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2015年12月12日 (土)

まことに神の造りしをんな -智恵子抄-【劇団レトルト内閣】151211

2015年12月11日 ABCホール (120分)

重いものが胸にズシンと響く。
コーラスや生演奏といった演出が、描かれる世界を重厚にして、エンタメながら、心に訴えかけてくる力強さが大きい。
女。芸術家。この二つは、幸せを掴むために、どこかで一つに絞らないといけないのだろうか、捨てなくてはいけないのだろうかと感じてしまうような智恵子と、今の平成の世を生きる女性の生き様が描かれている。
時代が進んでも、この問題は何も解決していないのか。でも、その原因に人は人を愛してしまうというところも見えてきて、それならば愛はひどく残酷なものだとも感じる。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

福島の酒屋で生まれた智恵子。
人のいい父と、しっかり者の母。大雑把で頼りない弟、姉に憧れる甘えたの妹。
成績優秀、スポーツ万能、裁縫の腕も抜群。
同じ学校に通い、後に、女性の権利を主張する思想家となる平塚らいてうも彼女にはかなわなかったようだ。
女は結婚して、家を守るもの。それが当たり前の時代だったので、周囲の反対は大きかったが、父の好きなことをさせてあげたいという懐の広さもあり、智恵子は、洋画家を目指し、上京。ただ、結婚だけは、父と母が薦める人とする約束で。変な虫がつかないようにとのこともあり、妹も一緒に上京する。
智恵子の斬新な発想で描かれる絵は頭角を現す。しかし、先生はその新感覚についていけていない。色合いなどを批判され落ち込む。
平塚らいてうが男と心中未遂事件を起こす。
やはり、女が今の世で活躍するのは難しいのか。私は恋愛なんかしない。芸術家として生きる。
そんな智恵子、ある日、詩人であり彫刻家でもある高村光太郎の記事を読む。ロンドンで、修行を積み、パリで活躍する、後に東洋のロダンと呼ばれる萩原廬山と共に、日本の彫刻界を変革すると言われている天才。
彼の言葉には、自分が悩むことの答えが記されているようで、智恵子は光太郎に憧れを抱く。
そして、友人の仲介で、帰国したその光太郎に出会い、彼への思いは高まっていく。
卒業し、画家として生きる決意を固める智恵子。
らいてうが創刊する雑誌の表紙を描いたり、女性の新たな生き方を目指す。
しかし、実家では縁談の話が進められていく。
智恵子はそのことを光太郎にほのめかすが、言い出せず、実家に戻って結婚するしかないと芸術家の道を断念することを考え始める。
その頃、智恵子の妹は、夏目漱石の門下生である小宮という男と許されない不倫の恋をしていた。恋の苦しみは姉以上に分かっている。結ばれない苦しみ。妹は光太郎に姉の縁談のことを伝える。
光太郎は妹に詩を託す。
その詩は、行かないで欲しい、結婚などしないで欲しい、他の男と一緒になるなど堪えられないと姉への純粋な想いを綴ったものであった。
智恵子は光太郎の下へ向かい、互いの愛を確かめ合う。
光太郎を実家に連れて行き、仲を認めてもらう。故郷、福島を二人で歩き回り、素敵な風景を見て、これからの幸せを互いに意識し合う。
光太郎は智恵子の画家としての仕事に協力的。しかし、その仕事は上手くいかず、かつての学友たちからも、智恵子は普通の女になってしまったと陰口を叩かれるように。
そんな中、実家の父が亡くなる。弟が跡を継ぐが、ずっと迷惑をかけ続けていた父への悔いの念は智恵子に大きくのしかかる。
徐々に光太郎との間に距離が生まれる。そんな時に、光太郎はモデルの女を家に連れ込む。芸術のため。今の智恵子にはその言葉が理解できない。ただ、愛する光太郎への嫉妬、裏切りの気持ちが心を埋める。
智恵子の弟が継いだ酒屋の経営はかんばしくない。
弟は殊勲をたてて、芸術家として成功した光太郎の父、光雲と弟に金を無心する。
光太郎の弟は、兄との貧乏生活で苦労し、芸術のためと言えど兄に裏切られ、実家までもこの状態では智恵子が辛すぎるとひどく心配し始める。
智恵子の妹は、結局、不倫は上手くいかず、傷心の中、単身で渡米する。
一人っきりになってしまったかのような智恵子は、実家の経営を立て直すため、機織り工場として再建することを考える。これならば、自分の裁縫の腕を活かせる。
しかし、この頃から、智恵子の心は壊れ始めていた。
あらゆる妄想に憑りつかれ、やがて精神異常の状態にまで陥る。
東京には空が無い。この言葉はこの頃に発せられたみたい。
智恵子は、酒屋を引き払い、九十九里浜の小さな家へと引っ越した実家に引き取られる。看護師になっていた姪っ子がその面倒を見る。
光太郎たちがたびたび訪ねるが、智恵子は自分の世界からもう戻って来ることは決して無かった・・・

音大を優秀な成績で卒業した園子。
今は銀行員で堅実な優しい夫と暮らす。
結婚記念日に渡された花束。そして、一冊の本、智恵子抄。
不器用な夫が、自分への愛を狂おしいくらいに語ってくれているよう。園子は幸せの中にいる。
合唱サークルに通っているが、その先生に認められ、今度のコンクールで作曲を任されることに。
学生時代はピアノで作曲をしていた。夫からもらった智恵子抄の詩にメロディーをつける。
思わぬ形で、昔、目指していた芸術家への道に再び触れられることになった。
福島で暮らしていた夫の弟が、震災のため家を失い、居候にやって来る。
こんな男が転がり込んで嫌でしょ、すぐに就職先を決めて出て行きますからと歯に衣を着せぬ言い方。自由奔放な男で、堅物の兄とはあまり話さないが、園子とは気が合うみたいで冗談を言い合う。
すっかり主婦に落ち着いてしまって、もっと自由な園子さんの方がいいと思うけど。
そんな弟の言葉にも、妥協、我慢は幸せに必要なんですよと諭すように答える園子。
夫は園子の作曲に協力的。優しく見守る。
しかし、そんな園子に嫉妬なのか、サークル仲間たちは徐々に距離を置き始め、陰口も叩くようになる。
疑心暗鬼になりつつある園子を、夫は旅行に連れて行く。智恵子の故郷、福島に。
福島の名所を回り、園子はまるで自分が智恵子となり、愛する光太郎と共にいるみたいな感覚が芽生える。きっと、いい曲が出来そう。
でも、夫は仕事の急用が入り、先に戻ることに。一人にはしておけないと、弟を呼び出す。
弟は園子に色々なところを案内する。
園子と仲間たちの亀裂は深まる一方。それどころか、夫がその仲間の一人と浮気をしているところを目撃。
嫉妬と裏切り。
弟は心配して、園子を励まし、心の重荷を取り除こうとするが、園子はただただ夫にすがりつこうとするだけだった。
そして、園子の心はどんどんと病んでいく。

智恵子と園子。
男を愛する女として、芸術を愛し創作する表現者としての二人の生き様を並行して描き、時折、シーンをオーバーラップさせながら話を展開。
最後は園子が入院する病院で締められる。
5年前。福島に旅行に行った園子は、倒壊した建物のがれきによって夫を失う。その旅行前に夫からもらっていた智恵子抄。
彼女はその時から、自分の人生を止めて、智恵子と重ねた妄想世界の中で生きる。
園子に身よりは無く、夫の弟が定期的に病院を訪ねている。
全ては園子が生み出した世界の・・・

酒屋の娘という女から芸術家に、そして芸術家から光太郎の妻という女に戻るような道を歩む智恵子。
ピアニストという芸術家から主婦として女に、そして、女から、再び才能を認められて芸術家へとなろうとする園子。
二人の人生がオーバラップしながら並行して描かれて、やがて交差するが、どこかから歪んでおかしくなってしまうような感じか。
昆虫の変態。最後の園子が本を蝶々のようにする仕草からそんなことをイメージする。
智恵子は、さなぎから羽ばたく蝶に変わるのを失敗。失敗したからといって、元の可能性を秘めた芋虫からやり直しはできない。
羽ばたく蝶は、羽を休めたら、もう飛び立つのは難しい。園子は、さなぎに戻るわけにもいかない。戻っても、そこはもう蝶とはなれない閉鎖した空間に身を置くだけ。
共に元には戻れない。
女としての、芸術家としての幸せな姿は別の道筋のゴールなのだろうか。共に得る道を歩むことの難しさに、人を愛してしまったことが浮き上がる。そこに愛があるからというなら、愛は残酷だという考えも浮かぶ。

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