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2015年10月11日 (日)

遠浅【伏兵コード】151010

2015年10月10日 シアトリカル應典院 (90分)

舞台上の真理が、過去の記憶をたどり、過去の真理を彼氏に話す。彼氏はそれを受け取り、二人の距離をより縮めて寄り添い合う。
そんな作品を、実在する真理が描き、私たちに見せる。
私たちは、一人の創作家の赤裸々に曝け出した生い立ちを目の当たりにする中で、自分自身、自分の人生と向き合ってみる時間をもらう。
それが全てかな。
それでいいのかなと思う作品だったように思います。

見せられた生い立ちは、私には虚構にしか思えない現実でした。
でも、それを全てを肯定しているような感覚が残ります。
そうしたいという祈りなのか、そうしなければいけないという警鐘なのか、そう出来るようになったのか。
どちらにしても、暗闇の中、壮大な海で彷徨うような中、道はあるという力が感じられる。プカプカ浮遊して、ゴミのように彷徨っているようでも、どこかに生きた証はきちんと残っているような。
それを感じて、それぞれの人生を進めば、それでいいのではないだろうか。

<以下、微妙ですが、一応ネタバレ注意。公演終了まで白字にします。公演は火曜日まで>

防波堤で話す真理とその彼氏。
明日は、真理の故郷である愛媛県宇和島市に向かう。
帰る場所は無い。父が潰してしまったから。
海辺の小さな寂れた町。眼前には海の先に山が見える。そんな距離だった。
ここ、大阪湾は遥か彼方まで拡がる海。山は見えない。
そんな景色、聞こえてくる海の音、海流で漂う波を感じながら、真理は記憶をたどり、それを彼氏に伝える。

母が、真理は自分の人生の邪魔だと家を出て行く。
真理は父方の祖父母に引き取られ、父とは別居生活。
父は仕事を探しているのか、働く気がないのか。何とかなると、無職でパチンコ生活。
いつも金の無心。
真理が大阪に旅立つ日も、最後はお金の無心だった。
それは、真理が大阪で暮らすようになって距離が離れても続く。
祖父母を悲しませるようなことは絶対しないで。したら刺す。いや、刺せないだろうけど。
自殺も考えた。でも、最後の一歩がいつも何かによって踏み止まらせてくれた。
どちらも、祖父母が悲しむから。

大震災。
父に電話。互いにテレビを見ながら、津波の信じられない風景を目の当たりにする。
父は、こちらは大丈夫だと。津波なんてくるといいながら、きた試しが無いからと。
真理は、昔、ずっと津波を恐れていた。もし、波が襲ってきたら、どうやって祖父母を連れて裏山に逃げようかと。
ずっと不安を抱えていた。
テレビで崩壊した家が映し出される。
父は思い出したように、祖父母の家を潰したと口にする。
亡くなった祖父母との思い出の品もたくさんある。そんなものも全部、ゴミとして捨て、借金を返したらすぐになくなるくらいの金で売り払ったらしい。
真理は電話を切り、ナイフを自分に突きつける。でも、最後まではいけなかった。

真理は彼氏に話す。
親から愛されない子と普通の子。何かが違う。
彼氏は黙って聞く。
彼氏は、真理に黙って、真理の故郷を一人で訪ねて、祖父母の墓を参ったり、真理の母と電話で話している。
話を聞いても、きっとそれは全てでは無い。少しでもと寄り添おうとしたのだろうか。
そんな彼氏に真理は寄り添う。

翌日、二人はかつて真理が過ごしていた場所を訪ねる。
舞台では実際の映像も同時に映し出される。まだガレキが少し残る空地。
地面に這いつくばり、丁寧に地面と接触する。
そこにはまだ真理が生きてきた証が温かみとして残っているみたいだ・・・

真理の両親は、娘が身元不明になっても確認しないとか、すごく簡単な言葉で距離がありえないくらいに遠いことを感じさせる。
母は真理を捨てた。父は、金をくれと言いながらも、たまには帰って来いという普通の言葉も発する。
真理は、溢れてくる怒りで爆発しそうになりながら、笑顔で金を渡す。
何か、人生の舞台みたいなものがあって、父も真理も、父であること、娘であることを演じているかのよう。そして、母はその舞台に登場することすら拒絶した。
祖父母は、真理が演じないでも、真理自身でいさせてくれる存在だったのだろうか。そんな祖父母亡き後、同じような人が彼氏として現れたのか。

幸せになればいいと思う。
真理も、彼氏も。そして父も。母だって。
自分が生まれた時は、最も近距離にいた人がどんどん離れて遠くへいってしまうこともあるだろう。その代わり、かつては見えもしなかった遠い距離から、いつの間にかこんな近くまでやって来てくれる人もいるだろう。
近づいたり、遠のいたり。
そんな繰り返し。自分自身も誰かにとってはそんな彷徨った存在なのだろうし。
そんな中で、手を掴める距離まで近づいた時に、手を取り合える人がいるなら、それを大切に一緒に進めばいい。

こんなことは、特に書く必要も無いが、こういった作品を観ると、いつも昔のことが頭をよぎる。
親から愛情を受けないで育つ子というのはけっこう身近にいる。理由は様々だが。
私は、かつて、そんな子のことを好きになり、一緒になりたいと思った。
結論から言うと、プロポーズして、そこで破局を迎えた。
その距離が近づくうちに、その子が拒絶するようになったような気がしている。
この作品の彼氏を見ていると、彼氏が真理に近づいたのではなく、真理が近づけるようにしていったような印象を受ける。
真理から伝えられる言葉を受け止める。ただ、そうして受け身体制でいたのではなく、その言葉の真実をより理解して受け止められるように、自分自身も行動していた。その行動は真理に直接近づかず、間接的に真理が近づきやすいように。
この感覚が、うまくは書けないが、自分が過ちを犯していたところだったのかなと途中、観ながら思っていた。
私は彼女の事実を知り、それをただ受け止めたつもりだったのだろうか。
そこにある心までとは対峙できず、彼女の心にグイグイ入り込もうとするような行動を取っていたのかな。でも、その時は距離を近づけたかったから。寄り添って欲しかったし、寄り添いたいなと本気で思っていたんだけどな。
どうしたら良かったのか。その答えの糸口ぐらいは何か見えたような気がする。
まあ、もう昔の話。
正直な話、破局を迎えた時、かなり辛かったので、今はそんな子を受け止めるだけの力は自分には無いからと、初めから距離を置くようになっているように思う。
だから、もう縮まないのかもしれない。
それでも、愛されたり、想われたりする、至上の喜びは誰もが得られるのだから、きちんと手で掴んで欲しいなと思う。

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コメント

SAISEI様

12日(月)はヨーロッパ企画の『遊星ブンボーグの接近』を観に行くはずでしたが前売り完売とのことで急遽伏兵コード『遠浅』を観に行くことにしました。

疲れてくるとエンターテイメントに走りたくなるんですけどね(笑)伏兵コードは暗いし。ただ休止というのを知ったので良かったのかもしれません。

まず席が楽でした。いつもの椅子ではなく「何であれ使わへんにゃろ」と思ってた幅広のシートが緑の椅子。この椅子なら應典院の劇場評価が上がりますわ(笑)

私小説ならスゴい話ですけどね(苦笑)

途中映像も組み込まれてましたやん(笑)? 最初野良犬かな?と思ったら稲田さんやったんですね(笑)私が行った回アフタートークが阿佐ヶ谷スパイダーズの長塚圭史さんやったんですがその時稲田さん自ら野良犬みたいやと言われたことがある、と語ったはりました(笑)

彼氏がずっと受け止めたはるんですね(笑)


投稿: KAISEI | 2015年10月17日 (土) 22時42分

>KAISEIさん

詳しくは知りませんが、本当に大変な時期もあったそうですわ。
稲田さんに限らず、創作家は自分の身を削るように、作品を生み出しているようで。
まあ、幸せを目指すように歩み始めて良かったんじゃないでしょうかね。

投稿: SAISEI | 2015年10月19日 (月) 18時03分

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