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2015年10月 5日 (月)

ブラックホールのそこ【コンブリ団】151004

2015年10月04日 アイホール (100分)

この私たちが生を営む広い宇宙には、どこかにブラックホール、心の闇みたいなものがあり、ちょっとした負の感情がその入口への招待状みたいになるのか、吸い込まれてしまいそうになるみたい。
色々と悩み多き時代でもあるから、そのブラックホールにいつ引き寄せられるのかなど分からない。
宇宙の定理は、吸い込まれたブラックホールからは出ることが出来ず、どうなるのか分からないが死とか屑みたいになってしまうのでしょうか。
そんな人たちは声もあげないから、誰からも知られることなくひっそりと消えてしまうのかもしれません。
でも、その引き寄せられてしまった人への想いは必ずどこかにある。見ている人がいる。忘れない人がいる。
そんな人の想いは、宇宙の物差しでなど計れるものではなく、宇宙の定理を超越した、光の速度を超えたスピードで人を救い出す。
そんなイメージを抱く作品でした。

ビルの谷間のパブリックスペース。
植込みのある六角形の中央。その周囲に3つのベンチがある。
車イスの男が自分の経験から悪巧みを考える。
恵まれない人に愛の手を。そう書いた黒板に穴の空いた白い箱を持っていれば。
女性がやって来る。
サイフを取り出し、募金。少し考えて、サイフのお金を全て入れる。
もう要らないから。
車イスの男が、いいのかなと少し後ろめたさを感じながらもニヤリと立ち去った後、女性は通りがかった清掃員にコンビニ袋で包んだ空のサイフをゴミだと手渡す。

母と娘。
隣のベンチでは、このビルに勤めている人なのか、お昼休みのようで男女が何やら話している。
娘は、家を出てからしばらく戻っていないみたい。
今日は娘から母を呼び出したようだ。
母は明るく大雑把な感じの人で、おばちゃん丸出しで久しぶりの娘に接する。
娘が昔、肥溜めに落ちた話。買ってきた粒あん。あそこの店でテイクアウトのコーヒー買ってこようか・・・
父のことが話題になる。海水浴に行った時、海に潜ってウニを取ってくれた。いつまで経っても、浮かんでこない。母は笑っている。でも、娘はもうこのまま会えないんじゃないかと不安で仕方なかった。浮かんできた時はどれだけ安心したか。
父とはしばらく会っていない。ある町でずっと一人で暮らしていると母からは聞いている。
母は、父のことをきちんと話さないといけないかなと言い出し、語り出す。

隣のベンチの男女は、女性上司と後輩の男みたい。
男のアパートの隣の部屋の男が孤独死。気分悪いので、引っ越しを考えている。その引っ越し先に女性上司の部屋はどうかなんて、露骨な迫りを見せる。まあ、女性上司も酔った勢いでそんなこともあったようで、勘違いされる理由はあるみたい。
コーヒーを持って、若い女性がやって来る。男はどうしてそんなに遅いのかとイラッとしている。おまけに、飲んでみたら女性上司のコーヒーと入れ替えで渡されたらしく、間接キスになる喜びを押し殺しながら声を荒げている。
若い女性は、自分のコーヒーを持ってこなかったのでまた取りに行く。トレーを使えば済むこと。こういう要領が悪くトロいところがムカつくようだ。
3人揃って話が始まる。
男が先週、この若い女性に書類とUSBを渡したらしい。そのUSBが無い。これは女性上司にとって管理責任を問われる重要な案件。
その犯人探し。男はお前に渡したよなと若い女性に迫る。若い女性は事情を話そうとするが、丁寧すぎてウザったい。結局、若い女性が失くしたことになる。男は、きっとこいつがゴミに交じって捨ててしまったのだろうと清掃員には見つけたら内密に連絡をと手配しているらしい。
女性上司は保身が何とか出来ると安心。男の迅速な対応に好意を示して会社に戻る。
一人、残された若い女性。独り言のように真実を語る。
男からは書類だけを渡された。別に課長からの仕事があったので、それを終えて取り掛かろうとしたら、落丁があった。男の机にUSBがあるだろうと探したら、デスク横のゴミ箱に落ちていた。それを取り出し、落丁部分を印刷。目を通して、校正。校正ファイルはUSBに上書き。書類と共に女性上司のデスクに置いた。

大きな音がする。
清掃員の女性が車イスの男を責めている。いかがわしいことをしていると。
女性の先輩なのか男性清掃員は修行が足りないと女性を諌める。
この世界の全てを表す物差し。観測できる素粒子が10の-28乗、宇宙の果てが10の28乗。
そんな話をしている中、女性清掃員は中央に向かう。女が落ちている。
下着姿の女に服を着せる。女は裸足。
状況が把握できない女を落ち着かすために、車イスの男はコーヒーをテイクアウトしに。
ここはどうも時空の歪んだ空間らしい。
清掃員はあの車イスの男が、ここに落ちてきて3ヶ月も放置されていたことを女に話す。誰からも見つけられずいた未練なのか、ああして気を引くような行動をしているのだとか。
女は、ここにいるがまだ実体は屋上にあるらしい。だから、まだ死んではいない。
ブラックホールに引き込まれてしまったのか。

女は自分の身上を話す。
このビルの地下でレジ打ちの仕事。
トロい同僚がいた。客からも、上司からも毎日厳しく責められていた。
でも、女は知っていた。彼が誰よりも丁寧で確実な仕事を黙々とこなしていたことを。
声はあげなかった。いつも作り笑いをして、第三者の立場でいた。
その同僚は仕事にこなくなり、あるアパートの部屋で孤独死をしたらしい。
次は自分の番。
周囲の人たちの目が自分を睨んでいるように見える。
闇に引っ張られるように、気付けばここにいた。

母と娘が話の続きをしている。
隣には一人取り残された若い女性。
そして、別次元の落ちてきた女。
母は嘘のような衝撃的な父の真相を娘に話している。
父は国家機密プロジェクトの惑星探査機の乗組員だったらしい。
そして、その探査機が事故にあった。
大人の事情、それこそ国からもらうお金のために、声をあげることはなかった。
そして、いつしかそんなプロジェクトのことは忘れられた。
きっと父は星になった。でも、見えない。事象の地平線ってやつだろう。
母から呼び出した理由を聞かれる娘。
娘は仕事を辞めたことを告げる。
そんなことかと母は平気な様子。家に帰って来てもいいし、これからまた頑張ってもいいし。しばらく休んでも全然、大丈夫。空白は埋められるし、いつでもまた始められる。
そんな母の、無条件に娘の味方であるといったような無償の愛の言葉。
その言葉に潜む人の想いは、隣のベンチの人たちにも響いたみたい。

会社に戻ろうとする若い女性に清掃員は声をかける。USBが見つかったと。
でも、要らない。会社をもう辞めるから。
落ちてきた女は靴を履いてビルに戻る。あの屋上にいかなくていはいけない。
車イスの男は清掃員から、作業服を渡される。
これから修行の日々が始まるらしい。

母から娘に向けられた想いが、娘だけでなく、その隣の人、さらには時空の異なる人にまで伝わり、闇にはまり込んでしまった人たちを救ったような感じでしょうか。
歩んでいた道を少し立ち止ってしまい、不安な気持ちを抱く娘。
声を挙げないことで、上手くやられてしまい傷つく若い女性。
声を挙げないことの罪、自分の無力さが人を傷つけることを知って悲しむ女。
現実的な解雇の問題とも相まって、その負の感情から、どこかに潜むブラックホールへと引き寄せられて、もがき苦しんでいるようです。
光さえ抜け出せないブラックホール。
見ている人がいなければ、そのまま暗黒の屑となってしまうのかもしれません。
でも、きっとその見ている人がいるのでしょう。
その人の想いは宇宙の定理などとは関係なく、超越したもので、その人を救い出せているような話です。
死んでしまった車イスの人も、3か月間も植え込みに埋まっていたらしいですが、清掃員に見つけられています。宇宙の塵となった父も、娘や母の想いから見えないけど星として存在できるようになったはず。
人は生きている間も、たとえ生を無くしてしまった後でも、こうしていつも人の想いに触れていられる。
そこに閉塞する日常に大きな希望を抱ける理由が見つかるような気がします。

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