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2015年12月11日 (金)

前略さくら様【STAR☆JACKS】151211

2015年12月11日 芸術創造館 (50分)

昨日の本編に引き続き、番外編を観劇。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2015/12/starjacks151209.html)

女郎部屋に預けたさくらを助けるために、讃岐から近江へ向かうまでの一人旅の道中の3つのエピソードが綴られています。
コミカルな一面をやや強めに出していますが、人情に溢れ、心優しい、石松の魅力を存分に味あわせる話が並びます。
コミカルで面白いけど、本編を見ていると、ずっと涙が滲んでくるかもしれません。
だって、この話は、本当は作品名のとおり、石松がさくらに聞かせる話だったはずなのですから。
手紙ではなく、きっと、近江から清水へさくらと一緒に、2人で帰る道中で、石松が調子にのって、少し話を盛ったりしながら語るはずの。
叶わなかったことだからこそ、いつも人の幸せを願う石松だったからこそ、その後、きっと幸せを掴んだはずのさくらと一緒に、彼の想いがこもったこんなエピソードを観なくてはいけないという思いがこみ上げてきます。

<以下、本編同じく、あらすじがかなりネタバレします。白字にはしていませんので、重々、ご注意願います。このブログ、観劇後、次の公演を観るまでの時間で急いで書きました。理由は、本編観たなら、是非、観たらいいと思えるような作品だったからです。大阪は明日の公演だけ。まだ、席はあるとのことでした。足を運んでいただき、石松の真の魅力を味わい、叶わなかったさくらへの想いに涙するといいのではないかと>

第一場。
大阪から伏見へ向かう船の中。
調子の良さそうな薬問屋が、船客を集めて、相撲やら全国の美味しいものについて知ったかぶり。牡蠣は上手いけど腹を下す。だから、この薬をなんて商売上手なところも。
そんな騒ぎには入らず、石松ともう一人の男は、寝転がって自分の世界に。
ところが話が名親分のことになると、急に耳を傾ける。
薬問屋曰く、今の世に名親分はおらず。かつては身受山鎌太郎がいたが隠居の身だから。
その言葉に、石松は立ち上がる。
と、それより先にもう一人の寝転がっていた男が啖呵をきる。
てやんでえ、清水の次郎長親分を忘れてはいやしねえか。こっちとら神田生まれの江戸っ子でえ。
石松は大喜び。持っていた酒をその男と一緒に酌み交わす。
江戸っ子だってねえ。持ってた寿司まで振る舞う。
石松は尋ねる。次郎長一家で一番強い奴は。
兄貴たちの名は挙がるものの、なかなか自分の名は出てこない。
半ば無理やり思い出させ、ついに自分の名が。
江戸っ子に小遣いまで渡して、すっかりいい気分の石松。
こんなに自分が有名だとはねえ。
でも、聞けば有名なのは強いじゃなくて、バカだということ。しかもそれを子守唄にまでされている始末。
男として名が上がるってのはいいが、やはりバカじゃいけねえ。さくらと一緒になったらそろばんでも習うか。

乱暴者でデリカシーに欠ける石松の愛されるべき姿が描かれているよう。
我が我がとうるさいが、けっこう人の目を気にして繊細な一面。
学はないけど、読み書きだって自分で勉強をしたらしい。人様に迷惑をかけることないように、自分なりの努力をいつもして、成長することを忘れない。
自分だけなら、バカと言われても、ケンカして大笑いしていればよかったのだろうが、さくらという愛する者ができたので、そうもいかない。さくらに恥ずかしい思いなどさせられるわけもなく。
所帯を持つんだなあという、これからの幸せがにじみ出てくるような自虐的なコメディーが微笑ましく温かい。

第二場。
京都。
いつものように夜鷹は客を待つ。
でも、年増でブスだから。それも衝撃的なほど。
今日も、客に逃げられ、途方に暮れていたら、いいところのお嬢様とお付きの者が通りかかる。
お嬢様の顔を見てびっくり。思わず、声をかけて、自分の名を語る。忘れているはずがない。
でも、お嬢様は知らないと言い張る。しかも、二度と声をかけてくれるなと、施しを投げつける。
こんな金いらない。いくら、夜鷹に身を落とそうと人情を忘れて生きるのは恥だと思っているから。
そんな揉め合いの中、石松が通りかかる。
お嬢様たちは足早に、去っていく。
石松は、夜鷹の顔を見て少し驚く。さくらを預けている女郎部屋の女将とそっくり。あれほどのブスが二人といるとは。
もちろん、そんなことは言えるわけもなく、石松は夜鷹の話し相手に。
息子と夫を流行病で失った夜鷹。生きるためにこの仕事をするしかなかった。
さっきのお嬢様は、同じ長屋に住んでいた夫婦の娘さん。奥さんの乳の出が悪かったので、自分が乳を与えていた。息子と同い年だったので、娘のように思っていたが、徐々に避けられるようになってしまった。まあ、こんな仕事だから。でも、そうして生きるしかなかったから。
別に乳のことを恩にきせる気など毛頭ないのに。
冷たい仕打ちにあった。声などかけなければよかった。人恋しかったのかもしれない。
でも、あの娘、幸せになってよかった。どこかの料亭の女将さんになったんだ。よかったねえ。
涙を流して、娘の幸せを喜ぶ夜鷹に石松は、金を渡す。
これは施しじゃない。香典。息子と夫の墓参りにでも行って、そして、差し出がましいけど、こんな仕事辞めて幸せを掴んでくれと。
ふと、女郎部屋の女将の話をする。
生き別れのお姉さんかも。
だったら、会いに行けばいい。一人旅ってのもいいもんよ。
夜鷹は全速力でこの場を去っていく。
先ほどのお嬢様が、一人で戻ってくる。
石松は、責めることなく、あなたの幸せを泣いて喜んでいた人がいることだけは忘れないでやってくれとだけ言う。
お嬢様はありがとうの言葉を残して、元の生活に戻っていく。

生きるため。
誇りを持って、自分のポリシーを持ってという精神的な生きるという概念と、物理的に飯を食って、日々の生活をしながら命を続かせるという生きるという概念。
どちらも捨ててはいけない。
夜鷹は、生活するために体を売っても、自分の大事な心までは売らない。
お嬢様は、少しそれを忘れていたのかも。生活という生きるという面で満たされ過ぎてしまったから。
それだけではない。だって、あの長屋で乳母である夜鷹の女はじめ、皆と過ごした時間だって大切な生きてきた時間だったのだろうから。
人情忘れて、生きて、その先に幸せがあるはずがない。
そんな大事な生き方を示唆するような石松らしい人情噺。

第三場。
もうすぐ近江。
ヒョロっとして貫禄も何も無い石松が、どこかの組の者たちと話している。
敵対する組に行って睨みをきかせて欲しい。後ろに次郎長一家が付いているとなると相手もびびるから。
石松はその組から金をせびっている。
もちろん、偽者。かたりって奴だ。
そんな中、石松が現れる。
バカだから、同じ名前なんだと大はしゃぎ。
ってなるほど、バカじゃない。
瞬く間に、かたりを叩きのめし、悔い改めさせる。

かたりが現れるほどの実力者と名前が上がっている石松。
その正体は、バカだけど、曲がったことが大嫌い。
人のため、愛する者のために。
そういう意味でのバカだ。
だから、こうして今でも愛されている。
そんな石松の男を魅せるエピソード。

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