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2015年9月 1日 (火)

フェイク・ショウ episode0【クリエイティブスタジオゲツクロ】

月面クロワッサンの作道雄さんが描いた、フェイクドキュメンタリー作品。
名作だという噂で、とりあえず30分×4話の作品なので、一話ずつ時間がある時に観て、感想を書こうかななんて思って観始めたが、思いのほか、かなり面白く、4話一挙に観てしまった。
全体的にはホラーチックな空気を醸しているが、落語という笑いをベースにコミカルさも盛り込まれる。それでいて、温かみがある話として出来上がっており、何とも不思議な感覚に包まれる。かつ、一つのことに打ち込む覚悟の大切さなど笑いをベースに教訓のようなメッセージも組み込まれているようだ。

月亭太遊さん演じる揚鳥亭翔鳥という、落語家人生に悩む男が、今は亡き、一門の創始者である何百年も前の師匠が、ある村で過ごした一時と対峙する中で、落語という笑いの意味合いを見出していく。
そこには、笑いで皆を幸せにしようと、全人生を賭けて、真摯に落語に取り組み、それを後世に繋げたいという想いがあった。
昔も、今も、そして未来も、皆が笑顔でいられる楽しき世の中。
一人を笑わせることで拡がる皆の笑顔。
過去の笑いの技術を駆使して、今、生み出される楽しい笑い、そして、そこから導かれる楽しく幸せな未来。
笑いがそんなこれまでの歴史、そしてこれからの未来永劫、幸せを導くための、繋がりの媒体として存在していることが感じられる。
笑いだけでなく、古くから伝わる芸術や様々なこと。そこには、きっと多くの人たちが幸せになって、笑顔でいて欲しいという願いから、繋げられてきた想いがあるのだと思う。

<以下、あらすじだけ。ネタバレしますので、ご注意ください>

・第一話

若手落語家、揚鳥亭翔鳥と、七色亭桜餅。
落語と言うと、伝統芸能ということもあってか、若い人はちょっと敬遠気味というイメージ。
でも、落語会にはけっこう老若男女が集まったりする。
落語界には流派がある。
ちょっと玄人受けする、若手中堅の実力派、翔鳥の揚鳥亭一門は、血縁にこだわるが、早死の家系であるため、たった一人しかいない。
かたや、イケメンで若い女性にも人気が高い桜餅の七色亭一門は最大流派。
そんな二人の若手落語家にスポットを当て、ドキュメンタリー番組を制作する。
しかし、その取材の途中、テレビでは放映できないような不思議なことが連発したため、お蔵入り。
アカバネが再編集し、密かにネット公開することに。

ふたりはSAGEというユニットを組んでいる。
地方を回って、新作落語を披露しながら、落語を普及させる活動をしている。
今回も二泊三日の旅が始まる。
カメラマンを連れて、アカバネとアシスタントの女性、タカナシは密着取材をする。
翔鳥は、電車の中では、パワハラに悩むカメラマンをお題に、なぞかけをして、実力を見せる。
落研の先輩と出会う。その人曰く、これから向かう鳥滸野村は、拒絶反応が強く、うけないなのだとか。
実際に村へ着くと、話しかけるだけで、みんな逃げて行く。村内放送も何か不気味。
そんな中、おとなしそうな女性が迎えにやって来る。

宿に着くと、いきなり女性からサヨリ姫の話を聞かされる。
騒ぐとサヨリ姫がお怒りになるので、静かにとのことだ。
落語会の予約も全く入っていない。
何かおかしい。
とりあえず、会場を視察する途中に祠。サヨリ姫を祀っているのだろうか。
翔鳥はなぜか悪寒を感じる。
会場では、誰もいないのになぜか三味線の音。落語の立ち切れ線香じゃあるまいし。そして停電。
皆、逃げ出す。アカバネは腰を抜かす。タカナシは涙が止まらない。
一刻も早く、村を出よう。
皆、駅に向かう。

・第二話

再編集中のアカバネ。
上司がパワハラというのは本当らしく、その姿を隠しカメラでおさえているようだ。
腹ごしらえに宅配を頼んで、作業は続く。

終電は既に行っていた。
歩きは無理。車も無い。アカバネは上司に電話して車を依頼するが、上記のとおり、そんな上司が助けてくれるわけもなく。
逆にロケを中止したら殺されてしまう勢いで叱られる。
おかし過ぎる。ドッキリじゃないのか。
しかたなく宿に帰る。
翌朝、翔鳥が姿をくらます。

翔鳥は祠にいた。
亡くなった師匠からもらった扇子の絵が、祠と似ていることが気になったらしい。
紋章が同じなので、間違いなさそう。
二人はネタ作りのために宿に戻る。
アカバネとタカナシは残って、祠を調べる。
臆病なアカバネは、タカナシに全部させる。
すると、隠し窓みたいなものを見つけ、そこに姫らしき姿が映し出されていた。サユリ姫だろうか。

二人はいつものとおり、村をテーマにネタを作るつもり。
でも、あんまり乗り気がしない。
アカバネたちは神社に向かう。
そこには、迎えに来た女性がいた。神社の人だったみたい。
祠のことを話すと、少しこわばった表情をするが、サヨリ姫のことを話してくれることに。
女性は巻物を持ってきて、サヨリ姫は弁天様の親類で、村中の人が信仰していることを説明してくれる。巻物に描かれたサヨリ姫は笑みを浮かべ美しい姿。
そして、もう一つの巻物を見せる。
村で旅芸人がどんちゃん騒ぎをして、サヨリ姫が怒り、旅芸人の手足を引きちぎって、惨殺する姿があった。その姿は鬼のようだ。
ある事件をきっかけに、笑いを嫌うようになったのだとか。
昨日の会場の件も話す。やはり、サヨリ姫が怒っているのかも。

二人は、ネタ作りを着々と。
と思いきや、ちょっといさかい中。
翔鳥は生活が厳しいらしく、アルバイト情報誌を熟読。
こういう姿に桜餅は反発する。
お金じゃないでしょ。
それは分かっているらしい。お金じゃなくて、翔鳥は、人生を賭けてするべき落語に、自分が値するのかに悩んでいるようだ。
二人は頭を冷やすために外に出る。

二人はアカバネと出会い、サヨリ姫のことを聞く。
じゃあ、サヨリ姫を笑い好きに戻せばいいんじゃないのか。
翔鳥はそんなことを考え出す。でも、難しそうだ。神様の笑いのツボなんて分からない。
そんなことを話しながら、林の中を歩いていると、どこからか声がする。
そして、落とした扇子が勝手に動き出す。
扇子を追っていくと、扇子の絵と同じ場所にたどり着く。
翔鳥、そして揚鳥亭はこの村に何か関りがあるのだろうか。

・第三話

ロケの後、民俗学者に取材している。
村の守り神。おもてなす。酒をふるまう、祭りをする。
笑わせるなんて村もあったらしい。
扇子に描かれた人もきっとそうではないか。それは、揚鳥亭一門の創始者、明鳥かもしれない。

翔鳥は宿で再びネタ作り。
桜餅はアカバネに少し相談。
翔鳥が引退を考えている様子。明日の落語会を盛り上げたい。
そのためには、サヨリ姫の笑い嫌いを何とかしないと。
ふと見ると、チケット即日完売のソーメンズのチケット。業界人だから手に入るらしい。
桜餅は悔し紛れに悪態をつき、話はそれていく。
そんな話をしながら、桜餅の興味は、今度は一緒の部屋に泊まるアカバネとタカナシに移る。
問題は起こらないのだとか。タカナシが凄いレズだから。

落語家人生に行き詰まっている翔鳥。
自分の笑いと世間の笑いのズレ。
それでも、笑いは好き。だから、この村が笑いを拒絶するのはどうにかしたい。
揚鳥亭明烏が生み出し、代々伝わる笑いの教訓。
自有反言広違いという6つの方程式。
自虐、自画自賛ネタ。
あるあるネタ。
リズムよく反復。
言葉遊び、ダジャレ。
コントに多用される広がる話。
勘違いネタ。
これがサヨリ姫を笑わすのに使えるのでは。
いや、無理か。

アカバネは再び神社へ。
神主らしき人が現れ、ひどく叱られる。
上司のパワハラを思い出し、精神的に不安定に。
日も暮れて辺りは暗く。
夜道を歩いていると、迎えに来た女性が現れる。
サヨリ姫はどんなネタで笑ったのか。答えはやっぱり分からず。
それよりも気になるのは、タカナシが一人で会いに来ているらしい。
狙われている可能性が高い。グイグイくるから気を付けて。
アカバネは、色々と助けてくれるソーメンズのチケットを渡す。
えらい喜んでいる。
この村の人は笑いが嫌いだったのでは。
笑いは一度好きになったら、きっと嫌いになれないはず。
どうやら、この村では無理に嫌いにさせられているようだ。
笑いで幸せになっても、笑いで不幸になったら、それをぬぐえない。
そんな教えらしい。
いつも隠れてお笑いをネットで観ている。
だから、明日も本当は楽しみ。きっと、他にも同じような人がいるはず。
そんな話をしていると村内放送で三味線の音が。
二人は気分が悪くなる。
そして、アカバネは倒れ込み、女性はいつの間にか消えてしまう。
タカナシはロケを中止にするべきか悩む。
その時、怒声。プロデューサーが村にやって来た。

・最終話

女性が倒れたことで、神主が激怒して、プロデューサーは謝りに来たらしい。
その姿はやくざそのもの。
くだらないことをしてないで、稽古と寄席の本番を撮るだけでいい。
タカナシの反論は許されない。
プロデューサーは、倒れて、今は横になっているアカバネの下へしばきに向かう様子。

アカバネは気絶したふりして、何とか乗り切ったみたい。
その代わり、後の仕事は全てタカナシに任せることに。
翔鳥は何とかしようと、徹夜でネタ作り。
ついに落語会の日を迎える。
ふと扇子を見ると、描かれた人がこちらを向き、お辞儀をしている。
頼んだぞといったことだろうか。

これはやっぱり立ち切れ線香だ。
明烏は、亡くなったサユリ姫のために、村のことを面白おかしく祠に向かって聞かせていた。
しかし、身体を悪くし、それも難しくなってきた。
明烏は死んだのか、入院のために村を去ったのか、祠に来ることはなくなった。
サユリ姫は、笑いを聞くと辛くなってしまう。
祠も移されてしまう。
そして、いつの日か、サユリ姫は笑いを忌み嫌うようになった。
翔鳥を見て、サユリ姫は明烏を思い出したのかもしれない。

立ち切れ線香。
芸者は昔、客との時間が分かるようにと線香を使っていた。
幽霊の芸者は、想いを寄せる人とずっといたいから、線香を燃やし続けていた。
ある日、幽霊の芸者はその人と出会うが、自分の姿は見えないので、三味線を弾いたりして気を引くように仕向けた。
でも、やっぱり無理だったので、線香を消した。
こんな切ない話。
翔鳥は祠を参り、神社へ向かう。
桜餅は一人寂しくリハーサル。会場に村人が来る気配は全く無い。

翔鳥は神主と直談判。
自有反言広違い。
この言葉に神主は表情を変える。
村に伝わる念仏が、笑いの教えだったとは。
この言葉の意味を知り、サユリ姫の嫉妬のような、笑いへの辛い気持ちを理解する。
明烏はこの神社で修業をして、亡くなっている。
サユリ姫に手紙も書いていたみたい。
笑いを完成できなかった。子孫に繋ぎたい。笑わせられなくて申し訳ないことが記されていた。
翔鳥はこの手紙を持って祠へ向かい、読み聞かす。
笑わせたい人がいるのに、死んでしまった悔しさ。今の自分の笑いへの想いを語る。
手紙には続きがある。
何かのネタみたい。
読んでみるがさほど面白くない。
でも、どこかから面白いと声がし、線香の火が消える。
内輪ネタじゃないだろうか。こんなものでよかったのか。
とりあえず、翔鳥は会場に急いで向かう。

間に合わない。
諦めた時に神主がやって来る。
村内放送を使う。
翔鳥の落語が始まる。立ち切れ線香。オチがつく。
放送室では翔鳥を見守っていたタカナシが拍手。
一人寂しい会場では桜餅が拍手。
そして、立ち止まって聞いていた村人も拍手を。
村の笑いへの呪縛は少しだけ解けたかもしれない。

再編集中のアカバネの下にプロデューサーがやって来る。
威圧するプロデューサー。萎縮するアカバネ。
プロデューサーをやりこめ、アカバネを慰めるタカナシ。
まあ、テレビでこれが放送されることは無いだろう。

揚鳥亭翔鳥。
後日、取材すると銭湯で寄席を開いている。
古典落語、抜け雀。師匠の偉大さに気付く男の話。
誰よりもこの話を理解する翔鳥の最高の舞台に拍手喝采。
落語を続ける理由。
今、それは翔鳥の胸に刻まれている。

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