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2015年9月27日 (日)

サイドカー【壁ノ花団】150926

2015年09月26日 元・立誠小学校 講堂 (70分)

2年振りに拝見。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/120913-1fa8.html
この時の印象が、凄く不安を煽られて、心ザワザワとなるのが怖くて、2年も観なかったのかな。
今回も似た感想ではあります。

自分の生きる力となっているような人を失う。
取り残された自分。襲ってくる不安と悲しみ。
それでも、生きていかなくてはいけない。
傍にいる人たちのことを想い、その想いを自分に力に変える。
そんな純粋で力強い人の姿が見えるような話でした。

<以下、うろ覚えになっていますが、一応あらすじがネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は本日、日曜日まで>

島にかかる大きな橋をバイクで渡る父と息子。息子はそのサイドカーに乗っていた。
変わらぬ景色に飽きて少しウトウト。目を覚ますと息子は、隣にバイクが無いことを知る。
一輪車状態で走り続けるサイドカー。そのまま島の大きな屋敷の庭に落下。
島にはヤブ医者しかいない。息子の左足は二度と戻ることは無かった。
その大きな屋敷に住む、名の通り大きな男、将軍に拾われ、ヨシオと名付けられて育てられることに。金持ちなのでいい義足を作ってもらう。要は、義父と義足をこの日、ヨシオは手に入れ、島での新しい人生が始まった。
将軍は、ヨシオ以外にも身寄りの無い子を拾ってきていたので集団生活。
サチオ、ソノコ、ササコ。

それから25年。
今では将軍も亡くなり、その仕事はササコが引き継ぐ。
菊の穴と名付けられる博打。数頭の豚のケツに向かってハエを飛ばし、その止まる順番を当てる。
地元の客と観光客によって、けっこうな収入となる。
もちろん、ハエと心を通わせることが大切。なるべく、はられていないケツに向かってハエを飛ばさないといけないから。
ヨシオは結婚して安泰の生活。金に苦労することもなく、今ではすっかり島の住人として日々を過ごしている。
サチオが久しぶりに島に帰って来た。新聞一面を使って帰って来いと書かれたら、さすがに気付くというものだ。金があるから、かなり大胆なことをする。
ソノコの風呂を覗き、将軍の逆鱗に触れた。その恐ろしさにサチオは島を出て行った。今では、あまり売れないマスクマンレスラーとしてそこそこ活躍している。
将軍の死をきっかけに呼び戻したというわけだ。
将軍の墓参り。そのまま埋めて、まだ数日なので、掘り返せばまだ顔を拝めるようだが冗談じゃない。
ソノコはいない。何となくそんな気がしていた。ソノコの墓は無い。遺灰は海に撒いたらしい。
将軍の墓のそばには小さな墓。ハトのアラシの墓だ。

サチオが島を出てから、ソノコは、アラシに命じて、どこにいるかも分からないサチオに手紙を届けようとしていた。もちろん、宛先不明で手紙が届けられるわけが無い。アラシも後ろめたかったようだが、その手紙は毎回捨てられた。それでも、アラシはソノコの命を受け続けていた。それは、もらえる乾燥豆もあるけど、自分を呼ぶ個性的な口笛に美しさを感じていたから。
ある日、ソノコは東京へ出る決意を固めた。アラシは、騒然とした東京ではその口笛を聞くことができず、やがて死んだ。アラシの遺体はタオルで包まれ、ソノコは島へと戻った。そのタオルはあるプロレスラーの名前が刻まれているものだった。

サチオは試合のこともあるので夜の便で帰ることに。
海を眺めても、そこには何も無い。
翌朝、ササコはまだ島にいて、中学生に絡まれるサチオと出会う。乗り遅れて、中学校で一晩過ごしたらしい。
戻ってヨシオと少し話す。
新聞記事で見たが、この島が直にに沈むことは知っているのか。そんなサチオの質問に新聞を読まないヨシオは何も答えない。
島と自分が同じように感じているのだろうか。

サチオは、昼の便で帰る。その途中、海の向こうにいるソノコと出会う。
サチオはソノコを覗いた。でも、ソノコもサチオを見ていた。サチオが将軍と戦うことで何かが変わると思っていたから。
それからも、ずっとソノコはサチオを見続けていたのだろう。
サチオも気付けば、ソノコから手渡された双眼鏡をずっとズボンのポケットに入れていたことに気付く。これで自分はソノコを見ようとしていたのだろうか。
ソノコの死因は、中絶の失敗だったと噂されている。
もう会うことは無いだろう。互いに別れの言葉をかけて、ソノコは海へ、サチオは都会へと去っていく。

ヨシオは夢を見ている。
父の夢。今もあのバイクは父を乗せて走っているのだろうか。
目が覚めて、昔のことを思い出す。
熱く燃えるように痛くなり、冷やしていた義足。今ではそんなこともなくなった。
将軍に金を借りに来ていた男。考えが浅い人だった。今、自分はそんな人たちに金を貸しながら、妻と生活する。
ソノコはサチオに想いを寄せていた。将軍はソノコに気があった。ササコは将軍に憧れていたからこうして後を継いだのだろう。
そんな関係性の中に、ヨシオはいつも蚊帳の外にいたことにずっと気付いていた。
でも、サチオがソノコのことで将軍と揉めて出て行った時、ソノコが死んだ時、サチオがプロレスラーとして活躍し始めた時、将軍が死んだ時、ササコが将軍の後を継ぐ決意を固めた時、どんな時もヨシオは皆のことを想い続けてきた・・・

話は回想が入ったりと時間軸をずらして、ちょっと不条理でコミカル、かつどこか温かさを感じさせるような不思議な空気に包まれて展開する。
流れる時間がこの島と、外では違うのではと思わせるような、緩やかで淡い進み方。でも、その中で確実に変化は起こり、心に抱く想いは蓄積して露出してくるようになる。
それは島の外に出たり、外に目を向けたことから生み出されたようにも思える。
不安が渦巻き、襲ってくる中で人がどうそれに立ち向かおうとあがくかを優しく見詰めているような感覚を得る。

作品名のイメージから、動力源を無くした人たちの苦悩する姿が浮かんでくるような。
本当にサイドカーに乗っていたヨシオは、その動力源であった父のバイクと切り離されることによって、しかも左足まで無くして、自らが動くことを封じられた。でも、彼には将軍という義父と義足という、偽物かもしれないが、これからをまだ生きていく、進んでいくための力を与えられた。
でも、そんな島での生活の中で、生気を無くしていくようなヨシオ。彼の中に渦巻いていた希望や絶望は、発散されることなく、生体では無い義足に熱として溜められたのだろうか。そんな熱も時間と共に冷まされていく。
そして、その島も、いずれ消えてしまう存在になり、自分はまた放り出されてしまう。

将軍はソノコをはじめ、この大きな屋敷で共に生活する子供たちに。ソノコは、出会ったサチオという不器用で優しい男に。サチオは自分の性を目覚めさせたソノコに。ササコは親以上の想いを抱かせた将軍に。ハトのアラシですら、ソノコのそのおかしな口笛に惹かれてしまう。
島という閉鎖空間で、海を見渡しても、同じような島がちょこちょこ見えるだけで、その先に広大な風景が拡がっているのか、大して変わらぬ風景が続くのかは分からない。
でも、この島はかつては海賊で有名だったらしく、その海は間違いなく、厳しい潮が渦巻いている。
誰もが島の中で孤独を抱き、外に出るにも相当な覚悟が必要である。だから、それでも自分が生きる力を得るために、傍にいる大切な人に想いを寄せた。
でも、そんな人を失ってしまう。
その時、人はどうなるのか。狂ってしまいそうなくらいの不安や悲しみの中で、それでも、自分が生きるために人を想って進んでいこうとする純粋で力強い姿が浮き上がるような気がする。

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