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2015年11月29日 (日)

ババロワーズ・ショートショート・カタログ Vol.8 セクシャル・ローズピンクの巻【ババロワーズ】151128

2015年11月28日 道頓堀ZAZA (130分)

4月から始まった月一のこの公演。
土曜日1回ということもあって、ずっと観逃がしてきた。
行ければ行くでは、結局、観ず終いになる。
今回は、他公演を切り捨て、これを観ると決めて伺うことに。

う~ん、自由だ。
5つの作品、ダンス、コメディー、ハートフル、お色気とバラバラ。
それに相まって、様々な形で熱演を魅せる役者さん方。
どこを切り取っても、必ず面白さが入り込む仕掛けになっている公演。

12月最終週がラスト。最終回は3日間公演があるらしい。
ただ、この週は今の時点でもどこを選ぶか決めかねている激戦週。
そこに新たに入り込んできた、この公演に頭を悩ます。

・ホストダンス
誰が一番カッコいいか。
5人のホストは、決めポーズ、女を口説くセリフ、バナナの剥き方、ティッシュの鼻のかみ方・・・と張り合う。
埒があかない。次に来る女をオトした奴が勝利。
かなりキツイ女がやって来る。勝負開始。5人は思い思いにお得意の技を仕掛ける。
現れる男。品のない金持ちそうなおっさん。女はそんな男になびき、5人はキモいと。
カッコよければモテるわけではないことを知る・・・

作品名どおり、そのホストの勝負の姿をダンスで魅せる。
オープニングアクトの様相だが、かなり強烈。
特に私は、この作品がこの連続公演、ショートショートカタログの初となるので、こんな感じなのかと度肝を抜かれる。

・失失楽園
温泉宿。
不倫中の男と女。
一緒になることは許されない。だったら死のう。
二人の前には男が用意した毒薬入りの赤ワイン。
愛している。乾杯。
その時、デリカシーの無さそうな、せからしい男が。
SNSで調べて、ここに来たのだとか。自殺することも知っているみたいだ。
でも、おかしい。ネットには確かに二人の仲を告発するような内容の文書が出回った。だからと言って、ここが限定されるはずが無い。
よくよく聞くと、自殺サークルの集まりが別の部屋であるらしい。男を追い払う。
ところが、男はすぐに戻って来る。
ドタキャンされたらしく、部屋には誰もいなかったのだとか。ずっと、こんな人生で天涯孤独らしい。だから、ここで一緒に死ぬ。そう言って聞かない。
揉める中、男は不倫の男からワインを奪い取り、飲み干す。
死なない。
不倫の男は語る。初めから死ぬつもりは無かった。苦境を乗り越え、もう一度二人でやり直そうと思っているんだと。
女は男の本当の愛を受け止める。
よし、自分も人生、頑張って生きてみよう。乾杯だ。男は女のワイングラスを奪い、飲もうとする。
不倫の男は慌てて、それを奪い返し、これはダメ。飲んだら本当に死んでしまうからと口走り・・・

よくある不倫心中の設定をコミカルに。
不倫のドロドロさや、自殺という深刻さ、男と女の間にある裏切りの念といった黒さが全く感じられないように毒を抜いた風なコミカルな演技。
でも、扱っている題材は毒。
このパラドックスが面白いのかなあ。

・青春デリバリー
ぎごちない面持ちで部屋で二人っきりの男と女。
男にとって、女は学生時代の憧れの人。もう8年前になる。当時は好きで好きで、家を突き止めようと後をつけたこともあるくらいだ。
こんな形で出会うことになるとは。
もちろん、家に呼んだのは自分。でも、まさか、本当に来るとは思わなかったから。
デリヘル。
ネットでそっくりな人がいたから、呼んでみたらこんなことに。
女は料金、コースのことを話し出し、シャワーを浴びようとし、服も脱ごうとする。
そんなことしないでくれ。男は叫び、女をつい突き飛ばしてしまう。
何もしないでいい。話をしてくれたら、それでいい。
女はそんないいかげんなことはしたくないと言う。
結婚して子供がいる。男には逃げられ、今は母手一つで子供を育てるために必死に生きている。男にいいかげんなことをされた。だから、自分は男にいいかげんなことをしたくない。
男は卒業アルバムを取り出し、中に挟んであった手紙を渡す。当時、渡せなかったラブレター。そこには、あの頃の男の女への想いがしたためられていた。
女はその手紙をじっくり読んで、そして破り捨てる。
前を向いて。あなたの時間は8年前で止まっている。私はずっと前を向いて、色々な苦境を乗り越えて生きてきた。
男はその言葉を受け止める。そうだな。あれから、女性と付き合っても、ずっと、この女に囚われてきたような気がする。自分も、もう前を向いて進まなくては。
女は部屋を去る。
あの頃の私はそんなに輝いていたの。そんな女からの質問に男は、心を込めてそうだったと答える。
あの頃、輝いていたのなら、きっと今もまた輝けるね。そう言って女は部屋を出て行く。
男は、緊張から解放され床に倒れる。そして、生まれ変わることを決意。
ふと思う。生まれ変わったなら、またあの子と会ってもいいんじゃないのか。
とりあえず、店の電話番号をメモしておく・・・

オチに至るまで、ずっと男と女の恋愛観の感覚の違いが出てますよね。
きちんと整理して捨てて次に進めるか、少し残してそれにすがりつきながら次に進むかみたいな。
グズグズと諦めの悪い男と、ズバッと覚悟して爽快に切る女。こんな相違を見せながらも、互いに分かち合える何かを見出している二人に心地いい温かみを感じます。
古い昔の良き余韻に浸って生きてきた男。辛い過去がためにそれを見ず、目先だけを見て今を生きる女。
過去を振り返れば、そりゃあ酷い時もあっただろうけど、いい時だってあったはず。どうせ振り返るなら全部を見ないと。その上で自分の未来がある。
男も女もそんなことに気付き、本当の自分の過去を思い出して、これからの自分を頭に描くことが出来るようになったように思います。

・セクシャルクイズ・セクシードッチッチ!
セクシーを愛するベロニカ。
リンゴと柿。スマホとガラケー。都道府県。・・・
セクシーなのはどっち。
ベロニカの問いに、セクシーな面々が答えていく・・・

ベロニカ、強烈で。
向田倫子さん、久しぶりに拝見したけど、またこんな強烈なキャラを生み出されていたんだ。
バックにちょっと違う人もいるけど、本当にセクシーな女優さんも。そちらを見て目の保養をと思っても、目がどうしてもベロニカから離れてくれない。
お体を悪くされていたとかTwitterで見たような気がするが、悪くしたのは体だったのだろうか。

・娘はやれんが、娘さんをください。
バツイチ、42歳、18歳の娘あり。
そんな男が18歳の女を連れて喫茶店である人を待つ。
それは、その女の同じ年の父親。
結婚の許しを得るためだ。
ところが、その店に自分の娘が現れる。
こんなところを見られるわけにはいかない。必死に追い返そうとするが、待ち合わせをしているからと出て行ってくれない。
おかげで、自分が娘と同い年の女と結婚を考えていることがばれてしまった。
そんな中、中年のおっさんが店に来る。娘に近寄り、手を握る。
娘に何をするんだ、おっさん。
男はそうどなり、娘から中年のおっさんを引き離そうとする。
女が男を止める。お父さんなの。やめて。
娘も中年のおっさんを止める。お父さんなの。やめて。
これは失礼なことを。実は娘さんと結婚を考えていて。
互いにそう言い合い・・・

ありそうで今まで見たことのない設定。
確かに面白いことになりますわな。
関係性がむちゃくちゃになってのバタバタで、どう終わらすのかと思っていたら、こういうところがこの劇団の好きなところかも。
とっても優しい締め方。
互いに娘を取られるとかいう考えではなくて、どうして家族が増えるのだと思えないのかという娘の言葉。
どちらの父も妻に先立たれ、娘には苦労をかけてきている。だからこそ、自分のことだけ考えるのではなく、娘のことも思いやらないといけない。そんな当たり前のことに気付く父親たち。
そんな中、女が用意していた父親への記念ケーキ。今日は結婚記念日。この日に合わせて、男に挨拶をしてもらうつもりだったみたい。
娘は父のことをきちんと想っている。そして、結婚をするということも、その幸せと共に苦労もあることを理解した上で言っているようだ。
互いに認め合い、新たな家族が出来る。
最後はどちらが先に結婚式をするかでまた揉めるのだが。

作品の間には、作・演のたかせかずひこさんがトーク。
と言っても、ぼやきみたいな感じだが。
自虐ネタ、奥さんネタと、なげやりだけど、とても真摯な独特の空気が面白い。
これもまた一つの作品となっている。

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コメント

SAISEI様

結局、ババロワワーズは行けずじまいになりそうです。来年はやらないんかなあ。

今年は31日のDanieLonlyが最後の観劇になりそうです。

そこまでのラインナップは(笑)

5日(土)OIL AGE OSAKA→劇団天八→劇団925
6日(日)〔KAIKA劇団〕→スイス銀行→子供鉅人
7日(月)劇団しようよ
8日(火)火曜日のゲキジョウ
12日(土)スター☆ジャックス→劇団ZTON→劇団ZTON
13日(日)〔劇団往来or劇団邂逅〕
19日(土)劇団赤鬼、満月動物園
22日(火)火曜日のゲキジョウ(男前ファクトリー)

19日はそとばこまちの大朋ゆりえさんの卒業公演も気になるところです。

最優先劇団の匿名劇壇は行けそうになく。。。

カメハウスもムリやね。

良いお年を(笑)

投稿: KAISEI | 2015年12月 2日 (水) 00時15分

>KAISEIさん

ババロワーズは12月も何とか行けないかと思っていますが、他公演や仕事の調整がどこまでうまくいくか。
他公演も、まだ、全く予約していないからなあ。
7日は何も無ければ、お会いできるかも。

投稿: SAISEI | 2015年12月 4日 (金) 11時24分

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