・・・

あらかじめ、舞台監督さんからメタファー作品だと聞いていたので、男と女や作品中に出てくる言動が何を比喩しているのかを考えながら観る。
君が代でさすがに分かってしまうか。男と女は国と国民ですね。
チラシにはわざわざ別役実作品80年代と称している。時代背景は恐らく情報化社会へ突入する頃。情報を商売にする国家戦略と同時に、情報操作をいとも簡単にしてしまうようなことへの警鐘でしょうか。
タバコも、今までのようにがむしゃらに働いて体を壊すのはおかしいことだと、健康を意識することが強くなってきた時期だったのかなと。
このあたりの詳細は、舞監@日誌で検索すれば、解説が出ています。
ブログを書いてから見るようにと言われていたのですが、先に答え合わせをしたくなって見てしまいました。
まあまあ、掴めているかな。100円を徴収するという考えが税に絡んでいるようなことは、全く気付きませんでしたが。

君が代に至るまでは、少し別の観方をしていました。 別役実作品でよく見るコミュニケーション不全による不条理会話劇。若い女と年配の男。ジェネレーションギャップ、経験の差から生まれる価値観の相違みたいな。
結局は構造として同じなのかもしれませんが、女が若かりし頃の自分、男が会社、もしくは当時の上司のように感じていました。
この場合、自殺は退職みたいな感覚です。
さして大したことが出来るわけでは無い。飛び抜けたアイディアがあるわけでもない。この作品でいえば、包帯をロープに巻いた程度の発想。でも、何か出来ると思っていたのか、自分はちょっと普通の人とは違うなんて思いながら。最後は辞めてしまえばいいぐらいの逃げ場を持って、上に噛みついていた自分。
でも、会社、上司もバカじゃないかという案を出してくるわけです。
相手は論理的に説明してくる。でも、それは結局、為せば成るような考え。しかしながら、ポジティブシンキングとか、建設的な考えという言葉に変えて、正当化されてしまう。
理論武装する力も弱かったのか。対するこっちは、常識的におかしいみたいな反論。否定、破壊としてネガティブに捉えられて抹殺される。
もういい、辞めてやれ。
なんて思いながらも、いつの間にか、相手を屈服させることが目的へとすり変わる。ここでの生きがいみたいなものか。
ちなみにこの生きがいは長続きしません。自分がくだらなく、嫌になってきますから。まあ、だから転職したわけですが。
そして、色々なトラブルに見舞われて、ほらみたことかなんて思うんだけど、なぜか上手くいったり。自分の常識は、確かに本当に普通の常識だと思うし、上司の方が相当狂っていると思うのだけど、そんな常識って世の中では通用しないことが普通なんだなと。
あれから、色々と大人になって、まずトライすることの大切さや、否定の仕方、誘導の仕方なんかも覚えたつもりだけど、まだまだ分からないことだらけで。何が正解で、不正解なのやら。
そんな分からないことに出会うことを楽しみとして生きがいにするなんてところもあるのかも。

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