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2015年11月 7日 (土)

おやすみラムチョップ!!!!!【超人予備校】151106

2015年11月06日 インディペンデントシアター1st (100分)

可愛い羊、ヤギキャラによるコミカルをベースに、安らぎある普通の日常を過ごすために私たちがしないといけないことを問うメッセージが組み込まれているような。
それは、とても温かいものであると同時に、不穏な空気が漂う今の社会における厳しい警鐘も含まれているような感覚が残り、いつものハートウォーミングだけで終わらない作品だったように感じました。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

不眠症の男。
いつものようにベッドの上で、眠れずに苦しんでいる。
気付くとおっさん羊が。
確かに羊は数えていたが。
眠れない原因は山ほどある。部屋の環境は悪いし、会社では上手くいっていないし、実家からは帰って来いと言われているし。
役に立たないおっさん羊をボロクソに言ったら、逆ギレされる。必殺技ラムチョップで痛い目にあわすとか言ってくるが、そんな食べ物の名前を挙げられても怖くもなんともない。
翌日には、何か勘違いをしているようだが、メリーを名乗る妙齢の女羊上司も登場。
砂を目にかけると眠れるとかいうどこかの話を真似て、サンドマンとかいう怪しい男まで呼び出すが、痛いだけで眠れたものではない。
ただ、サンドマンに、自分の力が効かないなら、心の問題を抱えていることを指摘される。
そういえば、男は羊の数を数えられない。他のものなら大丈夫なのに。羊はいつまでたっても1匹から進まない。
つまりは、眠ることを男自身が拒否しているわけだ。
その原因を突き止める。
男は彼女に出て行かれている。
理由は。
ジュクジュクの柿か、シャキシャキの柿かで言い合いになった。猫を飼うことで揉めた。誕生日のサプライズを失敗した。
分からない。
それでも、ある夜、明日、友達と温泉旅行に行くと言った彼女の横で酔って寝たら、目覚めた時には彼女はいなかったという事実が浮き上がる。

日本FBIは窮地に追い込まれている。
アメリカとの機密文書が盗まれた。正確に言うと、食べられた。残っていた機密文書の破片には、分析の結果、人間の唾液がついていた。
重要な参考人として、精神科医であり、山羊の研究の権威である男が挙げられる。早速、捜査に向かう。ただ、不安なのは今はその男、精神病棟の患者であることだ。
精神病棟に向かうと、そこには山羊の姿をした男がいた。
今、人類は破滅の道を歩んでいる。そのために生きることに貪欲な力を持つ山羊に人間がなるという研究をしており、その実験体に自らがなったようだ。
この山羊人間は監禁されているので、犯行は不可能。恐らくは、同じような思想を持つ人間の仕業に違いない。
FBIは、この男も連れて捜査に乗り出すことに。
ただ、トイレットペーパーやらカルテやら、目の前にある紙を食べてしまうみたい。そのことが問題となり、看護師に監禁されているらしく、連れ出すにも一苦労。それに、連れていったところでさほど役には立たなさそうではある。
まあ、何とか病院を抜け出し、FBI本部に。
状況から、相当、山羊の力が強い本物の山羊人間の仕業なのだとか。
まずは、何やら仲間に羊人間がいるらしく、情報を得るため、そこに向かう。
ある施設の元研究者。人間の恐ろしさに気付き、自分は羊、ムフロンとやらになることを決断したらしい。
施設では山羊と人間の遺伝子組み換えが行われていた。その山羊の生命力を兵器として使うために。
そいつを見つけ出さなくてはいけない。
どうやって。匂い。
犬人間とやらもいるらしい。連絡を取ってみる。

とあるマンションに住む夫婦。
仕事はどう。何気ない朝の夫婦の会話。でも、夫はそんな妻の言い方が気に入らないらしく、どうという言葉を使うなとか、よく分からない口ゲンカ。
イライラしながら、夫は出勤。
それでも、生真面目な夫は、きちんとゴミ出し。そこで、同じマンションのヤギヌマという女性に出会う。妻とケンカしていることもあってか、ちょっと心を奪われてしまう。
妻は夕方、パートに。
途中、ヤギヌマと出会う。彼女の一方的な常識外れのかみ合わない会話に辟易とする。
夜、夫婦の表面的な会話。心の声は、相手への罵りだらけ。
そこに、ヤギヌマが遊びに来る。夫は心の中で大喜び。妻はイライラ。
ヤギヌマは手土産にこたつのコード。これだけでちょっとイラッとするのに、夫はこたつを買うとか言うから、妻はかなり不機嫌に。
妻はちょっと自分本位なヤギヌマにまた苛立ちながらも、その場を凌ぐ。
ヤギヌマが帰った後も、のほほんとしている夫に、妻は言う。
あの人はおかしい。それにあの頭を見たか。ヤギみたいな角が生えていた。

ここまでで、80分。
上記した3つの話が順番にシーンが切り替わりながら展開。
いつまで経っても、交差しないので60分ぐらいで少し不安というか、もどかしくイライラしてくる。
たぶん、普通ならば、60分ぐらいでヤギヌマが、その遺伝子組み換え体であることに漠然と気付くのかも。
私は、角を生やしたヤギヌマを見ても、ヤギツノってちょっとエロいなとか、やましい目で見てしまったがために、話の展開に付いていけていることを確信するのに、その後、20分を費やし、80分でようやく安心するということになる。

ヤギヌマは自分の中に潜むヤギの力を抑えきれなくなり、不安を抱き始める。
そして、自分では唯一、友達だと思っている妻に相談をしにいく。
世界平和のために、自分が大変なことをしてしまったことを告白。
妻は、今、こたつを買うか買わないか、パートの時給は上がるのかとかを抱えながら生きている。それが、世界の話をされてもと微妙な表情。
でも、ヤギヌマは、自分にいくらヤギの因子が入っていて、人間の常識と外れていても、人間として生きて、妻とも一緒に話したいと。
妻は、そのことを偽りの気持ちなく受け入れる。上手く付き合えるなら、これからも一緒に。もし、ダメで嫌になったら、それは自分からもう会わないと言うからと正直な気持ちを伝える。
ヤギヌマにとっては厳しい内容だが、、本気で接してくれる人間と出会えたことをむしろ喜んでいるみたい。
そこに、FBI突入。
銃を突きつけられても、ヤギヌマは観念しない。
施設でのこと、自分は人間として生きたい気持ちを告白する。
FBIはそんな彼女に、どう生きたいかは自分で決めればいいと言う。
施設の元研究者はムフロンに、精神科医は中途半端なヤギ人間に、犬人間は週末は犬で、普段はサラリーマンをしている。みんな、過去にこだわらず、自分で決めて、生きることを決断している。
ヤギヌマは、FBIに全てを話すことを決め、連行される。
妻は、そんなFBIに、彼女は私の友達だから手荒なことはしないで欲しいと言う。
ヤギヌマは帰る場所を見出せたのか安堵の笑みを浮かべる。

不眠症の男は、おっさん羊に連れられて、勿忘草の世界へ。
甘い匂いでいっぱい。
たくさん、たくさん、忘れるまで勿忘草を食べればいいらしい。
近くに彼女がいる。猛烈な勢いで勿忘草を食べている。自分のことはもう忘れてしまったみたいだ。
よく見れば、他にもたくさんの人間が。
みんな忘れて、これからの人生を歩もうとしているのだろう。

雨。
妻は傘を持って、夫を迎えに。
今日は色々なことがあった。ヤギにFBIに世界平和。
どうだった、仕事は。
普通。いつもどおりの夫の答え。
ちょっとだけ、変わったこと。部長がコーヒーをくれた。いつもは罵るだけだったのに。
でも、やたら甘い変なコーヒー。嫌がらせかなあ。それとも感謝の印なのか。
そんな普通、ちょっと変わったことがあっても、普通。
そんな時間を、いつもの夫と過ごしている、今の、そして、きっとこれからも続くこの時間が愛おしいとばかりに妻は泣き笑い・・・

観劇後の優しい気持ちや心地よさはいつもと変わらぬのだが、今回はちょっと、警鐘みたいなものも感じ、手放しで心温まるようにはならなかった。
それと3つの話が、最終的にまとまりはするが、大きく2つの視点として収束したように感じ、どうも釈然としないところがある。
朝起きて、夫婦、恋人、友達とお話して、仕事して、食べて、飲んで、眠りに就く。この当たり前の普通が脅かされる。
何かを失ったから。何か普通では無いものを投入されたから。
この2つの理由は全く違うのではないだろうか。
不眠症の男は彼女を失った。それでクヨクヨして普通じゃなくなってしまっている。理由は前者。忘れてしまえばいい。それがこれからの足枷になっているのなら。
妻は、ヤギ人間やらFBIやらが日常生活に入り込んできて、普通じゃなくなってしまっている。でも、そのこと自体の悩みよりも、普段の夫婦生活の方が深刻な問題として捉えている。そちらの方は、根本的に愛し合っているのならば、細かなところは日々、忘れ、背負わずに明日を迎えていけばいい。
ヤギ人間の、ヤギと人間という葛藤も、自分の生いたちやら、背負ってきたことに囚われずに、忘れるというか、受け止めて自分の人生を歩めばいい。
気になるのは、ヤギ人間を生み出すような社会が、この作品の登場人物たちが住む世界にあるということ。
FBIの機密文書も世界を脅かす不穏なものなのだろう。施設の存在も、皆が知らない間に何かを秘密裏に進めているということだ。
自分たちの普通を個人レベルではなく、世界のレベルで脅かそうとするものが迫っているという妙な不安。

ヤギ人間はこれまでになかった新たな考えというメタファーのように見え、それを突き付けられた人間が取るべき行動を考えさせられる。
妻は彼女が人間というものをしっかり想い、世界を良くしたいという真摯な念があることを感じて受け止め、彼女を受け入れるような行動をしている。でも、それがダメだったら、もう来ないでと言うからと拒絶の可能性も示唆している。
この形式が、どうも国や政府から、より良き社会のためだと、急に目の前に現れた政令やら仕組みのように感じる。
私たちは、普通の生活がいいからと言って、普通じゃないものを全て拒絶して生きていくわけにはいかない。それに、普通と言っても、個人差があり、例えば、この作品のヤギ人間一つにしても、自らがそうなろうと考えるような同調を持つ者もいるし、抵抗を覚える者もいる。
受け止める、拒絶するのバランスの中で、いかに尊い普通の日常を守っていけるのか。少なくとも忘れてはいけないのだと思う。
これが、個人の辛さや悲しみから歩みを止めた者は、嫌なことは全て忘れてしまえばいいという考えと繋がらず、どこかもどかしい感覚が残っているようだ。
ラストの甘い香りのする勿忘草と、甘ったるそうな缶コーヒー。
不眠症の男は、たくさん勿忘草を食べて、また頑張っていけばいい。それはもちろん、夫も同じ。でも、甘ったるい缶コーヒーを飲んで、部長がしてきた不条理なこと、会社を脅かすような悪しき行動を忘れてはいけない。忘れるのは、部長に嫌味を言われ、落ち込んでいた自分自身だけ。そこに、雨の中、妻と相合傘で帰るという自分自身のちょっとした幸せな生活が脅かされる核があるのだろうから。

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