にゃっつ【魔法のチョコレート】150921
2015年09月21日 シアターカフェNyan (65分)
キャッツのまほちょこ版でしょうか。一応、ミュージカル調になっていたりします。
何でももらえる、いつも大事に想ってもらうみたいに、受け取ることが当たり前だった甘えんぼ黒猫が、これまでとは違う世界で生きている仲間と共に時間を過ごす中で、自分にいつも想いをくれていたものの存在に気付き、成長するような話でしょうか。
想われているだけじゃなくて、想うこともしないといけない。想い合い。何事もこの合いというのが大事なのだろうなと思います。
作品中に描かれるたくさんの想い合いから、優しさという言葉が浮き上がってきたように感じます。
気付いたら、野原で一人ぼっちの黒猫、ツキ。
葉月ちゃんにバスケットに入るように言われ、一緒に自転車でお出掛けしていたのに、葉月ちゃんがいない。
どうしたらいいのと騒いでいると、野良猫が現れる。
迷子になった。家に連れて帰って。そう言うツキを、野良猫は面倒くさそうに冷たくあしらい、どこかへ行こうとする。
思いっきり泣き出すツキ。
うるさいと怒鳴るとさらに泣き出す。迷子の迷子の子猫ちゃん状態で、野良猫はやむなく事情を聞くことに。
野良猫はすぐに状況を理解する。お前は捨てられたんだよ。人間って奴は勝手だからな。どうしてあげようもない。
去って行く野良猫の後をツキは付きまとう。
兄貴と言うと何かすごく怒るので、とりあえずお前さんと呼びながら、どうにかしてとツキは野良猫の後を付ける。
途中、大きな猫が横たわっている。その巨体から想像するに、かなりの強者と見た。
野良猫の世界は厳しい。縄張り争い。売られたケンカは買わなくては。
野良猫と巨体猫の闘い。決着は一瞬だった。まさか、ここまで見掛け倒しだとは。
まあ、巨体猫も冗談だったみたいで、謝っている。ちょっと面白いことをさせて許す。
お腹も空いたし、みんなで食事をすることに。
巨体猫、ゴンザレスは飼い猫。昼間はいつも、この野原で自由気ままにしており、なぜか色々な人から食べ物をもらうのだとか。
ツキは、もらった食事が美味しくないと、またわがまま。ゴンザレスも人がいいのか、ごめんね、明日はもっと美味しい食事を用意するからねとか言っている。
どいつもこいつも甘過ぎる。すぐに裏切る人間に甘やかされて、そしてそんな人間を信じて。野良猫は苛立ちを見せるが、久しぶりの仲間たちとの時間に少し心地よさも感じているみたい。
すっかり夜になった。空にはお月様。
ツキは思い出す。フカフカのベッドで葉月ちゃんと絵本を読みながら一緒に寝た。その絵本はお月様はいつもみんなを守ってくれていて、願い事を叶えてくれると書いていて、葉月ちゃんが大好きだった。
いっぱいいっぱい可愛がってくれた。
ゴンザレスが言う。僕のご主人様もいっぱいいっぱい可愛がってくれる。だから、ありがとうって、ちょっと嫌だけど、大きなお腹を触らせてあげる。気持ちよくて癒しになるんだって。ツキちゃんは何をご主人様にしてあげていたの。
ツキはそんなこと考えたこともなかった。なんだか心が不安な気持ちでいっぱいになる。
葉月ちゃん会いたい。でも、どうやって。
ツキは、家にいた頃、窓から見た景色をゴンザレスに伝える。近くに食堂があって。
グルメ通のゴンザレス。一発で、そこが星空食堂だと言い当てる。
さあ、行こう。
家は真っ暗。誰もいなさそう。
野良猫は言う。引っ越したのかもしれない。要するに厄介払いだ。
ツキはわがままばかりで、だいぶやんちゃをしていた様子。おまけにどうも片目が悪いらしい。
捨てられる理由は十分にある。
そこに悪ガキたちがやって来た。野良猫とゴンザレスはまずいとツキを連れて逃げようとする。ツキは意味が分からず、その場に立ち尽くす。
こいつ、黒猫だ。石が投げられる。野良猫が威嚇して、何とか追い払う。
どうして。自分は人に嫌われているの。怖い。ツキはただ呆然としている。
それが人間なんだ。これからは、俺が守ってやるからと野良猫はツキを慰める。
お月様。もう嫌だ。なんとかして。
月の女神、いやウサギが現れる。
すっかり寝ている野良猫にいたずらしながら、月のウサギは、ツキに本当の気持ちを大切にするように伝え、月へと帰って行く。いつも、ちゃんと見ているからね。
朝になって、またゴンザレスの持って来た朝ごはんをみんなで食べながら、ツキは、野良猫になる決意を語る。
兄貴は嫌がるから、ツキは野良猫を師匠と呼ぶ。
野良猫はそんな甘い世界じゃない。でも、このまま放ったらかすこともできない。一緒にいれば、守ってあげられるし、その方がいいかも。
野良猫は弟子入りを認める。
野良猫の心得。まずは首輪を外せ。
でも、ツキにはそれが出来ない。
思い出した。捨てられていた自分。誰かにやられたのか片目を怪我していた。そんな自分を葉月ちゃんは拾ってくれた。困った時は、この首輪が役に立つから外したらダメだよと言われた。怒られた覚えは無いけど、たった一度だけ、首輪を外した時に叱られた。
野良猫は叫ぶ。どうして、そんなに人間を信じるんだ。勝手に拾って、捨てられて。自分だってそうだった。捨てられて、保健所の奴らがやって来た。必死に逃げる中、弟が捕まるのが見えた。
勝手にすればいい。お別れだ。野良猫はどこかへ行ってしまう。
ツキは葉月ちゃんのお父さんとお母さんを見つける。どうしてここに。葉月ちゃんを探しているみたい。急いでどこかへ行ってしまった。
葉月ちゃんは、きっと自分を探しに来てくれていたんだ。
そうだ。自分はここで葉月ちゃんに拾われた。
ふと土手を見ると、葉月ちゃんの自転車。隣には倒れている女の子。葉月ちゃんだ。怪我をしている。
助けを呼ばないと。
悪ガキたちが通りかかる。怖い。でも、気付いてもらわないと。
また、黒猫だ。悪ガキたちは、ツキを追い払おうとする。
野良猫が現れる。悪ガキが大事に持っていたビックリマンチョコを奪って、誘導。
気付いてもらう。
これで大丈夫だろう。
月のウサギが現れる。
やっぱり、いつも見てくれていたんだ。
野良猫はツキに破門を言い渡す。
お前は捨てられてなんかいない。帰る場所がある。
人間でも、いい奴っているんだな。
野良猫はまた旅に出るみたいだ。これまでもそうして生きてきたから。
でも、今度の旅は放浪の旅とはいかないみたい。
目的が出来た。
月のウサギから、弟猫はうまく脱出して逃げ出したことを教えてもらったから・・・
ツキ、葉月ちゃん、野良猫、弟猫、ゴンザレス、お父さん、お母さん。
今、すぐ傍にいたり、今は離れてしまったりしているけど、みんな、互いに想いを寄せて、相手のことを考えているようだ。きっと、互いに大切な存在だから。
お月様はいつも見守ってくれている。
でも、身近にもそんな自分をいつも見守っって照らしてくれる月のようなものがいる。
でも、いつも照らされているだけではダメ。
自分も相手を照らす月にならないと。
それがきっと成長して、優しい大人になること。
ツキはずっと葉月ちゃんに照らされてきた。それが当たり前だと思っていた。でも、今回のちょっとした旅で、自分も葉月ちゃんが辛い時に、照らしてあげられるようになれたらいいなと思うようになったのではないだろうか。
ツキは、これまでずっと葉月ちゃんに、そして、今回の旅で野良猫、ゴンザレスにたくさん優しくしてもらいます。それは、きっと葉月ちゃんがお父さんやお母さんからたくさん優しくされ、野良猫も辛い経験をしているけど、一時でも人から優しさを教えてもらい、弟と支え合う中で生まれる絆を知り、ゴンザレスは優しい飼い主から愛情をたっぷり受けていたから、出来たことのように思います。
相手に優しく出来るのは、その優しさが凄い力になることを、自らも優しくされて知っているからだと思うのです。
ツキも葉月ちゃんも、たくさん自分のことを照らしてくれる人や猫と出会えているから、きっと優しい大人になって、幼き頃に不安だったり寂しかったりしたことを思い出して、これから誰かの月になるのでしょう。もちろん、野良猫やゴンザレスも。
悪ガキたちだって、きっとありがとうの言葉をもらい、その喜びが少し、自分たちを成長させたはずです。
そんな想い合いが絆をもっともっと拡げて、繋がっていくかのような様がとても素敵に感じます。。
月は私たちを照らしてくれます。
でも、その月を輝かせているのは、頑張って一生懸命な私たちを見た月の女神の微笑みなのかもしれません。
私たちだって、いつも見守ってくれてありがとうと月を照らしてあげられるような優しさを身につけていたいように感じます。
特記すべきは、野良猫演じるレオ丸さんの堂々たる初舞台でしょうか。
役自体がかっこいいのですが、抱えているものを滲ませて、孤高を貫く強さ、それでもどこかで仲間を求める弱さ、素直になれないけどいつも相手に優しさを持って接するといった、心情豊かな演技が非常に目を惹きました。そして、ちょっといじられキャラなのか、みんなからいじめられているかのような無茶ぶりに戸惑いながら、変なテンションを見せる可愛らしさも。
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コメント
とりあえず第一弾を(笑)
しめしめ。うみみさんより先にコメントするぜ(笑)
いつものマホチョコさんの観劇感想より抑え気味な印象ですが(笑)
私はめちゃ好きやったです(#^.^#)
確かにレオ氏は凄かった(笑)
詳しくはまた(笑)
とりあえずうみみ孃よりコメント先にできて良かった(笑)
投稿: KAISEI | 2015年9月22日 (火) 23時41分
うわ、KAISEIさん!やられた(笑)うぅ~。
SAISEI様、たびたび失礼いたします。
今回も、とても深く詳しく書いていただき、
感動です。
本当にありがとうございました!!
投稿: うみみ | 2015年9月23日 (水) 12時17分
>KAISEIさん
うみみさんに、コメント催促しちゃダメ(^-^;
投稿: SAISEI | 2015年9月24日 (木) 15時01分
>うみみさん
コメントありがとうございます。
色々とありがとうございました。
今回も温かい気持ちで観ることが出来て、とても嬉しかったです。
次回公演までしばらく時間が空きますが、またお会いできるのを楽しみにしております。
投稿: SAISEI | 2015年9月24日 (木) 15時03分
SAISEI 様
誤解ですよー(笑)
いつもうみみさん公演終了後挨拶コメントされてるので今回もされるんやろうな、と。
先にしたはると思ったのですがまだやったので(笑)
言い訳コメントでした(笑)
投稿: KAISEI | 2015年9月27日 (日) 18時24分