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2015年10月 3日 (土)

老人と怪物【テノヒラサイズ】151002

2015年10月02日 SPACE9 (105分)

以前、拝見したこの作品に近いような気がします。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/120908-7909.html

孤独の寂しさから生み出される怪物。
この怪物を倒すものは、たった一つ、あなたを想う気持ちがそこにあることに気付かせることであると伝えているような作品。
ある老人の心を支配し続けた怪物が消え、凍り付いていた心を溶かしたような優しい安らぎの時、生きてきたことの尊さを温かく感じさせるラストが秀逸だと思います。

<以下、あらすじがネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

東京でオリンピックがあったのも、今は昔。
日本という国に魅力がなくなったのか、多くの外国人労働者は母国へと戻って行った。
ここ老人介護施設、ラストダンスも例外ではない。一挙に5人もいなくなったので、犬山青年は明日からの仕事の負担が心配でならない。施設長は申し訳なさそうに補充は1人だけ、とにかく頑張れと精神論を押し付けてくる。
翌日、1人の女性、アオイがやって来る。
若くて綺麗。犬山青年の心は一瞬で掴まれる。
おまけに力仕事もこなせるし、機転が効いて、テキパキと丁寧。老人たちの心も掴んでしまう。
この女性、実はアンドロイド。
こんな優秀なアンドロイドがなぜ、ここに派遣されてきたのか。本当は研修も兼ねて新人が数人来る予定だったのに。

心当たりはある。
この施設は表向きは3階建て。しかし、屋上と3階の間に小さな部屋がある。そこに沼田という老人が住んでいる。
アンドロイドは、その沼田さんに接触をしたがっている様子。
沼田さんに個人的な思い入れがあるとかではないらしい。人間を知りたい。アリスというマザーコンピューターの基で、アオイというアンドロイドは世界中に派遣されているらしい。
人間を知る。掌握して支配するのではなく、人類を介護するような目的があるみたい。
アオイと会った沼田さんは、これまで開くことのなかった心の扉を開け、過去を語り出す。

沼田さんの家族。妻と娘。
田舎で当時は斬新だった猫カフェを開く。しかし、娘が猫アレルギーで余儀なく閉鎖。
そんな時、議員を名乗る男が現れる。とりあえず応募した市議会議員の公募に合格したらしい。候補者のある市の市議会議員に立候補して欲しい。
大学の論文が素晴らしい、党公認候補だからと、持ち上げられ、沼田さんはその気に。
妻と娘を残して、その市へと選挙活動に向かう。
ところが、あれだけ持ち上げてくれていた議員は豹変。沼田さんなどクズ扱い。所詮、市議会議員の補欠を埋めるために、連れて来られた奴隷みたいなものだということ。
選挙活動。覚悟が足りないと議員から厳しく言われ、妻と娘も引越し。家族を巻き込み、後に引くこともできない。嫌がらせの無茶苦茶なスケジュールの選挙活動を強いられて、心身ともに疲弊する沼田さん。
そんな中、すみという男と出会う。麻痺しているのか左手と左足が不自由のようだ。彼は大物議員の愛人との隠し子なのだとか。ネズミと呼ばれているように、評判は良くない。いつも何かを企んでいる様子。
実際に左手は動くらしい。すみは沼田さんのことを虐げられている者同士の仲間意識かなぜか気に入ったみたいで、秘密を教えてくれる。弱味を相手に見せておいて敵と思わせないような戦術みたい。左足がどうなのかは、まだ沼田さんにも教えてくれない。
すみは沼田のために秘書として力を振るうと言う。

この日から、すみの策略が始まる。
政治は、地盤、鞄、看板。これを叶えるべく行動を開始する。
ある日、沼田さんの選挙事務所が騒然となる。この党所属の市長の汚職疑惑。リークしたのは、もちろんすみ。彼は沼田さんにさらに、すぐに演説をするように指示。
許せない。こんな汚い政治を許していいのか。私は徹底的に市長を追求して、真相を暴く。そして、今の政治を改革してみせる。
市民たちは改革派の急先鋒として沼田さんを認める。これで地盤と鞄は手に入れた。
看板。沼田さんはすみの言いなりに喋っているだけなので、真相を暴くと言っても何も知らない。すみに事実を聞く。汚職はでっち上げらしい。変な趣味であることをネタに汚職をしたことにしろと脅したらしい。そして、その市長は自殺。死人に口なし。これで改革だけを口にしておけば、看板となる。

沼田さんは、これまで閉じこもっていた部屋から出て、施設の老人たちと交流を深める。施設の出資者でもある沼田さん。老人たちの不平不満を聞き取り、これまでとは打って変わった姿を見せ始める。
市議会議員となった沼田さんの話の続き。
沼田さんは、すっかり偉くなり今や改革を期待される注目の人。
しかし、権力闘争に巻き込まれ、命を狙われることも。
すみは、この世は何者かの怪物に支配された人形遊びのようなものだと言う。だとするなら、沼田さんはいつの間にかその怪物に遊ばれる人形となってしまったのか。
猫カフェからどうしてこうなってしまったのか。人は出会う人によって変わる。恨みは無い。楽しい日々だったと思う。
沼田さんは、すみの前で自殺を図る。怪物を自らの手で退治した沼田さん。
すみは、自分の楽しい時間、大切な人を失ったことに気付く。

ここまでアオイに話した沼田さん、いや、すみ。
アンドロイドもそのことは知っていたみたいだ。だからこそ、この人のことを聞くことで、人を知れると考えたのだろう。
階下で老人たちが騒いでいる。すみは、老人たちを扇動していた。
アオイがアンドロイドであること。老人たちの支払う金がそんなアンドロイドに使われているという施設の実態。政治に携わったすみにとって、大衆の集団心理を誘導することは容易いことだったろう。
アンドロイドは壊され、施設もめちゃくちゃになる暴動が起こる。

施設は閉鎖。老人たちは違う施設へと移動していった。
復帰するかはすみ次第。
そこにアオイが現れる。
アンドロイドなので修復可能だし、すみと会話をすることで得た情報もまだ残っている。
アオイは、すみの手を握り、沼田さんを仮想世界の中で再生する。
すみは沼田さんにあの楽しかった日々への感謝、してきた行いへの悔いを口にする。沼田さんから、笑顔と共に感謝、許容の意を受けて、すみは安堵の中で幸せを感じながら・・・

孤独や寂しさ。
心の隙間に住み着き、妬みや憎しみを餌にするのか育つ怪物。
そんな怪物を倒すために必要な武器は何なのか。
それはきっと、あなたのことを見ています、知っていますという人からの想いなのでしょう。

その生い立ちのためか、自らをネズミと呼び、障害がある振りをして、敵である猫から攻撃的な眼差しを受けることでもいいから一人がすみは怖かったのだろうか。
そんな孤独を恐れるすみの下に現れた、ちょっと意味合いは違うが猫にやられてしまったネズミのような沼田さんは彼にとってどんな救いだったのだろう。
政治という弱肉強食の世界で、ネズミが猫に噛みつく。そんなしてやったりの楽しい日々。
友も得て、これまでにない生きる手応えを感じるような充実した時間。
でも、その時間の中で、怪物は育つ。
沼田さんは、それに気付いて、自ら命を絶ったのか。
すみは、育った怪物を封印するかのように、施設の中で閉鎖的な生活を過ごす。
そこで出会った、沼田さんを思わせるような、自分を理解しようとしてくるアンドロイド、アオイ。
かつて沼田さんを失った時の深い悲しみを二度と味わいたくなかったのか、彼は拒絶し、怪物を解放する。
でも、生きることに二人とも精一杯だったあの時とは違う。
アオイのすみへの想いは沼田さんの姿を通じて伝わる。
すみは沼田さんに言えなかった言葉、出会えたことの感謝、ありがとうと、結局、命を絶たせることになってしまったことへの悔い、ごめんなさいを口にする。
怪物は、きっと自分が想われていることを知った時に消える。ありがとうとごめんなさいは、相手の心に寄り添え、その人を受け入れるからこそ出てlくる言葉なのだろう。
怪物はいなくなり、一人の人となったすみは、生まれてきたこと、生きてきたことに幸せを見出して、その生涯を閉じる。

老人の孤独。老人だけでなく、こんな社会だから、自分の存在が揺らいでしまうことも多い。
そんな時、自分だけが一人ぼっちだとか、自分だけ周囲に誰もいないから未来が無いとか思ってしまう。
そんな時、悲しみを打ち消すために出てくるような妬みや憎しみといった負の感情が、人を人で無くしてしまうのかもしれない。
あなたは、人から憎まれるべき存在では無いし、同時にあなたが人を憎む必要も何もない。たったそれだけのことを知るだけで、怪物はいなくなるのでしょう。それを教えてくれるのは、人でなくとも、その想いが込められたもの、この作品ではアンドロイド、例えば思い出の品とかでもそれに気付けるように感じます。

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コメント

土曜日か日曜日の朝に行くつもりやったんですが昨日はゼットンとの絡みで今日は仕事で諦めました(泣)

私は昨日はゼットン→ほどよし。今日は仕事。明日は壱劇屋×W. Strudelに行きます。

投稿: KAISEI | 2015年10月 4日 (日) 13時09分

>KAISEIさん

これを観逃したのは残念でしたね。
さすがはテノヒラサイズで、笑いの中でもしっかりと魅せるところをきちんと魅せているなと感じる作品でした。
木内さんの滲み出る男の、役者さんとしての魅力が素晴らしかったです。

投稿: SAISEI | 2015年10月 6日 (火) 14時41分

SAISEI様

そう言われると辛いなあ(笑) 最初は土曜日の11時~行く予定だったんですよ。ゼットンが14時~でテノヒラサイズが110分の上演予定だったのかな。ジョルダンで検索したら確か5分前に着く予定。ゼットンの会場ハーバーホールが初めての会場やったので安全策を採りました。7月くらいなら行ってたと思います(笑)月曜日も壱劇屋×W. strudelの後行こうと計画しましたが165分の上演時間とわかって諦めたのです。トホホ。

ゼットンは今回ブレヒト幕使ってました(笑)

投稿: KAISEI | 2015年10月 6日 (火) 23時55分

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