INDEPENDENT : 15 151126
2015年11月26日 インディペンデントシアター2nd (15・35・25分、休憩40分、20・30・30分)
2009年から観ているから、もう7回目かあ。
ここ2年はトライアル予選は観るの辞めようと思ってスルーしていますが、やはり本選は足を運んでしまいますね。
正直、毎年、分からないなあという難解な作品や、あんまり好みじゃないなあといった作品も多いのですが、ドンピシャにはまってしまう素晴らしい作品にも出会えますから。
まだ6作品を観たところですが、今年もそんな作品が。
<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>
・「水彩度」
大橋未歩(COMPLETE爆弾)×近藤ヒデシ(COMPLETE爆弾)
交通事故にあって、10年間植物状態の女性。
幼馴染が日々、会いに来てくれて、手土産と手紙を置いてくれる。
代謝は抑えられているとはいえ、そのうち眉毛も繋がってしまうかもしれないから、あんまりじっくり顔を見て欲しくはない。
でも、幼馴染のことはあんまり覚えていなくて。マカロンとか知らないし。でも、女の子受けするお菓子だとは分かる。そんなものを買ってきてくれているんだ。
事故の時、一緒に遊んでいたらしい。そして、成人を迎えた彼は、治療費を負担したいと両親に願い出た。全て知っているし、聞いている。そんな私のことに幼馴染も両親も気付いてはくれていないようだが。気付いてくれているのは、毎日、病室を横切る猫ちゃんぐらいだろうか。
最近は、幼馴染も両親も涙を流していることが多くなった。
だから、女性は決意する。旅立つことを。
幼馴染と両親の微笑みを見て、旅立ち。
この自分だけの世界で幸せだったことへのありがとうの言葉を残して・・・
女性の意識の世界での独白。
本当に言葉を伝えたい人には聞こえない声。せめて猫ちゃんが皆に女性の想いを伝えてくれればいいのに。
でも、涙の中に微笑みがあったのだったら、きっと伝わったのかもしれない。言葉ではいくら分かち合えなくても、心で通じ合うことが出来るのは人の大切で素晴らしきところの一つだろうから。
彼女は確かにこの10年間生きていたのだろうし、その周囲もそんな彼女と共に生きていた。その事実だけは残り、彼女は生を全うした、残される周囲の者は、その悲しみを背負いながらも未来を生きるということだけ。
繋がっていたからこそ、そこには優しく温かい想いが残っている。
さすがは、トライアルを勝ち抜けただけに、丁寧にじっくりと創り込まれた印象が強く、それが心を震わせる感情を引き起こさせる。
・「仏の顔も10度目にもう一度」
maechang(BLACK★TIGHTS)×野村有志(オパンポン創造社)
お坊さんみたいな顔をしてツインテール。ちょっと痛い女性、ヤスコを連れて、リョウは競馬場に。
ビギナーズラックの話をしたら、調子の乗って、ヤスコは自分の名前が入った馬に500万円も賭ける。
血統がダメだと言ったのに、言うことを聞かない。まあ、そんなことを言ったら、自分の父親は窃盗犯。自分もそんな犯罪の血筋ということになってしまう。馬だけ血統云々というのもおかしな話だが。
結果は落馬。喧嘩になる。ヤスコは怒って、競馬場を去る。
浮気相手から電話。雨も降ってきた。今日はこの子と遊ぶか。リョウは車を走らせる。
その途中、配達中のバイク便を轢いてしまう。
所変わって、誘拐されているハゲ男。かなりの金持ちらしい。
妻は恐らく、自分のことなどどうでもいいと思っているだろう。金目当ての結婚だったのだろうから。
誘拐犯はヅラを自宅にバイク便で送ったのだとか。よくある、旦那は無事だみたいな感じで、身代金を払わせるつもりだろう。ヅラのことは妻に言っていないのに。どうしたらいいのか。
また、所変わって、何事にも熱くなれず、ただ呼吸して生きているだけの男。小学校の運動会で応援団長。この時が人生で一番輝いていたかも。人を応援することもしなくなった。妬みだけ。何かに熱くなりたいとショーウィンドウのトランペットを眺める。気付けば、ガラスを叩き割っていた。
窃盗犯のリョウの父、人身事故を起こしたリョウ、誘拐犯、トランペット窃盗犯は、留置所で出会う。
ヤスコがリョウの面会に。やっぱりこんな自分のことを好きになってくれるのはヤスコしかいないみたい。でも、素直になれず、半ばケンカみたいになって面会終了。ほとほと自分が嫌になる。
面会から戻ると、父と誘拐犯は釈放されていた。父は一応、刑期を終え、誘拐犯は被害者が被害届を取り下げたのだとか。
自分たちだって、まだまだこれから。トランペット窃盗犯は久しぶりに人を応援。リョウにエールを送る。そのエールは自分にも響いているよう。ちょっとは熱く生きてみようと思えるようになったのかも。
誘拐されていた男は、無事に解放されて、妻と食事。ヅラのことも知っていたみたいで、それでも自分のことを好きでいてくれたみたい。金目当てでも無かったよう。とりあえず、自分のヅラを運んでいたバイク便の男は途中、事故にあったらしく、豪華な病室を用意しておいた。妻と分かり合えた。誘拐犯の罪は許す。
ヤスコは釈放されたリョウと一緒に。あれから、ヤスコは競馬を続け、自分の名前が入った馬を応援し続けている。でも、10回連続負け。それでも、頑張り続けるその馬が大好き。結婚資金を全部、その馬に賭けた。だって、リョウが結婚してくれないなら不要なお金だから。結果は3着。うなだれることはない。競馬にすっかり詳しくなったヤスコは複勝を買っているのだから。増えたお金は、結婚式だけでなく、これからの二人の生活に役立てられることだろう・・・
応援されて、応援して。好かれて、好いて。傷つけられ、傷つけ。
人生なんて巡り巡って立場も変わるし、それによって環境だって変わる。でも、どんな時だって頑張って生きなくちゃしょうがないじゃないかと思えるような話かな。今日ダメでも、明日ダメなんてことは決まってないし、明日にこそ、人生開ける何かが待っているかもしれないから。だから、ずっと追い続け、頑張り続けるんだ。
先日、拝見した彗星マジックの公演でmaechangさんってエンターテイナーの位置づけだったけど、本格派の役者さんなんだと。今回はその印象が際立つ。
演じ分けの妙。コミカルと熱さの切り分け、男と女の生き様への想い。
光る熱演に、野村さんらしいラストにすっきりまとまる話の面白さ。
ただ、観終えてどうしてもこの考えが頭にこびりついている。この作品は一人芝居でする必要があるだろうか。確かにmaechangさんがハゲた頭で女を演じたり、情けないグジグジした男を演じたり、良く似合うハードボイルド風の男を演じたりする魅力はあるとは思うが、普通に役に合った役者さんで創った方が、掛け合いとかは面白いように感じるのだが。
・「TYPE-OSK」
犬養憲子(演劇きかく「満腹中枢」)×二朗松田(カヨコの大発明)×大浜暢裕(沖縄舞台)
沖縄。琉球舞踏の稽古を終えた女性。
にいにから電話。にいには、大阪に出て、いい大学で脳科学を研究していた博士。今は、パティシエ。
どちらも捨てたくないらしく、食べると頭が良くなるお菓子を開発中。それをいつも送ってくれる。さっきも、ロールケーキをいただいたところ。その説明らしいが、よく分からないので電話を切る。
賢くなったのか確かめるために、友人とクイズ。あまりピンとこない。
再び、にいにから電話。送ったケーキにおかしなものが混入していたのだとか。TYPE-OSK。
DHAの代わりにDNAが入っているらしい。何のDNAかは知らないが。これも、よく分からないので電話を切る。
大丈夫。胃腸の強さには自信がある。
ちょっと一瞬、お腹が痛くなったがすぐに治る。
再び電話。
にいに、そんな馬鹿なことばっかり言ってないで、もういい歳なんだから、早く落ち着かないと。
女性の口調は、さっきまでの琉球弁ではなく、Vシネのごとく、コテコテの関西弁に・・・
昨年同じく、軽快なトークが冴える。
何か、本当に一緒に会話に加わっているかのような安心感の中での心地よさ。この方のオーラなんだろうな。
昨年の雰囲気がとても好きだったので、今回も楽しみにしていた。
オチにあ然。
確かに沖縄と大阪のコラボだ。
・「戯式」
田中遊(正直者の会)
パトカーが来るまでの20分弱。
キキー、ブレーキ音。雨がポツポツ、やがてザーザー。すいません、事故を起こしましたと連絡する電話の会話。
止まっているかのような時間。
回る赤いサイレン、景色、走馬燈かのよう。
同じように待つ男。
天に伸びる木の先には男が二人・・・
朗読?ラップ?音楽?
感覚的には、読み上げた文章を音楽にしてラップ風に語るみたいな感じかな。
観たこと無いけど、オリジナルテンポってところと似ているのかな。
多分、初めて観るタイプで、そっちの衝撃の方が強くて話はよく分からなかった。
時季外れですが、怪談みたいかな。
・「如水」
おぐりまさこ(空宙空地)×関戸哲也(スクイジーズ/空宙空地)
母を殺した薬剤師の娘の告白。
じょすい、じょすいと母はつぶやきながら、死んでいった。
申し開きをするつもりはない。ただ、母のことを知って欲しい。学もなく、世間の片隅で生きていた一人の女性を。
母の痴呆はひどくなり、妄想、徘徊、失禁などが見られるようになった。介護への精神的、肉体的負担は相当だった。でも、それで殺したのではない。
母は痴呆が進むにつれて、母だけの自分の世界で若返っていくようだった。
年老いて、体が言うことを聞かなくなった夫。工場を譲り、引退するも、相変わらず、酒が好きで家でダラダラ。俳句の会にでも、行って来てと叱りつける。
工場を立ち上げ。これからという時に、自分に仕事を押し付け、夫は酒と女。クソ親父が。娘までそんな言葉を夫に向ける。厳しく叱りつける。大事な父親に言っていい言葉ではない。あなたは大学の薬学部にまでいかせてもらうのだから。反省する夫は土下座。もういい。これから頑張っていきましょう。お酒もほどほどにね。
汚いボロアパート。転がり込んだ自分。明日はまず掃除から頑張らないと。これからの二人の生活に乾杯。お酒が好きな男だから。少しだけもらう。苦い。ラベルは上善如水。じょすい。水の如しと読むのか。学がないから分からない。私はじょすいと呼びことに。パートして、生活も頑張っていかないと。
娘には母が何を考えているのか分からない。ただ、昔に戻っているのだろうと。そして、必ずどこかへ行こうと徘徊する。
付いて行く。その先は昔、父と住んでいたボロアパート。そこで母は言う。あの人に会わないといけない。
娘は言う。もう、父は3年前に死んだでしょ。
母は懇願する。気丈な母が弱々しく。あの人を忘れたくない。だから殺して。
多量の睡眠薬を溶かした水。
母はじょすいだと言いながら・・・
素晴らしいの一言。
昨年と同じように人の業みたいなものが描かれており、辛い気持ちにはなる。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2014/11/post.html)
彷徨う人が、残酷な破壊行動を起こしてしまう。昨年の作品は、そこに自虐や絶望があったように思う。今回は優しさや誰にも理解されない希望が渦巻いているかのよう。
だから、より辛い。
作品に出てくる上善如水。この酒の一般的な味わいは、まず本当に水の如く、あっさり、淡泊、フルーティーだろう。少なくとも、苦いという感想を言う人は少ないはず。なごやんとかしるこサンドやら、えらく甘そうなものを食べていたからかな。夫からの不器用だけど甘い愛情を感じていたからだろうか。
睡眠薬も基本的には水の如く、無味無臭だと聞いているが。最期の時もやはり同じように苦いじょすいだと言っていたのは、娘からの愛情をきちんと理解していたのではないだろうか。
母は、何も無い普通の女性だったが、その純粋さは、人からの想いをいつも大切に感じ取り、自分もまたそう人を想って生きてきたように映る。
苦労も絶えず大変だったのだろうが、いつも心は幸せでいた。人を善意で見て、自分に向けられた想いを素直に受け止め、自分で幸せをそう創っていたという優しい人物像が浮かび上がる。
・「成瀬スーパー8’」
成瀬トモヒロ×ナツメクニオ(劇団ショウダウン)
多重人格者、成瀬トモヒロ。彼の中には自分自身を含めて8人の人格が存在する。
各人格は、例えばアパートの各々の部屋の中に住んでいるようであり、時折、集合場所に出てきて出会うことがある。
そんな成瀬の頭の中で起こったドラマが描かれる。
それは、ある人格の殺人事件から始まった。
あとは、しっちゃかめっちゃか。
脳内妄想の世界だから、時間軸も空間軸も自由だし、男5人・女2人の成瀬が好き勝手に動き回ります。
嫉妬、憎しみから起こった成瀬の殺人事件。サスペンスドラマのようにその謎が解明される。
その中で浮き上がる成瀬同士の恋愛、結婚、出産。友人の死を乗り越え、新たな家族を創り上げる爽やかなトレンディードラマ。
一つの人格は消え、新たな人格の命が宿る。
再び起こる殺人事件。
生まれた子供同士の許されぬ恋。昼ドラのようなドロドロを乗り越え、二人は結ばれる。
新たに生み出される数々の人格。
成瀬の人格は統合されることなく、無限かのように増え続け・・・
面白い。これは確かなんですが。
成瀬さんはお気に入りの役者さんだし、ナツメさんもショウダウンでいい作品を創られる方だから、あんまりマイナス感想は書きたくないけど。
一人芝居で、この多重人格パターン、あまり好みじゃないんですよね。
役者さんの魅力を楽しむには最高の設定なのでしょうが、私はどちらかというと、話もありきで楽しみたいので。
あと、順番が最後ということもあるかな。同じような話が二回繰り返されており、くどいという印象が残る。短くなるけど、最初の殺人事件で締めても、すっきりと楽しめたんじゃないかなと思います。まあ、成瀬さんのイメージにくどさってけっこうあるから、それが作品に出てるのもいいのですが。
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