INDEPENDENT : 15 151127
2015年11月27日 インディペンデントシアター2nd (25・30・30分、休憩25分、25・25・30分)
昨日に引き続き観劇。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-1.html)
今年もコンプリートできました。
毎年書くことだけど、一人芝居は創るのも難しいのでしょうが、観るのも難しい。
まず大きく、役者さんの魅力を楽しむのか、話の面白さを楽しむのかで分かれる。
7年目になるので何となく自分の好みも分かってきたような気もします。
話の設定はとりあえずありきで、不可思議な面白設定にしておいて役者さんの魅力を存分に醸そうとしている作品。多分、これが一番苦手。30分もたないといった方がいいのかも。開始しばらくは凄く楽しんでいるから。
あと、この日もあったけど、どんでん返しの連続や軸に沿っていない時間・空間の多すぎる転換。こちらは逆に30分が短いのだと思う。長編ならば、展開に合わせて最後はここに落ち着くのかあと巧妙さに感動することも多いが、短編には切れ味を求めるから。
役者さんの魅力を感じ、かつ巧妙な展開、もしくは心に響くメッセージが込められているような作品が好きなのかな。
今年で言えば、TYPE-OSKの犬養憲子さん、如水のおぐりまさこさん、鈴の小坂愛さん、メイワクな女の山本香織さん、水彩度の大橋未歩さんが私のベスト5。
<以下、ネタバレしますので公演終了まで白字にします。公演は本日、日曜日まで>
・「キネマおじさん」
江口隼人×永松亭×FALCON
映画音楽にのせて、あの数々の名作を聞く者の頭に蘇らせる。
世界中で最も多くの人が観たと言われるタイタニック、逆にあまり観ていない人に伝わるのかを実験的試みとして借りぐらしのアリエッティ、総時間11時間越えの作品を4分で語るロードオブザリング・・・
人を食ったような愛嬌あるキネマおじさん。その雰囲気にどこか懐かしさと親しみを感じながら、親父ギャグを交えたテキトーな映画作品の再現。
この一人芝居フェスのオープニングアクトに徹して、楽しむ空気を創り出す。
・「メイワクな女」
山本香織(イズム)×松本陽一(劇団6番シード)×寺田夢酔(演劇集団よろずや)
隣の部屋では怖い人がドアを蹴り飛ばして開けろと叫んでいる。
女は上司に電話するが、今日中に始末するようにと厳しく言われる。
母親は癌が再発転移して入院。私生活でも大変なことだらけなのに、この状況。
いったいどうしたらいいのやら。
そんな中、一通の迷惑メールが届く。
癌になってしまいました。あなたに800万円をあげます。
メールの送り主は、闇金に手を出して、海外に拉致監禁されている女性。迷惑メールを出し続けて早4年。ようやく借金が返せて、日本に帰れる。あと一人、騙せれば。
メールを見た女は、母親が癌ということもあってか、送り主と同じ名前の友人がいるのか、自分に出来ることがあるなら何でもするから自暴自棄にならないでと反応してしまう。
そのメールを見て、女性は大喜び。いける。こいつは落とせる。
とにかく女の口座を聞き出し、それを売ればいい。
友人になりすまして、メールで女とやり取り。ちょっとズレているところがあったりしたが、何とかごまかす。
そして、どうやら女は闇金の取り立てに押しかけられている模様。こんなうまい話、逆に騙されているのではと疑いもしたが、女は脅し声の音声をメールしてきた。自分の昔を思い出すというものだ。自宅に借金取り立てで脅されるなど何回経験したことか。
この経験を踏まえて、女にアドバイス。上手い具合に口座番号、名義人を聞き出す。
ここからが大事。たいがいは生年月日を聞き出そうとしたところで怪しまれる。慎重に。闇金はお前のことを世間に言いふらすと言ってくるはず。逆に個人情報を自分から喋ってしまうといい。向こうも怯む。そして、その音声データを送ってくれ。そうアドバイス。見事に成功。これで用済み。
もう、メールをする必要は無くなった。
でも、女性は最後ということもあってか、さよならのメールを女に送る。
玄関を開けちゃダメ。開けたら最後。中国の雲南省とかに連れて行かれて、働かされるからと。
女はそのメールを見て、ニッコリ。玄関を開ける。
待たされて怒っている男に、娘さんは見つかりましたから、ご安心をと。
雲南省。さっきの音声データにウィルスも仕込んでおいたので、完全に場所も限定できるだろう・・・
オチが、騙されているのは迷惑メールを送った方だとは初めから気付きますが、どう展開するのかにドキドキ。
秀作ですね。気弱で生真面目な女と、乱暴でガサツな女の真逆キャラの切り替えも巧みだし。
・「ある探偵の憂鬱」
谷口敏也(轟DASHERS/30-DELUX)×田中精(30-DELUX)
ハードボイルド気取りの探偵。
ダニーだなんて名乗っているが、もちろん日本人。格好はつけているものの、依頼される仕事は猫探しとか、浮気調査とか、町の何でも屋レベル。
電話が鳴るので格好つけてとったら、借金返済の催促。謝りまくって返済期日を延ばしてもらう。
そんな中、中学生の娘から電話。珍しい。と思ったら、間違えたのだとか。
もう、帰るか。コートを羽織り、事務所を出ようとすると、電話。机の裏に紙袋で包まれた携帯が鳴っている。いったい誰が、こんなことを。
電話の主は、娘の近くにいるらしい。今から、もう一度、娘から電話があるだろう。その電話が切れた時、娘を殺すと。
電話は切れ、代わりに本当に娘から事務所に電話が。
男は必死に電話を引き延ばす。
妻のこと。もう、一緒には暮らせないことになってしまった。原因は妻の浮気。すまない。
そんな告白に娘はとっくに知っていたと。それも半年以上前から。自分は先日、知ったばかりなのに。
母から相談を受けて、向こうの男とも会ったことがあるらしい。
まさか、娘まで自分を捨てて出て行く気なのでは。お前を愛している。行かないでくれ。声も大きくなる。娘はでかい声で喋らないでとうんざりしながら、こんな頼りないパパを一人にする気はない。ママが幸せかを確認したかったのだと。
普段、話をしていないので、話が続かない。最近の娘のことを知らないことに気付く。仕方がないから娘が生まれた時のことを話す。自分と妻と娘と。ずっと、この生活が続くと思っていた。
娘の携帯の充電が切れそう。どこかで充電器を買え。男は必死だ。
気付けば、妻と娘への想いをひたすら語っている。また、3人で暮らせないのという娘の問いかけに、そうなるようにする、だから携帯を切るなと叫ぶ。
電話が切れる。
呆然と崩れ落ちる男。
足音が聞こえる。事務所にやって来た娘。ハッピーバースデーを口ずさんでいる。
サプライズ。怒る気持ちなど全く無い。無事で良かったという安堵と、娘の自分への想いに感謝。
誕生日会。その前に男はしなくてはいけないことができた。娘との約束を守るために、妻のところに向かい、家に連れ戻さないといけない・・・
アメリカンな陽気な空気にのせて父と娘、家族への想いを描く素敵な作品。
ハードボイルドに憧れているような男だが、冷酷非情などにはとてもなりきれず、娘や妻への感情を剥き出し、相手の気持ちに流されて言動する。
男が恰好をつけるとなると、ハードボイルドの方に流れてしまいがちですが、本当の格好良さは、こういった男のように思いますね。
優しさ滲む、心穏やかになる素敵な話でした。
・「鈴」
小坂愛(劇団 go to)×後藤香(劇団 go to)
来年、喜寿を迎える鈴。
スパーリングに挑戦するため、トレーナーの指導を受けながら、ロードワーク、ストレッチに励む日々。
施設で育った。生まれた時には父も母もいなかったから。周りの大人は、全員、お父さんとお母さんだった。でも、それはみんなの。自分だけのお父さん、お母さんでは無い。独り占めしたかったのか、わがまま言ってみんなを困らせたりもした。乱暴な子だったから。今となっては恥ずかしいし、可愛くも思えるが。
そんなこともあってか、あの子を引き取った。今日から、私があなただけのお母さん。生意気な子だった。自分の昔そっくり。
可愛がって育てた。でも、決して甘やかしたりはしない。諦めたりするのは大嫌いだから。痛い、苦しい、辛いの先に喜びが待っている。娘とはそんな喜びの景色を一緒に見てきたつもり。
人に出来ないことは無い。誰かが出来ないことをしてきたから、今があるのだ。人は今でも進化する。これが生物教師となった自分の大切な考え。
先日、意識混濁となって倒れた。娘の顔も分からなくなったのだとか。
大丈夫だと思ってもらわないと。大丈夫だとあの子から言われるのが一番嬉しいから・・・
この作品の大元となっているタンバリンの公演が、来年1月に大阪であるみたい。
これを観たい。そう思わせるのに十分な作品でした。
一人の女性の生き様から、それこそ人を作り上げる一個の細胞に、こんな熱い志を抱く魂が込められているといったようなことを感じさせ、心と体が熱くなってくるような作品でした。
・「或る男」
徳永健治×西川さやか(月曜劇団)×上原日呂(月曜劇団)
IT企業で経理の仕事を日々、黙々する男。
夜が好きだ。自分の時間。
団子を食べて、ゾンビ映画観て、戦車のプラモ作って。
電車での帰り道。羽の生えた小さな俺が話しかけてくる。疲れているのだろうか。小さな俺はWifi回線で現れる俺のヘルプ機能なのだとか。
そんな会話をしていたら、怖そうな人に絡まれる。団子を盗られそうに。それはダメだ。余暇の楽しみを壊す者は何人でも許さない。男は殴られて死ぬ。
気付くと、団子屋でバイト。バイト仲間はヘルプ機能。
クビになる。
男は様々なものを失っていく。そんな窃盗団がいるのだ。
帰り道、靴底、マイナンバー、潤い、服・・・
その度に現れるヘルプ機能。
出会いと別れを繰り返し、男は全人類にヘルプ機能である猫の下にたどり着き・・・
ものすごく面白いなあという始まりだったんだけど、15分で飽きちゃった。
あとは、集中切れたから、ただ観ているだけ。
汗を吹き飛ばしながら、必死に熱演する徳永さんの姿に、何か罪悪感を持ちながら。
・「副作用」
田川徳子(劇団赤鬼/JUIMARC)×山内直哉(隕石少年トースター)
女性刑務官。
脱獄を繰り返す囚人の担当となる。
彼女には自信がある。寝なくても疲れない薬を飲んでいるから。つまりは寝落ちが無い。
囚人への差し入れを確認。自殺防止のために渡すことは出来ない。
パイン飴、笛ラムネ、ジャンプ、ラジカセ、手紙・・・
バックミュージックで手紙。泣き落としのつもりだろうか。そんなものは効かない。冷たく、カッサカッサに渇いた心の持ち主だから。
手紙に写真が入っている。男前。刑務官は囚人の顔を覗き込もうとすると、何かおかしなことをされる。
催眠術か。ラムネを鳴らしたり、ラジカセでハードな音楽を聴いたり、ジャンプ読んだりするが、眠気が。追加で薬を飲む。
こんなことをした囚人を脅すために、死刑の話をする。
そのうち、情が湧いてくる。脱獄を手伝ってしまう。囚人は脱獄する。
・・・といった演劇作品を、最後に皆の協力を得て、実現した刑務官役の女性囚人。
を、演じる薬を開発した女性教授の演劇を用いた効果確認実験。
を演じて、うまく脱獄して夫の下へと逃げた囚人。
を演じる女優。
女優はちょっと台本がおかしいと作家にクレーム。
メールをやり取りしていると、少しずつ飲ませて致死量に至る薬なんて内容のメールが誤って送られてくる。
小道具に使っていたあの薬がそうなのではないか。女優は作家の下へ向かい、殺される前に殺す。
実際は違う女優に渡す台本だったらしい。
今、女優は処刑を待つ最後に、皆の協力を得て、演劇作品を演じる。
処刑場に向かうまでも演じたい。白衣を着て教授役として行くつもり。
その時、体が震え出す。薬の副作用か。
これは演技じゃないと助けを求める白衣をきた女性。
翌日、ニュースでどんでん返しの多過ぎる作品を演じていた教授が副作用で誰にも気付かれず、そのまま亡くなったと・・・
多重構造で面白いけど、けっこうくどくて、もういいよと最後の方は飽きがくる。もう頭がパンクしてしまうのか、早く終わってとラストを急いでしまう感じになった。スパっと切れるどこかのタイミングで締めた方が印象に残ったように思うが。
脚本も役者さんも巧かっただけに、いまひとつ感が残っているのが残念。
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