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2015年8月 2日 (日)

パイドパイパー【劇団ショウダウン】150801

2015年08月01日 HEP HALL (140分)

う~ん、ちょっとモヤモヤ。
はっきり書いてしまえば、期待していたほどの感動は得られず。
もちろん、ここはその期待が大き過ぎるところはあるでしょうが。

いつもながらの壮大な世界観の中で展開する話、役者さん方の膨大な熱量、小気味いいテンポなどなど、凄いなとは思いますが、どれも突き抜けた感じがしない。
恐らく、理由ははっきりしていて、話が理解できないんですよ。それほど、難しいとは思いませんが、膨大過ぎる、伏線を仕掛け過ぎなところがある上に、少しバックグラウンドがあった方がいいような話だったように思います。
パイドパイパーたる者が何なのかといういきなりの謎、異国のよく知らない歴史、覚えにくいキャラ名、数多い役者さん。これを整理するのに、前半1時間ぐらいは使います。
感性や空気を楽しめばいいという作品では無いようにも思いますしね。
実際の役と共に講談師のようなキャラが存在して、ストーリーテラーとして機能させている。お馴染み、林遊眠さん一人芝居風に。
私は、こんな風に緻密に計算されて、かつ膨大で豊かな発想の下に生まれた物語を聞くことも、この劇団では楽しみにしているので、話がよう分からんとなったのは致命傷でした。

私の頭の悪さは棚に上げさせていただきますが、二回観てようやく分かるような創りはあまり感心しません。
チラシに少し詳細なあらすじを記載するとか、年表作るとか、関係図を入れるとか、もう少し、このあたりは何とかならなかったのかなと思います。

それでも、ラスト20分ぐらい。
人が神と対峙して、自分たちの持つ愛を語り、世の絶望を希望へと変えていくような姿は、美しく、熱く。
恐らくは、心が温かくなり、涙を流した方も多いことでしょう。私も感動しましたが、まあまあといった感じ。
心震わされる作品は、開始直後からの心情の蓄積が大切。
そこをつまづいてしまった今回の観劇では、当然の結果なのかもしれません。
残念だったという感が一番残っています。

1284年、ハーメルンの笛吹き男。
歴史の表に顔を出す、笛の魔力を持つパイドパイパーの伝説はここから始まる。

ハーメルンを支配していたエーフェルシュタインは、彼を快く思わないミンデン司教と裏切ったアルブレヒトにより殺害され、その支配権を奪われる。
ミリアムというたった一人の姫を残して。
ミリアムは、世界の平和を司る神の力を持つ聖女。彼女を傍に置けば、世界を治めることが出き、その恩恵を得て不老不死になるという。
そのため、生まれてから外の世界とは隔離して育てられてきた。
彼女の傍にずっといたパイドパイパー。外の世界からは潜んで、二人ぼっちの日々を過ごしてきた。

ミリアムは従者、そしてパイドパイパーに連れられて逃亡するが、ミンデン司教やアルブレヒトの雇ったパイドパイパーたちの追手が迫る。
そんな中、ミリアムたちは、ヒースという一人の騎士と出会い、行動を共にすることになる。
しかし、追手の勢力は厳しく、ミリアムは囚われの身となった。

現在。
先生のイグリッドは生徒たちに歴史を教えている。
生徒の一人、メリアの姿が無い。しばらくお休みしている。
そのメリアを追っている怪しげな諜報員たち。
メリアは世界平和の鍵を握っている。争いが無くなることを快く思わない者もいるらしい。
イグリッドはそんな諜報員たちに歴史を教えると言い出す。
数百年に及んだ十字軍の戦い。

ギョーム率いるテンプル騎士団に監禁されるミリアム。
ミリアムの恩恵を得て、不老不死となったパイドパイパーとヒース。
二人は時に異教徒と手を組み、ミリアムの救出を目指す。
そして、奪還は成功。
しかし、この争いは数百年もの間、収まることはない。
ミリアムを狙う数々の敵と数百年の時を戦いながら、ヒースはなぜ自分が剣を振るうのかを考える。
その答えは、やがて戦いの中で導き出される。
それは家族だから。出会って、同じ時をずっと過ごしてきたミリアムとパイドパイパー。家族だから守りたい。
パイドパイパーは、その恐ろしき魔力ゆえ、人では無く、この世界で自分の生きる場所を見出せなかった。ミリアムとの二人だけの生活。そして、今、新たに得た家族、ヒース。
人である二人には、自分と違って、その二人が本当に生きるべき場所を見つけてあげたい。
そう思いながら、彼女は戦う。

現在。
千年の時が経っても、この戦いは終わっていない。
ミリアムが転生したメリアは、その力を未だに人の手によって支配されようとしている。
この戦いを終結させるため、パイドパイパーとヒースは再び、この世に現れる。
イグリッドは全てを知っている神。
ミリアムの力を消し去り、彼女を解放することが出来るはず。
パイドパイパーとヒースは、神に願う。
しかし、それは人が決めることであると神は答える。
その決断を委ねられた諜報員。己の欲望がゆえに、彼女を解放するという言葉が発せられない。
もう一つ方法がある。
それは、パイドパイパーは、ずっと気付いていたが、どうしても実行することが出来なかったこと。彼女の命を奪う。不死身である者は、同じく不死身である者によってのみ命を奪い取ることが出来る。
ミリアム自身も己の運命に覚悟を決め、全てを終わらす決意をする。パイドパイパーとヒースは剣を手にして、その刃先をミリアムに向ける。
その時、・・・

最後は諜報員が、人を代表して、彼女の解放を神に願います。
人は賢くもないが、決して愚かでも無い。
欲に支配されて、争いを引き起こしたりはするが、たった一人の女性、その周囲の幸せを願う気持ちを無くしてしまっているわけではない。
みんなが各々の幸せを得て、生を全うして欲しい。それは、本当の人の願い。
神はその人の願いを聞き入れ、彼女の力を消し去り、全てを解放します。
解放された彼女はただの幼き女の子となったようです。そして、その恩恵の力も消えたのか、歳を取ることが出来るようになったパイドパイパーとヒースの姿もあります。
それは、三人が、千年もの間、心の中で願い続けていた幸せの形、家族の姿を浮き上がらせています。

把握し切れていませんが、こんな感じの話だったんじゃないでしょうか。
史実を基にした笛吹男の童話から、膨らませた話になっているようです。
聖女を奪い取る、守るという長き戦いの中で、人の欲にまみれた愚行が浮き上がりますが、その中でも、必ず家族や仲間への想いは愛として存在しており、それがいつかは必ず平和な世を人の手で創り上げることが出来ることを神に宣言したかのようです。
聖女もパドパイパーも、人を救う、罰するみたいな形で創られた存在なのでしょうが、そんな者は必要とせず、人が自分で己を救い罰して、与えられた生を全う出来るようにしていくことを誓い、それを神が信じたような感じのラストだったように感じます。

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コメント

5日(土)ブラッシュアップされたものを東京に観に行って来ます。


大阪公演はショウダウン贔屓の方も全体的にイマイチという評価やったみたいですね。


久しぶりの大人数の舞台なので心配はしていましたが(劇団が出演者を纏められるのか? 特に扇の要となるべき演出のナツメさんが役者として出演されてましたし。とはいえ役者ナツメクニオのこと好きなんですがw)


結局たかだゆきひとさんが降板されるなどゴタゴタがあったのでは? と思うフシもあったりとか…


東京公演はナツメさん役者を降りて演出に専念されるみたいで(笑)


高い観劇料(新幹線往復)になってしまったのでオモシロイことを願うばかりです(笑)

投稿: KAISEI | 2015年9月 3日 (木) 00時49分

本日『パイドパイパー』『千年のセピラ』両公演観てきました(『千年のセピラ』は新幹線の都合で最後10分程観ず帰宅)。


大阪公演と幾つか変更があったようですがそれでも確かにストーリーは追いにくいですね(笑)演劇は公演時間内に観客にストーリーを理解させなければならない、と私は思ってるので私もそこはマイナスですね。壮大すぎて練習期間ももっといるのではないかな。本来ならば能力の高い劇団員のみで完成させるのが良い作品ではないかと思います。中々寄せ集めでは(笑)


とはいえ途中から場面場面を楽しむ観方や役者さんを楽しむ観方に切り換えました(笑)


遊眠さんまたパワーアップされてませんか(笑)両公演とも存在感抜群(笑)トータルでは林さんと上杉さんがツートップと感じました。


やっぱり長台詞多いし声トばす役者さん多いんですかね(笑)

為房さんも最初は届いてこなかった。途中からは魅力的でしが。三好さんは良かったですね。今まで観た中では一番印象に残りました。


あうるすぽっととてもステキな劇場です。行かれたことありますか? 関西ではどこに近いかな? 八尾プリズム小ホールに近いかと思います。

11月くらいにも小さい公演を挟むみたいです。

投稿: KAISEI | 2015年9月 5日 (土) 22時51分

>KAISEIさん

お疲れ様でした。

ナツメさんが描く壮大な世界観の中の物語。それを可視化する林さん。
凄いなやっぱりだけで終わるのではなく、どこまで作品に引き込んで感動を生み出させるかを極めて欲しいですね。
今回の大阪公演での賛否、ブラッシュアップした東京公演の手応えなど、また、さらに向上した劇団の姿を見せてくれると思っています。

あうるは全く。八尾プリズム似ているなら、なかなか居心地のいい劇場らしい劇場みたいですね。

投稿: SAISEI | 2015年9月 7日 (月) 17時58分

SAISEI様

既に御存知かと思いますが元劇団ショウダウンの国本さんが3/4~3/6までインディペンデントシアター1stで劇団ミライ缶の公演に出演されるようです。

初演の『錆色の瞳、黄金の海』の演者4人今でも印象に残っています。

再演での姿も観たかったですが・・・

投稿: KAISEI | 2016年1月22日 (金) 13時49分

>KAISEIさん

お~、退団後もしっかりと頑張られているんですね。
調整して観に伺いたいものです。
そうですね。4人の調和した空気が、劇団としての魅力をしっかりと見せた公演でしたからね(ノ_-。)

投稿: SAISEI | 2016年1月23日 (土) 10時43分

SAISEI様

Twitterで絡んであげてください(笑)

投稿: KAISEI | 2016年1月23日 (土) 12時01分

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