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2015年11月 8日 (日)

船の行方知らず【努力クラブ】151107

2015年11月07日 アトリエ劇研 (90分)

けっこう笑ったので、ここはそんなに笑えるところだったかなと思い、過去のブログを調べてみる。
2012年に初めて観ている。旅行者感覚の欠落。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/121210-8334.html
興味を惹き付けておいて、それに応えない。期待を膨らませておいて、後半だれる。退屈。この時の感想。
そこから数回は拝見して、今年も観ている。彼女じゃない人に起こしてもらう。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/150509-a48d.html
非常に面白い。でも、何か納得いかない不快感が残る。この時の感想。

観ているうちに、この劇団のスタイルに慣れてきたのか、今回の作品もかなり魅力的な面白さだった。
そして、同時に上記したような感想も抱く。
でも、今回はしょうがないか。題名どおりだから。
二人一緒に乗る船。一度、離れることを経験して、さみしさを知った二人だからこそ、その船はどこにも向かえなくなってしまったのではないかという冷徹な感覚が残る。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで>

船の中。
楽園島から、元の町に戻る男女。
消灯され、薄暗い部屋の中で男は眠っている。
女は、目が冴えて眠れず、ボーっと、先のほうに見えるオレンジ色の光、暗闇の中に浮かぶ島々の黒い影といった流れる景色を見たり、甲板にいるカップルを眺める。
甲板のカップルは、ぎごちない感じで身を寄せ合いながら、私でいいの、僕でいいのと互いに言い合いながら、あの生活する場所とは思えない華やかなネオンが瞬く島から抜け出せたことを喜び合っているようだが、当然、会話は聞こえない。
男が目を開ける。同じように眠れず、目をつむっていただけらしい。
話は、ここに至るまでの男と女の話が綴られる。

ある日、男が散歩から帰ると、同棲していた女が荷物をまとめていなくなっていた。
置き手紙としばらくは何もせずに暮らせるくらいのお金。
女が出ていった理由に思い当たる節はいくらでもある。まず、働きもしないでずっとヒモ生活だったのだから。
さみしい。これからもずっと。孤独が男を襲う。
今まで呼んだこともない後輩たちを部屋に呼ぶ。
どうしたのかと聞かれるが、別に何もないと強がってみる。一人はバカだからそうなんですかとすぐに納得。でも、もう一人は、デリカシー無く、先輩は弱い人なんだからそんなわけないと、傷ついた心にえぐりこんでくる。
そんなことを言ったら、先輩に失礼だろうとケンカをし出す後輩たちを見て、むなしさはより募る。
状況を白状する。後輩たちは、探しに行くべきだと提言。
デリヘル嬢も呼ぶ。ギューっとしてもらったり、頭をなでてもらったり。時間中はいくらでも甘えられる。さみしいから。デリヘル嬢も探しに行くべきだという意見。
久しぶりに外に出る。
同じマンションの男にいきなり死ねと言われる。女がとっかえひっかえ出入りすることへの嫉妬みたい。
電信柱に抱きつく男。温かさが心地いいらしい。
さみしいのは自分だけではないのかもしれない。
女とよく一緒にいった公園。女は猫が好きだった。猫はいない。その代わり、犬に蔑まれたかのように吠えられたりしながら、無意味に町を歩く。
女の友達なら何かを知っているかも。女の家を訪ねる。
女の友達は頑なに知らないと拒絶。もういいんじゃないの出て行ったのだからという意見。それに、女は風俗の仕事をしていたのだとか。
いいことなんてない。それに風俗の仕事をしていたって構わない。
男は風俗街を捜索することに。
温かそうな女を探しています。そんな曖昧な情報で見つかるわけもなく。
男はもう一度、女の友達の下に。
女の友達は、この前、男が来た時、女をかくまっていたことを白状する。今は出て行ってしまった。海のある街へ行くとか言っていたと。でも、怒らないで欲しい。それに、もう女を追わないで欲しい。あなたのことが好きだから。私と一緒に。
いきなりの告白だったが、男が今、必要なのは温かそうな女だけ。
男は電車に乗って、海のある街を目指す。
駅に着いたら、電車が動いていない。隣の女性が教えくれた。おかげで飛び込み自殺が出来なくなったと。フラれて死のうとしたのだとか。そんなことで死んだらダメ。自分に言い聞かすように男は女性を励ます。
やがて、電車は動き出し、男はある街にたどり着く。
幼児プレイ専門店。気持ちを抑えること出来ず、入ってしまう。でも、良かった。何かこれからの勇気が沸いてきた。
道行く人に温かそうな女のことを聞く。知るわけが無い。でも、もしかしたら、物知りバーのマスターなら。
男はバーに向かう。
ダンディーな、いやダンディーぶってる男性と、少し酔っているのかテンションが微妙に高い女性がカウンターに。
落ち着いたマスターがいる。でも、残念ながらそこまでは分からず。
しかし、女性が温かそうな女なら一緒にカフェで働いていたと。そして、その女は楽園島にいるのだとか。
男は明朝一番の船で、挙動がいかがわしい男たちと船に乗り込む。
楽園島。いわゆる売春島みたいだ。

女は部屋を片付けて、荷物をまとめる。
置き手紙としばらくは暮らしていけるお金を残して部屋を出る。もう戻っては来れない。さみしさが募ってくる。
男とよく一緒にいった公園。
あの頃は確か、猫がいた。それも巨大な猫。それを珍獣だと捕まえようとする近所の悪ガキの奮闘を横目にイチャイチャしていた。
泊るところをどうしようか。女は友達のところへ向かう。
男が訪ねてきたことを、友達から聞く。
探しに来てくれたという安堵が少し、心を落ち着ける。しかし、友達は自分が風俗の仕事をしていることを男に話してしまったらしい。もう、戻れない。蔑まれている。
女は海のある街へ向かうとだけ言い残し、友達に別れを告げる。
電車に乗って、ある街へ。
そこで声を掛けてきた若い男。
この街に来たばかりで、どうしていいのか分からないので案内して欲しい。
大荷物を持つ自分が、街の人では無いことはすぐに分かるだろうに。怪しい人かとも思ったが、どうやら田舎から出てきて、この街の大きさに飲み込まれて焦っている様子。
案内は出来ないけど、飲みに付き合うくらいなら。
お金が無いという若い男におごるからと、二人で居酒屋へ。
意気投合。酔った勢いもあってか、ラブホに。やるには、親しくなりすぎたか。
結局、一晩を共に過ごしただけ。
翌日、若い男は、なけなしのお金を女に渡す。つい、受け取ってしまう。それがきっかけで、商売をするように。
ある日、声をかけた男性に、ここで商売は禁止だと言われる。そして、うちのカフェで働けばいいと。男性には、お金目当てで、商売をしていないことが分かっていたみたい。
しばらく、そこで働き、楽園島のことを知り、女は島の風俗嬢となる。
嫌になれば、船でいつでも帰れる。でも、寄ってくる男に合わせて、やるだけの生活は楽だった。
男が友達のところにまで探しに来てくれたことを思い出す。 まさか、ここまで。そんな淡い期待をほんの少しだけ抱いて、不幸せではない日々を過ごす。

男が現れる。
どうして。さみしかったから。そうか、さみしかったのか。明日、一緒に帰ろう。明日は無理。帰ると言わないといけない人が何人かいるから、あさって一緒に。分かった。それまで遊んでくればいいんじゃないの。淡々とした会話が続く。
ありがとう。女は急に感極まって、その言葉を涙と共に発する。

冒頭の船の中。 さみしかった。自分はつまらない男だから、安心して。でも、どうしても好きだから。
男はただ女に語り掛ける。
夜があける。朝焼けの空。それは夕焼けのように真っ赤・・・

男視点と女視点で部屋から楽園島までの旅を交互に描いて、話を展開。
普通、こういう作品だったら、出会った瞬間、感動。そこから、話がラストに向かって大盛り上がりすると思うのですが、ここは違います。
もの凄く、淡々としていて、むしろそこまでの方が盛り上がっていた。と思ったら、女優さんの技か、感極まって溢れる想いを口にするような名演を魅せるので、一挙に惹き込まれる。これは感動のラストへ向かって一直線かと思ったら、暗い船の中で、陰鬱な先のぼやけた会話。船は本当に町に着くのかも不安が残る。
朝焼け。朝陽を見て、何か不安を覚えるというこの感覚が気味悪い。
この船は、朝陽という始まりに向かっているのか、夕陽という終わりに向かっているのか。
もう船ごとみんな消えてしまうのではないかとも思えてしまうような空気が残る。

離れてさみしいことを知った二人。
じゃあ、もう離れないでいようねといった感じにはなっていないみたい。
だって、離れている間、少し楽しいこともあり、全てが不幸だったわけではない。少なくとも女の方はそんな風に感じる。それくらいなら、一緒にいたって同じようなものかもしれない。
それよりも、今回の件は、新たな自分を見出すために、さみしさを餌のように自分に与える術を覚えてしまったような感覚が残る。
こんな二人が、これからどうなるのか。同じ船に乗って、本当にどこかへ向かえるのか。作品名からもそんな不安感が煽られる。

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コメント

SAISEI様

そんなに面白かったんや。作風変わりましたか?(笑)

九鬼さんがかのうとおっさんで好演されたり佐々木さんも外部出演よくされているし合田さんもHMPカンパニー客演されたりしてますしね。

投稿: KAISEI | 2015年11月 8日 (日) 22時21分

>KAISEIさん

ここ2回ぐらいの公演からかなあ。
鬱々としながらも、どこかそれを楽しんでしまえる作品になっているような気がします。
風俗ネタが多くなって、笑いは取りやすいところはあるでしょうが、観ている感じではそれだけではなく、何か鬱蒼とした空気の中で笑える雰囲気が出来上がっているようです。

投稿: SAISEI | 2015年11月10日 (火) 15時34分

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