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2015年9月 6日 (日)

広島に原爆を落とす日【Z children】150905

2015年09月05日 十三Black Boxx (110分)

必死って、これだろうなと思う、魂のこもった迫力ある舞台でした。
そんな熱情の中に、様々な感情が流れ込んできて、考えがまとまらず、頭が混乱気味。
差別意識ってのは、残念ながら、消えることなく、いつも人や社会の表面に出てきてしまっている。でも、その中に、その人を想う気持ちが潜んでいることも決して否定できない。
戦争という究極の状況、それも偽りではあるけど日本の過去の歴史を描く中で、互いに傷つけ合いながらも、そこにあった愛の大きさを浮き上がらせ、その愛の魂が、今を生み出しているのだということを見詰めさせているように思います。
日本への愛。そこに生きる人への愛。そんな愛がいつか本当に豊かな世の中を実現すると、多くの犠牲を厭わず、未来への願いとして託した者たちの真摯な言動に目を向け、耳を傾け、今を振り返るような作品なのかなと感じます。

<以下、あらすじがネタバレしますが、有名な作品でネット上でいくらでも詳細な記載があるので、白字にはしていません。ご注意願います。公演は月曜日まで>

ナツエは、スカートのほつれをなおすと近づいてきた、青い目をしたハーフの男、山崎と出会う。男は、不器用なのか、自分本位なのか、日本男児たるもの、女にうつつを抜かすことなどできないが、あなたから私の胸に飛び込んでくるというなら、付き合うことも辞さないといった、ガキのような態度をとる。
そこに、男の優しさ、真の愛を見出したのか、ナツエは山崎に心を惹かれる。
髪は抜け、皮膚にはケロイドができ、ちょっとした怪我で血が止まらないという、恋煩いを発症したというナツエに、東大教授である叔父は、ハーフである山崎への差別的な発言を突きつける。
教授は敗戦を考えている。子供のケンカでさえ、負けた時のことを考えてやるように、開戦したその時から、負けた時にどうするか、どのように負けるかを考えなくてはいけない。日本は負けてもいい。そこに、皆が幸せに暮らせるデモクラシーが根付くから。
そんな考えを血盟団の男は許さない。
自分を殺せば、京都に原爆が落ちるという言う教授を男は斬りつける。そして、教授は死に際にドイツに原爆が落ちるようにベルリンへ向かうようにとナツエに言葉を残す。

戦況はさらに厳しくなり、ナツエ閣下が見送る中、多くの若者たちが、特攻鉢巻を締め、死を覚悟して戦地へと旅立つ。
山崎は取り残される。
それは真珠湾奇襲の首謀者だった山崎を軍から退けることが、米国との交渉の交換条件だったから。
山崎には、南の島で納豆を作ってもらうつもり。日本が戦争に勝利した時に、敗戦国にチョコやガムではなく、納豆を分け与えることが出来るようにというE203号作戦らしい。
幾ら愛する者でも、大本営の指令には逆らえない。

2年後の南の島。
山崎は少佐として、3人の筆頭部下たちと共に納豆づくりをしている。
その中には教授を斬りつけた血盟団の男もいる。今では、動物たちと会話ができるような温和な人となり、体から糸が出るくらいに納豆に染まっている。
山崎は、自分の素晴らしき能力を活かさない大本営へのいら立ち、ハーフであるがために差別を受け迫害されながらも、日本をこよなく愛してきた自負からか、農民や貧乏な出生の卑しき部下たちにきつく当たる。
それでも、この部下たちが自分を慕い、ずっと信頼してきてくれて共に過ごしてきたからこそ、ここまで納豆づくりが発展したことは理解しているようだ。
心の内を、素直に曝さない性格はナツエとの恋愛と同じなのだろう。

部下の男の一人は、この地で土人の女たちを手籠めにしていたみたい。
その中でビアンカという女性は、彼に心を寄せている。硫酸で体を洗え、飲んで肌を白くしろ。本当に俺を愛するなら、おっぱいからビールが出るはずだ。
そんな無茶苦茶にひどい仕打ちを受けながらも、ビアンカは彼を盲目的に愛する。
もうお前のことは好きではない、別れるという男に対して、ビアンカはこれからは男を忘れて誇りを持って生きると去っていこうとするが、彼女に帰る場所は無い。
いつの間にか、土人たちは船で全員逃げ出している。
ビアンカは、一緒には行けなかった。
この島には輸送船がもう数か月来ておらず、食料が無い。それでも、ずっと山崎たちが食べていけたのは、この男の命令でビアンカが土人たちの食料を盗み出していたから。
男は、ビアンカに銃を突きつける。無抵抗で笑顔すら浮かべるビアンカに発砲。
こんな時代で、こんな地で出会っていなかったら。男とビアンカの間にあったのは確かな愛だったのかもしれません。

大本営に見捨てられた。
優秀な自分を捨てた日本は負ける。
目の前にいる連合軍の軍艦には軍隊なんていない。とっくに米国は日本を敵としてなど考えていない。
いつ原爆を落とすかだけ。きっと陛下のいる京都に原爆が落ちる。
日本にお前らみたいな卑しい奴らがいるからだ。
自暴自棄になって、ひどい言葉を部下たちにぶつける山崎だったが、部下たちはそれでも、少佐のために、日本のために納豆を作り続ける決心を固める。
そんな姿に、山崎も本当は仲間の絆、愛を深く感じている。

そんなある日、一人の男が納豆になってしまった。
藁にくるまれ、死に際に卵とネギを求めて、死んでいく。
もう無理だ。山崎は絶望する。
数々の仲間たちが納豆となって死んでいった。
臭くても、匂っても、納豆は日本の誇りじゃないか。そう叫んで、仲間たちは死んでいった。そのとおりだ。部下たちは想像する。
米国に上陸する日本軍。
ギブミー納豆、ギブミー納豆。
私たちは敗戦国の民たちに納豆を分け与える。
異国の人にも食べやすいように甘くしたらどうだろうか。
濡れ甘納豆。
山崎たちは再び納豆づくりに精を出し始める。
私たち、日本人は、同じ日本人を、そして日本国を最後まで愛し続ける。

一方、ナツエはドイツに向かっていた。
ヒトラーは、ナツエの国を、山崎を愛する心を理解し、心打たれる。
あなたは山崎の下へ向かえばいい。
私は、原爆を受ける覚悟を決めましょう。
それまでは、決して、ベルリンは連合軍なぞに陥落しません。
この大戦において、劣勢となり迫害される側に回ったヒトラーの日本への親近感、同じく国を盲目的に愛する心への同調、かつて迫害していた自分への戒めなのか。
それは、東条元帥へと報告される。

南の島には船がやって来る。
これで帰れる。
でも、山崎はプライドなのか、意地なのか、首を縦に振らない。
あの大本営によって、こんな僻地に追いやられた。
本当はもっともっと活躍していたのに。そして、日本がこんな窮地に陥ることはなかったのに。
部下たちはなだめすかせ、最後には家族に会いたいからと土下座。
土下座をされたから仕方なしに帰ると決断する。
どうも、山崎は自分に責任がかからないような理由づけ、正当化がないと行動に移せないようだ。
しかし、そんな決断も遅し。
船は去っていく。
こうなって初めて、山崎は自分の過ちに気づき、部下たちに謝罪する。
部下たちは、それでも山崎を決して見捨てることなく、また共に頑張りましょうと誓い合う。しかし、山崎の大本営に裏切られた憎しみは深く、彼を狂わせていく。
納豆に火を放つ。
せっかく、甘い納豆もでき始めたのに。
信じていたのに。
元血盟団の男は、山崎を斬りつけようとするが、その前に自らの体が納豆に。

南の島に、ナツエ閣下到着。
京都原爆投下を阻止する指令を伝える。
米国は、原爆一発落として、戦争を終える約束をした。
でも、京都はまずい。陛下がいらっしゃるから。
そして、その原爆投下のボタンを押すのは山崎。
日本を誰よりも愛しながら、ハーフであり、青い目を持つ男。
部下たちは、みんな各々、自分たちの故郷を語り、そこに原爆を落とすように山崎に言う。
ずっと共にした山崎を、上司として、仲間として、そして同じ日本人として認めているからこそ、自分たちの大切な故郷、そこに住む家族、友達、愛する人を殺させることを許したのでしょうか。

ナツエと山崎は、あの頃のように手をつなぎ、互いに語らい合う。
でも、それはほんの一時。
二人には今の立場がある。
山崎は、ナツエに広島に行けと命じる。
そこで、自分を無条件に愛してくれた両親に会って欲しい。
私はそこに原爆を落とします。
敬礼して別れる二人。
山崎はもう逃げません。エノラゲイに乗り込む覚悟を決めます。

南の島では連合軍の激しい攻撃が始まる。
山崎をかばい、倒れていく部下たち。
その部下一人一人に感謝の言葉を投げかける山崎。
山崎はミッドウェイ空母に突入。アメリカ人たちが周囲を囲む中、エノラゲイに乗り込みます。
生きてデモクラシーを見届けたかった。
それでも、変わる日本のために。
山崎は、もはや会えぬ両親に語りかけます。ナツエのこと、自分を愛してくれた、愛した両親への感謝、美しき広島、日本への誇り。

終戦。
ナツエの下に山崎の遺体。
最後、彼を介錯したのは、元血盟団の男。山崎に、新しい日本を見届けろと言われ、数々の部下が戦死する中、死ぬことを許されなかった男。
彼はナツエを、広島に行かなかったことで責めます。
でも、自分はこれからの日本のために納豆を作り続けると。山崎と約束した濡れ甘納豆を必ず。
人が人を殺さない。誰もが差別されず、苦しみのない幸せに生きることが出来る世の中。
もう誰のものでもない、自分だけのものになった山崎の遺体を抱きながら、山崎が求め続けたデモクラシーの夜明けをナツエは感じ取ります・・・

観ながら、考えることも多く、頭がごちゃごちゃして、どう感想を書けばいいのか分からず、考えがまとまるかなとあらすじを覚えている限りで書いてみたが、さしてまとまることもなく。
なんか、それなりに話は追えていたようです。
混乱するのは、きっと圧倒的な役者さんの迫力に感動したり、不可解な設定に???となったり、不謹慎にも毒に似た面白さが沸いてきて笑いがこみ上げてきたり、切なき愛を抱く人の姿に心震わせたり、何の比喩になっているのかを考えたりと、忙しい観劇だったからかな。

納豆。710。731部隊ですかね。生物兵器。
原爆、原爆っていうけど、日本も一歩間違えれば、とんでもないことになる作戦をしていたでしょと日本においても厳しい視点を向けているようです。
それを甘くすることは、その技術が人を傷つけるものではなく、人を豊かにするものとするような意味合いでしょうか。
戦争の技術が、科学や医療の発展に繋がった、その逆も含めて、歴然とした事実ですものね。
日本という国は、人が生み出した技術がとんでもない悲劇を起こすという一つの事例を体験した国だからこそ、そうありたいという願いが込められているような気がします。

戦争を切り離した方がいいのかな。
原爆、広島という言葉を聞けば、どうであろうと戦争にたどり着く脳内思考。これが戦争を知る国、日本に生きる者だという前提で、その日本人がどれだけ力強く、あらゆることを犠牲にしてでも守る愛を抱く人種であることを示しているような感覚が残ります。
愛 差別という言葉が上記したあらすじに出てきます。きっと、私もそんなところをこの作品から感じているのではないかと思います。
差別は根強い。それに表にすぐ露出してくる。愛も、もちろん強い。でも愛はいつもどこかに潜んで存在している。戦争で全てを破壊しなければ、その差別は消えない。愛は浮き上がって来ない。何かそんなイメージです。
だから、戦争をじゃなく、日本はその経験をした国なので、優しく差別のない愛の国であり得るべきだと伝えているように感じる。
この作品中の登場人物も、差別意識を外に露骨に出していますが、そこにどんな時にでも、しっかりと相手を想う心が潜んでいることが分かります。それを、日本人の大切な誇りとしたいという願いが込められているように感じます。

意味づけや正当化をしないと行動を起こせない山崎は、原爆投下ボタンを押す意味合いをどこに持ったのか。
彼が差別され迫害され、それでも、日本を愛し続けた辛さから、どれほど変わりゆく日本を願ったのかが伺える。
今がなぜあるのかに目を向けてみる。
きっと、そんな日本を愛し、人を愛し、変わりゆく日本にその本当の愛の実現を願った者たちの魂が、今を繋いでいる。
原爆を投下された国としての被害者感情は抑えられ、そのことで、生み出された民主主義、今の世の中を顧みて、本当に原爆を投下された国としてのあるべき姿を創り上げられているのか、その願いを守り続けられているのかを厳しい視点で見詰めているように思います。

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コメント

Z SYSTEMの間違いでは?

投稿: KAISEI | 2015年9月 6日 (日) 21時15分

>KAISEIさん

うん。
何か、Z systemの弟分みたいな感じみたいですよ。
若い人が集まって、旗揚げしたのだとか。
若い人たちが、あの熱いつか作品を演じる。往年の演劇ファンは、まだまだみたいなところもあるのかもしれませんが、私はその力強さにけっこう心震えました。
それに、やっぱりつか作品は面白いですわ。

投稿: SAISEI | 2015年9月 7日 (月) 18時15分

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