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2015年9月 4日 (金)

湿原ラジオ【スクエア】150904

2015年09月04日 近鉄アート館 (125分)

一言、傑作。
嘘と勘違いが、繋がる、繋がる。そして、最後、真実へと導かれる。
心地いい伏線回収、テンポのいい掛け合いで流れる話の絶妙な展開と、その巧妙な脚本は定評があるとはいえ、あまりにも素晴らしいと興奮する作品でした。
最後の方もいいんですよね。
感動の涙。あまりお涙頂戴にしたくないのか、これを笑いで、わざとなのか拍子抜けさせ相殺してしまう作品はけっこう多いですが、この作品は泣きと笑いを同居させることを実現させたように感じます。
泣き笑い。言葉としてはあるものの、なかなかそこに至らない。久しぶりにその素敵さに感動して泣いているのやら、面白くて笑っているのやらが分からない、これは最高だと心地いい気持ちになれる作品だったように思います。

<以下、ほぼあらすじだけ。ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで>

深夜のラジオ番組、湿原ラジオ。
落語をしない関西ローカル落語家、ちょっと神経質でねちっこそうな放送作家、女性DJ。
常識外れの聞き間違いをする、放送作家の女弟子をいじりながら、嘘のようなホンマの話のコーナー。
4人のリスナー。
30歳も過ぎて未だ働かず、ラジオばかり聞いているニートの山田大。ラジオネーム、ビッグ山田。10年来、投稿は採用されたこと無し。姉、山田文は37歳。会社で研究者をしているようだ。男運が無いようで、お金は結構持っていて、いつも札束をカバンに潜ます。今日は男と会う予定だったらしく、真っ白なドレスに身を包む。その姿は幽霊のようだ。すっぽかされたのか、夜になってもまだそんな服を着たまま待機状態。ニート、いかず後家とビッグ山田と口論になり、家を飛び出す。
タクシードライバー。ラジオネーム、デニーロ三世。運転中にいつもラジオを楽しむ。タクシードライバーだけに色々な人に出会うのか、面白ネタをたくさん持っているらしく、この番組の常連さん。
浪人生。ラジオネーム、ピノコ。受験のため、従兄弟の家にお世話になっている。兄と呼ぶその男は、携帯を忘れてどこかへ外出中。オタクっぽい感じで、勉強そっちのけで、ラジオ番組への投稿の採用に命をかけている模様。
バーテンダー。ラジオネーム、ハートカクテルパラダイス。いつも、店でラジオを聞いているようだ。今日は、客が一人。待ち人来ずで、カクテルをたくさん飲んだらしく、机に突っ伏して寝ている。

最初の投稿はデニーロ。街角で見た不思議な人ネタ。
タキシード姿の男。誰もいないコンビニの壁に話しかけ、一人で壁ドン。勢い余って怪我をしたらしく、コンビニで消毒薬と包帯を購入。手を包帯でグルグル巻きにして去っていった。
嘘っぽいけど本当にいそう。このコーナーにふさわしく良いポイントを突いている。もしかしたらマジシャンだったのではないか。そう言えば、昔、そんな鈍臭いジャッキー深川という奴がいた。売れなくて消息不明だが、今はどうしているのやら。話は盛り上がる。さすがは常連さん。
続いて、ピノコ。ど根性大根ならぬ、ど根性カリフラワーを見た。
これは嘘だろう。ちょっとあり得ない。嘘はダメですよなんてラジオで言われて、ピノコは本当なんだと部屋で叫んでいる。たしかに、その部屋にはカリフラワーが。
そして、遂に初採用。ビッグ山田。
亡くなった姉が幽霊となって家に戻って来ている。
これは完全に嘘。落語家は電話をかける。
しどろもどろのビッグ山田。自分は18歳。姉は自殺して、今は風呂に入っていて、いつの間にか外に出たみたい。
ガチャン。電話は切られる。

バーでは男が目を覚ます。
バーテンダーのカクテルは閉店ですと伝え、男は酔いが残りながらも立ち上がる。
タキシード姿。右手には包帯。大きなカバンには、ネタが仕込まれているのか。
マジシャンのジャッキーじゃないか。
男は明日には東京に戻るらしい。今日は大切な人と待ち合わせていた。サプライズも用意していたのだが。
カクテルの勘違いなのだが、なぜかマジシャンとして話が通じてしまう。
男が去った後、カクテルはネットでラジオに投稿。うちのバーに今、ジャッキーが来ていた。

タクシードライバー、デニーロは女性を乗せる。家を飛び出した、山田文だ。
どこか寂しげで、髪もしっとりと濡れている。
ビッグ山田の死んだ姉の幽霊じゃないか。
デニーロの挙動不審な言動に怪しさを感じたのか、山田文は1000円を残して、車から静かに降りる。
いない。幽霊。間違いない。デニーロは、ラジオにすぐさま投稿。
今、ビッグ山田の姉の幽霊を乗せた。

放送局では、あまりにも聞き間違いをするから、破門だ、出て行けと放送作家から言われ、はいと本当に出て行ってしまった女弟子に電話。
なぜか、ドンキにいる。毛根に効く薬を探しているのだとか。
もう、金輪際・・・。これがそう聞こえたのか。
おもろいなあ、天然やなあなんて盛り上がっているが、投稿を見て、再び、ビッグ山田の幽霊ネタに興味を惹かれ始める。
リスナーが組んで、ドッキリを仕掛けているのでは。
とりあえず、ビッグ山田に電話。
ビッグ山田はおもろくしたい一心で嘘ばっかり。
姉はジャッキーにお金を渡しに行った。姉はジャッキーの弟子。そう、名前は山田チャーン。
また、ちょっと調子にのっていると、また電話は切られる。

浪人生、ピノコの部屋では、携帯が鳴っている。従兄弟の兄が忘れていったもの。着信は山田文。出てもすぐ切れてしまう。
そんな中、兄が帰って来た。
その姿はジャッキーじゃないか。
そうか、兄はずっとマジシャンであることを隠していたのか。東京に行く最後に自分にだけ告白してくれたのだ。
そして、弟子を東京に連れて行くかどうかで悩んでいるといった状況なのだろう。
これまた、勘違いなのだが、なぜか話は通じてしまう。
頑張って。何も出来ないけど、このど根性カリフラワーを。
兄は、いやジャッキーは携帯の着信を見て、すぐに部屋を飛び出していった。
蚊帳の外にいると思っていたが、自分もこの話に絡んでいた。まさに奇跡が起こった。
もちろん、すぐに投稿。

バーには、山田文がやって来る。
すれ違い。
カクテルは全て分かっているとばかりに山田文に話しかける。
山田チャーン。山田ちゃんですよね。
自分の辛い過去の経験も交えて、あなたは彼のアシスタントととして行動を共にするべきだと、勇気づける。
山田は、何も言わず、1000円を残して、バーを去る。
カクテルは投稿。

デニーロは、ジャッキーを発見。
あなたを探していた、行き先も分かっていると語り、彼をタクシーの乗せる。
あなたのことは全て分かっている。山田ちゃんのことも。
女性と縁が無かった自分に偉そうなことは何も言えない。でも、二人は一緒に東京に行くべきだと思うと後押しする。
バーに着いた。
ジャッキーは降りる。
すぐに投稿。

放送局では議論が始まる。
本当に二人は一緒になるべきなのか。
例えば、山田チャーンが、一マジシャンとして独立して頑張る道だってあるのではないか。
もちろん、そのためにはマジシャンとしての腕があることが前提だが。
確かめよう。
ビッグ山田に電話。
自分の知る姉は鈍臭く、トランプもまともに切れない。
姉はバツイチ。色々なことに自信を無くし、閉じこもった生活をしている。何とか、勇気を出して、外の世界に向けて踏み出して欲しい。姉からいつも言われている言葉を、恥ずかしげも無く、そのまま口にする。
最初こそ、嘘ついてまで目立ちたい痛いキャラとなっていたが、今では、すっかり、姉思いのいい弟キャラとして定着してしまって、満足しているようだ。

山田文は、ジャッキーの部屋を訪ねていた。
そこにはピノコがいた。
分かっています。
悩まなくていい。二人は一緒に頑張ればいい。そう夫婦漫才のように。
その励ましに、山田文は再び、バーへと向かう。
もはや定期報告かのように投稿。

その報告を受けて、デニーロは、山田ちゃんの捜索開始。
途中、なぜか、放送作家の女弟子を乗せる。
耳鼻科に行けと言われて、ジュピターに行こうとしているらしい。
この番組の大のファンであるデニーロは笑いが止まらないが、今はそれどころではない。
山田ちゃんを無事に見つけて乗せる。
何も言わずに、乗って。行き先はバー。そこで、あなたの大切な人が待っている。
タクシーの中ではラジオが流れる。
放送局から、ビッグ山田に電話をかけているみたい。
あなたの弟さんです。そう言うデニーロ。
山田文は訳が分からない。
そんな中、新たな報告がカクテルから。
バーに来たジャッキー。でも、山田ちゃんがいないので、山田ちゃんの行きそうな場所に向かったと。
遅かった。
ジャッキーはバーを去りました。そう山田ちゃんに伝えるデニーロ。
ジャッキーって誰。その言葉の意味が分からない山田文は、やはり怪しいとタクシーを降りてしまう。
カクテル、そして一緒に女弟子も跡をつける。

山田文は公園にたたずむ。
そこに、ジャッキーがやって来た。
二人は、本当の想いを語り合う。
実況を女弟子が行う。得意の聞き間違いで全く意味が分からないが。
男はカバンの中を探る。用意していた花束が無い。きっと、バーに忘れてきてしまった。
代わりに、カリフラワーが入っている。
僕と一緒になって欲しい。私で良ければと山田文はそのカリフラワーを受け取る。
もちろん、実況が女弟子。本来なら意味の分からない聞き間違いで話が通じないところだが、さすがは師匠の放送作家。見事に全てを解読して通訳する。
何はともあれ、二人は結ばれた。

番組はエンディングを迎える。
ビッグ山田から投稿。
最後に伝えたいことがあるのだとか。
仕方ない。電話だ。
一つは、姉のことを感謝。放送局の方々、そして、関わってくれたリスナー方々に。
もう一つは、弟子入り。
放送作家に憧れていた。今がチャンス。姉と同じように自分も踏み出す。
一人破門になったし、是非、自分を。
放送作家は、嘘によって、ここまで盛り上がらせた才能は何となく認めているみたい。我が我がと、自分のことだけを考えるのではなく、全体を少し引いたぐらいで見て、想像を膨らまさせるように仕向ける力もなかなか。まだ18歳と若いのに。それに、こうして公共電波にのせて、断りにくくさせるあざとさもいい。
少し、まだ、見破られていない嘘もあるようだが、とりあえずは来週の番組で女弟子のポジションを任せてみると。
あれは天然の聞き間違い。君は、その発想と想像力を駆使して、女弟子を超えることができるか。それが弟子入りの試験らしい。
とりあえず、チャンスは繋がった。
番組は終了。
結局、この日はこのビッグ山田の姉ネタ一本で終わり。まあ、こんな日もありかも。
疲れた。久しぶりにみんなで番組が終わったら飲みに行こう。
放送作家は、外にいる女弟子に呼びかける。よし、戻って来い。任務完了。
タクシーの中で、女弟子は、肉じゃが・・・。
デニーロは、笑いが止まらない・・・

上記したように面白く素晴らしい作品でした。
ベテランの4人の味のある演技はもちろんですが、今回は、若手の方々の活躍が目立ったように思います。
女弟子の吉沢紗那さんの飄々としたボケっぷり。
ジャッキーの川末敦さんの誠実で不器用な男の姿。
DJ、山口菜月さんの個性的なベテラン二人の挟まれながら、安定した存在感を見せる力強さ。
これは、スクエア、これからも益々、おもろなるんやろなあと確信できるような作品となっているのではないでしょうか。

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コメント

良かったみたいですね。


結構あらすじ読んでこれは良さげと思ったんですが前日は日帰りの東京。当日は朝から仕事。無理したら千秋楽行けたのですが溜まってる仕事をやるのを優先してこの日はgate#14Sepに行きました。劇団しようよの西村さんと3月の『珈琲が冷めるまでの戦争』に出演されていた木之瀬さんの二人芝居を楽しみに行きましたが他の2作品もそれなりに良かったです。Octはプロトテアトルが出ます。


流石に疲れたみたいで子供鉅人も行けたんですが今回は見送りました。前回が前回やったんで(笑)前回公演の感想は梅田さんの感想が一番近かったです(笑)


『湿原ラジオ』お勧めですか?

投稿: KAISEI | 2015年9月10日 (木) 10時08分

>KAISEIさん

劇団しようよ、私も観に行きたかったな。
西村さん目当てで(゚▽゚*)

湿原ラジオはきっとDVDでも楽しめると思います。
ただ、舞台が4分割されているので、そのあたりをどこまで巧くされるかにもよりますが。

投稿: SAISEI | 2015年9月16日 (水) 20時16分

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