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2015年11月 4日 (水)

くらげなす、流体力学の基礎知識【A級MissingLink】151103

2015年11月03日 ウィングフィールド (110分)

今とはちょっと違った世界。
特に何かが大きく変わった訳では無い。
あの人がまだ活躍していて、プロ野球監督にはこの人がなり、流行のSNSは違った名前だけど普通にある。
そんな程度の世界設定だが、今とは確実に違っている世界での、ある商店街の人々に焦点を当てて、浮き上がる社会問題を見ようとしているみたい。
今、漠然とおかしいな、何か悪い方向に進んでいるなということが、やはり同じようにはっきり見えないのだが、もうすぐにでも溢れてこぼれてきそうな絶妙なバランスで話は展開し、それが不安を煽られたり、方向を修正するための導きの光が少し見えたりする。
作品を通じて、隠れている、隠されている今の現実社会の問題点を見出し、そこからより良き社会への導きに希望を見つけ出すような感覚が残る作品だった。

ウルトラマンのお面を被った後藤と呼ばれる男と西野。
山瀬・母と井手口。
この2つの別々のコンビの会話が互いに交錯したような会話から、いつの間にか西野と井手口が会話をするような冒頭のシーン。
この時点では、何のことかさっぱり分からず、これは難解な作品だという匂いに既にギブアップ状態になる。
ここで分かるのは、ウルトラマンのお面を被った後藤という男は、西野に全てを託し、もう自分は終わりにしたいといった状況にある。
井手口は山瀬・母の娘に想いを寄せている。
山瀬・母はどうも娘にうしろめたい気持ちを抱くような何かをしたみたいで、もう死んでしまいたいようなことをほのめかす。
まあ、各々何かがあったのだろう。そして、その2つの別々のコンビの西野と井手口が会話をする仲になったというプロローグみたい。

商店街を盛り上げる会。
夏祭りの最終打ち合わせ。ゲストにオマリーを招いている一大イベント。
会長の電気屋、井手口。金属バットを手にして、いつも素振り。商店街で野球チームを持ちたいと思っているぐらいの野球好き。
ベーカリーの山瀬・娘。井手口とは同級生。野球部時代はマネージャーをしていた。
渋滞に巻き込まれて遅れて来る、パソコン教室、西野。隣町のデモの様子を見に行って、野次馬の群れに出くわしたらしい。ホリエミクスの影響か。野球チームを作るだけで満足していればよかったのに。
西野は、最近、倒れているところを井手口に拾われて親しくなった、いわばよそ者。でも、多くを語らないが、商店街のために一生懸命頑張ってくれており、ブレーン的なポジションとなっている。
そんな西野の元同僚で、今は世界の果てを見るために旅をしている女性が商店街をうろついている。
打ち合わせをしていると、山瀬・母がクーラーボックスを借りに来たり、井手口や山瀬・娘の同級生の弟、後藤が久しぶりに商店街に戻って来て、前はラーメン屋で失敗したので、今度はうどん屋を開くと挨拶に。
ただ、話はそれだけではなく、商店街を守る会を発足し、同じ日に夏祭りを開くと言い出す。

商店街を守る会。
こちらの夏祭りのゲストは、田尾安志。
後藤、山瀬・母、そして井手口の奥さん。
井手口の奥さんは、主人が大好きな山瀬ベーカリーのタマゴサンドを完全コピーすることに執念を燃やしている。完璧なはずなのだが、何が違うのか主人には味が違うと見抜かれる。これを、自分への愛情の無さ、山瀬・娘への愛の証だと考えているみたい。
後藤は山瀬・母にお金を借りている。そのことを娘に勘付かれ、母と娘は少し、仲違いしている。
何か娘や夫への反発心から、こんなことをしているかのようである。
後藤はこの行動に明確な目的がある。それは、かつてここでスーパーを経営していた父が創設した商店街のアーケードを撤去するという案を撤廃すること。父がしたことだからというこだわりだけではなく、この商店街のために良かれと思っている。よそ者の西野を慕う連中への反感もあるのかもしれない。

商店街を盛り上げる会が出した結論は一緒に夏祭りをしようという案。守る会の目論見通り。
3つの条件を提示する。
アーケード撤去案の撤廃。
盛り上げる会の発展的解散。
山瀬ベーカリー、タマゴサンドのレシピ開示。
対応に苦慮している中、迷彩服を身に纏った薬局の三男坊、枝村が現れる。川向こうのデモが暴徒化して、こちらに迫っていると言う。去年と同じ。去年は特に何ともならなかったが、今年はまずいかも。警官が橋を封鎖しているというが、突破される可能性は十分にある。
2つの会の戦いはいったん休止して、デモへの対応を協力して行うことに。
ところが、井手口の奥さんや山瀬・母は、そんなデモなど目も向けないかのように、自分たちの主張に従った行動を起こそうとする。
ついに暴徒化したデモが、橋を突破して、商店街に・・・

話の流れはだいたいこんな感じで、要は盛り上げる会と守る会のいざこざ。その内には様々な人間関係が潜んでいる。
その外ではとんでもないデモという戦いが起こる。その内には恐らく政治や社会問題が絡んでいるのだろう。
混乱して戦いが浮き上がる社会を俯瞰的に見て、ちまちましているけど奥深い個人レベルでの戦いをどこか心ざわつかせながら、ちょっとくすりと笑いながら見るみたいな感じだろうか。
この感覚が漠然とした不安を煽る気味悪さを残す。
例えば、会社において、ある部署の中で激論を交わしている間に、会社は何かとんでもない破滅の方向へと進んでいるみたいな感じ。そのことに何となく気付いてはいるが、まあ直接、自分たちに何かが降りかかるわけでもないから、自分たちは自分たちの主義主張を言い合っていればいいじゃないかみたいな空気。
この作品ではTwitterではなくゴーテンとかいうSNSが普及しているみたいだが、その中で多くの者が主義主張を繰り返し、時には激論を交わすのだろうが、そんなことは何の関係も無しに大きな組織、例えば国は動いてしまうものみたいだ。
大衆の意見が膨らんで、異論はあるにせよ、どこか一つの形にまとまり、それが町、市、地方、やがては国を動かす。この作品からは、その構図が否定されているように見える。
大衆の意見のやり取りは、あたかもSNSの中で閉じ込められてしまっているようで、国とか大きな組織はまた別の次元で動いている。
ネットという技術をもった情報社会において、そのネット上に都合の悪い意見を封じ込めてしまえるような巧い、というか汚い使われ方をしているように感じる。ここで声にした言葉は封殺され無視されている。
この作品でも商店街は何の価値も無いと、デモ隊は無視している。社会と切り離されたような存在に落とし込められているみたい。

後藤の父はかつて、この地でスーパーを経営していた。
後藤の父の本妻との間の子供が二人。
上記したうどん屋を開くと言っている後藤は弟。兄がいる。その兄が井手口や山瀬・娘と同級生。野球部だったらしい。下手くそな井手口とは異なり、活躍していてヒーローだったようだ。
そして、その正義感は、スーパーの産地偽装の内部告発へと繋がる。スーパーは潰れ、後藤・兄はこの地を去った。
山瀬ベーカリーはこのスーパーの中の店舗だった。
そして、後藤の父と山瀬・母は愛人関係。恐らくは山瀬・娘の父は後藤だろう。つまりは、後藤兄弟とは異母兄弟ということか。もちろん、そんなことは知らされていないはず。
だから、山瀬・娘は後藤・兄と恋に落ちる。
どうも後藤・父は山瀬・娘を女として見ていたみたいで、それが後藤・兄の内部告発のきっかけになったのだろうか。
井手口は山瀬・娘に想いを寄せていた。でも、ヒーローであった後藤・兄には叶わず、今の奥さんと一緒になったみたい。山瀬ベーカリーのタマゴサンドは美味しい。もちろん、妻の作ったタマゴサンドもこれはこれで美味しい。そんな言葉から、妥協的な結婚をイメージするが、それはそれでいいのだろう。もちろん、自分の思う最高の味はあるのだろうが、それはたった一つしかないもので、いくら頑張っても同じには出来ない。いつしか、妻の作るタマゴサンドが二人の味となるようにしていけば。

ヒーローの象徴として、ウルトラマンのお面が使われている。
内部告発という正義感を持っての行動。でも、それは本当の正義に従って行ったものでも無さそう。父への憎悪、反発、全てをリセットしてしまいたいみたいな建設的ではなく、破壊的な考えからきているようだ。
ヒーローなんて、結局、幻かといった感じだが、後藤・兄も西野も、自分のためと同時に、誰かのためという考えは内に含まれていたように思う。それがある限り、やはりそこに正義は存在していたのかなとも感じる。

後藤・兄はこの地を去ってから、小さな会社に就職。そこで西野と出会う。上記した世界の果てを目指す女性を含め、4人の会社だったみたい。
大きな外資に買収されて、1人を除いて会社を辞める。
その会社は今、4人が創り上げたゴーテンというSNSを運営している。
残った1人はその実績を買われ、副社長に。
後藤・兄は西野と別れる際に、多額の金が入ったカバンを山瀬という人に届けて欲しいとお願いしていた。スーパーが潰れ、山瀬・娘にも、母にも多大な苦労をさせてしまった。出来る限りでの罪滅ぼしなのだろう。正義を貫くことで、どこかにひずみがかかってしまう現実だろうか。西野がこの商店街に現れた理由もこれでようやくはっきりする。
彼は、後藤・兄が去った後、この商店街に突如として現れたヒーローのような存在だったが、それもまた偽物だったというわけだ。

西野は、山瀬・娘を連れて、この商店街を去る。向かう先は川向こうだろうか。この小さな商店街という狭い世界の中でずっと過ごしてきた山瀬・娘は、世界を知る西野と共に新しい道を歩むみたいだ。
それにもう帰るところは無くなった。山瀬・母がベーカリーをデモ騒ぎに乗じて燃やしてしまった。きっと、山瀬・娘がこの商店街から旅立ってくれること、誰かがそうしてくれることは、ずっと願っていたことだったのだろう。
何もかも無くしてしまったかのような山瀬・母だが、傍には後藤・弟がいた。うどん屋を始めても、きっと失敗する。だから、またお金を貸してという言葉で、ずっと一緒にいるという気持ちを伝えたみたい。血は繋がっていないけど、最後に一つの親子が残った。
井手口と奥さんは、奥さんの夫への疑いも晴れて何とかうまくやっていけそう。まあ、色々と互いに含んだものを持ちながらも、共に過ごす中で歩調が揃ってくる。夫婦なんてそんなものなのかもしれない。
商店街の中はこれで何とか落ち着いた。社会は何も変わっていないだろうけど。でも、ここから旅立った者たちが、世界に出て、少しずつ変わっていくのかもしれない。
騒ぎで中止になったはずの夏祭り。連絡がうまくいっていなかったのか、互いが呼んだゲストがバッティングしてケンカになるという、問題はいつまで経っても山積みで、その中でより良き世を目指して、一人一人が出来ることをしていかないといけないといったことを思わせるようなラストで微笑ましく締められる。

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