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2015年11月 1日 (日)

雪降り姫 ~雪見堂大合戦。境内は戦場だ~【しろみそ企画】151031

2015年10月31日 芸術創造館 (120分)

人間から虐げられる妖怪、その残虐性から鬼へとなろうとする自分を諫める幽霊、世間から認められない忍、家族が分かつことになってしまった寺を守る一家、家族に問題を抱える巫女、世の人から迫害され愛する者と悲しい別れを経験した神様・・・
自分は誰からも想われていない。そう、悲しみや恨みを増幅させ、辛い人生を過ごす者たちが、ある事件をきっかけに、自分にもずっと想い続けてくれている者がいることを知り、自分も実はずっと恨みや悲しみだけでなく、愛や友情の心という想いを持ち続けていることを知る。そんな凍った心を溶かしていくような話。
ぶつかり合う中で、痛みを知るから、相手の痛みを理解し、同じ苦しみを抱かないで欲しいという願いが生まれる。それは、相手だけでなく、自分自身への祈りでもある。話の中で、そんな分かち合いがたくさん生まれ、やがてはかつての悲しみ、恨みを消し去り、これからの希望へと結びつけていくような温かく力強い生き方が見えてくるような素敵な作品でした。

舞台は、山奥はずれにある雪降りの起源とされている雪降り寺。
その寺の雪見堂奥之院では、雪降り姫と呼ばれる神様が祀られており、代々、雪見家の一族によって守られている。その存在は普通の人にはあまり知られていない。結界が張られており、部外者は一切入ることが出来ない。
今秋には、200周年の法要で奥之院御開帳が計画されており、神様として祀られる黄金の鐘を雪見家一族は厳重に管理している。

雪見家は、母と娘二人。父はある事情で、娘がまだ幼き頃に家を出て行ってしまっている。
巫女として寺を守る母。娘二人にも、共に巫女として活躍してもらい、さらには跡を継いでくれればと思っているが、それはどうも難しい模様だ。シングルマザーなのが悪いのかと悩む日々が続く。
長女は寺の家計を助けるために、毎日、山を降りてガラス屋で働く。すっかり普通の人の生活のようだが、巫女としての力は衰えておらず、法要が近づく寺を取り巻く不穏な動きを感じ取っている。ただ、本当に問題となる動きがあるまでは、我関せずで静観している。ガラス屋では、ガラスを打ち砕くその働く姿が美しいらしく、先輩にかなり好かれてしまったようだ。こんな山奥まで跡を付けてくるというストーカー行為を繰り返される。ただ、本人はいたって、これはストーカーではなく、彼女を守るためだと言い張る。
次女は、巫女の純白の衣装を着ず、黒の羽織を纏う。自らは影の使いといった中二病に冒されてしまっている感じ。名前も影響しているのだとか。姉の名前はみゆき、幸せの象徴。自分は隻影、文字どおり影の存在だ。姉の光に対して、自らは影を貫くべき存在とおかしな設定まで作ってしまったらしい。そして、こうした自分の行動が原因で父は出て行ってしまったと思い込んでいる。だったら、普通に戻ればよさそうなものだが、彼女はそれならば影の力をさらに増幅して父を戻すという残念な考えに至ってしまった模様。

そんな、本当に雪見家だけで寺を守れるのかと不安なところだが、そこは周囲の者たちが彼女たちを懸命に支援している。代々、雪見家に仕える執事。クソ真面目といった堅物。彼は、何か能力を隠しているようだが、頼りなく弱い。でも、雪見家に仕えるという精神は頑なに強く、いつも真摯な態度で頑張っている。
歩き巫女と呼ばれる女性。各地を点々として巫女をしているようだ。寺の雑用をしっかりとこなしてくれている。実家にいられない理由があるらしい。どうも、家族に問題があるみたいだが、いつも明るく飄々として多くは語らない。ここに身を寄せているのにも理由があるようだ。恐らくは祀られる神様、雪降り姫が関わっている。
雪見堂の隣にあるタバコ屋さん。もうかなりのご老体の謎の男。特に何かの役に立つというわけではないが、とりあえずいつも傍にいる。
そして、妖怪と幽霊を従えている。猫娘と剣術使い。猫又と呼ばれ、人間に疎まれてきた。その結果、その妖術で多くの人を殺めた。自分は人間になりたいと思ってここにいる猫娘。多くの人を斬ってきた。その結果、鬼になりかける寸前で命を落とす。もう一度、人として人生をやり直したいと思ってここにいる。二人とも、雪見堂の黄金の鐘に人間になる力があるとタバコ屋の老人に言われて、ここで修行をしているようだ。

雪見堂の様子を探る忍軍団。様々な流派に押しやられ衰退している月陰流の面々。再興を図るべく、雪見堂の黄金の鐘を狙う。そこに、月陰流の秘伝書が隠されているらしい。
どうも大将の器に欠けているようなところがあるが、一派をまとめる頭の下、5人の忍が集結する。
一番下っ端の下忍だが、実力は一番、そして一番まともな男。
いわゆるロリコンなのか変態なのか、忍とは思えない浅はかでだらしない男。雪見堂の猫娘やら歩き巫女に惚れて場を無茶苦茶にする。
偵察が得意なだけに寡黙でクールな知能派の男。先走ったり、忍ぼうとしない仲間たちをなだめるのにいつも精一杯の模様。
美貌を活かすと自ら恥ずかしげもなく言えるくらいに、確かに綺麗な女忍。前に出る、目立つということにガツガツしていて、衣装もピンク。でも、ブレない堂々たる態度なので、誰もとがめられない。
そんな女忍に負けじと美貌をPRしようとする妙齢の女忍。若さには勝てず痛々しいが、それでも、絶対に負けないという強い信念が滲み出ている。

祀られる神のために、黄金の鐘を守る雪見家。
秘伝書のために黄金の鐘を狙う忍軍団。
黄金の鐘の力を借りて人間になろうと目論む妖怪と幽霊。
繰り広げられるその戦いの中、雪降り姫がその妖艶な姿を現す。黄金の鐘に宿ることで存在しているらしい。
雪降り姫は、かつて雪女として人間の世界に興味を抱いて、天界から人間界に降りてきた。そこで出会った一人の男。幸せな日々。しかし、雪女であることがばれて、人間たちに虐げられる。共に暮らしていた男と一緒に人間たちに追われ、二人とも命を落とした。
その恨み。そして、あの頃、一緒に暮らしたイケメンだった男を求めて、愛する者同士を引き裂くという離縁の吹雪を子供の癇癪のように吹き荒れさせる。
その吹雪から身を呈して、大切な者を守ろうとする者。
会社の先輩は長女を。猫娘は次女を。執事と幽霊は雪見家の者たちを。寡黙な忍は歩き巫女を。
様々な思惑が渦巻く中、浮き上がる各々の想い。
そして、明らかになっていく隠された真実。
黄金の鐘の行方、そして、鐘は皆をどう導くのか・・・

あちこちで、恋やら愛やら友情やらが発生。おまけにちょっと無理矢理なところもあるけど、隠された真実、関係を明らかにしながら話は展開。
最終的には、まあハッピーエンドに落ち着くといったところでしょうか。
そもそも、話の発端は、雪降り姫の悲劇から。雪女ということだけで、愛し合っていた者たちが引き裂かれた。それをひたすら恨んで、自らが愛する者同士を引き裂くという離縁の力を発揮するようになってしまった。
そのおかげで離縁することになってしまったのが雪見家の夫婦。夫は妻と娘二人を残して、世を彷徨う。もう死んでしまおう。その時、出会った一人の男。これが月陰流の頭。彼は、多くの者を傷つけた悔いと衰退する我が流派に幻滅していた。そして、死ぬつもりなら、もう一度、自分の代わりに頭となって人生をやり直せと言われたようだ。頭は基本的に姿を見せないので、頭の証となる物を身に付けていれば頭として認められるみたい。ちなみに、この頭の地位を渡した月陰流の頭、幽霊となったようです。頭となった男は、もう一度、妻や娘の下に戻るために、忍たちを使って雪見家に潜入。雪降り姫を追い出そうと考えたのだろう。
男は妻や娘のことをずっと想っていた。同時に妻や娘もずっと男のことを心に留めて生きていた。それは雪降り姫がいくら離縁の力で引き裂いても、何度でも再び結び合おうとする力となった。

そして、そんな戦いの中で、隠れていた他の想い合いの関係も浮き上がる。
分かりやす過ぎるが、長女と会社の先輩。ひたすら愛するその力は最後に通じる。一念岩をも貫くみたいな感じでしょうか。虐げられていても、真剣な想いは必ず受け止められるはずといったことを証明しているようです。
歩き巫女は、最後まで明確にはされませんでしたが、家族に問題を抱えているようです。彼女はその雪降り姫の離縁の力を使って、自分の家族を壊そうと考えていたみたい。そのことを寡黙な忍から、多くの言葉なく諭されます。忍となるからには、何かを捨ててきているのでしょう。それが大切なものであることを、捨てた、失った者だからよく分かる。だから、彼女には捨てもせず、失いもせず、新たに作ることを考えた人生を歩んで欲しいようなことを願ったのかもしれません。彼女もまた、本当に自分のことを想ってくれている人がいることを知り、これからの歩みに大きな希望を抱けるようになったみたい。ちょうど、巫女姿というだけで近づいてきて、雪降り姫の吹雪の時には助けもしてくれなかったチャラい忍が反面的な対照となったようですが。
そのチャラい忍をずっと見続けていた女忍。実は婚約者だったみたい。彼女がセクシーな姿を常にしていたのは、他の誰でも無い、彼に振り向いて欲しいという願いからだったようです。二人は道場を再興することにしたようです。タイプ的に合わないのでしょうが、きっと互いに支え合うような関係から、腐れ縁みたいな感じかもしれませんが二人だけの想い合いが生まれるのかもしれません。
猫娘は、迫害されていた過去から、人間になりたいと思っている。でも、それは自らの否定という逃げのように感じられます。次女は、雪降り姫の吹雪から猫娘に助けられた時から、猫娘を自らの式神として慕います。自分を信頼してくれる、想ってくれる人間の存在は、猫娘の凍りついた心を少し溶かしたようです。本当は根は猫だから、人間に甘えたかったのではないでしょうか。そうしても、その甘えを受け入れてくれる人間だっている。時代が変わったのか、ここにいる人たちが特別なのかは分かりませんが、今ならきっと人間と猫娘の友達関係は実現するはずです。

最後は、話の発端だった雪降り姫。
彼女にだって、ずっと想い続けてくれていた人がいます。
それはタバコ屋の老人。
ずっとずっと見守り続けてくれていたのですから。まあ、老人になったからなのか、元からそんなものだったのか、いまひとつイケメンでないことに姫は随分と愕然とされてはいますが。
それでも、人間は酷く冷たいことをするけど、ここにいる人たちのように優しく温かい者もいることが分かったのでしょう。
恨みから愛する者を引き裂くよりも、その想い合いの強さを信じて、それを祝福し、いつか虐げられる者がいなくなって、皆が想い合える世界にまで発展することを祈った方がいいように思えるようになったのではないでしょうか。
過去の恨み、悲しみを消し去り、新たな世界への祈りのために、雪降り姫は吹雪では無く、優しく積もる雪を降らせます。

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コメント

SAISEI様

脚本でもう一度全体を見たら矛盾や綻びが見つかるかもしれないが場面場面非常に楽しめました。

ここはDVDが出ないのが残念。

中山さんが一番印象に残ったかな。

投稿: KAISEI | 2015年11月 8日 (日) 22時24分

SAISEIさん、ブログ記事、有り難うございます。
読ませて貰うと結構詰め込んでしまっている事が解りますが、
しかし今回はギリギリラインまで詰めてみました!
「お腹一杯!」よりも「もうちょっと観てたい!」と思って貰えるのが理想です(汗)
より良い公演を目指して行きますのでまた、宜しくお願い致します。

KAISEIさん、コメント有り難うございます。
DVDは権利と等を考えると中々手が出せず(汗)
記録用は毎公演、今回に限っては撮影もお願いしておりますので、もしかしたら利益の無い形でなら
希望者の手元にお渡しできるかも知れません。
もしその機会があれば是非とも受け取って頂きたいです。

投稿: なかしまひろき | 2015年11月 9日 (月) 15時44分

>KAISEIさん

そうですね。DVD。
なかしまさんもコメントくださって、もしかしたら映像で観ることが出来る日がくるかもしれませんね。
私は丸小野さん押し(*^-^)

投稿: SAISEI | 2015年11月10日 (火) 15時39分

>なかしまひろきさん

コメントありがとうございます。
先日はどうも。

だいたい、毎回お腹一杯ですよ。
多分、性格的に、これも見せたい、あれも見せたいみたいな感じなんじゃないですか。そして、それを実現しようと力を貸してくれる方々がたくさんいらっしゃるみたいですし。

また、次回公演も期待しております。

投稿: SAISEI | 2015年11月10日 (火) 15時42分

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