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2015年11月 8日 (日)

虚言癖【劇団暇だけどステキ】151106

2015年11月06日 芸術創造館 (135分)

現実世界と小説の中の世界を交錯させて、悲しい運命を背負うことになってしまい、絶望の中にいる一人の女性を救い出すような話か。
愛情に飢え、その経験から本来の意味でも飢えていた彼女。
そんな彼女の凍り付いた心を溶かして、再び、未来に希望を抱ける道へと進ませるものは、やはり彼女に与えられる言葉とそこにあるその人の想い。
たくさん投げ掛けられる言葉の中にある彼女のことを想う優しい心を知った時に、世界は暗闇から、再び美しく輝き始めるようなラストで話は締められています。
少々長く、構成は簡単ではあるけど、少し複雑化してしまっているようなところが若干ありますが、とてもよく出来ていて、素敵な話だなあと感動しました。

<千秋楽公演まで、後数時間。本日16:00から。一応、ネタバレしますので、公演終了まで白字にしておきます>

幼少の神崎ありさ。
育児放棄なのか、お父さんは何をしているのやら、お母さんもありさに愛情を向けていない様子。
寂しそうに独りで遊び、迎えに来るお母さんに怯えた表情を見せる。
向かいに住んでいた花房春樹。学生。将来は小説家になるつもりだ。
ありさのお母さんに半ば強引に毎日、遊んでやって欲しいと頼まれる。
その日から二人の時間が始まる。
自分が作った小説の主人公になりきって、無邪気に楽しむありさ。
面倒臭さもあったが、春樹にとっても楽しい時間。
ありさは将来、編集者になって、春樹とずっと一緒にいると言う。
妹みたいな存在。
ありさ、12歳。
ありさのお母さんはどこかへ行ってしまう。
ありさからの助けを受けて、春樹は家に入る。
異臭。そこには、お父さんの遺体。一部、食べられている。お母さんがありさに食べさせたのだろう。
助けてとしがみつくありさに、春樹は大丈夫だから、ずっと一緒だからと自分の耳を触りながら言う。嘘をつくときの癖だ。本当はこれは厄介事かもしれない、施設に連れて行かないといけないと思っていた。
そんな癖を見抜いたのだろう。ありさは春樹を部屋に監禁して、無理やり一緒にいようとする。
しばらくして、警察がやって来た。ありさは施設に預けられた。その後は会っていない。

春樹は夢叶って、小説家となった。
編集者と一緒にキャバクラに行く。
ちょうど、客とキャバ嬢が揉めている。
ホスト上がりなのか、真っ赤なドレスにスレンダーというか、痩せすぎな女性が絡まれている。女性の方は、こんなこと日常茶飯事とばかりに横柄な態度。すぐ傍には、男をなだめようと気のきつそうな先輩嬢が間に入っている。
編集者は怖くなったのか、逃げ出してしまう。
春樹もケンカの仲裁。と言っても、力無き優男。時間稼ぎにはなるだろうとの考え。
春樹の思ったとおり、強面の男が登場。こういうキャバクラにはこうした用心棒がいるものだ。
どうやら、常習犯らしく、以前もストーカー行為をして、指一本へし折られているみたいだ。今回は指全部もっていかれる。
キャバ嬢は春樹に近づく。満面の笑みで、お兄ちゃんと。
春樹も気付いていたみたい。彼女がありさであることを。そして、恐らくはあの事件の影響だろう。彼女が固形物を口に出来なくなっていることも。
ありさは、春樹を引っ張って店を出る。

ありさの笑顔が春樹には少しありがたい。
施設に追いやり、ずっと、うしろめたい気持ちがあったから。
ありさは、自分が編集者になってあげると言う。かなりの人気キャバ嬢らしい。業界の人間も客なのだろう。無理な話では無いようだ。
しかも、部屋を用意してくれる。そこで、小説を書く。あの頃みたいに、ありさはそれを読む。
連れて行かれたのは教会の地下。施設で知り合った男が神父をしている。
しっかり書くまでは、外には出れない。神父も人のいい人だが、見張り役。どうやらありさには逆らえないらしい。
監禁。いや、缶詰といったところか。
何やら、あの頃に戻ったようだ。
あの頃、何も出来なかった自分。場所もちょうどいい。神に懺悔するかのように、ありさのために春樹は筆をとる。

小説の世界。こことは違うどこかの世界。
国を守るために娘にあまりかまってあげられず厳格な皇帝。そんな娘のいつも味方で優しい后。
皇帝と后の娘、アリサ。
この国では、人間が境界線を越えてくると、襲って食べてしまうという人肉の嗜好がある。
アリサの友達もそうだ。しかし、アリサはそれに違和感を覚える。本当は人肉など食べなくていいはず。本当の嗜好があるはず。
皇帝はそれを否定する。后もやんわりと諭してくる。友達はそんなこと考えたこともないみたい。
そんな時、アリサは、ハルというある老婆の下を訪ねる。
ハルはアリサの味方。この国で唯一の。だから、ずっと一緒にいたい。
アリサはハルに人肉のことを話すと、ある物語を話してくれる。
お父さんの肉を食べ、その後、施設に預けられたありさのお話。
自分と同じ名前。でも、面白い。アリサはハルの作る物語が大好きだから。
ハルは思っている。この物語を通じて、アリサに生きる力を与えてあげたいと。どんな時でも絶望せず、これからを生きようとする考えを常に抱けるように。
ただ、時間が足りないかも。自分の命が長くないから。
ハルの不安は現実のものとなる。
アリサにおかしな考えを吹き込んだと、皇帝が抹殺指令を出した。

現実の世界のありさは、大変なことになる。
先輩嬢からずっと厳しく言われていた。客の男をあまり軽々しく扱っていると、いつかしっぺ返しが来るよと。
ホスト上がりの男は逆上。用心棒の男を刺す。先輩嬢は用心棒をとても可愛がっていた。倒れる用心棒の男の下に駆け寄る。ホスト上がりの男は、ナイフを先輩嬢に向けて振りかざす。そこに割って入ったありさ。刺される。
自分の起こしたことだから。フラフラになって車道へ。車が突っ込んでくる。そこに遅れてやって来た春樹が飛び込んできた。
春樹は即死だったようだ。ありさは刺された怪我だけで済む。
これからどうしたらいいのか。物語の続きを読みたい。春樹はこの物語をどのように進ませたかったのか。そして、私に何を感じさせたかったのか。
今となっては何も分からない。絶望。ありさは薬物自殺を図る。神父が気付いて、すぐに病院へ。
昏睡状態。神父、先輩嬢、用心棒、ありさを編集者にさせた権力を持つ男が見守る。

小説の世界では、ハルは殺されてしまう。
許せない。その怒りは、ありさに人の感情を喰らう力を呼び起こす。
人肉は食わなくても、人を喰らい、ついには皇帝を亡き者とする。
自らが玉座に就き、アガサ皇帝を名乗る。
友達や国民から、アガサが人肉を食わないという噂が流れ始め、アガサはそんな全ての人間を拒絶する。もはや、彼女には誰一人心を寄せる者はいない。
そんな世界に、病室で昏睡状態のありさが現れる。
ここは春樹の作った小説の世界。
もう、自分の世界に先は無い。春樹がいないのだから。この世界だってハルがいない。ここだって現実と同じだ。
ありさはこの世界を自分の手で壊す決断をする。しかし、アガサはここはあなたの世界とは違うと訴える。壊さないで欲しい。ありさは二人もいらない。アガサと名乗るアリサを葬るべく、追いかける。アガサの友達もそれに協力してくれるみたいだ。
遂にアリサを追い詰める。

アリサは再び、この世界を壊さないでと訴える。この世界はこの世界。ありさとアリサは違って当たり前。そんな言葉に、友達たちがありさの下を離れていく。ごめん、やっぱり、アリサは友達だから。友達たちは、アリサをありさから守ろうと、アリサの周りを取り囲み出す。
現実の世界では、皆が祈りを捧げる。ありさのために。
戻って来て。ありさはきっと、私たちの言葉は聞こえない。春樹の言葉しか。
だったら、春樹、ありさの下へ向かって、彼女に生きろと伝えて。そんな祈りを捧げているようだ。
その祈りは小説の世界で実現する。
ありさの前に、春樹が現れる。
せっかく僕が創った小説の世界を壊すなんて残念。そんな春樹の言葉に、ありさは続きを自分の手で創りたかったがどうしていいのか分からなかったのだと答える。
春樹の答えは簡単だった。それはみんなの声を聞いていないから。ありさのことを想ってくれるみんなの声を聞こうとしないから。
目の前にはアリサを友達だから守ろうとする者たちがいる。
ありさにも聞こえてくる。戻って来いというみんなの言葉が。
ありさは戻らなくてはいけない。だから、春樹とまたお別れ。
春樹は耳を触りながら、まあ、さして悲しくないような言葉を発し、平気な顔をしている。ありさも、同じように受け答えする。
相手の言葉にある想いをきちんと受け止められるようになったありさ。自分の話す虚言の中に潜む辛さや悲しさを相手に見せる勇気を得たありさ。
今のありさには、そんな嘘で綴られた会話の中でも、互いに想いを受け止め合える。春樹だから。いや、きっと、戻れば、待ってくれているみんなともそうなれるのだと思う。

病室に見舞いにやって来る先輩嬢。相変わらず生意気な態度に口調。
ありさはもう店は辞めるつもりだ。だったら、退院したら、ごはんぐらい食べに行ってもいいけど。そんな先輩嬢の言葉に、奢りなら行ってあげてもいいと返し、笑い合う。
神父や用心棒、男も入って来て、何やら騒いでいる。先輩嬢が病院なんだから静かに死なさいと声を荒げている。
ありさは、先輩嬢が切ってくれたリンゴを持って、病院の屋上に。
本当はメロンの方が好きだ。まあ、仕方がない。
彼女はいただきますと声にして、リンゴを口にほうばる・・・

とりあえず、覚えている範囲であらすじを書いてみました。
やっぱり、素敵ないい話だな。書いてて、ちょっと泣けるもの。
恐らく、違うところがいっぱいあるでしょうが、何となく自分の中では整理がついたので、観た直後より、今の方が感動しています。
実際は、現実世界と小説世界のシーンが細切れになって展開するので、少々、混乱はします。ありさとアリサ、幼少期のアリサもいたりして、ありさだらけだし。
でも、このありさがやはり良かったですね。神崎ありさ本体を演じる木村雪夏さん。前半、中盤の飄々としている姿から、後半は憎しみの化身となる。最後は可愛らしい笑顔。前半、中盤の笑顔と最後の笑顔が違って見えるのは、演技もあるでしょうし、やはりこの作品の中で、毎回、ありさは成長しているんだろうなと感じます。
幼少期のアリサが西田美咲さん(劇的☆ジャンク堂)。冒頭の天使のような可愛さが効いていて、あんな子がこんなに苦しいものを背負わされてと、その後の悲しみ、辛さを増幅させているように思います。相手の言葉を受け止め、そこにある想いを感じ、その想いを自分の中で膨らませていく。物語の主人公になりきって、ちょっとしたダンスで舞台を駆け巡る。そんな幼少期の無邪気な空気の中で、本来、人はそうありたいと思わされる姿が印象的です。
アガサ、原千博さん。幼少期のアリサとありさの中間層に位置づけられるような感じかな。恐ろしい経験をしてしまい、不安や恐怖が渦巻く絶望の中にいたアリサ。そこから、何があったのか、表面上だけでしょうが、あんなに元気なありさ。そこに至るまで、もしかしたら、施設の中での姿のようなイメージなのかもしれません。常に葛藤を意識させられる、観ていて苦しいキャラ。現実のありさは、その葛藤の中で負の感情に制圧されてしまい、自暴自棄な人生を歩む。この小説のアガサはまだ抗っているようにも見えます。春樹が、辛くても、自分と戦って、今とは違う、これからに希望を見るような生き方を歩む、もう一つのありさという願いを込めたのでしょうか。

アガサは小説の中で新しい世界を創ろうとする。
ありさは現実世界で春樹の跡を継いで小説の世界を創ろうとする。
共に大事なことを忘れている。自分だけでは何もできないことを。
アガサのように人肉を食う嗜好に疑いを抱いて、全てを拒絶しても何も進まない。
ありさのように、人の心、感情を食い物にして、人と付き合っても仕方がない。
人の心を受け止めて、自分の想いを相手に伝える。本当の想いならば互いに受け止め合えるはず。
きっと簡単な話。ありさもアガサも春樹やハルと過ごしていたようにすればいいのだから。
最後にありさは、現れた春樹と、自分の心の中の想いとは逆の虚言で会話し合う。
表面上の言葉など関係ない。そこに、ある本当の想いを人は感じ取って、信じ合える。
見渡してみればいい。口うるさいクソ真面目な神父、憎まれ口しか叩いてこない先輩嬢、やたら責任感が強く義理堅い用心棒、ありさのことを褒める言葉しか言わない男。
そんな言葉も外観も全然違う各々。そんな人たちにありさはずっと虚言で接してきた。でも、皆はそこにあるありさの優しい想い、救いの声を信じてくれていたのだろう。だから、最後までずっと一緒にいてくれた。
ありさだって、きっと皆の本当の想いの言葉を耳を研ぎ澄ませれば聞こえてくるはず。自分はいかに愛されているか。どれだけ大切に思われているか。
彼女がそれを知った時、あの絶望しかなかったクソみたいな世界が、美しいかけがえのない世界へと変わる。
ラストは、その希望ある世界の始まり、生きる力強さをイメージさせて締められています。

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コメント

ご予約、ご来場ありがとうございました。

相変わらずのすごい考察力に感動です。
ブログを拝読して何度も泣いてしまいました。

ステキなおハナシでした。
関われて本当に幸せに思います。
また、どこかでお会いできる日を楽しみにしております。

投稿: 西田美咲 | 2015年11月11日 (水) 11時45分

>西田美咲さん

コメントありがとうございます。

今回もいい役どころ。
春樹、ハルを見詰める視線がとても印象に残っています。
幸せになって欲しいと願う人の優しい想いに溢れた美しい作品だったと思います。
また、どこかの劇場で。
多分、カメハウスかな。

投稿: SAISEI | 2015年11月12日 (木) 16時53分

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