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2015年11月21日 (土)

1000年の恋【劇団「劇団」】151120

2015年11月20日 芸術創造館 (110分)

最後の方は、あちこちでグスグスと鼻をすする音がうるさいぐらいになっていましたね。私は、歯を喰いしばって涙を目にためるぐらいで何とかとどめましたが、その防波堤が決壊したら、恐らくそんな人たちの仲間入りをしていたことでしょう。
感動の名作と謳っておきましょう。
話としての面白さはもちろん、役者さんの熱演、感極まった熱い感情表現と共に、凛とした厳格な言動、少し拍子を抜けさす笑いとそのバランス感覚が絶妙で非常に観やすい作品になっています。

1000年の時を経て、そこにあった人の想い。それは恋や友情や家族愛などを生み出すと同時に、人間の愚かさなのか、自分たちの住む世界を破滅させもした。
それでも、人は人のことを想い続けて、生を繋げていった。どんな時代にも必ずある誰かが誰かを想う気持ち。それが生きることの意味合いであり、その連鎖がいつの日か、皆が幸せに導かれるような世界を創り出せるという切なく哀しいけれど、狂おしいほど人を愛おしく感じられる希望の物語。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで。ちょっと自分の中に眠っている感情を引き起こして、感動する心と涙を流したいなと思うなら、足を運べばいいと思います>

周囲を森に囲まれたスターシアという小さな町。
外の森へ出ると死ぬと言われており、この町に住む者は外の世界を全く知らずにひっそりと暮らしている。
そのため、外部からの侵入者を防ぐために見張り塔が設置されている。
冷たく厳しい振る舞いを見せるが、これは上司としての立場のためであり、実は皆のことを大事に思っている管理監督マイルス。
アゴ、いやドンという名前の大柄で心優しい男。昔、父が森に出て死んでしまっている。
何かあったら怯えて身動きできなくなるくらいの臆病者だけど、けっこう言うことはきついミモザ。
毎日、落ち着いて読書に励むエイミー。寡黙で芯に何かを抱えている空気がある。
お調子者だけど、どこか影があり、自由気ままなカムイ。
そんな仲間たちと一緒に、いつも明るく元気一杯のナルという少女も見張りの仕事に従事している。
平穏で楽しい日々が続く。

しかし、ある日、森の中に一人の少年が現れる。
記憶がないようで自分が何者なのか分からない。スターシアの者ではない。村人たちは化け物だと殺せと言う者も。長い間、外を拒絶して生きているので、皆、差別意識は強いみたい。
とりあえず、マイルスの配慮で見張り塔預かりになる。外には絶対に出さない約束で。
名前はロンドがいいのではと、カムイが名付ける。
ロンドはすぐに皆と打ち解け合い、これまでと変わらぬ楽しい日々が続く。
でも、隙あれば、塔を抜け出そうとするロンド。閉じ込められているのは性に合わないみたい。それに噂だけど、森の外れにあると言われている魔女が住む研究施設に行ってみたいのだとか。好奇心も旺盛みたい。それとも、何か惹かれるものがあるのか。
その度にナルに叱られる。いつしか、ナルはロンドに想いを寄せるように。
時が経つ。
いつまでも、塔に閉じ込めておくのはかわいそう。
皆でどうにかならないかと、マイルスに頼むが、ロンドの経歴がやはり調べても分からず、ずっと塔の中に閉じ込めることが上層部の会議で決まったらしい。
ロンドはここを抜け出して、森へ行くことを決断する。
仲間だから。それだけの理由で、ドン、ナル、ミモザは共について行くことに。
森の中は噂通り、真っ暗。その中に突如として、ブラックホールが出現。
森の中にいたおかしな二人組が逃げろと叫ぶ。
しかし、ナルが吸い込まれそうに。
跡を追ってきたマイルスと共に皆で助けようとするが、間に合わず。ナルは消えてしまった。

ナルは気付いたら病院にいた。
ちょっといい加減そうだけど、優しそうな医師、シランのところへ連れて来られたようだ。
聞けば、ここはスターシアらしい。
自分の知っているスターシアとは全く違う。
森の中でひっそりと暮らしていたのに、ここは科学文明が高度に発展した都市だ。
まさか未来の世界にタイムトリップしてしまったのでは。
この都市の住民は皆、生まれた時にチップを埋め込まれるらしい。当然、ナルには無い。
身元不明のため、警察に引き渡されるところを、病院のセンター長の娘であるリコに助けられ、しばらくお世話になることに。リコの世話役、ポプリは得体の知れない者を受け入れることに抵抗を示すが、リコの性格からやむを得ないと諦めている。
飼っている鳥が籠の中ではかわいそうだと逃がしてしまうような心優しいお嬢様だから。

ナルとリコはすぐに仲良くなる。
ナルの暮らしていた森の中のスターシア。高度文明が発展しているが、様々な公害も併発しているリコの住むスターシアからは考えられない世界だ。
この世界は、科学者ダズが開発したDシリーズと呼ばれるアンドロイドによって、文明が発展した。このアンドロイドの動力源がイヴと呼ばれるエネルギー物質。これが無ければ、この発展は無かった。しかし、イヴは環境を汚染した。空気は汚くなり、この環境では生きることが出来ない人間も生まれるようになっている。ダズの弟のテオもその一人だ。
ダズはテオのために、イヴの破壊を政府に提案するが、文明の発展に犠牲は付き物だとそれを許してはもらえなかった。そこで、ダズはある手段でテオを助けるべく研究を開始した。

ナルはリコに案内されて、ある人と出会う。
体全身を特殊な服で纏い、顔はマスク、無菌室からは一歩も外に出られないと言う男、テオ。リコの恋人。
リコは毎日、テオに会いに行って、壁越しだけどお話をする。いつの日か手をつないで、花火を見に行ったりする日を夢見て。
ナルはそんなリコを見て、強いと思う。そして、生きることの意味を考える。二人は離れていても、こうして想いを通じ合わせている。それが人の生きる意味なんだろうか。自分の時代の人たちは。そして、ロンドと離れてしまった自分は。
ある日、ダズがテオの下に訪れる。遂に研究が成功したらしい。リコは悲しみを抑え切れない複雑な表情。
Xカプセル。テオをその中に入れて、1000年後の世界に飛ばす。そこがテオが幸せに生きられる世界になっていることを信じて。
ナルは、テオは今でもリコと一緒にいることが幸せだと、このプロジェクトに反対する。でも、リコはそれがテオのためならと決断した。
リコはテオに自分の大切なネックレレスを渡し、最後の別れをする。
その時、マスクを外したテオ。ナルはロンドであることを認識する。
自分は1000年前の世界に来ていることを。

一方、ロンドたち。
森の中で出会った二人組は、気真面目そうな男、ストレイと自由奔放な女の子、ターニャ。噂は本当だったようで、魔女の研究所の者。実際は魔女では無く、お婆ちゃんだったらしく、今はもう亡くなったようだ。家族であり、弟子でもあるこの二人が跡を継いで研究を続けている。
ずっとタイムマシンの研究をしていたらしい。そのために、必要なエネルギー物質イヴというものを探している。これが見つかれば完成する。
ナルは恐らく、時空の狭間に飛ばされてる。タイムマシンが完成すれば、助ける手立てがあるかも。
皆はイヴの探索に向かう。

リコは最後の別れの時こそ号泣したものの、その日以降は、ずっと研究をしている。テオが目覚めた時のために、空気を浄化する装置なのだとか。
ダズは、Dシリーズのマザーコンピューターである人工知能をアンドロイド化し、ラックスと名付ける。
そして、ラックスに指令を下し、全Dシリーズのアンドロイドに指示を出す。
人間を滅ぼせ。テオを見捨てたこの世界を滅ぼせ。そして、新しい世界を創り、テオに幸せを与えてくれ。
暴走したアンドロイドは各地で破壊を繰り広げる。
ナルとポプリは、研究室にこもるリコを救出に。
しかし、リコは1000年後の世界に行くと言い出す。ずっと研究していたのは空気浄化装置では無く、タイムマシンだったらしい。この世界ならイヴがあるので、開発も可能だったようだ。ただ、時空が歪むため、様々な弊害が及ぶために開発は禁止されていた。
まだ、完全に完成とは言えない代物。それでも、リコはテオのいない世界で生きる意味は無いとタイムマシンを作動させる。リコは消えてしまった。

ロンドたちはイヴを見つけ出せないでいる。
そこに、エイミーが現れる。いつもと違って、敵意を持って攻撃をしてくる。カムイが止めに入る。
エイミーは、もういいんじゃないのかとカムイに言葉を投げ掛ける。ずっと頑張り続けたカムイ。でも、もう人間は滅びればいい。カムイにとっても、その方が幸せだ。
カムイの正体はラックス。
あの全Dシリーズのアンドロイドたちによる暴動。ダズとの約束を果たすために、人間を滅ぼし、イヴを破壊し続けた。そして、その荒れた地に木を植え、森を創った。エイミーはそのアンドロイドの生き残りで、ずっとラックスの傍にいた。
しかし、人間たちはまたその森を壊す。そこで、ラックスは人間たちを封じ込めることにした。籠の中の鳥のように。それがこのスターシア。そして、今、テオが目覚めた。
そのテオを人間たちはまた拒絶しようとしている。
やはり人間は滅びればいい。
全てを破壊する。しかし、ラックスのエネルギー源であったイヴは、無限だと言われていたが1000年もの時が経ち、もう力尽きようとしていた。
自分の正体を知ったロンドは、長きに渡って、自分を守ってくれていたラックスに感謝する。
テオを幸せにしてあげてくれ。自分を生み出してくれたダズとの約束。ラックスは、悲しそうな表情をするテオを見て、その約束が果たせたのかと考える。きっと幸せになる。あの時、あの過去の世界で、ナルを救出したのは・・・
そして、ラックスは停止する。
エイミーは、ラックスの後を追い、自分の体内のイヴを取り出して停止する。そのイヴでは、タイムマシンを動かすにはエネルギー不足のようだ。

危険を顧みずにタイムマシンで1000年後に行ってしまったリコ。ナルは、カプセルの中にいるテオに、そして、自分のいた世界のロンドに向かって話しかける。絶対にリコと会え。そして、幸せになって。
しかし、アンドロイドたちは病院内にまで入り込んできた。ナルはアンドロイドたちに襲われている。
ダズの狂気的な考え。人工知能ラックス、ナルの知るカムイが、Dシリーズアンドロイドと共に病院内も破壊する。
シランがダズを刺す。
友達だから、バカなことを辞めさせる。テオを見捨てたのは、この世界もそうだが、ダズ自身だ。テオは幸せだった。リコが毎日、会いに来るから。ダズは会うこともせずに、研究の日々。テオのことを想っているなら、もっと会ってあげれば良かったはず。
ダズは死に、シランもアンドロイドにやられる。
ナルもラックスに銃を向けられる。

ナルは気付くと元の世界に。
タイムマシンは作動した。リコが最後にテオに手渡したネックレスがイヴだったらしい。
ロンドは、1000年後に向かい、ナルを救出して戻って来た。確かにナルの声を聞いたから。
リコ。どうして、そのタイムマシンでリコと会わなかったのか。あんなにあなたを愛したリコなのに。ナルは叫ぶ。
理由があった。リコからナルに宛てた手紙が残されていた。全ては、リコによって計算された筋書きだった。
リコは、テオが目覚める50年前にたどり着く。やはり、未完成だったので、正確性に欠けたらしい。そこで、カムイと出会い、全てを聞く。
テオに会うことを諦めはしなかった。森のはずれで、タイムマシンの研究をした。その中で、みなしごだったストレイとターニャにも出会った。
歳をとる。やがて、諦めるしかない歳、おばあちゃんになってしまう。
でも、研究を辞める訳には行かない。だって、大切な友達ナルが、1000年前の世界にいずれ飛ばされてしまうのだから。そのブラックホールも、そもそもは自分がタイムマシンを作動して出来てしまった空間の歪だ。
その時に、目覚めた愛しいテオに、タイムマシンでナルを救出に向かってもらわないと。
リコは、テオがナルと幸せになることを託して、この世を去っていたみたいだ。

全ての真相が明らかになり、今、ロンドとナルは一緒の時にいる。
ロンドの件は、マイルスが上層部と掛け合って普通の生活が出来るようにしてくれるらしい。
しかし、ロンドは塔の中で閉じこもって生きるというし、ナルはロンドとはもう会わないと言っている。
自分たちのために、多くの人が傷ついたことへの贖罪の念らしい。
間違っている。幸せになればいい。皆が幸せになって欲しいと願ったから、今の二人がいる。そんな仲間たちの言葉。
目の前では、花火が上がっている。
ロンドとナルは手を取り合い・・・

プロットと言うんですかね。よく出来ていますよね。タイムトリップものは、どこかで矛盾を生じることが多いので、そんなに理屈っぽく観ないようにするのも礼儀と思っていますが、この作品はなるほどなあと。
程よく伏線に気付かせ、かつちょっとミスリーディングも引き起こさせる。
心地いい観劇。
それに加えて、個々のキャラの活き具合や、役者さんの様々な形での熱演が絶妙のバランス。
見事だなあというのが一番の感想でしょう。

皆が皆を想っている相関がずっとあるのもいいですね。それも、1000年の時を経てまで。
誰かが誰かを想う気持ちが連鎖していくような姿がとても素敵です。もちろん、人間ですから、それがおかしな方向へと向いてしまって、自分たちがある意味一番大切に想わないといけない、この世界を破滅させることになったりもしますが。
それでも、幸せになって欲しいという真摯な願いの気持ちは、この世界をきっとより良き道へと導いてくれるのでしょう。
人を想うことが、人が生きる意味合いであり、それは皆が幸せに導かれる素敵な世界への道筋となるようなことを伝えているのでしょうか。その想いの形が恋人、親友、家族の繋がりならば、それは確かにその通りのような気がします。

個人的な話ですが、ダズに向けて放たれたシランの言葉が胸に残ります。
テオを見捨てたのはお前もだ。ただ、テオに会ってやれば良かったんだ。
科学者ですから、治すということに頭一杯だったのでしょう。それも一つの想いだとは思います。
私自身もがんの研究をしている一人です。母が今年、がんで亡くなった時からずっと思っています。がんを治すということの研究も、それはもちろん大事ですが、がんになって、もうどうしようもない人にするべきことは何なのか。
厳しい治療で患者様を意識朦朧とさせてまで生かすことより、残された時間を大事な人と少しだけ元気に過ごせるようにする治療の方が大事なのではないかと。
治すということに執着してしまうのが研究者の性なのか、現実的にはそういう研究じゃないと予算が付かないからなのか。
自分が目をやらないといけないのは、単なる研究ではなく、その研究の先にある人。そのことをダズは忘れてしまったのかなと思います。
人の想いは必ずあり、それは想う人、想われる人に優しい気持ちを生み出し、希望ある世界を創り出す源なのでしょうが、その想いの向けられる方向が間違ってしまうと、人を傷つけ、さらには世界を破壊するほどの力となってしまうような警鐘も作品から受けます。

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