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2015年8月21日 (金)

サンプリングデイ【壱劇屋】150821

2015年08月20日 インディペンデントシアター2nd (105分)

たぶん、かなり脚色されているのだと思う。
私が観た2010年の本家sundayの作品とは、かなり違ったように感じる。
と言っても、覚えが曖昧なのではっきりとそう断言はできないのだが。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/sunday100722-49.html

前作、Windows5000も、観劇後、ヨーロッパ企画のHPからDVDを購入して観たけど、基盤はあるものの、舞台セットや登場人物もずいぶんと変えていたみたいなので。
壱劇屋スタイルに合わせて創られた、文字通りマッシュアップした作品となっているのだろう。
このマッシュアッププロジェクトの三作は、どれも大御所の作品なのに、大幅な脚色を許してしまうという、幅広い心はさすがは関西で名を馳せる劇団だなあと改めて敬意や感心、嬉しさを抱かせると同時に、その大切な名作を任せられるという、この劇団への信頼の大きさも、実力を認められている証拠であり、喜ばしいことだと思う。

話はかなり違っているとはいえ、サンプリングされた幾つものエピソードをコラージュするという基盤は同じようだ。同じように、単一のエピソードが、徐々にテンポよく繋がりを見せるという心地よさが残る。
sundayの時は、より普遍性が高く、宇宙だとか、永遠だとか、壮大な世界観が漠然と感じられ、その作品の中に潜む規模に圧倒されるような感じだが、今回は少し身近に感じられる世界を見せられたように思う。それこそ、冒頭は劇団員の日常の断片化から開始しており、親密感が強く残る。
そんな違いを感じたからだろうか。この作品は、伏線も好きなようにばら撒かれ、気が抜けない。それをパズルのように組み立てるみたいな作業も必要で難しい印象がある。
にもかかわらず、まさか、最後の10分ぐらいで感動して泣きそうになるぐらいに、心打たれる何かを感じたことに驚く。
やっぱり、難しくよくは分からない。でも、そのエピソードが、人が繋がっていく様の中から、私たちが生きるこの世界は、皆、個々が生まれて、偶然出会い、想い合うという優しさに包まれながら、関係性を創り出していることが見えたように感じる。

サンプリングデイを演じる劇団員。
すき屋でバイトしたり、殺陣の先生したり、お店のレジをしたりと様々。
19:00にみんな合う。稽古。
思い思いのことを言い合いながら、時間を過ごす。
こうして、劇団の時間は流れていく。

ごく普通の家族。
父、母、姉、妹、弟。
姉は悪い男との同棲で苦労する。帰り場所は、この家族。影で心配してくれている男だって実はいる。家族の大切さを身に染みた彼女だからこそ、家族が離れてさびしく不安になっている子を勇気づける。
男は借金まみれ。下手したら殺される。ほうぼう友達を回るがなかなか厳しい。最後、助けてくれるのは親しかいない。
妹は塾に通う。カレーにこだわりをみせる、ちょっと頭が悪い子。でも、テレビの街頭クイズでちょっと頭の良さを見せてしまう。賞金。これは塾の学費に使う。
臨時収入を得た塾の先生は、日頃のうっぷんを晴らすべく、中華料理屋で泥酔。遠き故郷を想い、日本で懸命に働く店員にくだを巻く。
・・・

何か、もっと色々なエピソードも絡むけど、ぐちゃぐちゃでよく分からないから割愛。
でも、最後には繋がりを見せる。
エピソードという事象の繋がりを単に見せているわけではないよう。
そこには、そのエピソードに絡む人がいて、その人たちが心の繋がりを持つことで、事象が成立していることを見せる。
その人の心の中には、親や家族、友達がいる。
ビッグバンによる宇宙誕生から、奇跡的に地球が生まれ、そのはるか未来に、私たち個々が生まれた。人だけでなく、生き物という観点からは、その数は天文学的な数字。そして、とても低い確率で出会う。
そして、想いを寄せ合う。
私たちは日常の時間を、思いのままに過ごす。でも、そこには、自分が想う人、自分を想う人が存在している。一人ではなく、繋がりの中にいる。
私たちは出掛けても、そんな優しい空間に帰ることができる。
奇跡的に生まれ、人と出会い、その人たちと想いを共有しながら繋がりを生み出す。
日々の自分のエピソードは、そんな自分の人生の世界を作り出すためのピースであり、どこかの誰かのエピソードと繋がり合っているという感覚が、辛かったり、悲しかったりする中で生きることに安堵を与え、大きく拡がる自分への希望となるように感じる話だった。

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コメント

今回のマッシュアップ三部作の好きな順は『Windows5000』→『ゴールドバンバン』→『サンプリングデイ』になりました。


『サンプリングデイ』は少しづつ繋がっていくんですよね。ただ繰り返しも多くて飽きた場面もありました。


激戦週だったので壱劇屋さんにしては観客は少なめ。私も3本ハシゴの2本目だったのも作用しているかもしれませんが…


でも精力的な劇団さんで(笑)今年は6本公演されるのかな。

『サンプリングデイ』は出演者全員劇団員でしたっけ? 初めて大熊さんを含む男性劇団員さんとお話しできたのが収穫でした。

投稿: KAISEI | 2015年9月 8日 (火) 11時14分

>KAISEIさん

私も同じ順番かな。

Windows5000はヨーロッパ企画のDVD、ゴールドバンバンはピースピットのVHS、サンプリングデイはsundayの公演を観ていますが、どれも名作の空気を残して、巧くこの劇団のスタイルに合わせた魅力的な作品創りをされているように感じます。

サンプリングデイは客演さん無しだったと思います。
私が話したことがあるのは、ごく一部の方だけですが、皆さん、とてもいい子が揃っているようには感じますね。

投稿: SAISEI | 2015年9月 9日 (水) 17時24分

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