gate #14≪Oct≫【KAIKA】151011
2015年10月11日 KAIKA (20~25分×3 作品終了後8分程度の講評)
大阪、京都、福岡の三劇団。
そんなこともあるのか、個々、自分たちの魅力を一番活かせる作品を選んできたようで、三者三様の作品を楽しませていただきました。
一つはおじさんの笑えるだけのコントでしたが、残り二つは若い人の劇団ということもあるのか、今の社会に対して、反抗・批判を露骨に、もしくはほのめかしたような作品でした。
・コント 超演出家~蜷川亜門 : THE GO AND MO’S
超演出、蜷川亜門、いや平田山オリ座。名前がどうにせよ、その演出は名作を創り上げる。
今日も亜門色の服装で、蜷川色に合わせた音楽に合わせてシーン稽古。
オープニング。
脚本通りの役者の登場。マニュアルのまま。蕁麻疹が出てくる。
客が求めるものwhat's happened。ワクワク。
ステレオタイプ脳は要らない。心に訴えかけろ。
そんな稽古の中、カオスが彼に舞い降りる。
演者たちを置いてけぼりにして、彼の演出は続く、恋愛・葛藤・決闘のシーンへと独りで進む・・・
久しぶりに黒川猛さんを拝見。月一公演も最初は足を運んでいたのですが、他の演劇公演との日程調整が難しくどうしても後回しになってしまい。
変わらぬ全力疾走でした。
ただ、これで30分はけっこう後半きついですね。飽きが出てきてしまう。15分ぐらいでスパっと終わると、ただただ面白かったということだけが残るように思うのですが。
・赤い暴動 ~あの日僕らは反撃を誓った~ : 劇団ZIG.ZAG.BITE
文化祭が近づく。
催し物を決めるために、各クラス代表が集まる。
大串は、集まって来た同級生たちを見てあ然とする。
学年一の秀才と言われる秀島はずっと本を読み続けている。
テシマはただひたすらチューブで筋トレ。
迫はお菓子を食べ続ける。
何も決まらない。もともと、みんなやる気が無いのだから。
大串は思う。
クラスの友達と普通に仲良くやっていた。同じメニューの昼飯を一緒に食って、放課後はカラオケ、ボーリング・・・
でも、部活や家庭のことから、徐々に距離が開いていった。今日は弁当があるから、今日は部活があるから。
そのうちノリが悪いみたいになって。
ここにいる連中はみんなそんなクラスで浮いてしまった人たち。
みんなに合わせないといけないのか。こちら側の世界に追いやられた俺たちは悪いのか。
いや違う。おかしくなんてないし、みんなに合わせる負担を強いられる必要性などどこにも無い。
あちらの世界の連中に挑戦状を叩き付けよう。俺たちの方から訴えかけよう。
大串は、自らの手首を切り、血文字の挑戦を決意をする。
文化祭当日。
それぞれのスタイルで、バンドライブをする4人・・・
作品の話にも関係するのでしょうが、キャラをとても個性化している。その見た目の面白味はあるのだが、各々のその特徴を活かした面白さは少し薄い。
また、厳しく書くと、中途半端な印象が残る。赤ほどの熱さは無いし、暴動というほどの無茶苦茶さも無い。旗揚げ公演前のプレ公演らしく、顔色を窺った感じが少し残念な気がする。
今回の作品は、恐らくマイノリティーの虐げられた中での爆発、反抗が一つのテーマになっているのだと思う。それならば、誰にどう思われようとも、これが俺たちなんだと言う、嫌悪を抱かれても貫く覚悟を熱さにしたような公演をしないと、作品の中身に追い付いていないように感じる。
まあ、この誠実そうな感じが、じわじわと想いを伝えていくというところがあるのかもしれないが、今回の作品テーマには合っていなかったかな。
・エウレカ : プロトテアトル
中学校の教室。
倒れた椅子、机。床には紙が絨毯のように敷き詰められている。
その紙の上に2人の男子と1人の女子。
女子は何やら紙に書いて頭を悩ませている様子。
男子は横たわり寝ている。1人の男子がおもむろに起き上がり、リコーダーを手にして、憧れの女子に告白すれば良かった、こんなことになるのならとつぶやく。手にするリコーダーは騒ぎに乗じて、その憧れの女子の机から盗ってきたのだとか。まあ、後はすることは決まっている。
学生のデモ隊と警官隊が校門前で衝突。3人はそれに巻き込まれたようだ。恐らく、街中で衝突が起こっていて、警官隊の防衛線も張り巡らされているはず。この3人は巻き込まれただけであるが、安易に外には出れないのだろう。
リコーダーの男子は危うく警棒で殴られそうになったのだとか。寝ている男子は、関係なく殴られたのか気絶しているところを引っ張って教室に連れてきている。時折、寝息を確かめる。死んでいるかもしれないから。やがて、目を覚ます。リコーダーの男子の提案で、童話のようにキスをして目覚めさせる直前だったのが幸いだった。
教室に散らばった紙は、女子の夏休みの自由研究のボツアイディアの残骸。でも、もうそんなことする必要は無いかもしれない。新学期は始まらないから。先生に叱られることも無い。
ライブ、演劇とけっこう力を入れて頑張ろうとしていた文化祭はもう出来ない。意味が無くなったから。
修学旅行もか。冬の北海道。やはり、雪はテンション上がっただろうに。
目を覚ました男子は、リコーダーの男子の憧れの女子の話を聞いて、好きな子を作れば良かったと悔やむ。
やってたことの理由、意味が突然無くなってしまう。
昔はあったのだろうか。思い出そうとしても覚えていない。
覚えていないということは、大事なことじゃなかったのか。そんな言葉に女子は不安を感じて涙を見せる。
大人になりたい。明日のことを話したい。みんなで。誰も死んで欲しくない。
不安を抱えるのは男子たちも同じ。
今はみんなで語り合うしかない。散らばった紙は雪のようにも見える。行けない修学旅行を想いながら、みんなは雪で戯れる・・・
時折、中学生あるあるネタを挟むような、微笑ましい無邪気な空気と、鋭い視線で厳しい批判をする冷淡な空気のバランスが、心地よい緊張感を出している。
時事的に安保法案の関する警鐘の話ではあるだろう。
ただ、それに限らず、恐らくこの世代の人たちは、大人たちに裏切られたという気持ちを強く抱いているのではないだろうか。
教育とか道徳とかいった面においても。
私のような40代でもそんなことを思う時がある。
あなたの幸せになるからやりなさいと意味付けされてしてきたことが、時代の急速な流れの変化なのか、今、何の役にも立たない時がある。極端に言えば、邪魔になることだってある。
もちろん、それも大切な経験であり、否定されるべきものではない。でも、それを謝罪も無しに、否定してくるような世の中だ。
安保に関しては、こんな感じかな。
人は争ってはいけません、仲良くしないと。
と言っておりましたが、色々と変わったので、争いの中に必要とあれば入り込みましょう。
もっと古い人だと、自国、他国と多くの人たちを傷つけた戦争。日本は戦争自体を放棄します。日本人である間は、武器を手に取ることはありません。このことは日本の決まり事の中でもトップに掲げます。
と言っておりましたが、これまた色々あるので、必要ならば武器を手にします。そのことが戦争に繋がってしまう可能性は否定できません。それに伴って、決まり事も変えますと。
こんな感じで、若い世代の子たちは、教えられていた教育とかも全部、忘れられてしまったように感じているような気がする。どうでもよかったのかと思ってしまうのかもしれない。そんなことを平然と口にする大人もいるだろう。
でも、決してそんなことはないのだろうし、そんなことあるわけがない。
その時、確かに意味や理由はあり、それは全て未来へと繋がるものだった。その繋がりが見えなくなってしまった、分からなくなってしまっただけ。だから、大切なことには、そんな忘れてしまった想いを掘り起こしてあげればいい。
作品名のエウレカ。アルキメデスがあの原理を発見した時に叫んだ、見つけるという意味合いの言葉らしい。私たちが今、しないといけないことは、この情報が交錯し、自分たちのこれまでもぐちゃぐちゃになったような混乱の中で、自分自身を見つけ出すことなのかもしれない。そして、その見つかった自分を誰かに叫んで届けようという願いが込められているような作品。
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コメント
SAISEI様
9月とのセット券だと安さに眼が眩んで買いましたがプロトテアトルが出てるのは確認してました(笑)
プロトテアトルが一番良かったかな…
来年1月の本公演が楽しみです。
ショウダウンは『メビウス』は宮島
投稿: KAISEI | 2015年10月17日 (土) 23時06分
SAISEI様
ショウダウンは『メビウス』は佐竹×宮島キャストの方が小出×小野村キャストより好みでした。後者の方がキレイなイメージやったんですが前者の方がセリフがスルスル頭に入ってきたかな。後に観たというのもあるかもしれませんが(笑)
『月下人魚』は遊眠さん流石の一言。幾多の試練を経て1人芝居嫌いの私の心に届くくらいのレベルまで到達したはりますね。
Cheeky.queensはダンス・劇・小堺系トークの3本立て。4人とも可愛いし客出しもしっかりやったはるし人気出るでしょう。来年5月に旗揚げ公演やったはずです。
投稿: KAISEI | 2015年10月17日 (土) 23時19分
>KAISEIさん
プロトテアトルは、しっかりまとめてきて、いい作品でした。
匿名劇壇とかぶるとよく言われる劇団ですが、今回のようにここ特有の優しい空気を出せる作品だと、独自の魅力が際立っていいと思いますね。
投稿: SAISEI | 2015年10月19日 (月) 18時10分