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2015年9月19日 (土)

太陽が死んだ! ~ヒモがドラマチックに世界を救う~【劇団ちゃうかちゃわん】150919

2015年09月19日 芸術創造館 (105分)

私が言葉の意味を履き違えているかもしれませんが、立派なアングラ演劇だと感動。
これは見事な作品だと思います。
面白さが唐組とかに通じているような印象を受けます。
あちらは、突き抜けた不条理設定やぶっ飛び感が全面を覆うので、頭混乱させて、ちょっとした不安を煽られながら、何が何やら分からないけど面白かったみたいな感じになりますが、こちらは、それが程よく覆われていて、非常に安堵を抱きながらの心地いい観劇。

熱さはもちろんありますが、決して勢いに任さず、会話の掛け合いやシーン転換の間合いがしっかりと感じられ、とても丁寧な作り方をしているんだろうなといった印象。
笑いの仕掛けも巧妙に計算されて、緻密な策略がうかがえます。
それだけに、ちょっとしたミスで起こってしまう笑いが面白いけど、残念だと感じるところが多々あったように思います。

ノストラダムスの予言があった1999年。本当に自暴自棄になって、おかしな行動をした人もいたような覚えがありますが、ほとんどの人がどこか期待をしながらも淡々とその時を生きていたように思います。
いつか滅亡するかもしれないし、私たちは神様みたいなものに、生かされているだけなのかもしれません。
それでも、今、この地球に生きている自分は、きっと誰かのために、自分の大切な人のために生み出され存在している。だから、その人のためだけでもいいから、自分の生を全うしようみたいなことを描いているような話だと思います。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで。連休で公演激戦ですが、お薦めの一品だと思います>

試験中に緊張してゲロを吐き、人生終わった高校生。
その弟は、電車の中で便意をもよおす。兄に励まされ、あと少しで何とかなるはずだった。しかしながら、停車直前、飴ちゃんをくれる近所のおばちゃんにお尻を叩かれて、あえなく漏らす。その姿を憧れの女の子に見られていた。彼もまた人生を終えた。
そんな未来への希望を失ったホープレスな若者たち。
それでも、地球は廻り、太陽の光は降り注ぐ。

太陽では、チーフが応募してきたインティラミの面接をしていた。
返事はいいが、少々、変わっている。でも、まあ合格。
大した仕事では無い。
太陽の光を制御する装置を動かすだけ。
前任の杉浦サンシャインが簡単に指導して、後は全て任されることになる。杉浦サンシャインはウルトラマンとしての仕事で手一杯らしい。

地球では、マサルが妻のヒロミをキャバクラで働かせて、ヒモ生活を過ごしている。ヒモらしく、腹がすいたとひもQを食べ、ハローワークにも行かず、ダラダラとただ寝て過ごす毎日。
どうしてこうなったのだろうか。マサルは今や会えなくなった母を思い出す。
そう、自分はとても優秀な子だった。そんなこともあってか、母は自分を芸能界に入れた。
轟という名の少年ヒーローもので、その名は一挙に売れて、天才子役の仲間入りを果たした。
悪い怪人、イカキン。テレビショッピングを利用して、小学生たちにいかがわしいエナジードリンクを売りつける。変なドリンクを飲んで、羽根が生えてしまい、泣きわめく小学生たち。
そこまでだ。颯爽と現れる、マサル演じる轟。
轟はイカキンを倒し、そのボスである怪人ホムンクルスに発砲して、腕を引きちぎる。こんなグロテスクな描写が受けたらしい。
でも、人気が出るにしたがって、周囲の奴らがみんなブタのように見えるようになった。自分の人気に群がり、何かを得ようとする醜い者たち。なかでも、同級生の華下坂と美洲丸九は、その名前の通りのいでたちで、マサルに妬みや憎しみの感情をぶつけてきた。
そんな中、ヒーロー轟の打ち切りが決まる。だるま人間とか、ちょっと過激にやり過ぎたみたい。
あっという間の転落。
普通は、こういう時、子役は薬に走る。でも、マサルは違った。
マサルが走ったのは宗教。
マラ教に入信し、教祖マラ様に自らの肉体を捧げる。交わることで救われる。そんな宗教。
そこで、出会ったヒロミ。ヒロミはインドから帰化して入信した女性。ヤバイ、ウケルぐらいの言葉でしかコミュニケーションが成立しないかなりの頭の悪さだったが、彼女には優しさがあった。その優しさが、マサルのヒロミへの愛を生み出した。
マサルはヒロミを連れて逃亡。
都会を離れ、田舎暮らしが始まる。
そして、今に至る。
マサルはボーっと窓の外を見ている。もうすぐ日が暮れる。
その時、太陽が消えた。沈んだのではなく、確かに消えた。

太陽では、太陽光の照明仕事を任せられたインティラミの下に、一人の男が現れていた。その名は闇インティラミ。インティラミの負の感情が集まり、生み出された者らしい。
自分の中にある闇の感情。その闇をインティラミは取り込み、世界を闇に導こうと、照明装置を壊してしまう。
地球では、マラ様が喜んでいる。策略どおりだ。闇インティラミなど存在しない。単なる変態男を利用して、インティラミの下に近づけただけ。
全てを夜に。それはセックスのため。Xデーが実現する。

太陽が消えた地球は、夜の街となる。
ビッチも、田舎から出て来た者もみんな夜を楽しむ。
マラ様は大衆たちを扇動し、闇の不安を打ち消すかのように、人々は踊り狂い始める。
ヒロミは、インドに帰ると出て行ってしまった。
マサルは一人取り残され、夜道を歩く中、マラ様の第一夫人と出会う。
マサルは夫人に刺され、あえなく死ぬ。夫人が去り際にヒロミは預かったという言葉が気になるが、もう意識は消えつつあった。

消えゆく意識の中で、マサルは、自分の子役時代のマサルを見る。
こんな死に方でいいの。
今のマサルは、まあいいんじゃないのかなといった感じだが、若き自分はそれを許さないみたい。
恥ずかしい生き方。ヒモならヒモとして徹底的に頑張ろうよ。ヒモキングを目指せばいい。ヒロミに尽くして、彼女を幸せにする。
マサルは死んで初めて、自分がするべきだった目的を見つけることが出来た。
でも、時すでに遅し。
そこに、ナナシという天使のような女性が現れる。
24時間の猶予を与える。そこで、見つけた目的を果たしなさい。そうすれば、天国に行けるようだ。
そこでは、母も待っているみたい。
自分の子供を金儲けの道具にしてしまった反省。でも、夫のおかげで不自由の無い裕福な生活が過ごせた。自分は夫の寄生虫であったことを知り、彼に尽くした。その結果が、今の天国ということみたいだ。
ただ、話を聞いていると、その夫はマラ様。つまりは、マサルの父はマラ様だった。
信じないマサルだが、子役時代のマサルは確かにそうだと言っている。
近親相姦の罪悪感なのか、記憶を抑圧していたらしい。

衝撃的な事実であったが、今はヒロミを助けなくてはいけない。
そして、ヒロミを幸せにする。
マサル、子役時代のマサルは、マラ様の下へと向かう。
ヒロミは、夫人により連れ去られ、マラ様に再び捧げられようとしていた。
マサルがかつてのヒーローの時のように颯爽と現れる。
マサルは、ヒロミを幸せにするために、何でも願いを聞くという。時間が無い。
ヒロミはマサルと一緒にいられれば幸せだと返すが、それはもう無理だ。死んでしまったから。代わりの願いは太陽を元に戻すこと。そうすれば、この狂った闇の世界は終わる。
と言っても、それも難しい願い。でも、方法はある。自分が太陽になればいい。
マサルはエナジードリンクを飲んで、羽根を生やして、宇宙へと飛び立つ。

残された子役時代のマサルは、マラ様からヒロミを助け出そうとする。
しかし、マラ様は、それが無意味であると言う。
自分たちは、何者かによって、ただ生かされているだけ。掌の上で転がされているようなもの。現に太陽だってこうして消えた。
セックスによって愛を得て、より高い次元へと自らを昇華し続けることが出来る。
子役時代のマサルは、ヒーロー轟の最終回を思い出す。
怪人ホムンクルスが生み出したイカキンはじめ、数々の怪人たちを倒してきた轟。自分は何のために戦ってきたのか。
正義、自分自身、地球を守るため。
ホムンクルスはそれは全て違うと言う。
轟は、ホムンクルスがいるから存在している。いわば、ホムンクルスの存在意義を見出すために生み出されたものであると。
そんなはずはない。自分、地球、この宇宙はホムンクルスの想像の産物だとでもいうのか。自分はいったい何者なのか。
確かめればいい。轟は宇宙へと飛び立つ。

マサルは宇宙を彷徨う。
どこかから、人がやって来る。ぶつかる。杉浦サンシャイン。
サンシャインは、太陽が壊れたこと、そして、もう修理している間に地球は冷えて滅びるから、地球は見捨てることにしたことを伝える。
何とかならないのかと聞き返そうとするが、サンシャインは忙しい。マサル以外にも多くの人が、今、太陽の様子をうかがいにやって来ているらしい。
その人全てに同じ説明をしないといけないのだから。

マサルの前にナナシが現れる。
24時間経ったらしい。
結局、目的は果たせなかった。そうなると、自分はただ消えるらしい。
高い次元になるわけでもなく、天国へ行くわけでもなく、ただ消滅する。
マサルは、最後にヒロミと話したいと願う。
太陽の事故のこともあり、酌量の余地があったのか、ナナシは宇宙にまで電波を呼び込み、マサルとヒロミを携帯で話させる。3分間だけ。その後、マサルは木端微塵になる。
ヒロミはたくましく、自力でマラ様から逃げて家に帰っていた。
宇宙に今いると言ってもさほど動じない。ウケルの一言。相変わらずのバカさ加減だ。早く帰って来いと言われても、さっき説明したとおり、死んだから無理。本当にバカだ。でも、きっとこんな状態になっても変わらない優しさを持つヒロミのことが好きだったのだろう。
願いを叶えてあげられなかった。太陽を元には戻せなかった。自分が太陽になるのも無理だった。
謝罪の言葉だけ口にして、携帯を切る・・・

最後はメタ的なエンドになっているのかな。
ホムンクルスが出てきて、全ては舞台作品であったことを言及し、それをずっと見ていた何者かの存在を示唆するような形で終わります。
何者かによって、地球という場所に太陽の光を照らして、そこにいる人たちを生かしているなら。そんなこの作品の設定を、何者かによって、舞台に照明を照らして、役者さんたちを演じさせているようなことと同調させているのでしょうか。
そんな見方をすると、例えば神のような演出家によって、演じさせられているから、掌で転がされているからと、作品中のマラ様のようなセックスが全てだみたいな考えに走ると、舞台は、自分たちのやりたい欲だけに従ったよくあるマスターベション作品みたいなものとなってしまうのかもしれません。

何者かの手によって、生かされているのだとしても、いつかいとも簡単に地球は滅亡してしまうのだとしても、私たちは、その何者かのために存在しているのでは無い。自分が存在するのは、今、想いを寄せる人を愛するため。その人にとってだけで構わないから、キングやクイーンとなるため。
何もしなかったマサルは、そのことを知り、結局ダメだったけど、今、出来る限りの頑張りを見せて飛び立ってみた。その姿は、ヒロミにしっかりと刻まれて、彼女がこれからを生きる世界での光となったように感じます。
地球はまさか滅亡はしないでしょうが、この公演は日曜日の夜になれば終わります。しっかりと創り上げた舞台美術も無くなり、照明も消されて、観た舞台は消滅するのでしょう。舞台に存在していた人たちは、轟がホムンクルスのために存在している自分という言葉に悩むように、誰かに演じろと言われたからなのか、自分はなぜここにいるのかに悩んだりするのかも知れません。でも、マサルのように、どうなろうとも、自分がここにいる、役として生まれてきた理由は、自分が誰かのキング、クイーンとなるためであることにきっと気付いているでしょう。
その姿を目に焼き付けた、舞台に生きる人たちを見た私たちは、ヒロミのように、自分が生きる世界に光をもらったように感じます。

役者さんは、本当に個性的なキャラのオンパレード。
残したメモを基にサーっと書きなぐっていきます。
マサル、カメマルさん。すさんだ厭世観の空気が絶妙。
ヒロミ、ニヴェ子さん。美貌と知的を漂わせる空気と役とのギャップ。
幼少期マサル、大崎詩織さん。飄々とした可愛らしさ。今回の一番目を惹いた役者さん。
インティライミ、大川楠人さん。イラっとする面白さ。
闇インティライミ、松田義顕さん。卑怯な笑いの取り方。
チーフ、吉田皓太郎さん。安定した掛け合いの受け止め。
杉浦サンシャイン、塚本拓也さん。テンションおかしい。
マサル母、井上真琴さん。天然、毒あるお母さん。
イカキン、中村拓都さん。物悲しいシュールさ漂う。
怪人ホムンクルス、中嶋彬裕さん。立ち振る舞いが安定。
説明屋さん、角淵敦基さん。濃い。
マラ様、西浦勇輔さん。喋りの間合いが狂気。
左/ホープレス高校生、柴田峻さん。運や要領の悪さ滲む。
ホープレス中学生、多田剛志さん。薄幸の空気。兄弟名コンビ。最初、これで掴んでいる。
ディレクター、藤田睦さん。いかがわしさ。
華下坂没落、江田航平さん。虚勢の張りが切ない。
美州丸九野花、ローラさん。がっつき感。
ピザ屋、山本伊織さん。隠れ面白キャラ。
ワレメ、サケメ、田中丼田中さん、上田優さん。区別つかず。美人さん。役としてビッチ感。
カゴメ、赤田紘香さん。この方も美人さん。こちらも役として田舎の空気。
マラ夫人、三澤涼香さん。何か腹立つたたずまい。
オバハン、品川拓也さん。迫力・・・
ナナシ、石野里奈さん。堕天使風の黒さ感じる。

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