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2015年10月31日 (土)

御伽噺失格【ノオビウエ】151030

2015年10月30日 シアターカフェ Nyan (70分)

帯金ゆかりさんと野村有志さん(オパンポン創造社)、上野淑子さんの現実なのか、虚構なのか曖昧な境目で繰り広げられる見事な掛け合いを楽しく拝見。
それが面白いだけにとどまらない。
幾つかの層構造から、その強い個性や引っ込み思案な性格などから世間に認められない者たちが、そんな自分自身を受け止めた上で、懸命にひたすら走ることで、一つの盛大な拍手に繋がる作品を創り上げられるという、舞台に立つ者の覚悟を魅せるようなところも感じさせられ、楽しさに隠れてはしまうが、少し感動を覚える作品となっている。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで>

舞台で御世が美しい姿で、綺麗な歌声を奏でる。しかし、内心ではかなり焦っている。
楽屋に戻ると、伽奈が下着姿でイラついている。
脚本家の置き手紙にはファンタジー作品が創れなかったと姿をくらますことが記されている。
しかも出演する予定の30人中、28人が来ない。つまり、今、舞台に出れるのは御世と伽奈だけという状況。
御世はこうなることを知っていた。みんな、伽奈のことが嫌いだったから。自分勝手でがさつで横暴で。今だって、こんな厳しい状況を私にだけ押し付けて、自分は下着姿で楽屋から出る気も無い。自分だって本来なら来なかった。ただ、最後の舞台がドタキャンでは悲しいから。これで役者を辞める決意を御世はしている。
そんな真相を語りながら、二人で楽屋で揉めている中、脚本が見つかる。藁にもすがるつもりで少し練習を。魔法少女の話。でも、これではダメ。
逆に脚本が無いということは、自分たちで何でも出来るということなのではないのか。最後に最高の舞台を。伽奈は一人熱くなっているが、それが出来るなら御世も役者を辞めはしないだろうに。まあ、最後に本日はご来場ありがとうございます。この魔法の言葉で拍手が生まれる。それを信じて、二人は舞台で勝負することに。

伽奈は衣装を着て、魔法少女の姿に。少し、無理があるけど7歳の設定だ。
魔法少女は、こちらも無理があるけど5歳の鬼婆と呼ばれる少女と出会う。
二人とも、その見た目のせいなのか、世間から本当の自分を見てもらえない。常に敵対視される二人。
だったら、全く知らない世界へと二人で旅立とう。

二人は働き始める。鬼婆は飲み屋。やっぱり、見た目のままの扱い。でも、偽りの自分で好かれても仕方がない。
こんなところにまで、二人を追う者たちが。銃弾が飛び交う。伽奈は空を飛んで逃げようと魔法発動。しかし、その魔法で鬼婆は死ぬ。
伽奈は、銃弾をその身ではじき返しながら、空を飛び逃げる。

気付くと男に助けられていた。この男の家族を含め、村人1500人を殺してしまったらしい。男は伽奈がしたとは思っていない。
一緒に生活。愛を育み、プロポーズされる。
しかし、伽奈は全てを告白。男からキショいと言われる。
もう、殺して欲しい。伽奈の願いどおり、男は銃を。しかし、弾丸ははじき返され、男が死ぬ。キイチゴという言葉を残して。

伽奈は荒れた生活。
キイチゴの花言葉が愛情と知ってからは、村の見知らぬ男と体を重ねては、魔法で殺す日々。殺しているわけではない。魔法で勝手に男が死んでしまうのだが。
抑えはきかず、村人を全滅させるくらいに。
そして、その力は、いつしか目を付けたある国の戦争に使用されることに。
命令で殺す方が気楽だった。
その国のお姫様。外の世界は見たことが無いらしい。
伽奈によって世界は終わりを迎える。その最後の姿を見せようと、姫を外に連れ出そうと魔法発動。
しかし、また、姫を殺してしまう。

魔法少女は姫に死んではいけないと必死に起こそうとする。
魔法少女を演じる伽奈が、姫を演じる御世に、死んで逃げずに、自分で決着をつけろと語りかける。
伽奈は御世に、この話を終わらせようとする。
自分に押し付けられても困る。最後を迎えるのは御世なのだから。
二人は、本日はご来場ありがとうございますという魔法の言葉ではなく、観る者が心から拍手を二人に与えるようなオチを考え始める。
それは夢オチ。これまでの話をちょっと伏線にして、何層かの構造だったような設定にすればいける。
二人は、禁断の夢オチ、伏線を説明するという御法度を平気でしながら、苦しい無理矢理の展開に対する客の冷たい視線をかいくぐり、二人だけの最高の舞台を実現するために・・・

終始、伽奈を演じる帯金ゆかりさんの豪快なキャラに、怪我をされていなかったら上野淑子さんが演じていたのだろうなという御世を演じる野村有志さん(オパンポン創造社)のこれは酷いけど、けっこういける感じもあるなという姿の面白キャラがぶつかり合う見事過ぎる掛け合いを楽しむ。
メタ構造なのか、どこまでが伽奈と御世の虚構の世界で、どこまでが帯金さんと野村さん、上野さんの現実を描いているのか、境目が分からなくなるような交錯した世界を楽屋と舞台という場転も含めて、不思議な世界が創り出されている。
ひたすら楽しい掛け合いを笑いながら見るのだが、これは自分を露出し過ぎることで世間から嫌われる伽奈と、自分を必要以上に隠してしまうことで世間から認められない御世の成長物語のようでもある。
こんな互いに相容れないような二人が、一つの作品を共に創り上げる過程で、お互い、本当の自分を消すことなく、自分たちを否定する世間を受け止め、そこから変化する自分へと成長しているような感覚を得る。
自分が知らずうちに発動してしまう魔法、勝手に滲み出てしまうオーラみたいなものか、それが人を傷つけてしまうことを知り、悩む伽奈。そんなオーラにすぐ、身をこわばらせてしまい、何も出来なくなってしまう御世。
自分の強力な魔法は、別に人を陥れるためにあるのではない。自分のことを認めてくれる、想ってくれる人と作品中で出会うことで、現実にもそんな人がいることを理解する。それが目の前にいる御世なのかもしれない。
魔法少女が外を拒絶する姫に、たとえ最後の世界でも共にその姿を見ようと必死になったかのように、伽奈は御世に最後の舞台で最高の景色、それはきっと盛大な拍手をもらう瞬間を得ようと働きかける。
こんな層構造だったのだろうか。もしかしたら、もう一段、伽奈、御世を演じる役者さん自身のこの作品を創り上げる層もあるのかもしれない。
それに応えようと共にむちゃくちゃでもいい、自分たちの想いをそのまま熱演に繋げて、迎えるオチへと向かって走る姿に、懸命に生きる人たちが何かをやり遂げようとする素晴らしさに少し感動を得る作品でした。

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