プロトタイプ ユニット美人【劇団衛星+ユニット美人】150828
2015年08月28日 KAIKA (90分)
昨日の劇団衛星に引き続き、ユニット美人のステージを観劇。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2015/08/2070-2316.html)
三人姉妹、マクベスという古典戯曲を公演する劇団の姿を描きながら、その劇団自体がその古典戯曲そのものになっているようなメタフィクション様構造の作品だろうか。
三人姉妹はよく分からないが、マクベスはけっこうねちっこい悲劇ですよね。
そんなねちっこさを見せながらも、どこか爽やかな三人姉妹の様相も見せて、結局はやりたいことをやりながら、悲劇なんかにならないように、楽しく未来をユニット美人は切り開きますよといった意志表明みたいなことが込められているような話に感じました。
その感覚は、いつも変わらぬ、この劇団の楽しさと、けっこう勉強になって他公演の観劇にも役立つ知的さにも繋がっているようで、10周年の祝福と更なるこれからの活躍の期待を抱かせるものだと思います。
<以下、ネタバレしますので、ご注意願います。公演終了が水曜日までと、長いから戻すのを忘れそうなので、白字にしていません。>
・『闘う!三人姉妹VSマクベス』公開稽古
ユニット美人20周年記念公演まであとわずか。
この公演が、10周年記念公演なので、10年後の姿を描いているみたい。
まだ、黒木陽子さん、紙本明子さんのお二人で、美人と名打って活躍されている模様。ブルマ姿も健在。
演出の陽子さんはいつものごとく遅れているみたいだが、公演に向けて稽古は始まっている。
今回は、あの誰もが眠りに誘われるという名作、チェーホフの三人姉妹に挑戦するらしい。
最近、本公演を観て、なかなかお気に入りになった何色何番は、京都での地位も確立したのか、村井春奈さんが客演に。そして、大阪で弾けた面白さと、ちょっと不器用な女性の愛らしさがとても素敵で、お気に入り女優さんの一人であるシバイシマイの是常祐美さんは、大阪を制したのか、京都にまで活躍の場を拡げるべく、同じく客演として参加。
明子さん、是常さん、村井さんの三人のおふざけなのか、真面目なのかよく分からない稽古を、日替わりゲストで出演予定のはなみさんが見守っている。
・みたび黒木が遅れてくる
そんな中、陽子さんが遅れてやって来る。
今でもそうなのかは知らないが、上下関係があるようで、陽子さんはちょっと偉そう。明子さんはじめ、みんなも腫れ物を触るかのような感じで接している。大袈裟に言えば、暴君ってところか。あのマクベスの王のように。
稽古再開。ところが、三人姉妹の話が進み始めると、いきなりはなみさん演じる日替わりマクベスが登場。かなりのインパクトがあり、三人姉妹はすっかり霞んでしまう。
稽古を止めて、明子さんは陽子さんに意見する。マクベスも組み込むことにはなっているが、できるだけ控えることにしていたはず。それにはなみさんがユニット美人の精神を理解しているとは思えない。
陽子さんは、その意見に対し、三人姉妹は辞めて、マクベス一本ですると言い出す。プロデューサーにも連絡。自分が代表の座を退くことと引き換えに、認めさせる。そして、新代表をはなみさんにするとまで。
・不自然なガール
三人姉妹したかったね。悔し涙を流す明子さんを慰める二人。
突然、稽古場に鮮烈な赤のドレスを纏ったドールのような女性が登場。今もユニット美人や劇団衛星に客演されたりしているが、その関係は続いているらしく、今回も友情出演の丹下間真寿美さん。
三人もそんな凄いドレスを身に纏い、アイドル並みの歌と踊りを披露するが、時の流れは残酷だ。無理とか限界という言葉が頭をよぎる。
・秘密のポリヘドロン
悩み相談室。妖艶な女性。
悩みは解決しないと言い張っている割にはまずまず繁盛しているらしい。
同じ服を着ていてもやはり若い子の方が似合う現実に気付いてしまい声にならない嘆きを見せる妙齢の女性や、自分を白雪姫とでも思っているのか、完全にトチ狂った女性などがやって来る。
明子さんも悩みを相談。
自分を認めてくれないリーダー。自分がリーダーになればいいのか。これまでを全て失う気もするし。
そんな明子さんに、女性はコーヒーのたとえ話をして、自分で頑張るしかないようなことを伝える。
・みんな主人公!星見ヶ丘少年ヒーローズ
デスロードが見つかった。
ヒロシは、その道を通って向こうの世界に行きたい。母に会いたいから。
ミッチは、そんな友達に付いていくつもりだ。自分は捨て子だから、会いたい人もいないけど、友達だから。
警部に母を人質に取られているシルバー。そのことは秘密だ。でも、デスロードを解明すれば、母に会わせてもらえるらしく、二人の面倒見役として共にする。
この世界ではミッチになっている明子さん。一人、目立つためなのか、激しい動きに心情込めた熱演。机の上に無意味にのったりして、目立つ。デスロードの冒険は危険が付きまとう。勝手に死亡フラグを立てて、死んでしまう。
・秘密のポリヘドロン2
気付くと、明子さんは相談員に叱られる。死んではダメ。その後、ずっとサブキャラ扱いになってしまうから。なかなか、話全体を見通すのも難しいものだ。
まだ、悩みは解決していないが、次の人も待っているので追い返される。
でも、次の人の悩みは不倫。こういった悩みが嫌いらしく、女性は思いっきりキレて、追い返す。
代わり戻ってきた明子さん。
女性はまた、コーヒーの話を始める。
インスタントコーヒーを姑に飲ます。もし、それに気づかれたら。明子さんは想像する。
甲斐甲斐しい妻の明子さん。姑の陽子さんがコーヒーがインスタントであることに気付く。さんざん嫌味を言われ、ひどい女だと触れ回られる。気付くと明子さんは陽子さんを刺していた。
・稽古場
作品はあっさりと変わってしまうし、明子さんも情緒不安定だし、稽古場の雰囲気が悪い。
京都は変だ。大阪が恋しい。
村井さんに言わせれば、こんなものらしいが、是常さんは京都の壁に悩まされているみたい。
もう降板してしまおうか。
そんな気持ちもちらほらする中、陽子さんが死体で発見。
・みんな主人公!星見ヶ丘少年ヒーローズ2
殺人事件発生。
警察の下っ端となっているシルバーは現場検証。
犯人はミッチではないか。孤独の寂しさからの犯行はあり得る。
そんな中、ミッチははなみさんが犯人だと、彼女を追い詰める行動に出始める。
・稽古場2
是常さんの悩みは相当深くなっている模様。
色々なトラブルの挙句の果てに、演出が殺されたのだからそれも仕方が無い。
彼女のブログを縦読みすると、もう本当に辛くて辞めたい気持ちが浮き上がる。
明子さんは、陽子さんを殺したのは、はなみさんだと彼女を殺める。
全てはユニット美人20周年記念公演のため。
とにかく、公演を実現することが大事。
是常さん、村井さんに、そんなことを強要。
ユニット美人の新代表は明子さん。ハイル明子さん。新たな暴君が生まれる。
稽古が開始。マクベス。明子さんは陽子さんの亡霊に狂わされる。
・三人姉妹夢を語る
・稽古場3
(区切りがよく分からなかった)
陽子さんの亡霊を見て、呆然とする明子さん。
昔を思い出す。
陽子さんが悩み相談に訪れている。
リーダーとしての悩み、不安。今の明子さんと同じようなことを相談している。
マクベスも知らないで演劇をするなんて努力が足らないと、責められている。今では想像もできない、おどおどしている陽子さん。
明子さんが現れる。
それでいいじゃないか。私たちは、私たちの楽しい演劇を創っていけば。
あの時、ユニット美人が結成された。
・いきなり戦国!京都女性演劇界
ここまでごちゃごちゃになってしまった黒幕が分かった。
それは丹下真寿美さん。
若さも活かして、ユニット美人をのっとろうとしている。そして、最終的には京都演劇界を手にしようとしているのだろう。
ここKAIKAで活躍する劇団しようよも陥落。
その事実を知り、明子さんは諦めの意を示す。
確かにもう美人というのも気が引けるし。
それに是常さんが噛みつく。
ユニット美人は、京都演劇界の美人を集めて、それだけでしっぽりと公演をするだけでいいの。
違う。やりたいことをやって、皆を楽しくする。それが緑のブルマだったんじゃないのか。
その熱き想いに明子さん、今は死んでしまった陽子さんの亡霊も心を動かされる。
・となりのヒロインたちと敵討ち
丹下真寿美さん率いる新たな勢力は、はなみさんと共に、マクベスをエレガントに演じる。
そんな姿はユニット美人の求めるものでは無い。
日替わりマクベスは倒され、本当のユニット美人が立ち上がる。
今こそ、自分たちのやりたい、想う道へと進もう。三人姉妹が願い続けたロシアへ向かおう。より良き演劇を実現しよう。
そんな夢を明子さんは見ている。
床には、ユニット美人が残した数々の華やかな欠片が落ちている。
それを拾い集めて、本当にそのより良き演劇を実現する道へと進めるのか・・・
これまでの10年。きっと変わらぬこれからの10年。ユニット美人のこれからの決意表明みたいなものか。
個々の人生を歩みながら、かつての良き時間に想いを馳せる三人姉妹。様々な惑わしに翻弄されながら、妬み、孤独の中で破滅の道へと進むマクベス。
そんな二作品を公演するということで演劇作品が出来上がるまでを見せながら、何かのアニメが元ネタなのかよく知らないが星見ヶ丘少年ヒーローズを三人姉妹の結束、現実の劇団の姿を、マクベスの色々とドロドロした感じとして交錯してして見せているようなメタフィクション様の構成なのかな。
漠然としたこの先の人生に悩めるイリーナ、明子さん。母に会いたいという現状からの救いを求めるマーシャ、是常さん。警察と関わり、現実を直視するオーリガ、村井さんが、各々、異なる人生を歩みながらも、危険を顧みず、この先にある今とは違う未来へと進もうとする三人姉妹の様相。
怪しげな悩み相談の魔女のような女性に惑わされ、これまで恩恵も受けてきたであろう王、陽子さんにに妬みの念を抱き、殺意までも持つようになってしまったマクベス、明子さん。王の座を手に入れても、そこにはかつての王の悩み、苦しみを知るだけで、自らの地位を脅かす日替わりマクベス、はなみさんにまで手をあげる。全てに対して猜疑の念を抱き、破滅の道へと進むマクベス。
しかしながら、この二つの作品を融合させたユニット美人は、マクベスのように悲劇の道へとは進まなかったようである。
現実には、きっと色々とあって、マクベスのようなドロドロも多々あるのだろう。でも、同時に姉妹のように信頼し合って、全く別々のことをしていても、どこか繋がり合って、同じ場所を目指すような共有する心があるのかもしれない。
それを星見ヶ丘少年ヒーローズの爽やかな少年の冒険もののような形で見せながら、同時に、創り上げる演劇作品として姉妹のような通じ合う役者さんの仲間の姿として見せる。
降りかかる数奇な運命に翻弄されてしまうこともあるかもしれない。愚痴や不満だけが募って、文句ばかりで前へと進まない時間もあるかもしれない。馴れ合いの感が強い演劇界でも、やはり競争世界。脅かす数々の敵は襲ってくるだろう。
それでも、そんなこと全てをクリアして、自分たちの求める道を進んでいく。
厳しい現実から生まれてしまう悲劇を、みんなが楽しく、笑い合えるような喜劇にしてしまえるような力をユニット美人は持っている。
この証明を古典戯曲をベースにしてみたような作品として考える。
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コメント
ナルホド! メタなのか… 場面場面は楽しんだのですが全体構造的には(?_?)な感じで肌に合うかというと肌に合わなかったかな。
紙本さんがいい意味で爆発したはって印象に残りました。
村井さんも中々(笑)
考えてみたら観客席に上演後もカメラを撮り続ける迷惑な観客役の山中麻里絵さんや出だしの渡邉さんも出演者やん、と思いました。
投稿: KAISEI | 2015年9月10日 (木) 11時02分
>KAISEIさん
よくは分かっていませんが、なかなか面白い創り方をされるなあと興味深かったです。
ここは、知的さが滲むところが、単に笑って楽しい中に、奥深さを感じさせますね。
私の一押し怪女優、是恒さんも良かったでしょ。
投稿: SAISEI | 2015年9月16日 (水) 20時32分
是常さんは勿論いいですよ(笑)
次はかのうとおっさんでしたよね?
投稿: KAISEI | 2015年9月16日 (水) 23時02分