PANDORA -Op.4 樹の章-【Project UZU】150922
2015年09月22日 インディペンデントシアター2nd (130分)
昨年に引き続き。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/120-0394-1.html)
上記リンク先の前回の感想に、エンタメ性を、衣装、ハープ、ダンス、映像をベースにしながら、例年、積み上げていっていると書いていますが、今回は、前回積み上がったエアリアルティシューに加えて音楽でしょうか。合唱が入り込み、とてつもない美しい世界が創り上げられています。
愛から生まれた世界が、どうしてこんな憎しみで破壊されるような世界へとなったのかという、これまでの疑問が解消されるような重要な章になっているようです。
そんな中で、生み出される悪魔の裏側に潜む、人の尊き感情が、世界を再生させる始めりへと繋がるという感覚が得られるような話でした。
怠惰、怒り、嫉妬の悪魔と戦い、風の国、火の国を再生させたアガタ。
自分の母、パンドラがこの世界に存在する悪魔を憎み、世界を滅ぼしたことを知る。
世界が破滅する前に、パンドラから生まれることを望むアガタは、続く水の国、土の国でも、その終末を迎えた世界を再生する。
しかし、これまで自分を世界再生の冒険へと導いてくれた竪琴の化身、ピュラが愛の悪魔であったことを知る。
愛によって世界は滅びた。
その真実を知るために、アガタは森の国へと向かう。
今度の冒険は、アガタ一人ぼっち。ピュラはいない。なぜなら、ピュラはこの森の国で生まれる存在だから。
森の国では、森の精霊を祀る収穫祭が行われようとしている。この期間だけは、外の国の者たちも入国出来るようだ。
ちょうどタイミングよく、アガタは森の国に現れることに。
同じく、放浪の旅をしているバードという男もこの国に来ているようだ。
森の国の民たちはやたらおしゃべり好きな人が多く、ずいぶんと賑やかだ。
この国の長である女性は、民たちと同じ視線で接するお母さんのような存在。病気がちな娘を溺愛している。娘は収穫祭で、精霊の力を引き出すための重要な巫女として選ばれている。
そんな姿に長らしくないと批判的なのが、先代から仕えている薬師とまじない師として活躍する男。
宿と食堂を経営する新婚夫婦。
行商人として、様々なものを国に仕入れる男。
そして、両親を失い、弟と二人で暮らす女性。
アガタは、その女性を見て驚く。
パンドラだ。
でも、女性は自分の名前はアガタだと言う。
パンドラなんて世界を破滅させる恐ろしい人の名前で呼ぶなんて失礼しちゃう。彼女の手にする本に、そんなパンドラという登場人物がいて、竪琴の勇者も出てくるようだ。
自分はあなたの子供なのです。そんな言葉を信用してもらえる訳も無く、面白い子、だったらお父さんは誰なのかしらと冗談にされてしまう。
さらに、民たちを見ていると、自分がこれまでの冒険で出会った人たちがたくさんいる。女性の弟は火の国の職人だった。この国では木の加工職人らしい。
長の娘は風の国で空を飛ぶ女の子。
宿の新婚夫婦は、水、土の国で出会った冒険者コンビだ。二人の性格もそのまま。
パンドラ、いやアガタと名乗る女性は、読書好きで、自分も物語を書くようになったらしい。友達を登場人物にして。
アガタはこれまで、彼女の描いた物語の中を冒険していたのだろうか。
お父さんが気になる。
この国の人なのだろうか。
行商人は、パンドラにかなり想いを寄せているみたい。でも、パンドラは全く眼中に無い模様。
バード。物語を描くパンドラにとって、外の国の人の話は楽しいみたい。おまけに、自分が読んでいる本のこともよく知っている。楽しい会話をするうちに、互いに想いを寄せ合うようになったみたい。
バードは、彼女のために竪琴を作り始める。収穫祭の後、彼女に自分の想いと共に渡すつもり。
アガタは分からない。
こんな幸せそうなパンドラ。この笑顔が世界を破滅させるまでの憎しみへとどう変わるのかが全く分からない。
収穫祭が近づく。
病気がちな長の娘が倒れてしまった。
代わりに巫女に選ばれたのがパンドラ。
祭りが始まる。
パンドラはバードの手をとって踊る。行商人は相手にされず、また恋実らずだなと新婚夫婦からからかわれ、がっかりしている。
儀式が始まり、巫女であるパンドラは目隠しして祈り始める。
その時、何者かに襲われ、拉致されてしまう。
そして、その何者かの子を宿すことになる。
長は、授かったのは神様の子だとして、事件の収束を図る。
バードは、竪琴、生み出されたピュラをパンドラに渡すことは無く、この国を去ることを決める。
パンドラは、何も知らずにおめでとうと声を掛けてくる民たち、自分の下を去るバード、自分を傷つけた何者かへの憎しみを増長させる。
儀式は巫女がさらわれたので終わっていない。
精霊の力は得られず、森は枯れ始め、パンドラの膨れ上がった憎しみは森の国を終末へと導き始める。
真実は。
パンドラを傷つけた犯人は。
アガタとピュラは、その真実の物語を描き始める。
しかし、ピュラは、犯人がどうであろうと、たとえ、それがバードであったとしても、自分を生み出した主人の想いをパンドラに伝えたいという願いを持っている。
アガタは思う。自分が望む世界は。
アガタは竪琴を手にし、森の国を破滅させようとするパンドラに聞かせ・・・
メタ構造になりましたね。
遊気舎の剥製の猿シリーズも5部作で、途中からメタになりましたが、世界観が膨らむとそういう方向へと導かれるものなのでしょうか。
世界の繋がりのために断ち切らないといけない絆。愛で世界を救うために、愛で滅ぼされないといけない世界。
何か、そんな始まりのための終わりという意味合いが見えてきたように感じます。
今回は、ピュラの純粋な信じる力が、世界を救う導きとなったようです。その悲しみや苦しみの交った想いがあまりにも切なく、涙を誘われます。
これも愛ですよね。でも、その愛の奥には、ピュラの大きな絶望も潜んでいるのでしょう。
それが悪魔なのでしょうか。
だとするなら、生まれる悪魔の裏側には、その悪魔を生み出す、人の素晴らしき、尊き想いがあるのでしょう。
怠惰は勤勉から生まれ、怒りは喜びから生まれ、嫉妬は許容から生まれるみたいな。生み出され、世界を穢すその悪魔の始まりに、人の正の感情があるなら、その悪魔による終わりは始まりにも繋げることが出来るようなイメージ。それが創造するというアガタの力のように思います。
愛があったから、憎しみが生まれた。絶望する世界は、希望に満ち溢れた世界から生み出される。愛の中にある悲しみ、暗闇の中に光があることを知るアガタとピュラだから、この世界はきっと美しい再生を遂げることでしょう。
来年の最終章で、そんな始まりの世界を見ることが楽しみです。
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コメント
ご予約、御来場ありがとうございました。
相変わらずの読解力に感服でございます…。
来年は一体どうなってしまうんでしょうね。
私自身もとても楽しみであります。
また、お会い出来る日を楽しみにしております。
投稿: 西田美咲 | 2015年9月24日 (木) 15時13分
>西田美咲さん
コメントありがとうございます。
西田さん、いやピュラ。
やっぱり、めちゃくちゃ素敵ですね。あの純粋な想いを心に抱く優しい表情に心奪われます。
ストーリーは、前回ぐらいから、盛り上がりを見せ始め、今回は、もう1年は待てんといったぐらいです。
ご出演の役者さんや関わるスタッフの方々も同じ気持ちじゃないでしょうか。
来年の公演まで待ちきれないくらいの期待を抱く時間を皆さんと共に出来るのも、この壮大なプロジェクトの大きな魅力だと思います。
またお会いできるのを楽しみにしております。
暇ステかな。
投稿: SAISEI | 2015年9月24日 (木) 15時32分