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2015年11月 1日 (日)

君と笑わば【摂河泉21】151031

2015年10月31日 インディペンデントシアター2nd (105分)

何かめちゃくちゃに良かったのだが。
どうなっていくんだと話の展開にワクワクして、かつ楽しい個性的な登場人物たちの掛け合いに泣き笑い。ここで男を見せろよ、よくぞ覚悟を決めて辛い一歩を踏み出したな、俺にはその考えは無かったけどそれって凄くかっこいいよ、逃げないんだなお前は、巧い振る舞いでその場を凌ぐより不器用でもずっと続く分かち合いの方がいいねとか、心の中でいちいち、登場人物たちに激励の声を掛けるような観劇となりました。
話としても凄く好きだし、演じる役者さんが、役にしっかりはまっていて、かつ丁寧。細かなところまで、大事にして作品を、表面的な技術を駆使することはもちろん、そこに舞台でにじみ出てくるしっかりとした想いを込めて、素敵に仕上げようとする気持ちが伝わってくる。
基本的にボキャブラリーが少ないので、この言葉を書いた時は、かなり満足していて、かつ、観終えてこのブログを書いている時もまだちょっと興奮していると思ってもらえればいいです。絶賛の作品。

①スタンド
浅草、ミナミ座。落語以外のいろものと呼ばれる芸を披露する演芸場。
経営はかなり苦しいようだが、2代目は頼りないながらも、今の時代に合わせた新しい演芸場の在り方をビジネスとして模索している。制作の北條はこの演芸場を守るため、ここで芸を磨く芸人たちのためにと身を粉にして懸命に働いている。
手品師、フランソワ政子、キーボード漫談、さくら亭うどんというベテラン芸人に交じって、若手漫才師、パイルダー温の篤司と哲也が日々奮闘中。ただ、スランプなのか、最近、どうも様子がおかしい。出番が終わった後、必ず二人はケンカ。哲也が篤司に厳しいダメ出しをするというのがいつものパターン。早く売れたいと焦って熱くなる哲也に対して、どこか力が入っておらず真剣味が足りない篤司の温度差が原因の一つみたい。それをベテラン芸人がお前らを育てた先代が泣いているとか、そんなにガツガツしたらダメだとか諭すのもいつものパターン。そして、そんな言葉は言っている自分たち自身にも響くというのもいつものことだ。
そんな楽屋に若い女性がやって来る。この女性こそ、パイルダー温不仲の最大の原因。
有名プロダクションの名の通った女優、楠木ゆず。今は辞めて、篤司の彼女。これだけの可愛い女性と付き合っていれば、芸に身が入らないのも仕方ないかも。哲也は遊びなら、俺たちは真剣だから別れて欲しいと願い出るが彼女は真剣だと言う。篤司とは小学生の時の同級生。おとなしかった篤司が、自分が転校する時に漫才をしてくれた。お別れが辛かったけど、笑って涙が吹き飛んだ。そんな、篤司と同窓会で再会。まさか、本物の漫才師になっているとは思わず、とても嬉しかったのだとか。どうやら、別れさせるのは難しそう。それに哲也曰く、篤司は結婚を既に意識しているのだとか。
政子は、芸人と付き合うならば、やはり立ち位置を考えなくてはいけないと言う。程よい距離を。でも、そんな言葉はゆずに言ったところで、ブーメランのように戻ってきて、政子の心をえぐる。うどんと同棲生活。バツイチ、アラフォーのうどんは結婚など全く考えていない。そんなことは無しというのが最初の約束。でも、妙齢になった政子は、年老いた母を安心させたいこともあるし、結婚をほのめかす。その度にケンカになるのだから。
そんな中、オーナーが、おかしな連中を連れてやって来る。3人組の女の子。地下アイドルらしい。少し芸をさせたら、まあ驚くほどつまらない。でも、オーナーは舞台に彼女たちを上げるつもり。それもメインで。ミナミ座の経営はかなり危ない。地下アイドルの客層を取り込むという策をとらざるを得ないのだとか。
北條は大反対。私はパイルダー温をしっかり育てればもっともっと売れるはずだと。でも、それには時間がかかると言われればそれまで。ビジネス戦略は、短期も長期もどちらの視点もなければいけないのだろう。
しかし、篤司と哲也は、北條の言葉に奮起する。お世話になった演芸場のためにも頑張ろう。
篤司もしばらくゆずとは会わないと誓う。
その時、楽屋にヤクザのような男が入って来て、篤司を呼び出す。話を聞けば、どうもゆずの弟らしい。弟は怒っている。姉を妊娠させやがって・・・

②彼女のヒミツ
パイルダー温は解散。
篤司はミナミ座の営業として就職。
哲也はピン芸人を目指して、演芸場を去った。そして、今、プチブレイク中。毒舌キャラが売れているらしく、徹子の部屋では、このミナミ座でのことを、相方含めて酷く言ってる。
ミナミ座の経営は順調。全てはプッチンプリンのおかげだ。
ただ、専属のマネージャーがビジネスのことだけしか考えない冷徹敏腕女性なので、これまでの人情も絡めた仕事をする制作の北條とぶつかり合っている。
オーナーはそんなことを気にすることもなく、ずいぶんと調子に載ってしまっている。怪しい会社にプッチンプリンのCDを大量発注。
さらには、哲也がインタビュアーだという取材も勝手に受けてしまった。
政子は実家から見合い話が持ちかけられている。
そんな中、楽屋にうどんのファンを名乗る女性がやって来る。差し入れはうどんの好きなポン酢。女性はうどんが不在なので、また客席に戻っていった。
うどんはそれを見て、女性が元妻であることを確信する。
今日は舞台に上がれない。だって、元妻には落語家だと言っているから。それがキーボード漫談といういろものでは格好がつかない。妻だけならいい。娘がいっしょに来ているはず。愛する娘にそんな姿は見せられない。どうやら、こんないい加減そうな男だが、娘は愛しており、手紙や仕送りはかかさないのだとか。政子はそんなうどんを複雑そうな表情で見ている。
とりあえず、うどんはCDの入ってるダンボール箱の中に隠れる。
オーナーがやって来て、CDが届いているとそのダンボール箱を持ち上げようと。重い。そりゃあそうだ。ぎっくり腰になってしまう。これでは取材が出来ない。
オーナーは篤司に対応するように命令。北條はそんなこと出来るわけないと反対するが、篤司はやると言う。何を言われても笑顔で対応してミナミ座を傷つけるようなことはしないと。篤司は取材に向かう。
ダンボール箱の中に隠れていたうどんは、その篤司の姿に思うところがあったのか、舞台に上がることに。
政子は実家に電話。見合い話は受けると。
そこにゆずが暗い顔をしてやって来る。
政子はその理由を知っているらしい。
どうだったの結果は。やっぱり、篤司の子では無かったの・・・

③君と笑わば
発注したCDは全部空っぽだった。大損失。そして、プッチンプリンも落ち目に。
うどんは楽屋でコンビニ弁当。アラファー独り暮らしではそうなる。そう、政子は出て行ってしまった。
ただ、悪い話ばかりではない。パイルダー温復活ライブ。
先日の取材で、哲也と篤司は大ゲンカ。ひな壇芸人が。負け犬。漫才も出来ねえくせに。だったらやってやるよ。そんな売り言葉に買い言葉のケンカ。これがYou tubeで大うけ。
ライブ当日。
ライブに向けて、篤司は演芸場の仕事に漫才の稽古と、忙しくてしばらく家に帰っていないし、ゆずとも連絡を取っていない。
楽屋にヤクザ、いや、ゆずの弟。姉さんがずっと家にいないようだ。郵便もたまっているし、荷物をまとめてどこかへ行ったみたい。
篤司は楽屋を飛び出す。
哲也がやって来る。新人漫才師付き人を連れて。
礼儀正しく、うどんに挨拶し、久しぶりのミナミ座を懐かしむ。普段の毒舌はキャラで、哲也はここでの貴重な経験をいつも付き人に語っていたのだとか。
ただ、今はそれどころではない。篤司は本番までには戻ると言ったが、大丈夫なのか。哲也にそんな状況のことを言うわけにもいかず。
そんな中、篤司から連絡を受けた政子がゆずを連れてやって来る。
ずっと、政子の家にいたらしい。理由はどうしたらいいのか分からなくなって。篤司に事実をどう伝えればいいのか。
今日は大事な復活ライブ。全てが終わってから話せばいい。だから、今は暗い顔を見せてはいけない。元女優なんだから演技できるでしょと政子はゆずをたしなめる。
ゆずは気分が悪いのかトイレに。その間に北條がゆずの鞄から大事な書類を。その無いように驚愕する。そこに戻って来た篤司。北條は演技できない。篤司は事実を知ることに。ゆずが戻って来る。
事実を知った篤司。本番前だが、ゆずは全てを話す。前のプロダクションで不倫関係の男性がいたこと。それが嫌になり辞めたこと。そして、篤司と出会ったこと。妊娠したけどどちらの子か分からなかったこと。篤司の喜びの笑顔を見ていたら何も言えなかったこと。隠れて調べたこと。そして、その結果。
ただ、謝り涙を流すだけのゆずに、篤司は、色々あって分かんないけど、とにかく笑おうと言う。どうせなら笑った方がいい。
迎える本番。篤司は皆を笑わせる。自分も笑う。相方の哲也も笑っている。

後日。
哲也は本当はあのライブを機会に、また篤司を漫才の世界に引き戻そうと思っていたみたい。でも、それは叶わなかった。
愛する大切な妻、そして生まれた可愛い娘。絶対に守らなければいけない二人のためにも、篤司はミナミ座の営業として頑張る。ただ、月一ぐらいでライブはすることに。忙しい哲也のスケジュールに合わせて夜中稽古になったりするが、可愛らしい娘の写メを見れば、そんな疲れなど吹っ飛ぶというものだ。
楽屋の本番スケジュールには、今や前座に落ちぶれたプッチンプリン、元妻、娘がたまに見に来て張り切るうどんさん、お見合いはどうだったのかやはり芸を愛するのか復帰した政子さんの名前が連なっている。
今日もミナミ座ではたくさんの笑いが生み出される・・・

浅草の演芸場をベースにした作品は、以前にも拝見したものがあって、どこか昭和のいい香り、そして、そこで人生と向き合いながら頑張る姿に心打たれるものがあったりしてやはり素敵ですね。
転校して泣くゆずを笑わせて、そして、今また、悲しむゆずを笑わせて。涙の質は違うだろうけど、あの時だって好きな人とのお別れで泣きたいのは篤司だっただろうし、今だって同じだろう。でも、強い人は泣かない。笑って、相手の涙も、自分の涙も吹き飛ばす力を持ち、一緒に辛さや悲しみも消し去ってしまうみたいだ。そんなぽっかり空いた空間に幸せが入り込んでくるのかなと思う。政子やうどんなんかを見ていても、そんな風に感じる。
笑いって愛なんだと思えるような素敵な作品でした。

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